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思い付いたら
「ねえ、ハーレイ。何か、思い付いたら…」
 行動に移すべきかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は?」
 どういう意味だ、とハーレイは首を傾げて問い返した。
「えっとね…。ちょっと聞きたくなったから…」
 聞いてみただけ、とブルーの方は、単なる好奇心らしい。
「ぼくは、どっちかと言えば、慎重な方でしょ?」
 思い付きで動くのとは違うタイプ、とブルーは自分を指す。
「でも、そうじゃない人も多いし、どっちなのかな、って」
「なるほどなあ…。確かに、お前は逆になるよな」
 前のお前もそうだった、とハーレイは大きく頷いた。
 今も昔も、ブルーは「石橋を叩いて渡る」タイプの人間。
 思い付いて直ぐに動きはしなくて、検討してから動き出す。


(…咄嗟の判断のように見えても、違うんだよな…)
 凄い速さで計算しているだけだ、とハーレイは承知だった。
 前のブルーは、メギドに飛んで行った時さえ、そうだろう。
(ずっと前から、そういう場面を想定していて…)
 似た状況に陥った時に、自分が決めていた通りに行動した。
 「自分の命は捨ててかかって、船を救う」というシナリオ。
(…前のあいつは、多すぎるくらいの危機を考慮して…)
 それに応じて「どう動くべきか」を、常に頭に置いていた。
(キースの野郎が、仮死状態のトォニィを、投げた時にも…)
 ブルーは素早く飛び出したけれど、とうに計算していた筈。
 「地球の男」が「取りそうな手段」を、頭の中で何通りも。
(…そうでなければ、目覚めて間もない、あの身体で…)
 飛び出せるものか、とハーレイには充分、分かっている。


 今のブルーは、前のブルーだった頃より、マシだった。
 「思い付いたら、行動に移す」部分が多い、楽観的な性格。
 とはいえ、一般人と比べた場合は、そうは言えない。
(…慎重すぎるくらいに、慎重なトコがドッサリ…)
 もっと気楽でいいと思うが、という気がしないでもない。
 だから、ハーレイは、こう言った。
「思い付いたら、即、行動でも、いいと思うぞ」
 時と場合によるんだがな、とブルーの資質も尊重しておく。
「しかし、思い付きというのも、大切なことを…」
 示す言葉が、ちゃんとあるだろ、とハーレイは続けた。
「思い立ったが吉日、ってヤツ、聞いていないか?」
「知ってる!」
「ほらな、直ぐに動いて損はしない、と言う人も…」
 あるって証拠だ、とハーレイはブルーに笑い掛けた。
「お前は慎重すぎるわけだが、逆もあるんだ」
 たまには逆もいいと思うぞ、とハーレイは太鼓判を押す。
 「これを機会に、考えてみろ」とも。
 そうしたら…。


「分かった! そうしてみる!」
 ブルーは椅子から立って、ハーレイの横にやって来た。
 けれども、何をするわけでもなく、立っているだけ。
「おい、どうしたんだ?」
「思い付いた通りに、やっているだけ!」
 気にしないで、とブルーは言うものの、気になってしまう。
 何か目的があるからこそで、その目的は何なのか。
(…心を読むのは簡単なんだが、マナー違反で…)
 やるべきことではないんだよな、とハーレイは溜息を零す。
 ブルーの魂胆が読めない以上、放っておくしかなさそうだ。
(…まあいい、俺も好きにするさ)
 茶でも飲むか、と紅茶のカップを手に取ると…。
『やった、もう少し! 早く飲んでよ!』
 ブルーの心が零れたはずみに、真意がポンと伝わって来た。


『ハーレイが口を開けた所が、チャンスだってば!』
 紅茶のカップを手ごと弾いて、ぼくが間に、と心の声。
 「上手くいったらキスが出来る」と、ブルーは野心の塊。
 「失敗したって、カップが割れるだけだよ」という考えも。
(そう来たか…!)
 分かっちまった、とブルーの狙いを知れば、対処あるのみ。
 油断しないで、口を開ける幅を狭くするのも手だけれど…。
「悪いが、アイスティーな気分になっちまった…」
 お母さんに頼んで、氷とストロー、とハーレイは注文する。
 「ついでにグラスもあると助かるんだが」と、厚かましく。
「ええっ…!?」
「そりゃまあ、礼儀知らずには違いないがな…」
 思い付いたら行動なんだ、とハーレイはニッコリと笑んだ。
 「たまにはこんな日だってあるさ」と、ブルーを封じて…。


             思い付いたら・了




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