カテゴリー「書き下ろし」の記事一覧
(何に生まれたって、あいつを見付け出せる自信はだ…)
あるんだよな、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(例えば、犬や猫にしたって、ウサギだったり、鳥になっていても…)
必ず見付けられるし、出会えるだろう、と考える。
ブルーとの絆は強いものだけに、人間として出会えなくても、きっと出会える。
(もしも犬だと、俺とは種類が違いそうだぞ)
俺は大型の犬で、あいつは小さな種類の犬で、と想像しただけで微笑ましい。
犬に生まれたブルーも、白い犬なのに違いない。
(ふわふわしてるか、毛足が長いか、それとも…)
どんなのにしも可愛いんだ、と「犬のブルー」を頭に描く。
アルビノでなくても、真っ白な犬で、手入れが行き届いていることだろう。
(頭にリボンを結んでるとかも、あるかもしれないな…)
美容室に連れて行って貰ったりしたら、そうなりそう。
ブルーが「男の子」の犬であっても、見栄えがするなら頭にリボン。
(飼い主が色々、コレクションしたのを日替わりで…)
毎朝、頭にキュッと結んで、それから散歩なんだ、と「散歩に行くブルー」が見えるよう。
犬のブルーは愛らしいけども、ハーレイの方は違っているという気がする。
大型犬だし、可愛く見えるのは子犬時代だけ。
(犬のあいつと出会う頃には、育っちまってて…)
ブルーの何倍あるだろうか、と思うくらいに体格からして差があるだろう。
外見にしても、獰猛そうでなければマシだと言える。
(大型犬にも、大人しいのから、猟犬とかまでいるんだし…)
出来れば大人しい種類に生まれたいもんだ、とハーレイは肩を軽く竦める。
見るからに恐ろしそうな犬だった時は、犬のブルーの飼い主に距離を取られてしまう。
ブルーが「あっ、ハーレイ!」と気付いて、嬉しそうに鳴いていたって、近付けてくれない。
(危ないわよ、とリードをグッと握って…)
足早に去って、公園だったら出てゆくだろうし、路上だったら遠ざかってゆく。
(…ほんの一瞬だけの出会いで…)
次があっても同じことだぞ、と結果は考えるまでもない。
「犬のブルー」が、獰猛そうな大型犬に向かって鳴くのは、飼い主にすれば好ましくない。
(この子が、怖さに気付いていないだけなんだ、と…)
勘違いをして、散歩コースを変えてしまえば、もう会うことは出来なくなる。
「犬のハーレイ」の飼い主にしたって、トラブルは避けたいと考えそう。
(…俺がブルーを噛んじまったら、大変なことになっちまうからなあ…)
散歩コースを変更するのは、ハーレイの飼い主の方かもしれない。
他の犬が多い公園よりも、人の少ない場所の散歩に切り替えるとか。
如何にもありそうな、「出会えなくなる」結末。
犬のブルーと犬種が違って、「犬のハーレイ」が怖そうな見た目になっていれば起きる。
(大型犬でも、大人しい方で願いたいぞ…)
どんな性格をしている犬かは、飼い主にしか分からないし、とハーレイは溜息をついた。
前の自分も、人によっては「怖そうな人だ」と見ていただろうか。
ブリッジで指揮を執る所だけしか知らなかったら、有り得そうではある。
(眉間に皺で、難しい顔で…)
シャングリラの中を歩いていたのが前の自分で、怖そうな犬と同じかもしれない。
(犬に生まれた俺の場合も、猟犬になっていたって、大人しい性格で…)
訓練でボールなどはキャッチ出来ても、動物を追うことはしないのだろう。
もちろん「小型犬のブルー」を噛みはしないし、出会えたのなら、一緒に遊ぶだけ。
(仲良くなれたら、飼い主同士も、話が弾んで…)
散歩コースや時間を合わせてくれて、会える日がグンと増えてくれそう。
「大人しい犬なんです」とアピールする機会は、是非とも欲しい。
ブルーの飼い主が足早に去って、二度と出会えなくなるのは悲しすぎる。
(違う種類の犬でも、仲良くなれるケースは多いからなあ…)
犬と猿でも仲良くなるって話も聞くし、とハーレイは思う。
「犬猿の仲」という言葉があるのだけれども、仲がいい犬と猿とは存在する。
(…俺の飼い主と、ブルーの飼い主に期待するしか…)
判断違いが起きちまったら、おしまいなんだ、とゾッとしてから、ハタと気付いた。
犬のブルーと仲良くなれても、出会える時間は散歩の時しか無さそう。
それ以外の時間は、それぞれの家で過ごしているしかない。
(雨が降ったら、散歩は行かないだろうし…)
寒すぎる日とか、暑すぎる日にも、犬のブルーは「家の近く」で散歩を済ませるだろう。
大型犬のハーレイと違って、暑さ寒さに弱いのは容易に分かる。
(…そうなってくると、せっかく、あいつと再会出来ても…)
俺たちの人生、飼い主次第か、とハーレイは鳶色の瞳を見開いた。
犬の場合は「犬生」だけれども、全てが飼い主に左右されてしまう。
散歩コースを変えるにしても、合わせるにしても、ハーレイとブルーは蚊帳の外になる。
(ついでに、一緒に暮らすなんぞは、夢のまた夢…)
雄同士だしな、とハーレイは頭を抱えたくなった。
犬のブルーが雌にしたって、犬種が違う時点で絶望的。
(交配したい、と思う飼い主、いないだろうし…)
仲が良さそうだから、と例外を認めるにしても、一緒に飼ってはくれないだろう。
子供が出来るシーズンにだけ、ほんの数日、どちらかの家で過ごしておしまい。
(生まれて来た子も、ブルーの家で育っていくだけで…)
俺は顔さえ見られないんだ、と思うものだから、犬に生まれ変わるのは駄目かもしれない。
(飼い主がいたら、お互い、どうにも出来んからなあ…)
犬は駄目だ、とハーレイは神に感謝した。
今の生で犬に生まれていたなら、ハーレイもブルーも、悲しい思いをすることになった。
(何に生まれても、あいつを見付け出せるんだが…)
飼い主のいない生き物で頼む、と心から願う。
ハーレイもブルーも、飼い主がいたら、自由に生きるのは不可能だから…。
飼い主がいたら・了
※何に生まれても、ブルー君を見付ける自信があるハーレイ先生。犬や鳥でも大丈夫。
けれど気付いてしまった現実。飼い主がいる場合は、思い通りには生きられませんよねv
あるんだよな、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(例えば、犬や猫にしたって、ウサギだったり、鳥になっていても…)
必ず見付けられるし、出会えるだろう、と考える。
ブルーとの絆は強いものだけに、人間として出会えなくても、きっと出会える。
(もしも犬だと、俺とは種類が違いそうだぞ)
俺は大型の犬で、あいつは小さな種類の犬で、と想像しただけで微笑ましい。
犬に生まれたブルーも、白い犬なのに違いない。
(ふわふわしてるか、毛足が長いか、それとも…)
どんなのにしも可愛いんだ、と「犬のブルー」を頭に描く。
アルビノでなくても、真っ白な犬で、手入れが行き届いていることだろう。
(頭にリボンを結んでるとかも、あるかもしれないな…)
美容室に連れて行って貰ったりしたら、そうなりそう。
ブルーが「男の子」の犬であっても、見栄えがするなら頭にリボン。
(飼い主が色々、コレクションしたのを日替わりで…)
毎朝、頭にキュッと結んで、それから散歩なんだ、と「散歩に行くブルー」が見えるよう。
犬のブルーは愛らしいけども、ハーレイの方は違っているという気がする。
大型犬だし、可愛く見えるのは子犬時代だけ。
(犬のあいつと出会う頃には、育っちまってて…)
ブルーの何倍あるだろうか、と思うくらいに体格からして差があるだろう。
外見にしても、獰猛そうでなければマシだと言える。
(大型犬にも、大人しいのから、猟犬とかまでいるんだし…)
出来れば大人しい種類に生まれたいもんだ、とハーレイは肩を軽く竦める。
見るからに恐ろしそうな犬だった時は、犬のブルーの飼い主に距離を取られてしまう。
ブルーが「あっ、ハーレイ!」と気付いて、嬉しそうに鳴いていたって、近付けてくれない。
(危ないわよ、とリードをグッと握って…)
足早に去って、公園だったら出てゆくだろうし、路上だったら遠ざかってゆく。
(…ほんの一瞬だけの出会いで…)
次があっても同じことだぞ、と結果は考えるまでもない。
「犬のブルー」が、獰猛そうな大型犬に向かって鳴くのは、飼い主にすれば好ましくない。
(この子が、怖さに気付いていないだけなんだ、と…)
勘違いをして、散歩コースを変えてしまえば、もう会うことは出来なくなる。
「犬のハーレイ」の飼い主にしたって、トラブルは避けたいと考えそう。
(…俺がブルーを噛んじまったら、大変なことになっちまうからなあ…)
散歩コースを変更するのは、ハーレイの飼い主の方かもしれない。
他の犬が多い公園よりも、人の少ない場所の散歩に切り替えるとか。
如何にもありそうな、「出会えなくなる」結末。
犬のブルーと犬種が違って、「犬のハーレイ」が怖そうな見た目になっていれば起きる。
(大型犬でも、大人しい方で願いたいぞ…)
どんな性格をしている犬かは、飼い主にしか分からないし、とハーレイは溜息をついた。
前の自分も、人によっては「怖そうな人だ」と見ていただろうか。
ブリッジで指揮を執る所だけしか知らなかったら、有り得そうではある。
(眉間に皺で、難しい顔で…)
シャングリラの中を歩いていたのが前の自分で、怖そうな犬と同じかもしれない。
(犬に生まれた俺の場合も、猟犬になっていたって、大人しい性格で…)
訓練でボールなどはキャッチ出来ても、動物を追うことはしないのだろう。
もちろん「小型犬のブルー」を噛みはしないし、出会えたのなら、一緒に遊ぶだけ。
(仲良くなれたら、飼い主同士も、話が弾んで…)
散歩コースや時間を合わせてくれて、会える日がグンと増えてくれそう。
「大人しい犬なんです」とアピールする機会は、是非とも欲しい。
ブルーの飼い主が足早に去って、二度と出会えなくなるのは悲しすぎる。
(違う種類の犬でも、仲良くなれるケースは多いからなあ…)
犬と猿でも仲良くなるって話も聞くし、とハーレイは思う。
「犬猿の仲」という言葉があるのだけれども、仲がいい犬と猿とは存在する。
(…俺の飼い主と、ブルーの飼い主に期待するしか…)
判断違いが起きちまったら、おしまいなんだ、とゾッとしてから、ハタと気付いた。
犬のブルーと仲良くなれても、出会える時間は散歩の時しか無さそう。
それ以外の時間は、それぞれの家で過ごしているしかない。
(雨が降ったら、散歩は行かないだろうし…)
寒すぎる日とか、暑すぎる日にも、犬のブルーは「家の近く」で散歩を済ませるだろう。
大型犬のハーレイと違って、暑さ寒さに弱いのは容易に分かる。
(…そうなってくると、せっかく、あいつと再会出来ても…)
俺たちの人生、飼い主次第か、とハーレイは鳶色の瞳を見開いた。
犬の場合は「犬生」だけれども、全てが飼い主に左右されてしまう。
散歩コースを変えるにしても、合わせるにしても、ハーレイとブルーは蚊帳の外になる。
(ついでに、一緒に暮らすなんぞは、夢のまた夢…)
雄同士だしな、とハーレイは頭を抱えたくなった。
犬のブルーが雌にしたって、犬種が違う時点で絶望的。
(交配したい、と思う飼い主、いないだろうし…)
仲が良さそうだから、と例外を認めるにしても、一緒に飼ってはくれないだろう。
子供が出来るシーズンにだけ、ほんの数日、どちらかの家で過ごしておしまい。
(生まれて来た子も、ブルーの家で育っていくだけで…)
俺は顔さえ見られないんだ、と思うものだから、犬に生まれ変わるのは駄目かもしれない。
(飼い主がいたら、お互い、どうにも出来んからなあ…)
犬は駄目だ、とハーレイは神に感謝した。
今の生で犬に生まれていたなら、ハーレイもブルーも、悲しい思いをすることになった。
(何に生まれても、あいつを見付け出せるんだが…)
飼い主のいない生き物で頼む、と心から願う。
ハーレイもブルーも、飼い主がいたら、自由に生きるのは不可能だから…。
飼い主がいたら・了
※何に生まれても、ブルー君を見付ける自信があるハーレイ先生。犬や鳥でも大丈夫。
けれど気付いてしまった現実。飼い主がいる場合は、思い通りには生きられませんよねv
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(…ぼくの名前は…)
今でもブルーなんだよね、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(前のぼくだった時も、ブルーだったから…)
お蔭で、前の自分の記憶が戻った後にも、違和感は無かった。
誰もブルーを「違う名前」で呼びはしないし、途惑ったりする心配は無い。
(もし、今のぼくが、違う名前だったら…)
さぞかし困ったことだろう。
家で両親に呼び掛けられても、反応が遅くなったかもしれない。
学校などで友人が呼んでいたって、全く気付かないとかも有り得た。
(ぼくのことだと思わなくって…)
呼ばれているのに、振り向きもしないで、教室を出て帰宅してしまうとか。
(…うーん…)
それは困るよ、とブルーは小さく肩を竦めた。
「自分の名前は、ブルーではない」と理解していても、行動がついていきそうにない。
(…ブルーで良かった…)
姿形が違っていても困るけれども、名前が違うというのも困ってしまう。
果たして「前の自分」を上手く受け入れられたか、心配でもある。
(…今のぼくと、上手く噛み合わなくて…)
どっちを優先すればいいのか、迷った挙句に、片方が疎かになって…。
(ハーレイが来て、呼んでいたって、返事しないで…)
窓の向こうを眺めているとか、そういったことも起こり得た。
両親が呼ぶ方の名前を優先した結果で、学校などでも使う名前が優先だろうから。
名前というのは大切なもので、「今のブルー」を示している。
違う名前が付いていたなら、そちらの方を優先すべき。
(…ぼくの違和感、大きいんだろうけど…)
とにかく慣れてしまわないことには、世の中を上手く渡って行けない。
今のハーレイにも、「今の名前で呼んで欲しいよ」と頼み込むしか無さそう。
(でないと、ハーレイを無視しちゃうとか…)
それとは逆に、ハーレイが呼んでくれる「ブルー」にしか、反応しなくなるとか。
大いにありそうな話なだけに、「今の名前」を大事にするには、心の中で改名するしかない。
(…マイケルだったり、ディックだったり…)
前の自分には似合わなくても、受け入れる他に無いだろう。
その名前で呼ぶ羽目に陥る「ハーレイ」は気の毒だけれども、仕方ない。
(…今のぼくの方が、改名するのも難しそうだし…)
第一、子供の間は出来やしない、とブルーは充分、承知している。
ほんの十四歳にしかならない子供が、「名前を変えたいんです」と書類を作ってみても…。
(…戸籍を管理する所に、提出しに行ったら…)
係の人は、ブルーの顔をチラと眺めて、「保護者の方は?」と尋ねるだろう。
「保護者の方に来て頂かないと、受理出来ません」と、門前払いに決まっている。
(……変えられないよ……)
ハーレイと結婚出来る年になるまでは無理、と考えただけで溜息が出そう。
そういう意味でも、今の自分も「ブルー」で良かった。
名前で全く困りはしないし、皆が自然に「前の自分と同じ名前」で呼び掛けてくれる。
(…同じで良かった…)
ホントに運が良かったよね、とブルーは心から思う。
ついでに「今のハーレイ」の名前が、前と同じで「ハーレイ」なのも有難い。
(前と同じで、ウィリアム・ハーレイ…)
呼ぶのに困ることは無いもの、と「今のハーレイ」の名前が嬉しい。
もしも、前の自分の記憶が蘇った時、ハーレイの名前が違っていたなら、困っただろう。
(記憶が戻って来た瞬間は、とても痛くて…)
聖痕の痛みで気絶したから、「今のハーレイ」も「ハーレイ」なのだと思い込んでいる。
病院で意識を取り戻したって、まず「ハーレイ」を探しただろう。
(…だけどハーレイ、もう学校に戻っちゃってたし…)
病院の看護師や、飛んで来た両親が口にする名は「ハーレイ」ではない。
(付き添って来てくれた先生の名前、教えられても…)
それが「ハーレイ」だと分かったかどうか、まるで全く自信が持てない。
(救急車の中で、ずっと呼び掛けてくれてたの…)
ハーレイだったと思いたくても、耳に入るのは「ハーレイ」とは違う名前の先生。
(…違う先生だったのかな、って…)
ガッカリしている「当時の自分」が目に浮かぶよう。
今のハーレイは、あれが初対面だったし、救急車に乗ってくれたとは限らない。
(最初の授業が待っているから、他の先生に、ぼくを任せて…)
教室に残っていたことも起こり得た。
もっとも、夜には「今のハーレイ」が来てくれたのだから、勘違いしたままではないけれど。
そうは言っても、違う名前の「ハーレイ」が目の前に現れる。
(ただいま、ハーレイ、って…)
呼び掛ける所までは変わらなくても、それから後の全てが変わっていたのに違いない。
再会出来たことを、互いに喜び合った「ハーレイ」が、タイミングを計って、こう告げる。
「おっと、すまない。今の名前は、それじゃないんだ」。
(…どういう意味なの、って…)
目を丸くしながら、病院で聞かされた「違う名前の先生」の名をハーレイから聞く。
「今の名前は、こういう名前になっていてな」と、「ハーレイらしくない」と思える名前。
(…マクレガーとか、ウィンストンとか…)
耳に馴染まない姓を聞かされ、ファーストネームも「ウィリアム」ではない。
(ビリーだったり、チャールズだったり…)
そんな名前は知りやしない、とポカンとしたって、それが「ハーレイ」。
今のハーレイを示す名前で、他の名前には置き換えられない。
(…学校に来られるようになったら、そう呼んでくれ、って…)
ハーレイに念を押されるわけで、きっとショックは、とても激しい。
(…違う名前になっちゃったんだ、って声も出なくて…)
目の前にいる「マクレガー」だか、「チャールズ」だかを、まじまじと見る。
見間違えようもない「ハーレイ」なのに、今の名前は「ウィンストン」や「ビリー」。
(…あんまりすぎるよ…!)
間違えて呼んでしまいそう、と泣きそうになっても、「ハーレイ」と呼ぶことは出来ない。
学校で「ハーレイ!」と呼んでみたって、返事が返りはしないだろう。
(…それにハーレイ、ぼくと違って、とうに大人で…)
教師生活も、そこそこ長いし、改名することは難しい上、すべきでもない。
(どんなに、前のぼくと生きた時代が大事でも…)
その思い出で「今のハーレイ」を縛り付けるのは、新しい命に失礼でもある。
「ハーレイ」なのだと思いたければ、「今のブルー」だけが我慢で、そっと何処かで…。
(誰もいない時とか、ハーレイと結婚した後、ニックネームみたいに…)
「ハーレイ」と呼ぶのが相応しい。
幸い、見た目は「キャプテン・ハーレイ」なのだし、「ハーレイ」でも変には思われない。
(今のぼくに、もっと友達、多かったなら…)
学校で「ハーレイ先生」と渾名を付けて、皆に広めて使うことも出来るのだけれど…。
(そんなに友達、多くないから、誰か代わりに…)
思い付いてくれない限りは、「ハーレイ先生」は誕生してくれない。
(…マクレガー先生とか、ウィンストン先生とか…)
そう呼ぶしかない毎日なんだ、と頭を抱えたくなるから、今の名前で良かったと思う。
もしも、ハーレイが違う名前だったら、困る場面しか浮かばないから…。
違う名前だったら・了
※今のブルー君の名前はブルー。前と同じで嬉しいですけど、ハーレイ先生も、そう。
けれど、違う名前だったら、お互い、困りそう。「ハーレイ先生」は、渾名で呼べるかもv
今でもブルーなんだよね、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(前のぼくだった時も、ブルーだったから…)
お蔭で、前の自分の記憶が戻った後にも、違和感は無かった。
誰もブルーを「違う名前」で呼びはしないし、途惑ったりする心配は無い。
(もし、今のぼくが、違う名前だったら…)
さぞかし困ったことだろう。
家で両親に呼び掛けられても、反応が遅くなったかもしれない。
学校などで友人が呼んでいたって、全く気付かないとかも有り得た。
(ぼくのことだと思わなくって…)
呼ばれているのに、振り向きもしないで、教室を出て帰宅してしまうとか。
(…うーん…)
それは困るよ、とブルーは小さく肩を竦めた。
「自分の名前は、ブルーではない」と理解していても、行動がついていきそうにない。
(…ブルーで良かった…)
姿形が違っていても困るけれども、名前が違うというのも困ってしまう。
果たして「前の自分」を上手く受け入れられたか、心配でもある。
(…今のぼくと、上手く噛み合わなくて…)
どっちを優先すればいいのか、迷った挙句に、片方が疎かになって…。
(ハーレイが来て、呼んでいたって、返事しないで…)
窓の向こうを眺めているとか、そういったことも起こり得た。
両親が呼ぶ方の名前を優先した結果で、学校などでも使う名前が優先だろうから。
名前というのは大切なもので、「今のブルー」を示している。
違う名前が付いていたなら、そちらの方を優先すべき。
(…ぼくの違和感、大きいんだろうけど…)
とにかく慣れてしまわないことには、世の中を上手く渡って行けない。
今のハーレイにも、「今の名前で呼んで欲しいよ」と頼み込むしか無さそう。
(でないと、ハーレイを無視しちゃうとか…)
それとは逆に、ハーレイが呼んでくれる「ブルー」にしか、反応しなくなるとか。
大いにありそうな話なだけに、「今の名前」を大事にするには、心の中で改名するしかない。
(…マイケルだったり、ディックだったり…)
前の自分には似合わなくても、受け入れる他に無いだろう。
その名前で呼ぶ羽目に陥る「ハーレイ」は気の毒だけれども、仕方ない。
(…今のぼくの方が、改名するのも難しそうだし…)
第一、子供の間は出来やしない、とブルーは充分、承知している。
ほんの十四歳にしかならない子供が、「名前を変えたいんです」と書類を作ってみても…。
(…戸籍を管理する所に、提出しに行ったら…)
係の人は、ブルーの顔をチラと眺めて、「保護者の方は?」と尋ねるだろう。
「保護者の方に来て頂かないと、受理出来ません」と、門前払いに決まっている。
(……変えられないよ……)
ハーレイと結婚出来る年になるまでは無理、と考えただけで溜息が出そう。
そういう意味でも、今の自分も「ブルー」で良かった。
名前で全く困りはしないし、皆が自然に「前の自分と同じ名前」で呼び掛けてくれる。
(…同じで良かった…)
ホントに運が良かったよね、とブルーは心から思う。
ついでに「今のハーレイ」の名前が、前と同じで「ハーレイ」なのも有難い。
(前と同じで、ウィリアム・ハーレイ…)
呼ぶのに困ることは無いもの、と「今のハーレイ」の名前が嬉しい。
もしも、前の自分の記憶が蘇った時、ハーレイの名前が違っていたなら、困っただろう。
(記憶が戻って来た瞬間は、とても痛くて…)
聖痕の痛みで気絶したから、「今のハーレイ」も「ハーレイ」なのだと思い込んでいる。
病院で意識を取り戻したって、まず「ハーレイ」を探しただろう。
(…だけどハーレイ、もう学校に戻っちゃってたし…)
病院の看護師や、飛んで来た両親が口にする名は「ハーレイ」ではない。
(付き添って来てくれた先生の名前、教えられても…)
それが「ハーレイ」だと分かったかどうか、まるで全く自信が持てない。
(救急車の中で、ずっと呼び掛けてくれてたの…)
ハーレイだったと思いたくても、耳に入るのは「ハーレイ」とは違う名前の先生。
(…違う先生だったのかな、って…)
ガッカリしている「当時の自分」が目に浮かぶよう。
今のハーレイは、あれが初対面だったし、救急車に乗ってくれたとは限らない。
(最初の授業が待っているから、他の先生に、ぼくを任せて…)
教室に残っていたことも起こり得た。
もっとも、夜には「今のハーレイ」が来てくれたのだから、勘違いしたままではないけれど。
そうは言っても、違う名前の「ハーレイ」が目の前に現れる。
(ただいま、ハーレイ、って…)
呼び掛ける所までは変わらなくても、それから後の全てが変わっていたのに違いない。
再会出来たことを、互いに喜び合った「ハーレイ」が、タイミングを計って、こう告げる。
「おっと、すまない。今の名前は、それじゃないんだ」。
(…どういう意味なの、って…)
目を丸くしながら、病院で聞かされた「違う名前の先生」の名をハーレイから聞く。
「今の名前は、こういう名前になっていてな」と、「ハーレイらしくない」と思える名前。
(…マクレガーとか、ウィンストンとか…)
耳に馴染まない姓を聞かされ、ファーストネームも「ウィリアム」ではない。
(ビリーだったり、チャールズだったり…)
そんな名前は知りやしない、とポカンとしたって、それが「ハーレイ」。
今のハーレイを示す名前で、他の名前には置き換えられない。
(…学校に来られるようになったら、そう呼んでくれ、って…)
ハーレイに念を押されるわけで、きっとショックは、とても激しい。
(…違う名前になっちゃったんだ、って声も出なくて…)
目の前にいる「マクレガー」だか、「チャールズ」だかを、まじまじと見る。
見間違えようもない「ハーレイ」なのに、今の名前は「ウィンストン」や「ビリー」。
(…あんまりすぎるよ…!)
間違えて呼んでしまいそう、と泣きそうになっても、「ハーレイ」と呼ぶことは出来ない。
学校で「ハーレイ!」と呼んでみたって、返事が返りはしないだろう。
(…それにハーレイ、ぼくと違って、とうに大人で…)
教師生活も、そこそこ長いし、改名することは難しい上、すべきでもない。
(どんなに、前のぼくと生きた時代が大事でも…)
その思い出で「今のハーレイ」を縛り付けるのは、新しい命に失礼でもある。
「ハーレイ」なのだと思いたければ、「今のブルー」だけが我慢で、そっと何処かで…。
(誰もいない時とか、ハーレイと結婚した後、ニックネームみたいに…)
「ハーレイ」と呼ぶのが相応しい。
幸い、見た目は「キャプテン・ハーレイ」なのだし、「ハーレイ」でも変には思われない。
(今のぼくに、もっと友達、多かったなら…)
学校で「ハーレイ先生」と渾名を付けて、皆に広めて使うことも出来るのだけれど…。
(そんなに友達、多くないから、誰か代わりに…)
思い付いてくれない限りは、「ハーレイ先生」は誕生してくれない。
(…マクレガー先生とか、ウィンストン先生とか…)
そう呼ぶしかない毎日なんだ、と頭を抱えたくなるから、今の名前で良かったと思う。
もしも、ハーレイが違う名前だったら、困る場面しか浮かばないから…。
違う名前だったら・了
※今のブルー君の名前はブルー。前と同じで嬉しいですけど、ハーレイ先生も、そう。
けれど、違う名前だったら、お互い、困りそう。「ハーレイ先生」は、渾名で呼べるかもv
(今でもブルーなんだよな…)
あいつの名前、とハーレイが思い浮かべた恋人の顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(違う名前になっていたって、不思議じゃないんだが…)
有難いことに「ブルー」なんだ、と嬉しくなる。
今のブルーの名前の由来は、前のブルーと同じアルビノだからと聞いた。
アルビノの息子が生まれて来た時、両親は迷わず「ブルー」と名付けた。
(前のあいつは、今の時代は英雄なんだし…)
ブルーのような子供が生まれた場合は、選びたくなる親が多いだろう。
(もっとも、育てば、名前負けして…)
ソルジャー・ブルーとは似ても似つかない、ごく平凡な子になるかもしれない。
外見はもちろん、頭脳などにしても、ソルジャー・ブルーと同等に育つのは難しそう。
(幸い、あいつは本物だから…)
髪型までが「ソルジャー・ブルー風」で、人目を引く子供になりつつある。
前のブルーと同じ背丈に育つ頃には、文字通り、瓜二つになっていることだろう。
美しく育ち上がった「今のブルー」を、今のハーレイは連れて歩ける。
結婚する前にデートに行っても、注目を集めそうな「ソルジャー・ブルー」を。
(俺が「ブルー」と呼んでいたって…)
本名だと思ってくれる人が、どれだけいるかは分からない。
そっくりなだけに、「ブルー」が愛称だということは有り得る。
(正真正銘、ブルーなんだが…)
信じて貰えないかもしれないな、と可笑しくなった。
行く先々で擦れ違う人たちの耳に届いた名前が、「ブルー」であっても。
(振り返りながら、本名は何なのか考えるヤツらも…)
きっといるぞ、と考えるだけで面白い。
逆に「アルビノだから本名だろうけど、運のいい子だ」と眺める人もいるに違いない。
(名前負けしないで、ソルジャー・ブルーそっくりに育ったんだし…)
親を恨まずに済んで良かったな、と一足飛びの思考をしてみたりして。
確かに「ブルー」が、どう育つかは、生まれた時には分からない。
「ブルーと名付けて育てることは、ある意味、賭けな部分が大きい。
今のブルーの両親は、「名付け」の賭けの勝利者と言える。
生まれて来た子は、幼い頃から「ソルジャー・ブルー」に似ていたらしい。
(小さなソルジャー・ブルーだ、と公園などで可愛がられて…)
初対面の人から、お菓子を貰ったりして、人気を集めていたようだ。
連れて歩く父や母の方でも、鼻高々だったことだろう。
(お名前は、と尋ねられた時は、嬉しかったろうなあ…)
「この子の名前は、ブルーなんです」と答えられるし、聞かされた人の方も驚く。
「 あらまあ…! 本物のブルー君だったのねえ!」などと、目を真ん丸にしたりして。
(…大したもんだ…)
あいつの両親の名付け方は、と思うけれども、アルビノなだけに、賭けをしただけ。
「どう育つのか」までは考えないまま、「ブルー」と名付けることは「賭け」でしかない。
まるで全く心配しないで「迷わなかった」のなら、大物だろう。
(…もっとも、神様のお計らいで…)
両親の頭に浮かぶ名前は「ブルー」しか無くて、他の候補は無かった可能性もある。
生まれる前には考えていても、アルビノの子だと分かった時点で、「ブルー」の名前が…。
(頭にストンと落っこちて来て…)
他の候補は消えてしまって、それっきりになってしまったろうか。
(…いつ頃、ブルーに決まったんだか…)
その辺の話は聞いていないな、とハーレイは顎に手を当てた。
もしかしたら、今のブルー自身も、耳にしたことは無いかもしれない。
「ブルー」と決める前に「名前の候補」が存在したのか、あったとしたなら何なのか。
(…ボツにしちまった名前なんかは、話さないしなあ…)
俺にしたって聞いちゃいないぞ、と自分の名前を振り返ってみる。
今のハーレイも「ハーレイ」だけども、前と同じで「姓」が「ハーレイ」。
名前の方は「ウィリアム」なわけで、これまた前と同じ「ウィリアム」。
(ちゃんと、ウィリアム・ハーレイなんだ…)
だから「ブルー」も、神様のお計らいだろう、と見当がつく。
とはいえ、ハーレイにしても「ウィリアム」以外に、名前の候補があったかは知らない。
(親父に聞いたら、とんでもないのが…)
出て来るのかもな、と釣り好きの父の顔が浮かんだ。
釣り好きで、釣りの名人なだけに、名付けのセンスが常識外れで…。
(…釣りの名人の名前にあやかりたいなら、まだマシな方で…)
お気に入りの釣りのスポットを選ぶとかもありそう。
贔屓にしている釣り船の名前を捻ってみたり、そのまま貰って名付けたり。
(……うーむ……)
あの親父ならやりかねんぞ、と思うものだから、「ブルー」も気になる。
両親が他の候補を持っていたのか、無かったのか。
(…あった場合は、今のあいつの名前は…)
ブルーじゃなかったわけでだな、と「もしも」の世界を想像した。
神様のお計らいが無かったならば、ブルーには違う名前が付けられていた。
(見た目が今と全く同じで、前のあいつがチビだった頃に瓜二つでも…)
ブルーの名前は「ブルー」ではない。
両親のセンスで付けられた名で、学校でも名前は「その名前」になる。
(…俺が教室で、今のあいつと再会して…)
ブルーの身体に聖痕が出ても、病院でカルテに書かれる名前は「ブルー」ではなくて…。
(…俺が教室で、「この生徒の名前は?」と尋ねても…)
パニックだった生徒たちが口にする名は、「ブルー」とは違う名前だったろう。
(…何処から見たって、あいつなんだが…)
俺にしてみりゃ「ブルー」なのに、と混乱しそうな光景がハッキリと見える。
やっと出会えた愛おしい人が、知らない名前になっているのだから。
今のブルーが「違う名前」なら、再会した時の感動と共に「衝撃」も来そう。
(ブルーなんだが、ブルーじゃないんだ、と…)
過ぎてしまった長い歳月を思い知らされ、打ちのめされる。
「ブルー」が「ブルー」でなくなるくらいに、時が流れてしまったのだ、と。
(…でもって、あいつに呼び掛ける時も…)
二人きりで過ごす時を除けば、「違う名前」を使うしかない。
ブルーの両親は事情を知っているのだけれども、自分たちの息子が「ブルー」なのは…。
(…違和感が大きすぎるよなあ…)
夕食を御馳走になってる時に、「ブルー」と呼べやしない、とハーレイにだって分かる。
きっと両親は「嬉しくない」のに違いないから、馴染んだ名前で呼ぶのが礼儀だろう。
(…ヘンリーだったり、ディックだったり、マイケルだったり…)
そんな名前で呼ぶしかないじゃないか、とハーレイは頭を抱えてしまった。
今のブルーが違う名前なら、確実に、そうなっていたわけだから…。
(…神様に感謝するしかなさそうだよなあ…)
前の名前で呼べることを、とハーレイは神に心から感謝の祈りを捧げる。
「今のあいつの名前を、ブルーにして下さって、感謝します」と。
お蔭で「ブルー」と遠慮なく呼べるし、この先もそう。
前と同じに自然に呼び掛け、誰にも迷惑をかけることなく、ブルーと呼べる素晴らしい世界。
もしも「ブルー」が違う名前なら、それを使うしかない世界になっていたから…。
違う名前なら・了
※今のブルー君の名前は「ブルー」で、前と同じ。ハーレイ先生が呼ぶ名も「ブルー」。
けれど名前が違っていたら、その名で呼ぶしかないのです。違う名前だと困りますよねv
あいつの名前、とハーレイが思い浮かべた恋人の顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(違う名前になっていたって、不思議じゃないんだが…)
有難いことに「ブルー」なんだ、と嬉しくなる。
今のブルーの名前の由来は、前のブルーと同じアルビノだからと聞いた。
アルビノの息子が生まれて来た時、両親は迷わず「ブルー」と名付けた。
(前のあいつは、今の時代は英雄なんだし…)
ブルーのような子供が生まれた場合は、選びたくなる親が多いだろう。
(もっとも、育てば、名前負けして…)
ソルジャー・ブルーとは似ても似つかない、ごく平凡な子になるかもしれない。
外見はもちろん、頭脳などにしても、ソルジャー・ブルーと同等に育つのは難しそう。
(幸い、あいつは本物だから…)
髪型までが「ソルジャー・ブルー風」で、人目を引く子供になりつつある。
前のブルーと同じ背丈に育つ頃には、文字通り、瓜二つになっていることだろう。
美しく育ち上がった「今のブルー」を、今のハーレイは連れて歩ける。
結婚する前にデートに行っても、注目を集めそうな「ソルジャー・ブルー」を。
(俺が「ブルー」と呼んでいたって…)
本名だと思ってくれる人が、どれだけいるかは分からない。
そっくりなだけに、「ブルー」が愛称だということは有り得る。
(正真正銘、ブルーなんだが…)
信じて貰えないかもしれないな、と可笑しくなった。
行く先々で擦れ違う人たちの耳に届いた名前が、「ブルー」であっても。
(振り返りながら、本名は何なのか考えるヤツらも…)
きっといるぞ、と考えるだけで面白い。
逆に「アルビノだから本名だろうけど、運のいい子だ」と眺める人もいるに違いない。
(名前負けしないで、ソルジャー・ブルーそっくりに育ったんだし…)
親を恨まずに済んで良かったな、と一足飛びの思考をしてみたりして。
確かに「ブルー」が、どう育つかは、生まれた時には分からない。
「ブルーと名付けて育てることは、ある意味、賭けな部分が大きい。
今のブルーの両親は、「名付け」の賭けの勝利者と言える。
生まれて来た子は、幼い頃から「ソルジャー・ブルー」に似ていたらしい。
(小さなソルジャー・ブルーだ、と公園などで可愛がられて…)
初対面の人から、お菓子を貰ったりして、人気を集めていたようだ。
連れて歩く父や母の方でも、鼻高々だったことだろう。
(お名前は、と尋ねられた時は、嬉しかったろうなあ…)
「この子の名前は、ブルーなんです」と答えられるし、聞かされた人の方も驚く。
「 あらまあ…! 本物のブルー君だったのねえ!」などと、目を真ん丸にしたりして。
(…大したもんだ…)
あいつの両親の名付け方は、と思うけれども、アルビノなだけに、賭けをしただけ。
「どう育つのか」までは考えないまま、「ブルー」と名付けることは「賭け」でしかない。
まるで全く心配しないで「迷わなかった」のなら、大物だろう。
(…もっとも、神様のお計らいで…)
両親の頭に浮かぶ名前は「ブルー」しか無くて、他の候補は無かった可能性もある。
生まれる前には考えていても、アルビノの子だと分かった時点で、「ブルー」の名前が…。
(頭にストンと落っこちて来て…)
他の候補は消えてしまって、それっきりになってしまったろうか。
(…いつ頃、ブルーに決まったんだか…)
その辺の話は聞いていないな、とハーレイは顎に手を当てた。
もしかしたら、今のブルー自身も、耳にしたことは無いかもしれない。
「ブルー」と決める前に「名前の候補」が存在したのか、あったとしたなら何なのか。
(…ボツにしちまった名前なんかは、話さないしなあ…)
俺にしたって聞いちゃいないぞ、と自分の名前を振り返ってみる。
今のハーレイも「ハーレイ」だけども、前と同じで「姓」が「ハーレイ」。
名前の方は「ウィリアム」なわけで、これまた前と同じ「ウィリアム」。
(ちゃんと、ウィリアム・ハーレイなんだ…)
だから「ブルー」も、神様のお計らいだろう、と見当がつく。
とはいえ、ハーレイにしても「ウィリアム」以外に、名前の候補があったかは知らない。
(親父に聞いたら、とんでもないのが…)
出て来るのかもな、と釣り好きの父の顔が浮かんだ。
釣り好きで、釣りの名人なだけに、名付けのセンスが常識外れで…。
(…釣りの名人の名前にあやかりたいなら、まだマシな方で…)
お気に入りの釣りのスポットを選ぶとかもありそう。
贔屓にしている釣り船の名前を捻ってみたり、そのまま貰って名付けたり。
(……うーむ……)
あの親父ならやりかねんぞ、と思うものだから、「ブルー」も気になる。
両親が他の候補を持っていたのか、無かったのか。
(…あった場合は、今のあいつの名前は…)
ブルーじゃなかったわけでだな、と「もしも」の世界を想像した。
神様のお計らいが無かったならば、ブルーには違う名前が付けられていた。
(見た目が今と全く同じで、前のあいつがチビだった頃に瓜二つでも…)
ブルーの名前は「ブルー」ではない。
両親のセンスで付けられた名で、学校でも名前は「その名前」になる。
(…俺が教室で、今のあいつと再会して…)
ブルーの身体に聖痕が出ても、病院でカルテに書かれる名前は「ブルー」ではなくて…。
(…俺が教室で、「この生徒の名前は?」と尋ねても…)
パニックだった生徒たちが口にする名は、「ブルー」とは違う名前だったろう。
(…何処から見たって、あいつなんだが…)
俺にしてみりゃ「ブルー」なのに、と混乱しそうな光景がハッキリと見える。
やっと出会えた愛おしい人が、知らない名前になっているのだから。
今のブルーが「違う名前」なら、再会した時の感動と共に「衝撃」も来そう。
(ブルーなんだが、ブルーじゃないんだ、と…)
過ぎてしまった長い歳月を思い知らされ、打ちのめされる。
「ブルー」が「ブルー」でなくなるくらいに、時が流れてしまったのだ、と。
(…でもって、あいつに呼び掛ける時も…)
二人きりで過ごす時を除けば、「違う名前」を使うしかない。
ブルーの両親は事情を知っているのだけれども、自分たちの息子が「ブルー」なのは…。
(…違和感が大きすぎるよなあ…)
夕食を御馳走になってる時に、「ブルー」と呼べやしない、とハーレイにだって分かる。
きっと両親は「嬉しくない」のに違いないから、馴染んだ名前で呼ぶのが礼儀だろう。
(…ヘンリーだったり、ディックだったり、マイケルだったり…)
そんな名前で呼ぶしかないじゃないか、とハーレイは頭を抱えてしまった。
今のブルーが違う名前なら、確実に、そうなっていたわけだから…。
(…神様に感謝するしかなさそうだよなあ…)
前の名前で呼べることを、とハーレイは神に心から感謝の祈りを捧げる。
「今のあいつの名前を、ブルーにして下さって、感謝します」と。
お蔭で「ブルー」と遠慮なく呼べるし、この先もそう。
前と同じに自然に呼び掛け、誰にも迷惑をかけることなく、ブルーと呼べる素晴らしい世界。
もしも「ブルー」が違う名前なら、それを使うしかない世界になっていたから…。
違う名前なら・了
※今のブルー君の名前は「ブルー」で、前と同じ。ハーレイ先生が呼ぶ名も「ブルー」。
けれど名前が違っていたら、その名で呼ぶしかないのです。違う名前だと困りますよねv
(ウサギになりたかったんだよね…)
幼稚園だった頃には、と小さなブルーは、ふと思い出した。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…本気でウサギになりたかったけど…)
あの時、ウサギになれていたなら、ハーレイとの出会いも変わっていたろう。
ウサギのブルーは、今の学校に行きはしないし、いったい何処で出会えたのか。
(ぼくは野原で、ハーレイがドライブして来て、散歩していて…)
ブルーを見付けて連れて帰って、飼ってくれるのかもしれない。
(ハーレイ、ウサギの言葉が分かるのかな?)
それとも、ぼくがウサギだったら、思念波を使いこなせるのかな、などと考えてみる。
ハーレイに「ウサギの恋人」が出来た場合は、暮らしぶりも変わってしまいそう。
(学校に行くのに、ウサギ連れって…)
難しいよね、とブルーは可笑しくなった。
幼稚園ならともかく、今の学校にウサギを飼っている小屋は無い。
何処の学校も事情は同じで、ウサギ小屋は、下の学校の一部にある程度。
(ウサギ小屋があったら、授業の間は、此処にいてくれ、って…)
ハーレイが入れて行ってくれれば、帰りまで待つ。
他のウサギと一緒に食事で、遊んだり、寒い日には寄り添い合って温め合ったり。
(ウサギ小屋があれば、いいんだけどね…)
残念ながら無いとなったら、ブルーの居場所は、学校には無い。
(…出掛ける前には、ペットホテルに寄って行くのかな?)
仕事が終わるまでの間は、其処で待つことになりそう。
他にも待っている仲間がいたって、ウサギではなくて犬や猫かもしれない。
(うーん…)
つまらなさそう、と思うけれども、仕方ないから、慣れるしかない。
ウサギになっていなくて良かったよね、とブルーは、ホッと安心した。
同じ人間として再会したから、今の暮らしを満喫出来る。
不満な部分も多いとはいえ、結婚出来る年に育つ頃には、全て解消しているだろう。
(ぼくの背丈が、前のぼくだった頃と同じになったら…)
ハーレイとキスも出来るし、デートにも行ける。
ほんの数年だけの我慢で、それまでの間は耐えるしかない。
(あと十年とかじゃないから…)
幼稚園の頃とは違うものね、と振り返ってみて、ウサギ小屋のあった場所を思い浮かべる。
ハーレイが「ウサギになったブルー」と再会するより、幼稚園時代に出会った方が厄介そう。
(…結婚出来る年になるまで、十年以上も…)
ひたすら耐えて我慢の日々が続いて、キスもデートも、全て「おあずけ」。
(…あんまりすぎるよ…)
おまけに、ぼくも小さすぎるし、とブルーは部屋を見回した。
今は大きなベッドが置いてあるけれど、幼稚園の頃には、もっと小さなベッドだった。
部屋が広々していた記憶は、子供用ベッドのせいだけではない。
(勉強机も置いていないし、窓の所の、テーブルと椅子も…)
幼稚園時代のブルーは、一つも持っていなかった。
代わりに絨毯の上にクッション、オモチャが入った箱や、積み木の箱が置かれていた。
(…本棚も無くて、絵本も専用の場所があっただけ…)
ハーレイを呼ぶには、子供じみてる、とブルーは頭を抱えてしまった。
せっかく再会出来たというのに、ハーレイが恋人の部屋に来たなら、興覚めだろう。
(…何処で出会って、聖痕がどうなったのかとかも、ややこしそうで…)
幼稚園だったら大変だよね、と容易に想像がつく。
ハーレイが「幼稚園の先生」だとか、「幼稚園バスの運転手」でないと出会えなさそう。
(入園式で聖痕が出たら、大騒ぎになっちゃう…)
泣き出す子だけで済めばいいけど、と恐ろしくなった。
幼い子供は、「出血だけで怪我はしていない」聖痕現象などは理解出来ない。
パニックを起こして、倒れてしまう子も出るかもしれない。
(…ハーレイと出会うの、もっと後でないと…)
入園式は、ぼくは風邪でお休みするとか、と「出会いの瞬間」を先延ばしにする。
ついでに再会を果たす時にも、周りに他の子供がいない方が良さそう。
(…遅れて入って、ウサギ小屋を覗き込んでる時くらいかな…)
ハーレイが近付いて来て、「ウサギ見てるのか?」と声を掛けてくれて、振り向いた瞬間。
(それなら、聖痕が出ても、泣き出しちゃう子供は少なめ…)
被害は最小限で済みそうだよ、と考えたものの、それから後もかなり厄介。
幼稚園の先生か、幼稚園バスの運転手のハーレイも、恐らく「人気者」だろう。
他の子たちに引っ張りだこで、幼稚園では、ブルーが近付けるチャンスは少なそう。
(守り役だって、どうなるのかな…?)
学校に行くまでの間だけで終わりそうだし、と溜息が零れ落ちてしまう。
幼稚園の先生などのハーレイだった場合は、学校に入った時点で、多分、お別れ。
困っちゃうよね、とブルーは「今の出会い」に感謝する。
今の学校で出会ったからこそ、結婚までの待ち時間も少ない上に、一緒にいられる時間も多い。
(それに、ハーレイが家に来たって…)
座って貰うための椅子もある上、テーブルもある。
ブルーが寝込んでいる時に尋ねて来てくれても、ハーレイは其処で過ごしている。
(本棚もあるから、目に付いた本を取って読めるし…)
いいことずくめの部屋なんだから、と眺め回して、ハタと気付いた。
(出会った場所が、幼稚園だったら…)
ハーレイは「大人が過ごすには、退屈すぎる部屋」で、長い時間を費やす羽目に陥る。
幼稚園時代のブルーに、「お茶の時間」は存在しなかった。
(…お茶じゃなくって、おやつの時間で…)
母はティーセットを用意しないで、カップにミルクやココアを入れて渡してくれた。
お菓子は今と変わらなくても、お皿は小ぶりな「幼児用」だった。
(…ハーレイ先生が来てくれるから、って…)
母がティーセットを出して来るとは思えない。
ハーレイが好むコーヒーを淹れて、お菓子の皿とセットで、トレイに乗っけて…。
(絨毯の上に置いて行くのか、ちょっとした台を据えて、其処に置くのか…)
どちらにしたって、ブルーと「テーブルを挟んで、向かい合わせ」の時間にはならない。
お茶の時間を楽しむと言うより、ハーレイもブルーも、マイペースで「おやつ」を味わう。
(ぼくは積み木で遊んだりしてる合間に…)
少しずつ食べて、ハーレイは、微笑みながらコーヒー片手に「見守り」だろう。
(…そんな時間に、キスを強請りに出掛けても…)
断られてしまう以前に、様にならない。
頬っぺたに「お菓子の欠片」をくっつけたブルーが、「ぼくにキスして」では、笑われるだけ。
(おまけに、ハーレイに抱き付こうとしても…)
ぼくの身体が小さすぎるし、背中まで手が回らないかも、とブルーは愕然とさせられた。
まるで似合わない「恋人同士」で、今よりも酷くて情けない感じになって来る。
(…ハーレイと出会ったの、幼稚園だったら…)
二人きりで過ごす時間があっても、噛み合わないよ、と頭の中がぐるぐるしそう。
そういう出会いだった時には、きっと後まで笑い話で、ハーレイにからかわれ続ける人生。
(そんな人生、嫌すぎるから…!)
もっと早くに出会いたかったけど、と思いはしても、限界がある。
幼稚園での再会は「早すぎる」上に、尾を引きそうだから、諦めておこう。
ハーレイとの出会いの場所が幼稚園だったら、ハーレイには似合わない恋人だから…。
幼稚園だったら・了
※ハーレイ先生と出会った場所が幼稚園だったら、と想像してみたブルー君ですけど。
今よりも厄介な日々になりそう。第一、ハーレイ先生と釣り合いが取れないらしいですv
幼稚園だった頃には、と小さなブルーは、ふと思い出した。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…本気でウサギになりたかったけど…)
あの時、ウサギになれていたなら、ハーレイとの出会いも変わっていたろう。
ウサギのブルーは、今の学校に行きはしないし、いったい何処で出会えたのか。
(ぼくは野原で、ハーレイがドライブして来て、散歩していて…)
ブルーを見付けて連れて帰って、飼ってくれるのかもしれない。
(ハーレイ、ウサギの言葉が分かるのかな?)
それとも、ぼくがウサギだったら、思念波を使いこなせるのかな、などと考えてみる。
ハーレイに「ウサギの恋人」が出来た場合は、暮らしぶりも変わってしまいそう。
(学校に行くのに、ウサギ連れって…)
難しいよね、とブルーは可笑しくなった。
幼稚園ならともかく、今の学校にウサギを飼っている小屋は無い。
何処の学校も事情は同じで、ウサギ小屋は、下の学校の一部にある程度。
(ウサギ小屋があったら、授業の間は、此処にいてくれ、って…)
ハーレイが入れて行ってくれれば、帰りまで待つ。
他のウサギと一緒に食事で、遊んだり、寒い日には寄り添い合って温め合ったり。
(ウサギ小屋があれば、いいんだけどね…)
残念ながら無いとなったら、ブルーの居場所は、学校には無い。
(…出掛ける前には、ペットホテルに寄って行くのかな?)
仕事が終わるまでの間は、其処で待つことになりそう。
他にも待っている仲間がいたって、ウサギではなくて犬や猫かもしれない。
(うーん…)
つまらなさそう、と思うけれども、仕方ないから、慣れるしかない。
ウサギになっていなくて良かったよね、とブルーは、ホッと安心した。
同じ人間として再会したから、今の暮らしを満喫出来る。
不満な部分も多いとはいえ、結婚出来る年に育つ頃には、全て解消しているだろう。
(ぼくの背丈が、前のぼくだった頃と同じになったら…)
ハーレイとキスも出来るし、デートにも行ける。
ほんの数年だけの我慢で、それまでの間は耐えるしかない。
(あと十年とかじゃないから…)
幼稚園の頃とは違うものね、と振り返ってみて、ウサギ小屋のあった場所を思い浮かべる。
ハーレイが「ウサギになったブルー」と再会するより、幼稚園時代に出会った方が厄介そう。
(…結婚出来る年になるまで、十年以上も…)
ひたすら耐えて我慢の日々が続いて、キスもデートも、全て「おあずけ」。
(…あんまりすぎるよ…)
おまけに、ぼくも小さすぎるし、とブルーは部屋を見回した。
今は大きなベッドが置いてあるけれど、幼稚園の頃には、もっと小さなベッドだった。
部屋が広々していた記憶は、子供用ベッドのせいだけではない。
(勉強机も置いていないし、窓の所の、テーブルと椅子も…)
幼稚園時代のブルーは、一つも持っていなかった。
代わりに絨毯の上にクッション、オモチャが入った箱や、積み木の箱が置かれていた。
(…本棚も無くて、絵本も専用の場所があっただけ…)
ハーレイを呼ぶには、子供じみてる、とブルーは頭を抱えてしまった。
せっかく再会出来たというのに、ハーレイが恋人の部屋に来たなら、興覚めだろう。
(…何処で出会って、聖痕がどうなったのかとかも、ややこしそうで…)
幼稚園だったら大変だよね、と容易に想像がつく。
ハーレイが「幼稚園の先生」だとか、「幼稚園バスの運転手」でないと出会えなさそう。
(入園式で聖痕が出たら、大騒ぎになっちゃう…)
泣き出す子だけで済めばいいけど、と恐ろしくなった。
幼い子供は、「出血だけで怪我はしていない」聖痕現象などは理解出来ない。
パニックを起こして、倒れてしまう子も出るかもしれない。
(…ハーレイと出会うの、もっと後でないと…)
入園式は、ぼくは風邪でお休みするとか、と「出会いの瞬間」を先延ばしにする。
ついでに再会を果たす時にも、周りに他の子供がいない方が良さそう。
(…遅れて入って、ウサギ小屋を覗き込んでる時くらいかな…)
ハーレイが近付いて来て、「ウサギ見てるのか?」と声を掛けてくれて、振り向いた瞬間。
(それなら、聖痕が出ても、泣き出しちゃう子供は少なめ…)
被害は最小限で済みそうだよ、と考えたものの、それから後もかなり厄介。
幼稚園の先生か、幼稚園バスの運転手のハーレイも、恐らく「人気者」だろう。
他の子たちに引っ張りだこで、幼稚園では、ブルーが近付けるチャンスは少なそう。
(守り役だって、どうなるのかな…?)
学校に行くまでの間だけで終わりそうだし、と溜息が零れ落ちてしまう。
幼稚園の先生などのハーレイだった場合は、学校に入った時点で、多分、お別れ。
困っちゃうよね、とブルーは「今の出会い」に感謝する。
今の学校で出会ったからこそ、結婚までの待ち時間も少ない上に、一緒にいられる時間も多い。
(それに、ハーレイが家に来たって…)
座って貰うための椅子もある上、テーブルもある。
ブルーが寝込んでいる時に尋ねて来てくれても、ハーレイは其処で過ごしている。
(本棚もあるから、目に付いた本を取って読めるし…)
いいことずくめの部屋なんだから、と眺め回して、ハタと気付いた。
(出会った場所が、幼稚園だったら…)
ハーレイは「大人が過ごすには、退屈すぎる部屋」で、長い時間を費やす羽目に陥る。
幼稚園時代のブルーに、「お茶の時間」は存在しなかった。
(…お茶じゃなくって、おやつの時間で…)
母はティーセットを用意しないで、カップにミルクやココアを入れて渡してくれた。
お菓子は今と変わらなくても、お皿は小ぶりな「幼児用」だった。
(…ハーレイ先生が来てくれるから、って…)
母がティーセットを出して来るとは思えない。
ハーレイが好むコーヒーを淹れて、お菓子の皿とセットで、トレイに乗っけて…。
(絨毯の上に置いて行くのか、ちょっとした台を据えて、其処に置くのか…)
どちらにしたって、ブルーと「テーブルを挟んで、向かい合わせ」の時間にはならない。
お茶の時間を楽しむと言うより、ハーレイもブルーも、マイペースで「おやつ」を味わう。
(ぼくは積み木で遊んだりしてる合間に…)
少しずつ食べて、ハーレイは、微笑みながらコーヒー片手に「見守り」だろう。
(…そんな時間に、キスを強請りに出掛けても…)
断られてしまう以前に、様にならない。
頬っぺたに「お菓子の欠片」をくっつけたブルーが、「ぼくにキスして」では、笑われるだけ。
(おまけに、ハーレイに抱き付こうとしても…)
ぼくの身体が小さすぎるし、背中まで手が回らないかも、とブルーは愕然とさせられた。
まるで似合わない「恋人同士」で、今よりも酷くて情けない感じになって来る。
(…ハーレイと出会ったの、幼稚園だったら…)
二人きりで過ごす時間があっても、噛み合わないよ、と頭の中がぐるぐるしそう。
そういう出会いだった時には、きっと後まで笑い話で、ハーレイにからかわれ続ける人生。
(そんな人生、嫌すぎるから…!)
もっと早くに出会いたかったけど、と思いはしても、限界がある。
幼稚園での再会は「早すぎる」上に、尾を引きそうだから、諦めておこう。
ハーレイとの出会いの場所が幼稚園だったら、ハーレイには似合わない恋人だから…。
幼稚園だったら・了
※ハーレイ先生と出会った場所が幼稚園だったら、と想像してみたブルー君ですけど。
今よりも厄介な日々になりそう。第一、ハーレイ先生と釣り合いが取れないらしいですv
(幼稚園なら、って話もあったっけな…)
そういえば、とハーレイが、ふと思い出したこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
生まれ変わって再び出会えた、愛おしい人との再会の場所は学校だった。
そのブルーと何度も話した間に、幼稚園説が出て来た。
(あいつが幼稚園児の頃に出会えていたら、と話したんだが…)
幼稚園で出会っていたなら、どうなったろう、とハーレイは気になり始めた。
(公園とかで会うのは、ありがちなんだが…)
そのものズバリは、かなり難しそう。
幼稚園という場所柄、部外者が訪れることは殆ど無い。
(親が行くのも、参観日とかで…)
それ以外の者が訪問するなら、学校活動の一環で出掛ける程度。
幼稚園の子供たちが「出て来る」機会の方が何倍も多い。
(…ふうむ…)
出会いからしてハードルが高いぞ、とハーレイは、この難題に取り組むことにした。
ブルーと幼稚園で出会うためには、ハーレイも幼稚園に入らないといけない。
今の学校は、下の学校と違って、幼稚園の子たちと一緒に動く行事は無かった。
(…俺に子供がいるわけじゃないし、どうやって入り込んだモンだか…)
関係者になるしか道は無いな、と思うし、それが手っ取り早そうだ。
幼稚園の先生になるか、送迎バスの運転手になって、雑用などもこなす立場か。
(…あいつの側にいる時間を、たっぷり取りたかったら、先生だな…)
柔道も水泳も、まるで出番は無さそうだが、と悔しいけれども、贅沢は言えない。
古典の教師の道に行かずに、幼稚園の先生になれる道を真っ直ぐ進んで、幼稚園へ。
(そもそも、そこからして有り得ない気が…)
してしまうだけに厳しそうだ、と前提条件の時点で、つまずいてしまいそう。
「やはり俺には向いていない」と、進路変更、結局は古典の教師で落ち着くコース。
(…出会いの場には、向いてないんだ…)
幼稚園ってトコはな、と深い溜息が零れ落ちてしまう。
出会う前から門前払いで、幼稚園には入れないのが「ハーレイ」らしい。
(…その辺の所は、ご都合主義で…)
おとぎ話のように上手く乗り越え、幼稚園の先生になれていたなら、どうなるだろう。
ブルーが入園してくるまでの間は、「ハーレイ先生」と慕われるだろうか。
(…身体がデカいし、肩車もしてやれるしな…)
絨毯などが敷いてある場所なら、子供たちを乗せて馬になるのも、お安い御用。
一度に三人くらいは乗せられそうだし、かなり人気が高いかもしれない.
(…順風満帆で先生をやっていたら、ある日、ブルーが入園して来て…)
その場で聖痕が現れ、血塗れの姿になるというのは変わらない。
(今の学校の時と同じで、大騒ぎで…)
俺が救急車に乗って付き添いなんだ、と「実際にあった出来事」と、やっと繋がった。
ブルーの記憶も、ハーレイの記憶も戻って来るから、暫くの間は、同じように時が流れる。
互いに再会を喜び合って、時間を共有出来るけれども…。
(…なにしろ、あいつは幼稚園児で…)
扱い方が難しそうだ、と次の難問が降って来た。
十四歳のブルーでさえも、何かと我儘、困らされている恋人ではある。
幼稚園児のブルーとなったら、その比ではないように思えてしまう。
(…そうでなくても、我慢が出来ない年の頃だし…)
約束事を決めてみたって、ブルーには、きっと守れない。
「幼稚園では、俺を先生らしく扱え」と教え込んでも、遠慮しないで親し気に話す。
他の子たちが「ハーレイ先生」と呼んでいる中、ブルーだけが「ハーレイ」と呼び掛けて。
(その上、下手に親しいモンだから…)
肩車も馬も、他の子たちが並んで待つ中、割り込んで来そう。
「ハーレイ、ぼくにも!」と列をかき分け、悪びれもしないで先頭に立って。
(俺が「こら、並ばないとダメじゃないか!」と叱ったら…)
たちまちフグのように膨れっ面か、でなければ大きな声で泣き出す。
「ハーレイ先生、酷い!」と、自分が悪かったことなど、考えもせずに棚に上げて大泣き。
(…泣き声を聞いて、他の先生が…)
飛んで来るのは目に見えているし、ハーレイが叱られる方かもしれない。
「ブルー君の気持ちも、考えてあげて」と、子供は我慢が出来ないことを説かれて。
「もっと優しい言い方をして、分かりやすく!」と、お説教まで食らいそう。
もちろんブルーは、お説教の間も、「お話、まだ終わらないのかな?」と無邪気に待つだけ。
なんてこった、とハーレイは軽く頭痛がして来た。
幼稚園でのブルーとの出会いは、再会した後も「ご難続き」の日々らしい。
人気者の「ハーレイ先生」を巡って、ブルーの独占欲が発揮される。
(仕事帰りに、あいつの家に寄るのは、控えないとな…)
でなきゃ一層、増長するぞ、と思うものだから、会える時間は今よりも減ることだろう。
幼すぎるブルーが「ハーレイ先生は、ぼくだけの先生」と勘違いしないよう、距離を取る。
(…今のあいつよりも、何倍も厄介…)
いくら中身が「ブルー」でもな、と容易に想像出来てしまう。
今のブルーでも、前のブルーに比べて「抑えが効かない」。
幼稚園児のブルーとなったら、我儘放題、コントロールは不可能に近い。
(…自制心を、と教え込んでも、その自制心が…)
備わる前の時代なんだ、と分かっているから、どうにもならない。
ブルーが育って「分別がつく」年頃になるまで、トラブル続きの日かもしれない。
(ハーレイ先生は、ブルーも、他の子も、お気に入りのオモチャで…)
奪い合いしては大騒ぎなのか、とハーレイは書斎の天井を仰いだ。
「幼稚園時代のブルー」はともかく、「幼稚園での出会い」を避けられたのは幸運だった。
(…もしも出会いが、幼稚園なら…)
俺が幼稚園の先生だったら、と溜息しか出ない有様なのだし、今の出会いでいいのだろう。
今のブルーも、かなり厄介な「ませた子供」とはいえ、幼稚園児のブルーよりはマシ。
(…出会ってた場所が幼稚園なら、ご難続きで卒園してった後もだな…)
付き合いが続いて、今のブルーの時代もやって来るんだ、とハーレイは軽く肩を竦めた。
(幼稚園で出会って、あいつが結婚出来る年になるまで…)
待ちぼうけどころか、受難までだぞ、と思うものだから、神様に感謝するしかない。
「今の出会いで幸運でした」と、振り回される年数が少なめなことを…。
幼稚園なら・了
※もしも、ブルー君と幼稚園で出会っていたら、と考えてみたハーレイ先生。
幼稚園の先生のハーレイの奪い合いとか、トラブルが多そう。今の出会いが一番ですよねv
そういえば、とハーレイが、ふと思い出したこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
生まれ変わって再び出会えた、愛おしい人との再会の場所は学校だった。
そのブルーと何度も話した間に、幼稚園説が出て来た。
(あいつが幼稚園児の頃に出会えていたら、と話したんだが…)
幼稚園で出会っていたなら、どうなったろう、とハーレイは気になり始めた。
(公園とかで会うのは、ありがちなんだが…)
そのものズバリは、かなり難しそう。
幼稚園という場所柄、部外者が訪れることは殆ど無い。
(親が行くのも、参観日とかで…)
それ以外の者が訪問するなら、学校活動の一環で出掛ける程度。
幼稚園の子供たちが「出て来る」機会の方が何倍も多い。
(…ふうむ…)
出会いからしてハードルが高いぞ、とハーレイは、この難題に取り組むことにした。
ブルーと幼稚園で出会うためには、ハーレイも幼稚園に入らないといけない。
今の学校は、下の学校と違って、幼稚園の子たちと一緒に動く行事は無かった。
(…俺に子供がいるわけじゃないし、どうやって入り込んだモンだか…)
関係者になるしか道は無いな、と思うし、それが手っ取り早そうだ。
幼稚園の先生になるか、送迎バスの運転手になって、雑用などもこなす立場か。
(…あいつの側にいる時間を、たっぷり取りたかったら、先生だな…)
柔道も水泳も、まるで出番は無さそうだが、と悔しいけれども、贅沢は言えない。
古典の教師の道に行かずに、幼稚園の先生になれる道を真っ直ぐ進んで、幼稚園へ。
(そもそも、そこからして有り得ない気が…)
してしまうだけに厳しそうだ、と前提条件の時点で、つまずいてしまいそう。
「やはり俺には向いていない」と、進路変更、結局は古典の教師で落ち着くコース。
(…出会いの場には、向いてないんだ…)
幼稚園ってトコはな、と深い溜息が零れ落ちてしまう。
出会う前から門前払いで、幼稚園には入れないのが「ハーレイ」らしい。
(…その辺の所は、ご都合主義で…)
おとぎ話のように上手く乗り越え、幼稚園の先生になれていたなら、どうなるだろう。
ブルーが入園してくるまでの間は、「ハーレイ先生」と慕われるだろうか。
(…身体がデカいし、肩車もしてやれるしな…)
絨毯などが敷いてある場所なら、子供たちを乗せて馬になるのも、お安い御用。
一度に三人くらいは乗せられそうだし、かなり人気が高いかもしれない.
(…順風満帆で先生をやっていたら、ある日、ブルーが入園して来て…)
その場で聖痕が現れ、血塗れの姿になるというのは変わらない。
(今の学校の時と同じで、大騒ぎで…)
俺が救急車に乗って付き添いなんだ、と「実際にあった出来事」と、やっと繋がった。
ブルーの記憶も、ハーレイの記憶も戻って来るから、暫くの間は、同じように時が流れる。
互いに再会を喜び合って、時間を共有出来るけれども…。
(…なにしろ、あいつは幼稚園児で…)
扱い方が難しそうだ、と次の難問が降って来た。
十四歳のブルーでさえも、何かと我儘、困らされている恋人ではある。
幼稚園児のブルーとなったら、その比ではないように思えてしまう。
(…そうでなくても、我慢が出来ない年の頃だし…)
約束事を決めてみたって、ブルーには、きっと守れない。
「幼稚園では、俺を先生らしく扱え」と教え込んでも、遠慮しないで親し気に話す。
他の子たちが「ハーレイ先生」と呼んでいる中、ブルーだけが「ハーレイ」と呼び掛けて。
(その上、下手に親しいモンだから…)
肩車も馬も、他の子たちが並んで待つ中、割り込んで来そう。
「ハーレイ、ぼくにも!」と列をかき分け、悪びれもしないで先頭に立って。
(俺が「こら、並ばないとダメじゃないか!」と叱ったら…)
たちまちフグのように膨れっ面か、でなければ大きな声で泣き出す。
「ハーレイ先生、酷い!」と、自分が悪かったことなど、考えもせずに棚に上げて大泣き。
(…泣き声を聞いて、他の先生が…)
飛んで来るのは目に見えているし、ハーレイが叱られる方かもしれない。
「ブルー君の気持ちも、考えてあげて」と、子供は我慢が出来ないことを説かれて。
「もっと優しい言い方をして、分かりやすく!」と、お説教まで食らいそう。
もちろんブルーは、お説教の間も、「お話、まだ終わらないのかな?」と無邪気に待つだけ。
なんてこった、とハーレイは軽く頭痛がして来た。
幼稚園でのブルーとの出会いは、再会した後も「ご難続き」の日々らしい。
人気者の「ハーレイ先生」を巡って、ブルーの独占欲が発揮される。
(仕事帰りに、あいつの家に寄るのは、控えないとな…)
でなきゃ一層、増長するぞ、と思うものだから、会える時間は今よりも減ることだろう。
幼すぎるブルーが「ハーレイ先生は、ぼくだけの先生」と勘違いしないよう、距離を取る。
(…今のあいつよりも、何倍も厄介…)
いくら中身が「ブルー」でもな、と容易に想像出来てしまう。
今のブルーでも、前のブルーに比べて「抑えが効かない」。
幼稚園児のブルーとなったら、我儘放題、コントロールは不可能に近い。
(…自制心を、と教え込んでも、その自制心が…)
備わる前の時代なんだ、と分かっているから、どうにもならない。
ブルーが育って「分別がつく」年頃になるまで、トラブル続きの日かもしれない。
(ハーレイ先生は、ブルーも、他の子も、お気に入りのオモチャで…)
奪い合いしては大騒ぎなのか、とハーレイは書斎の天井を仰いだ。
「幼稚園時代のブルー」はともかく、「幼稚園での出会い」を避けられたのは幸運だった。
(…もしも出会いが、幼稚園なら…)
俺が幼稚園の先生だったら、と溜息しか出ない有様なのだし、今の出会いでいいのだろう。
今のブルーも、かなり厄介な「ませた子供」とはいえ、幼稚園児のブルーよりはマシ。
(…出会ってた場所が幼稚園なら、ご難続きで卒園してった後もだな…)
付き合いが続いて、今のブルーの時代もやって来るんだ、とハーレイは軽く肩を竦めた。
(幼稚園で出会って、あいつが結婚出来る年になるまで…)
待ちぼうけどころか、受難までだぞ、と思うものだから、神様に感謝するしかない。
「今の出会いで幸運でした」と、振り回される年数が少なめなことを…。
幼稚園なら・了
※もしも、ブルー君と幼稚園で出会っていたら、と考えてみたハーレイ先生。
幼稚園の先生のハーレイの奪い合いとか、トラブルが多そう。今の出会いが一番ですよねv
