違う名前なら
(今でもブルーなんだよな…)
あいつの名前、とハーレイが思い浮かべた恋人の顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(違う名前になっていたって、不思議じゃないんだが…)
有難いことに「ブルー」なんだ、と嬉しくなる。
今のブルーの名前の由来は、前のブルーと同じアルビノだからと聞いた。
アルビノの息子が生まれて来た時、両親は迷わず「ブルー」と名付けた。
(前のあいつは、今の時代は英雄なんだし…)
ブルーのような子供が生まれた場合は、選びたくなる親が多いだろう。
(もっとも、育てば、名前負けして…)
ソルジャー・ブルーとは似ても似つかない、ごく平凡な子になるかもしれない。
外見はもちろん、頭脳などにしても、ソルジャー・ブルーと同等に育つのは難しそう。
(幸い、あいつは本物だから…)
髪型までが「ソルジャー・ブルー風」で、人目を引く子供になりつつある。
前のブルーと同じ背丈に育つ頃には、文字通り、瓜二つになっていることだろう。
美しく育ち上がった「今のブルー」を、今のハーレイは連れて歩ける。
結婚する前にデートに行っても、注目を集めそうな「ソルジャー・ブルー」を。
(俺が「ブルー」と呼んでいたって…)
本名だと思ってくれる人が、どれだけいるかは分からない。
そっくりなだけに、「ブルー」が愛称だということは有り得る。
(正真正銘、ブルーなんだが…)
信じて貰えないかもしれないな、と可笑しくなった。
行く先々で擦れ違う人たちの耳に届いた名前が、「ブルー」であっても。
(振り返りながら、本名は何なのか考えるヤツらも…)
きっといるぞ、と考えるだけで面白い。
逆に「アルビノだから本名だろうけど、運のいい子だ」と眺める人もいるに違いない。
(名前負けしないで、ソルジャー・ブルーそっくりに育ったんだし…)
親を恨まずに済んで良かったな、と一足飛びの思考をしてみたりして。
確かに「ブルー」が、どう育つかは、生まれた時には分からない。
「ブルーと名付けて育てることは、ある意味、賭けな部分が大きい。
今のブルーの両親は、「名付け」の賭けの勝利者と言える。
生まれて来た子は、幼い頃から「ソルジャー・ブルー」に似ていたらしい。
(小さなソルジャー・ブルーだ、と公園などで可愛がられて…)
初対面の人から、お菓子を貰ったりして、人気を集めていたようだ。
連れて歩く父や母の方でも、鼻高々だったことだろう。
(お名前は、と尋ねられた時は、嬉しかったろうなあ…)
「この子の名前は、ブルーなんです」と答えられるし、聞かされた人の方も驚く。
「 あらまあ…! 本物のブルー君だったのねえ!」などと、目を真ん丸にしたりして。
(…大したもんだ…)
あいつの両親の名付け方は、と思うけれども、アルビノなだけに、賭けをしただけ。
「どう育つのか」までは考えないまま、「ブルー」と名付けることは「賭け」でしかない。
まるで全く心配しないで「迷わなかった」のなら、大物だろう。
(…もっとも、神様のお計らいで…)
両親の頭に浮かぶ名前は「ブルー」しか無くて、他の候補は無かった可能性もある。
生まれる前には考えていても、アルビノの子だと分かった時点で、「ブルー」の名前が…。
(頭にストンと落っこちて来て…)
他の候補は消えてしまって、それっきりになってしまったろうか。
(…いつ頃、ブルーに決まったんだか…)
その辺の話は聞いていないな、とハーレイは顎に手を当てた。
もしかしたら、今のブルー自身も、耳にしたことは無いかもしれない。
「ブルー」と決める前に「名前の候補」が存在したのか、あったとしたなら何なのか。
(…ボツにしちまった名前なんかは、話さないしなあ…)
俺にしたって聞いちゃいないぞ、と自分の名前を振り返ってみる。
今のハーレイも「ハーレイ」だけども、前と同じで「姓」が「ハーレイ」。
名前の方は「ウィリアム」なわけで、これまた前と同じ「ウィリアム」。
(ちゃんと、ウィリアム・ハーレイなんだ…)
だから「ブルー」も、神様のお計らいだろう、と見当がつく。
とはいえ、ハーレイにしても「ウィリアム」以外に、名前の候補があったかは知らない。
(親父に聞いたら、とんでもないのが…)
出て来るのかもな、と釣り好きの父の顔が浮かんだ。
釣り好きで、釣りの名人なだけに、名付けのセンスが常識外れで…。
(…釣りの名人の名前にあやかりたいなら、まだマシな方で…)
お気に入りの釣りのスポットを選ぶとかもありそう。
贔屓にしている釣り船の名前を捻ってみたり、そのまま貰って名付けたり。
(……うーむ……)
あの親父ならやりかねんぞ、と思うものだから、「ブルー」も気になる。
両親が他の候補を持っていたのか、無かったのか。
(…あった場合は、今のあいつの名前は…)
ブルーじゃなかったわけでだな、と「もしも」の世界を想像した。
神様のお計らいが無かったならば、ブルーには違う名前が付けられていた。
(見た目が今と全く同じで、前のあいつがチビだった頃に瓜二つでも…)
ブルーの名前は「ブルー」ではない。
両親のセンスで付けられた名で、学校でも名前は「その名前」になる。
(…俺が教室で、今のあいつと再会して…)
ブルーの身体に聖痕が出ても、病院でカルテに書かれる名前は「ブルー」ではなくて…。
(…俺が教室で、「この生徒の名前は?」と尋ねても…)
パニックだった生徒たちが口にする名は、「ブルー」とは違う名前だったろう。
(…何処から見たって、あいつなんだが…)
俺にしてみりゃ「ブルー」なのに、と混乱しそうな光景がハッキリと見える。
やっと出会えた愛おしい人が、知らない名前になっているのだから。
今のブルーが「違う名前」なら、再会した時の感動と共に「衝撃」も来そう。
(ブルーなんだが、ブルーじゃないんだ、と…)
過ぎてしまった長い歳月を思い知らされ、打ちのめされる。
「ブルー」が「ブルー」でなくなるくらいに、時が流れてしまったのだ、と。
(…でもって、あいつに呼び掛ける時も…)
二人きりで過ごす時を除けば、「違う名前」を使うしかない。
ブルーの両親は事情を知っているのだけれども、自分たちの息子が「ブルー」なのは…。
(…違和感が大きすぎるよなあ…)
夕食を御馳走になってる時に、「ブルー」と呼べやしない、とハーレイにだって分かる。
きっと両親は「嬉しくない」のに違いないから、馴染んだ名前で呼ぶのが礼儀だろう。
(…ヘンリーだったり、ディックだったり、マイケルだったり…)
そんな名前で呼ぶしかないじゃないか、とハーレイは頭を抱えてしまった。
今のブルーが違う名前なら、確実に、そうなっていたわけだから…。
(…神様に感謝するしかなさそうだよなあ…)
前の名前で呼べることを、とハーレイは神に心から感謝の祈りを捧げる。
「今のあいつの名前を、ブルーにして下さって、感謝します」と。
お蔭で「ブルー」と遠慮なく呼べるし、この先もそう。
前と同じに自然に呼び掛け、誰にも迷惑をかけることなく、ブルーと呼べる素晴らしい世界。
もしも「ブルー」が違う名前なら、それを使うしかない世界になっていたから…。
違う名前なら・了
※今のブルー君の名前は「ブルー」で、前と同じ。ハーレイ先生が呼ぶ名も「ブルー」。
けれど名前が違っていたら、その名で呼ぶしかないのです。違う名前だと困りますよねv
あいつの名前、とハーレイが思い浮かべた恋人の顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(違う名前になっていたって、不思議じゃないんだが…)
有難いことに「ブルー」なんだ、と嬉しくなる。
今のブルーの名前の由来は、前のブルーと同じアルビノだからと聞いた。
アルビノの息子が生まれて来た時、両親は迷わず「ブルー」と名付けた。
(前のあいつは、今の時代は英雄なんだし…)
ブルーのような子供が生まれた場合は、選びたくなる親が多いだろう。
(もっとも、育てば、名前負けして…)
ソルジャー・ブルーとは似ても似つかない、ごく平凡な子になるかもしれない。
外見はもちろん、頭脳などにしても、ソルジャー・ブルーと同等に育つのは難しそう。
(幸い、あいつは本物だから…)
髪型までが「ソルジャー・ブルー風」で、人目を引く子供になりつつある。
前のブルーと同じ背丈に育つ頃には、文字通り、瓜二つになっていることだろう。
美しく育ち上がった「今のブルー」を、今のハーレイは連れて歩ける。
結婚する前にデートに行っても、注目を集めそうな「ソルジャー・ブルー」を。
(俺が「ブルー」と呼んでいたって…)
本名だと思ってくれる人が、どれだけいるかは分からない。
そっくりなだけに、「ブルー」が愛称だということは有り得る。
(正真正銘、ブルーなんだが…)
信じて貰えないかもしれないな、と可笑しくなった。
行く先々で擦れ違う人たちの耳に届いた名前が、「ブルー」であっても。
(振り返りながら、本名は何なのか考えるヤツらも…)
きっといるぞ、と考えるだけで面白い。
逆に「アルビノだから本名だろうけど、運のいい子だ」と眺める人もいるに違いない。
(名前負けしないで、ソルジャー・ブルーそっくりに育ったんだし…)
親を恨まずに済んで良かったな、と一足飛びの思考をしてみたりして。
確かに「ブルー」が、どう育つかは、生まれた時には分からない。
「ブルーと名付けて育てることは、ある意味、賭けな部分が大きい。
今のブルーの両親は、「名付け」の賭けの勝利者と言える。
生まれて来た子は、幼い頃から「ソルジャー・ブルー」に似ていたらしい。
(小さなソルジャー・ブルーだ、と公園などで可愛がられて…)
初対面の人から、お菓子を貰ったりして、人気を集めていたようだ。
連れて歩く父や母の方でも、鼻高々だったことだろう。
(お名前は、と尋ねられた時は、嬉しかったろうなあ…)
「この子の名前は、ブルーなんです」と答えられるし、聞かされた人の方も驚く。
「 あらまあ…! 本物のブルー君だったのねえ!」などと、目を真ん丸にしたりして。
(…大したもんだ…)
あいつの両親の名付け方は、と思うけれども、アルビノなだけに、賭けをしただけ。
「どう育つのか」までは考えないまま、「ブルー」と名付けることは「賭け」でしかない。
まるで全く心配しないで「迷わなかった」のなら、大物だろう。
(…もっとも、神様のお計らいで…)
両親の頭に浮かぶ名前は「ブルー」しか無くて、他の候補は無かった可能性もある。
生まれる前には考えていても、アルビノの子だと分かった時点で、「ブルー」の名前が…。
(頭にストンと落っこちて来て…)
他の候補は消えてしまって、それっきりになってしまったろうか。
(…いつ頃、ブルーに決まったんだか…)
その辺の話は聞いていないな、とハーレイは顎に手を当てた。
もしかしたら、今のブルー自身も、耳にしたことは無いかもしれない。
「ブルー」と決める前に「名前の候補」が存在したのか、あったとしたなら何なのか。
(…ボツにしちまった名前なんかは、話さないしなあ…)
俺にしたって聞いちゃいないぞ、と自分の名前を振り返ってみる。
今のハーレイも「ハーレイ」だけども、前と同じで「姓」が「ハーレイ」。
名前の方は「ウィリアム」なわけで、これまた前と同じ「ウィリアム」。
(ちゃんと、ウィリアム・ハーレイなんだ…)
だから「ブルー」も、神様のお計らいだろう、と見当がつく。
とはいえ、ハーレイにしても「ウィリアム」以外に、名前の候補があったかは知らない。
(親父に聞いたら、とんでもないのが…)
出て来るのかもな、と釣り好きの父の顔が浮かんだ。
釣り好きで、釣りの名人なだけに、名付けのセンスが常識外れで…。
(…釣りの名人の名前にあやかりたいなら、まだマシな方で…)
お気に入りの釣りのスポットを選ぶとかもありそう。
贔屓にしている釣り船の名前を捻ってみたり、そのまま貰って名付けたり。
(……うーむ……)
あの親父ならやりかねんぞ、と思うものだから、「ブルー」も気になる。
両親が他の候補を持っていたのか、無かったのか。
(…あった場合は、今のあいつの名前は…)
ブルーじゃなかったわけでだな、と「もしも」の世界を想像した。
神様のお計らいが無かったならば、ブルーには違う名前が付けられていた。
(見た目が今と全く同じで、前のあいつがチビだった頃に瓜二つでも…)
ブルーの名前は「ブルー」ではない。
両親のセンスで付けられた名で、学校でも名前は「その名前」になる。
(…俺が教室で、今のあいつと再会して…)
ブルーの身体に聖痕が出ても、病院でカルテに書かれる名前は「ブルー」ではなくて…。
(…俺が教室で、「この生徒の名前は?」と尋ねても…)
パニックだった生徒たちが口にする名は、「ブルー」とは違う名前だったろう。
(…何処から見たって、あいつなんだが…)
俺にしてみりゃ「ブルー」なのに、と混乱しそうな光景がハッキリと見える。
やっと出会えた愛おしい人が、知らない名前になっているのだから。
今のブルーが「違う名前」なら、再会した時の感動と共に「衝撃」も来そう。
(ブルーなんだが、ブルーじゃないんだ、と…)
過ぎてしまった長い歳月を思い知らされ、打ちのめされる。
「ブルー」が「ブルー」でなくなるくらいに、時が流れてしまったのだ、と。
(…でもって、あいつに呼び掛ける時も…)
二人きりで過ごす時を除けば、「違う名前」を使うしかない。
ブルーの両親は事情を知っているのだけれども、自分たちの息子が「ブルー」なのは…。
(…違和感が大きすぎるよなあ…)
夕食を御馳走になってる時に、「ブルー」と呼べやしない、とハーレイにだって分かる。
きっと両親は「嬉しくない」のに違いないから、馴染んだ名前で呼ぶのが礼儀だろう。
(…ヘンリーだったり、ディックだったり、マイケルだったり…)
そんな名前で呼ぶしかないじゃないか、とハーレイは頭を抱えてしまった。
今のブルーが違う名前なら、確実に、そうなっていたわけだから…。
(…神様に感謝するしかなさそうだよなあ…)
前の名前で呼べることを、とハーレイは神に心から感謝の祈りを捧げる。
「今のあいつの名前を、ブルーにして下さって、感謝します」と。
お蔭で「ブルー」と遠慮なく呼べるし、この先もそう。
前と同じに自然に呼び掛け、誰にも迷惑をかけることなく、ブルーと呼べる素晴らしい世界。
もしも「ブルー」が違う名前なら、それを使うしかない世界になっていたから…。
違う名前なら・了
※今のブルー君の名前は「ブルー」で、前と同じ。ハーレイ先生が呼ぶ名も「ブルー」。
けれど名前が違っていたら、その名で呼ぶしかないのです。違う名前だと困りますよねv
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