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どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。



ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。

この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
 
※お知らせ。emoji
 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、お気に入りがあればポチッとどうぞ。
 
      
過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。

※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。emoji
 何処から読んでも無問題ですv

  
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
 
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
 
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
 
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。

拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!

書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。

書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。

書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。

書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。

書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
 
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。

書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。

拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
 
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
 
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。

書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
         
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
    
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。

書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
     
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
 
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
        
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
        
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
          
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
          
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
           
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
             
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
                        
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
            
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
 
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。

書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
   
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
    
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
     
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
       
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
        
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
 
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
  
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
   
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。

書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
     
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。

書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
   
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
    
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
  
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
          
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
          
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。

書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
 
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
              
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
               
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。

書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
                               
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
                                 
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。

書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
                           
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
                           
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
 
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
  
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
   
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
    
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
     
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。

書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
      
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
        
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
          
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
          
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。

書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
 
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。

書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
  
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
              
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。

書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
                 
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
                 
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。

書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
 
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
                    
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
                                                    
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。

書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。

書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
                                                
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
                                       
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
                                        
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
                                         
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
                                            
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。

書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。

書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
                                      
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。

書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
 
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
                                          
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
                              
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
                          
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。

書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
                              
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
                            
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
                                               
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。

書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。

書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
                       
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
 
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。

書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。

書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
 
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
                       
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
                                  
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
                        
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
                           
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。

書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
                       
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。

書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。

書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。

目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらvemoji
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/

目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/

目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/600/

目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/727/
        
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 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、励ましにぽちっと…貰えると感謝。

※拍手下さった方、ありがとうございます~!emoji
     
                     
                       
           


       

拍手[2回]

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「ねえ、ハーレイ。許すことって…」
 大切だと思う、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 許すって…?」
 いったい何の話なんだ、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
 ブルーは今朝から上機嫌で、怒っているようには見えない。
「そのままの意味だよ。例えば、ハーレイの場合だと…」
 キースを許すことは出来るの、とブルーは凄い例を出した。
 今の生では、未だ、キースと出会ってはいない。
 ブルーもハーレイも、遠く遥かな時の彼方で出会ったきり。
 けれど、その時、キースが何をしたかが問題だった。


「うーむ…。キースってか…?」
 今の俺にヤツを許せと、とハーレイは思わず唸った。
 前の生では、キースがブルーを撃ったことを知らなかった。
 だから、後に地球の上で出会った時には、何もしていない。
(…会談を控えて、地球に降下した時なんぞには…)
 キャプテンとしての立場で、国家主席のキースに挨拶した。
 言葉を交わして、握手までしてしまったことを、今でも…。
(…ずっと、後悔し続けてるんだ…)
 今のブルーに聞いて以来な、と小さなブルーの顔を眺める。
 たとえブルーが此処にいようが、憎い仇には違いない。
(秋咲きの朝顔、品種名がキース・アニアンで…)
 そうと知ったら、毟りたくなったぞ、と思うくらいに憎い。


 そんなキースを許せるのか、と尋ねられたら、答えは否。
(俺は一生、ヤツを許せん!)
 今の生で運良く出会えたならば、許せそうだが、と呻く。
(もしも会えたら、一発、思い切り、殴り飛ばして…)
 ブルーを撃った件は、水に流せそうでも、というのが現状。
「ハーレイ、やっぱり、許せないんだ?」
「…残念ながら、俺は其処まで人間が出来ていなくて…」
 とても無理だ、とハーレイは潔く白旗を掲げた。
「許すというのは、確かに大切ではあるんだが…」
「自分の気持ちが追い付かないなら、仕方ないわけ?」
「そうだな、自分を、無理に押し殺してまで…」
 許すことを優先しろとは言えんな、とハーレイは苦笑する。
 大の大人も出来ないことを、子供のブルーには強いれない。


「そっか、ハーレイでも無理なんだったら…」
 許せなくても、許されるよね、とブルーは笑んだ。
「そうなるが…。なんだ、友達と喧嘩中なのか?」
 早めの仲直りを勧めるぞ、とハーレイは提案しておく。
 友人同士の喧嘩だったら、グッと堪えて許すことも大切。
 そう思うから、ブルーに説こうとしたら…。
「友達じゃなくって、ハーレイだよ!」
「俺!?」
 喧嘩なんぞをしてはいないぞ、とハーレイは仰天した。
 今日も昨日も、その前にしても、怒らせるようなことは…。
(…していないよな…?)
 どう考えても、と振り返る間に、ブルーが言った。


「許せないのは、キスだってば!」
 いつも頬っぺたで、そればっかり、とブルーは膨れる。
 唇にキスをしてはくれない、とフグみたいな顔で。
(……その件か……)
 許せないからキスをしろ、と来たか、とハーレイは呆れた。
 そういうことなら、許せないのは、ハーレイにしても同じ。
「よし、分かった。今日の所は、これで失礼しよう」
「えっ!?」
 キスの話は、とブルーは驚くけれども、サラリと無視した。
「許せないっていうトコについては、俺も同じだしな?」
 いくら許すことが大切だろうが、さっきの話、とニンマリ。


「キスをする気にはなれんし、今日は帰るぞ」
「ちょ、ちょっと…!」
 謝るから、帰らないで、とブルーは必死で、可笑しくなる。
(…キースの話まで持ち出して、俺をだ…)
 追い詰めて来たんだし、懲りておけ、とハーレイは立った。
 「ではな」と、椅子をテーブルの方へと寄せて。
「少し早いが、今から帰れば、食料品店に寄って…」
 美味い晩飯を作れそうだし、とブルーを脅して楽しむ。
(本当の所は、帰る気なんぞ、まるで全く…)
 ありはしないが、と帰るふりをして、からかい続ける。
 「たまには、こんな返り討ちもいいさ」と、扉の前で…。



         許すことって・了





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(…引き金は、転勤だったんだよね…)
 ぼくとハーレイが出会ったのは、と小さなブルーが、ふと考えたこと。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(ハーレイの転勤、決まってたけど、前の学校で引き留められて…)
 来るのが少し遅れたんだっけ、とブルーも事情を知っている。
 本当だったら、ハーレイが来るのは、入学式よりも前の筈だった。
 予定通りに来ていた場合は、もっと早くに出会えただろう。
(…その代わり、大事な入学式がメチャクチャ…)
 凄い迷惑をかけていたよね、と光景が目に浮かぶよう。
 ハーレイを初めて目にした瞬間、ブルーの身体に聖痕が出現した。
 右の瞳や、両方の肩や、脇腹からも血が流れ出して、教室は酷い騒ぎになった。
(…ぼくは倒れて、前のぼくだった頃の記憶が戻って来るのを…)
 感じ取りながら意識を手放したけれど、後でクラスメイトたちから聞かされた。
 ハーレイが慌てて駆け寄り、「救急車を呼んで来てくれ!」と指示し、他の教師も駆け付けた。
 「みんな、落ち着いて、席について!」と先生たちが叫んでも、皆は直ぐには従わなかった。
 落ち着くどころか、他所のクラスや、違う校舎からまで、見に来る生徒が多かったほど。
(…教室の中でも、そうだったんだし…)
 入学式なら大騒ぎだよ、とブルーは小さく肩を竦めた。
 大切な式は台無しになって、皆の記憶に、違う意味合いで残っただろう。


 そうならないよう、ハーレイが来るのが遅れたのかな、という気がしている。
 一生に一度の入学式だし、お祝いをする家も少なくはない。
(…大騒ぎになって、救急車まで来てました、なんていう思い出よりは…)
 後になってから思い出せるのは「お祝いの御馳走とケーキだけ」でも、きっといい。
(だから、神様、ハーレイの転勤が決まっても…)
 直ぐには来られないようにしてたんだよ、と思うけれども、どうだろう。
 もっと早くに出会えていたなら、もっと沢山、色々な話が出来たのに。
(……うーん……)
 タイミングっていうのは難しいよね、と思う間に、「次の転勤」が頭を掠めた。
 今のハーレイは教師なのだし、「キャプテン・ハーレイ」だった頃とは違う。
 同じ職場で勤め続ける仕事ではない。
(…先生の任期って、どのくらいだっけ…?)
 下の学校の先生と同じくらいかな、と考えてみる。
 そうだとしたなら、ブルーが卒業する頃までは、充分、いてくれる筈。
 プラスして二年くらいは、勤めていたって変ではない。
(…だけど、ハーレイ、そうそういない先生だよね…?)
 古典はともかく、柔道と水泳、とハーレイが持つ「特技」が気になる。
 どちらもプロの選手にもなれる腕だし、欲しい学校は多いだろう。


(……強豪校で、欠員が出たら……)
 ここぞとばかりに声が掛かって、転勤になってしまいそう。
 古典の教師は、資格さえあれば出来るけれども、柔道部などの指導は、そうはいかない。
(…其処の学校にいる古典の先生、ハーレイと交換ってことにしたなら…)
 めでたく「プロ級の人材」が来るわけだから、大いに有り得る。
 欠員が出た科目が古典でなくても、まずは「ハーレイ」を手に入れること。
(…先生が足りなくなった科目が、数学とかでも…)
 そちらはそちらで、「数学の先生」を探し出せばいい。
(転勤する人、一人だけで済むトコ、二人になってしまうけど…)
 そんなことより、部活の指導が優先だろう。
 優秀なコーチがいないばかりに、強豪校から転落するのは、何処も避けたい。
(…ハーレイ、連れて行かれちゃう…!)
 ハーレイは喜ぶかもだけど、と思うけれども、それと話は別だった。
 転勤で他所に行ってしまったら、ハーレイに会えるチャンスが減るのは確実。
(学校の中では会えない上に、帰りに家に寄ってくれる日も…)
 うんと減りそう、と容易に分かる。
 強豪校で指導するなら、休日だって不在がちになるかもしれない。
 試合や遠征が増えるだろうし、今の学校よりも忙しそう。


 それは困るよ、とブルーは怖くなって来た。
 「絶対に無い」とは言い切れないだけに、恐ろしいとも言い換えられる。
(強豪校だと、何処なのかな…?)
 分かんないや、と呻くくらいに、ブルーはスポーツに縁が無い。
 縁が無いから興味も無くて、どの学校が有名なのかもサッパリだけれど、強豪校は存在する。
 大きな大会に出場しては、賞を貰って凱旋して来る。
(…もし、ハーレイが転勤したなら…)
 今は名前も知らない学校、それを追うことになるのだろう。
(新聞とかでも、今までチラッと見ていただけのスポーツ欄とか…)
 食い入るように目を通しては、「ハーレイ」の名前が無いかを探す。
 順調に勝ち進んでいればもちろん、試合の時期と違っていたって、関連記事を載せたりもする。
(今のチームはこんな感じ、って…)
 先生も一緒に写真が出たり、と「記事の印象」だけは頭にあるから、探す毎日。
 何処かに「ハーレイ」が写っていないか、インタビューの類は載っていないか、と。
(…ハーレイの様子を詳しく知りたかったら、そうするしか…)
 滅多に家に来てくれないなら、他に方法は見付からない。
 「今日のハーレイ」の最新情報を掴みたかったら、友達探しも必要だろう。
(ハーレイが行った学校の生徒で、柔道とか水泳に興味があって…)
 だけど部員じゃない、普通の生徒、と条件は厳しい。
 部員の場合は「他所の学校にいる友達」と話す時間を、そうそう取れはしないから。


(ハーレイ先生、今日はどうだった、って聞けやしないから…)
 無難に部活の話題で始めて、さりげなく情報を掴むしかない。
 古典の授業があった日だったら、「今日の雑談、どんなのだった?」でいいだろう。
(ハーレイ、雑談が得意技だしね?)
 前の学校で聞いていた「ブルー」が興味を持っても、変ではない。
 聞かれた方でも、「楽しかったよ、今日、聞いたのは…」と、楽し気に話すに違いない。
(…水泳とか柔道を見る趣味がある生徒、どうやって探せばいいのかな…?)
 うーん、と壁にぶつかったけれど、乗り越えないと「ハーレイの最新情報」は手に入らない。
 今の学校の生徒で、似た趣味を持つ「誰か」を探して、人脈を辿るのが早いだろうか。
(…でも、ハーレイが、ぼくの守り役なことは、みんな知ってて…)
 その「ブルー」が、「ハーレイが転勤した先の学校」の生徒と繋がりたいなら、理由は一つ。
 「ハーレイの情報を追っている」からで、熱烈なファンなのだと「勘違い」されそう。
(…転勤した先の学校の生徒、教えてくれても、その生徒には…)
 「ハーレイ先生の熱烈なファン」がいるから、仲良くしてやって欲しい、と紹介だろう。
 貰える情報は増えそうだけれど、「熱烈なファン」である本当の理由が問題だった。
(…本当は恋人を追ってるんです、なんて言えやしないし…)
 隠し事をしながら付き合えるかな、と思うと答えは「否」でしかない。
 何処かでウッカリ、バレてしまうか、そうでなくても「後ろめたい」。


 やっぱり新聞くらいしか、と情けなくても、それが現実。
 ハーレイが転勤で行ってしまったら、情報源は他に無さそう。
(…今だって、試合で来られない日とか、寂しくなってしまうのに…)
 そんな日が増えて、学校の中でも会えないなんて、と深い溜息が零れ落ちてしまう。
 まだ「そうなった」わけでもないのに、「その日」を想像してみただけで。
(…悲しすぎるよ…)
 ハーレイが転勤しちゃったら、と恐ろしいから、強豪校の先生たちには頑張って欲しい。
 病気になったり、怪我をしたりで、「指導出来なくなりました」という事態に陥らないよう。
(あと四年ほどだけで充分だから…!)
 ぼくが卒業しちゃった後なら、「ハーレイ」が転勤したって平気だしね、とブルーは祈る。
 ハーレイと一緒に暮らし始めたら、転勤は単に「勤め先が変わる」だけに過ぎない。
(来年から、此処の学校だ、とハーレイに聞いて…)
 その学校って何処にあるの、と質問してみる所から始まる。
 「其処で柔道部の指導もするの?」だとか、「水泳部の顧問なのかな?」とか。
 行ったことの無い場所にある学校だった時は、「どんな校舎?」と聞くのもいい。
(ハーレイが勤め始めたら、ドライブに出掛けた時に、ついでに…)
 寄って貰って見てみたいよね、と素敵な夢が膨らんでゆくから、そっちの方が断然いい。
(ぼくが学校に通ってる間に、転勤したなら、大変だけど…)
 卒業した後なら、楽しそうだよ、とブルーは「その日」を祈り続ける。
 「ハーレイの転勤は、ぼくが卒業した後にして下さい」と、聖痕をくれた神に向かって…。



          転勤したなら・了


※もし、ハーレイ先生が転勤になったら、と考えてみたブルー君。会える日が減りそう。
 ハーレイ先生の情報も手に入らなくなって、悲しすぎる日々。卒業までいて欲しいですねv







拍手[0回]

(…転勤か…)
 あれが運命の出会いだったな、とハーレイが、ふと考えたこと。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(…心臓が止まりそうになったんだが…)
 いきなり生徒が血塗れなんだし、と衝撃の瞬間は忘れられない。
 ブルーに聖痕が現れた日のことで、居合わせた教師は、ハーレイだけだった。
 事故だと思って駆け寄った途端、膨大な記憶が蘇って来た。
 遠く遥かな時の彼方で、自分が何と呼ばれていたのか、血塗れの生徒が誰なのかも。
(……まさに運命の巡り合わせで……)
 奇跡のように再会出来たのが、前の生での愛おしい人。
 今日は会えずに終わったけれども、明日には、きっと会えるだろう。
 明日が駄目でも、明後日もある。
 その次の日も、ちゃんとあるのだし、週末はブルーの家を訪ねるのだから。


 もっと早くに出会いたかった、と思う気持ちは否定出来ない。
 神様が決めた巡り合わせだけに、「あの日しか無かった」と分かってはいる。
 前の学校で引き留められたせいで、着任が遅れてしまったのも仕方ない。
 それでも「もしも」と考えるほどに、ブルーと再会してから後の人生は素晴らしい。
(あいつに会えていなかったなら、今日の俺だって…)
 ただの寂しい独身人生、とハーレイは苦笑してしまう。
 ブルーと再会する前の自分が「寂しい独身」だったとは、まるで思いはしないけれども。
 独身人生には違いなくても、ハーレイなりに日々を楽しんでいた。
 ジョギングをしたり、料理に凝ったり、趣味の読書に勤しんだりと、自分の時間を有効活用。
 教師の仕事が多忙な時でも、一人暮らしに不満を覚えはしなかった。
(残業を済ませて家に帰ったら、真っ暗な部屋でも…)
 灯りを点けたら明るくなるのだし、寂しさなどは感じない。
 どちらかと言えば、ブルーと出会った後の今の方が、そうした場面で寂しくなる。
(…帰って来たって、あいつは家にいないんだしな…)
 そいつが寂しい、とブルーの顔を思い浮かべたら、溜息が一つ零れ落ちた。
 「帰ったら、ブルーが迎えてくれる暮らし」は、まだ何年も待たないと来てはくれない。


 ブルーが結婚出来る年の十八歳にならない限り、この家で一緒に暮らせはしない。
 今の学校を「ブルーが卒業してから」の話で、四年近くもかかる勘定。
(…それまでの間は、学校の中か、あいつの家くらいでしか…)
 会えるチャンスは来ないわけだ、とハーレイは寂しく思うのだけれど、待つしかない。
 あと四年ほど待っていたなら、この家にブルーを迎えられる。
(……たった四年だ……)
 俺の任期は、その後、数年くらいだろうな、と「今の学校」で過ごす期間を考えてみた。
 同じ学校に何年いるかは、厳密に言えば、明確な決まりは設けられていない。
 「このくらいだ」という目安はあるのだけれど、誰もが「そうなる」わけではない。
(現場と、周りの状況次第で…)
 同じ学校で長く教師をする者もいれば、短めの期間で転勤してゆく者も少なくなかった。
 ハーレイの場合も、長く勤めた学校もあれば、そこそこの期間で別れた学校もある。
 今の学校が「どちらになるのか」は、任期が終わるまで分からないだろう。
 早い転勤になったとしたなら、ブルーが在学している間に、他の学校に移ることになる。
 いくら「ブルーの守り役」だからと言っても、特別扱いは無いかもしれない。
(そもそも、あいつが卒業しちまったら…)
 守り役を続けられはしないし、卒業までの期間限定で、その任に就いているというだけ。
 学校の側で、やむを得ない事情が出来てしまえば、任期が終わるよりも前に、転勤もある。


(…運次第か…)
 あいつの卒業まで、今の学校で教師をしてるかどうかは、とハーレイは気付かされた。
 何処かの学校で「ハーレイ」のような人材が必要になったら、転勤だろう。
 今すぐとまでは言われなくても、年度末には辞令が出る。
 「この学校に赴任してくれ」と指示が来た時は、従うしかない。
(…転勤したら、今の暮らしは続けられないよな…)
 仕事帰りに、あいつの家に寄り道なんぞは出来やしないぞ、と一番に考えた。
 転勤先の学校が、ほんの近くで、隣の校区くらいだったら、帰り道に寄ることも出来る。
 とはいえ、そうそう幸運は無くて、過去の経験からしてみても、新しい学校がある場所は遠い。
(隣の校区どころか、このデカい町の反対側で…)
 車を飛ばして走って来たって、半時間以上はかかるとかな、と溜息が出そう。
 来られない距離ではないのだけれども、帰りに気軽に行けそうにない。
(第一、俺には苦ではなくても…)
 ブルーの両親は、そうは考えないだろう。
(わざわざ時間を作って、遠い所から来るわけだから…)
 恐縮するのは目に見えているし、もうそれだけで、充分に高いハードルだった。
 毎日など、とても来られない。
(せいぜい、週に一回か二回…)
 家に行ければ上等だ、という気がする。
 今は近いから、金曜日の仕事帰りに寄っていたって、土曜も平気で訪問出来る。
 ところが、「遠路はるばる」となった場合は、金曜に時間が取れたとしても、行きにくい。
 ブルーの両親に「息子のためだけに、申し訳ない」と、気を遣わせてしまうだろうから。


 こいつは困った、と「転勤」の文字が、ハーレイの頭の中で回り始める。
 ブルーと一緒に暮らし始めた後のことなら、問題は無い。
 「来年から、別の学校らしい」とブルーに告げれば、それでおしまい。
 ブルーが「そうなの? ぼくも知ってる学校かな?」と知りたがる程度。
(でもって、俺が転勤してから後に、ドライブついでに…)
 「此処が新しい学校なんだ」と、ブルーに車から見せてやればいい。
 グラウンドに知り合いの教師がいたなら、駐車場に車を止めたっていい。
(俺の嫁さんだから、学校の中を見せてやってもいいだろうか、と…)
 尋ねさえすれば、多分、断られはしないだろう。
 「どうぞ、どうぞ」と招き入れてくれて、グラウンドだけを見るつもりでも…。
(校舎の中まで見せてくれるとか、運が良ければ、ちょいとお茶まで…)
 淹れて貰えることもあるよな、と自分もやったことがあるから、想像がつく。
 部活の指導で学校にいた時、何度か、そういう場面があった。
(鍵を開けなきゃ、校舎に入れないなら別なんだが…)
 開いているなら、中に入って見て貰っても構わない。
 お茶を出せる場所があった時には、お茶を淹れたし、後で咎められることも無かった
(…新しい職場が、結婚した後に来たら、そのコースで…)
 ブルーを案内出来るけれども、その前だったら、ピンチでしかない。


(……あいつを案内してやるどころか、家にも御無沙汰……)
 月に何回、顔を出せるやら、と考えただけで頭痛を覚えてしまいそう。
 ハーレイ自身も寂しいけれども、ブルーは「寂しい」どころの騒ぎではない。
 今でさえ、「ハーレイ、来てくれなかったじゃない!」と不満げな顔を見せる日がある。
 転勤して学校で会えない上に、家にも殆ど来ないとなったら、どうなることやら。
(それこそ毎日、泣きの涙で…)
 過ごしかねんぞ、と思うものだから、転勤は勘弁して欲しい。
 いくら人材が不足していて、「ハーレイ先生、是非に!」などと、頭を下げて頼まれても。
 「行ってくれるなら、特別に手当てを出すから」と、給料を上げる条件を出されても。
(あいつが本当に必要なものは、守り役じゃなくて…)
 前の生での恋人なんだ、と分かっているから、祈るしかない。
 転勤の話が来るかどうかは、もう本当に、運の問題。
 何処かで人材が不足しない限り、今の学校にいられる期間は、充分にある。
 ブルーが卒業してゆく年を迎えても、まだ数年は勤められる筈だった。
(……神様、どうぞ、今の学校で……)
 当分の間、お願いします、とハーレイは祈らないではいられない。
 ブルーが在籍している間に転勤したら、大変だから。
 ハーレイが寂しく思う以上に、愛おしい人が寂しがる上、涙を流す日々だろうから…。



          転勤したら・了


※転勤について考えてみた、ハーレイ先生。ブルー君と結婚した後なら、問題はゼロ。
 けれど、ブルー君が卒業する前に、転勤となると、とんでもないことになりそうですねv






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「ねえ、ハーレイ。困った時には…」
 人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
 二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
 何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
 急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
 きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
 ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
 そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
 解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。


 ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
 何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
 それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
 自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
 一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
 自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
 分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
 本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。


「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
 困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
 学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
 それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
 自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
 宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
 きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
 知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。


「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
 人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
 答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
 壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
 乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
 とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
 お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
 洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
 無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
 根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
 修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。


 そういったわけで、正解は二つ。
 ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
 人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
 頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
 何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
 チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
 そうしたら…。


「あのね、チビには違いないけど…」
 チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
 ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
 成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
 叩いても、痛くないように。
 「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。



        困った時には・了




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