大人しい子は
「ねえ、ハーレイ。大人しい子は…」
損なのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は? 急にどうした?」
そういう場面に出くわしたのか、とハーレイは尋ねた。
今のブルーも、前のブルーも、大人しいタイプ。
(…もっとも、前のあいつの場合は…)
頑固だった分、補正されていたよな、と考えてしまう。
(確かに根っこは、大人しいんだが…)
こうと決めたら動かないんだ、と悲しい記憶が蘇った。
メギドに飛んで行った時のブルーも、そうだった。
(ナスカの仲間を、説得に行くと言っていたのに…)
実際は、船から打って出るのが目的だった。
今のブルーは、前のブルーほど頑固ではない。
十四歳にしかならないせいか、強く言ったら聞き入れる。
(前のあいつだと、有り得ないことで…)
考えてみれば損をしてるかもな、と思わないでもない。
ついでに言うなら、前のブルーも損をしていた。
大人しいのが本来だけに、自分を強く押し出しはしない。
(厨房で作った、試作メニューを食べる時にも…)
どれほど上手く出来ていようが、おかわりは無し。
皿に盛られて渡された分を食べたら、おしまいだった。
「いいと思うよ」と感想を告げて、厨房の者が勧めても…。
(ぼくはいいから、と出て行っちまって…)
残った分は、他の仲間が奪い合っていた。
ジャンケンだったり、クジを引いたり、それは楽しそうに。
すると、今のブルーは、二重に損なタイプかもしれない。
(…友達が持って来た菓子が余っちまって…)
何人か二個目を貰えそうな時に、今のブルーは主張しない。
「二個目、欲しいな」と言いはしなくて、貰えないまま。
(おまけに、最初に菓子が登場した時も…)
前のブルーの頃と違って、「ブルー用の枠」は無いだろう。
(ソルジャーじゃなくて、友達の一人というだけで…)
ブルー用の菓子を「確保しておく」必要は無い。
人数分の菓子が無ければ、ブルーが食べることは出来ない。
(六人いたって、五個しか無いって場面は多いしなあ…)
欲しい者だけ名乗り出る時、今のブルーも大人しいから…。
(名乗れなくって、枠が無いせいで…)
食べ損ねるのは確実だから、損だと言える。
前のブルーだった場合は、しない損までしている勘定。
(…ふうむ…)
さっきの質問、当然かもな、とハーレイは思い当たった。
珍しい菓子を食べ損なったとか、二個目を貰い損ねたとか。
(ありそうな話なんだよなあ…)
だったら、一押し、背中を押すか、と助言することにした。
「大人しい子は損なのか、と聞かれりゃ、そうだな」
「やっぱり…?」
ぼくって損をしているのかな、とブルーは首を傾げる。
「普段は、気にしていないんだけど…」
「美味い菓子でも、食い損なったか?」
「そんなトコかも…」
残念すぎて、とブルーが項垂れるから、ハーレイは笑んだ。
「分かってるんなら、たまには強く出るのはどうだ?」
損をするよりマシだろうが、とブルーに勧める。
「厚かましいかな、と思うくらいで丁度かもな」と。
ブルーはハーレイの言葉を聞いて、素直にコクリと頷いた。
「じゃあ、強く出てみるようにする」
「その意気だ。お前は、大人しすぎるからな」
「ありがとう、とっても参考になった!」
強く出てみるね、とブルーは、とびきりの笑顔になった。
「ハーレイ、ぼくにキスして!」
「なんだって!?」
「大人しくしてるの、やめにしておく!」
でないと損をしちゃうんだもの、とブルーは自分を指した。
「大人しく我慢してたら、未だにキスが貰えないんだよ?」
遠慮しないで言わなくっちゃ、とブルーが勝ち誇るから…。
「馬鹿野郎!」
そこは大人しくしてるべきだ、とハーレイは叱る。
「厚かましいのはお断りだ」と、「黙っていろ」と…。
大人しい子は・了
損なのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は? 急にどうした?」
そういう場面に出くわしたのか、とハーレイは尋ねた。
今のブルーも、前のブルーも、大人しいタイプ。
(…もっとも、前のあいつの場合は…)
頑固だった分、補正されていたよな、と考えてしまう。
(確かに根っこは、大人しいんだが…)
こうと決めたら動かないんだ、と悲しい記憶が蘇った。
メギドに飛んで行った時のブルーも、そうだった。
(ナスカの仲間を、説得に行くと言っていたのに…)
実際は、船から打って出るのが目的だった。
今のブルーは、前のブルーほど頑固ではない。
十四歳にしかならないせいか、強く言ったら聞き入れる。
(前のあいつだと、有り得ないことで…)
考えてみれば損をしてるかもな、と思わないでもない。
ついでに言うなら、前のブルーも損をしていた。
大人しいのが本来だけに、自分を強く押し出しはしない。
(厨房で作った、試作メニューを食べる時にも…)
どれほど上手く出来ていようが、おかわりは無し。
皿に盛られて渡された分を食べたら、おしまいだった。
「いいと思うよ」と感想を告げて、厨房の者が勧めても…。
(ぼくはいいから、と出て行っちまって…)
残った分は、他の仲間が奪い合っていた。
ジャンケンだったり、クジを引いたり、それは楽しそうに。
すると、今のブルーは、二重に損なタイプかもしれない。
(…友達が持って来た菓子が余っちまって…)
何人か二個目を貰えそうな時に、今のブルーは主張しない。
「二個目、欲しいな」と言いはしなくて、貰えないまま。
(おまけに、最初に菓子が登場した時も…)
前のブルーの頃と違って、「ブルー用の枠」は無いだろう。
(ソルジャーじゃなくて、友達の一人というだけで…)
ブルー用の菓子を「確保しておく」必要は無い。
人数分の菓子が無ければ、ブルーが食べることは出来ない。
(六人いたって、五個しか無いって場面は多いしなあ…)
欲しい者だけ名乗り出る時、今のブルーも大人しいから…。
(名乗れなくって、枠が無いせいで…)
食べ損ねるのは確実だから、損だと言える。
前のブルーだった場合は、しない損までしている勘定。
(…ふうむ…)
さっきの質問、当然かもな、とハーレイは思い当たった。
珍しい菓子を食べ損なったとか、二個目を貰い損ねたとか。
(ありそうな話なんだよなあ…)
だったら、一押し、背中を押すか、と助言することにした。
「大人しい子は損なのか、と聞かれりゃ、そうだな」
「やっぱり…?」
ぼくって損をしているのかな、とブルーは首を傾げる。
「普段は、気にしていないんだけど…」
「美味い菓子でも、食い損なったか?」
「そんなトコかも…」
残念すぎて、とブルーが項垂れるから、ハーレイは笑んだ。
「分かってるんなら、たまには強く出るのはどうだ?」
損をするよりマシだろうが、とブルーに勧める。
「厚かましいかな、と思うくらいで丁度かもな」と。
ブルーはハーレイの言葉を聞いて、素直にコクリと頷いた。
「じゃあ、強く出てみるようにする」
「その意気だ。お前は、大人しすぎるからな」
「ありがとう、とっても参考になった!」
強く出てみるね、とブルーは、とびきりの笑顔になった。
「ハーレイ、ぼくにキスして!」
「なんだって!?」
「大人しくしてるの、やめにしておく!」
でないと損をしちゃうんだもの、とブルーは自分を指した。
「大人しく我慢してたら、未だにキスが貰えないんだよ?」
遠慮しないで言わなくっちゃ、とブルーが勝ち誇るから…。
「馬鹿野郎!」
そこは大人しくしてるべきだ、とハーレイは叱る。
「厚かましいのはお断りだ」と、「黙っていろ」と…。
大人しい子は・了
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