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飼い主がいたら
(何に生まれたって、あいつを見付け出せる自信はだ…)
 あるんだよな、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(例えば、犬や猫にしたって、ウサギだったり、鳥になっていても…)
 必ず見付けられるし、出会えるだろう、と考える。
 ブルーとの絆は強いものだけに、人間として出会えなくても、きっと出会える。
(もしも犬だと、俺とは種類が違いそうだぞ)
 俺は大型の犬で、あいつは小さな種類の犬で、と想像しただけで微笑ましい。
 犬に生まれたブルーも、白い犬なのに違いない。
(ふわふわしてるか、毛足が長いか、それとも…)
 どんなのにしも可愛いんだ、と「犬のブルー」を頭に描く。
 アルビノでなくても、真っ白な犬で、手入れが行き届いていることだろう。
(頭にリボンを結んでるとかも、あるかもしれないな…)
 美容室に連れて行って貰ったりしたら、そうなりそう。
 ブルーが「男の子」の犬であっても、見栄えがするなら頭にリボン。
(飼い主が色々、コレクションしたのを日替わりで…)
 毎朝、頭にキュッと結んで、それから散歩なんだ、と「散歩に行くブルー」が見えるよう。


 犬のブルーは愛らしいけども、ハーレイの方は違っているという気がする。
 大型犬だし、可愛く見えるのは子犬時代だけ。
(犬のあいつと出会う頃には、育っちまってて…)
 ブルーの何倍あるだろうか、と思うくらいに体格からして差があるだろう。
 外見にしても、獰猛そうでなければマシだと言える。
(大型犬にも、大人しいのから、猟犬とかまでいるんだし…)
 出来れば大人しい種類に生まれたいもんだ、とハーレイは肩を軽く竦める。
 見るからに恐ろしそうな犬だった時は、犬のブルーの飼い主に距離を取られてしまう。
 ブルーが「あっ、ハーレイ!」と気付いて、嬉しそうに鳴いていたって、近付けてくれない。
(危ないわよ、とリードをグッと握って…)
 足早に去って、公園だったら出てゆくだろうし、路上だったら遠ざかってゆく。
(…ほんの一瞬だけの出会いで…)
 次があっても同じことだぞ、と結果は考えるまでもない。
 「犬のブルー」が、獰猛そうな大型犬に向かって鳴くのは、飼い主にすれば好ましくない。
(この子が、怖さに気付いていないだけなんだ、と…)
 勘違いをして、散歩コースを変えてしまえば、もう会うことは出来なくなる。
 「犬のハーレイ」の飼い主にしたって、トラブルは避けたいと考えそう。
(…俺がブルーを噛んじまったら、大変なことになっちまうからなあ…)
 散歩コースを変更するのは、ハーレイの飼い主の方かもしれない。
 他の犬が多い公園よりも、人の少ない場所の散歩に切り替えるとか。


 如何にもありそうな、「出会えなくなる」結末。
 犬のブルーと犬種が違って、「犬のハーレイ」が怖そうな見た目になっていれば起きる。
(大型犬でも、大人しい方で願いたいぞ…)
 どんな性格をしている犬かは、飼い主にしか分からないし、とハーレイは溜息をついた。
 前の自分も、人によっては「怖そうな人だ」と見ていただろうか。
 ブリッジで指揮を執る所だけしか知らなかったら、有り得そうではある。
(眉間に皺で、難しい顔で…)
 シャングリラの中を歩いていたのが前の自分で、怖そうな犬と同じかもしれない。
(犬に生まれた俺の場合も、猟犬になっていたって、大人しい性格で…)
 訓練でボールなどはキャッチ出来ても、動物を追うことはしないのだろう。
 もちろん「小型犬のブルー」を噛みはしないし、出会えたのなら、一緒に遊ぶだけ。
(仲良くなれたら、飼い主同士も、話が弾んで…)
 散歩コースや時間を合わせてくれて、会える日がグンと増えてくれそう。
 「大人しい犬なんです」とアピールする機会は、是非とも欲しい。
 ブルーの飼い主が足早に去って、二度と出会えなくなるのは悲しすぎる。


(違う種類の犬でも、仲良くなれるケースは多いからなあ…)
 犬と猿でも仲良くなるって話も聞くし、とハーレイは思う。
 「犬猿の仲」という言葉があるのだけれども、仲がいい犬と猿とは存在する。
(…俺の飼い主と、ブルーの飼い主に期待するしか…)
 判断違いが起きちまったら、おしまいなんだ、とゾッとしてから、ハタと気付いた。
 犬のブルーと仲良くなれても、出会える時間は散歩の時しか無さそう。
 それ以外の時間は、それぞれの家で過ごしているしかない。
(雨が降ったら、散歩は行かないだろうし…)
 寒すぎる日とか、暑すぎる日にも、犬のブルーは「家の近く」で散歩を済ませるだろう。
 大型犬のハーレイと違って、暑さ寒さに弱いのは容易に分かる。
(…そうなってくると、せっかく、あいつと再会出来ても…)
 俺たちの人生、飼い主次第か、とハーレイは鳶色の瞳を見開いた。
 犬の場合は「犬生」だけれども、全てが飼い主に左右されてしまう。
 散歩コースを変えるにしても、合わせるにしても、ハーレイとブルーは蚊帳の外になる。


(ついでに、一緒に暮らすなんぞは、夢のまた夢…)
 雄同士だしな、とハーレイは頭を抱えたくなった。
 犬のブルーが雌にしたって、犬種が違う時点で絶望的。
(交配したい、と思う飼い主、いないだろうし…)
 仲が良さそうだから、と例外を認めるにしても、一緒に飼ってはくれないだろう。
 子供が出来るシーズンにだけ、ほんの数日、どちらかの家で過ごしておしまい。
(生まれて来た子も、ブルーの家で育っていくだけで…)
 俺は顔さえ見られないんだ、と思うものだから、犬に生まれ変わるのは駄目かもしれない。
(飼い主がいたら、お互い、どうにも出来んからなあ…)
 犬は駄目だ、とハーレイは神に感謝した。
 今の生で犬に生まれていたなら、ハーレイもブルーも、悲しい思いをすることになった。
(何に生まれても、あいつを見付け出せるんだが…)
 飼い主のいない生き物で頼む、と心から願う。
 ハーレイもブルーも、飼い主がいたら、自由に生きるのは不可能だから…。



           飼い主がいたら・了


※何に生まれても、ブルー君を見付ける自信があるハーレイ先生。犬や鳥でも大丈夫。
 けれど気付いてしまった現実。飼い主がいる場合は、思い通りには生きられませんよねv







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