忍者ブログ

幼稚園だったら
(ウサギになりたかったんだよね…)
 幼稚園だった頃には、と小さなブルーは、ふと思い出した。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…本気でウサギになりたかったけど…)
 あの時、ウサギになれていたなら、ハーレイとの出会いも変わっていたろう。
 ウサギのブルーは、今の学校に行きはしないし、いったい何処で出会えたのか。
(ぼくは野原で、ハーレイがドライブして来て、散歩していて…)
 ブルーを見付けて連れて帰って、飼ってくれるのかもしれない。
(ハーレイ、ウサギの言葉が分かるのかな?)
 それとも、ぼくがウサギだったら、思念波を使いこなせるのかな、などと考えてみる。
 ハーレイに「ウサギの恋人」が出来た場合は、暮らしぶりも変わってしまいそう。
(学校に行くのに、ウサギ連れって…)
 難しいよね、とブルーは可笑しくなった。
 幼稚園ならともかく、今の学校にウサギを飼っている小屋は無い。
 何処の学校も事情は同じで、ウサギ小屋は、下の学校の一部にある程度。
(ウサギ小屋があったら、授業の間は、此処にいてくれ、って…)
 ハーレイが入れて行ってくれれば、帰りまで待つ。
 他のウサギと一緒に食事で、遊んだり、寒い日には寄り添い合って温め合ったり。
(ウサギ小屋があれば、いいんだけどね…)
 残念ながら無いとなったら、ブルーの居場所は、学校には無い。
(…出掛ける前には、ペットホテルに寄って行くのかな?)
 仕事が終わるまでの間は、其処で待つことになりそう。
 他にも待っている仲間がいたって、ウサギではなくて犬や猫かもしれない。
(うーん…)
 つまらなさそう、と思うけれども、仕方ないから、慣れるしかない。


 ウサギになっていなくて良かったよね、とブルーは、ホッと安心した。
 同じ人間として再会したから、今の暮らしを満喫出来る。
 不満な部分も多いとはいえ、結婚出来る年に育つ頃には、全て解消しているだろう。
(ぼくの背丈が、前のぼくだった頃と同じになったら…)
 ハーレイとキスも出来るし、デートにも行ける。
 ほんの数年だけの我慢で、それまでの間は耐えるしかない。
(あと十年とかじゃないから…)
 幼稚園の頃とは違うものね、と振り返ってみて、ウサギ小屋のあった場所を思い浮かべる。
 ハーレイが「ウサギになったブルー」と再会するより、幼稚園時代に出会った方が厄介そう。
(…結婚出来る年になるまで、十年以上も…)
 ひたすら耐えて我慢の日々が続いて、キスもデートも、全て「おあずけ」。
(…あんまりすぎるよ…)
 おまけに、ぼくも小さすぎるし、とブルーは部屋を見回した。
 今は大きなベッドが置いてあるけれど、幼稚園の頃には、もっと小さなベッドだった。
 部屋が広々していた記憶は、子供用ベッドのせいだけではない。
(勉強机も置いていないし、窓の所の、テーブルと椅子も…)
 幼稚園時代のブルーは、一つも持っていなかった。
 代わりに絨毯の上にクッション、オモチャが入った箱や、積み木の箱が置かれていた。
(…本棚も無くて、絵本も専用の場所があっただけ…)
 ハーレイを呼ぶには、子供じみてる、とブルーは頭を抱えてしまった。
 せっかく再会出来たというのに、ハーレイが恋人の部屋に来たなら、興覚めだろう。


(…何処で出会って、聖痕がどうなったのかとかも、ややこしそうで…)
 幼稚園だったら大変だよね、と容易に想像がつく。
 ハーレイが「幼稚園の先生」だとか、「幼稚園バスの運転手」でないと出会えなさそう。
(入園式で聖痕が出たら、大騒ぎになっちゃう…)
 泣き出す子だけで済めばいいけど、と恐ろしくなった。
 幼い子供は、「出血だけで怪我はしていない」聖痕現象などは理解出来ない。
 パニックを起こして、倒れてしまう子も出るかもしれない。
(…ハーレイと出会うの、もっと後でないと…)
 入園式は、ぼくは風邪でお休みするとか、と「出会いの瞬間」を先延ばしにする。
 ついでに再会を果たす時にも、周りに他の子供がいない方が良さそう。
(…遅れて入って、ウサギ小屋を覗き込んでる時くらいかな…)
 ハーレイが近付いて来て、「ウサギ見てるのか?」と声を掛けてくれて、振り向いた瞬間。
(それなら、聖痕が出ても、泣き出しちゃう子供は少なめ…)
 被害は最小限で済みそうだよ、と考えたものの、それから後もかなり厄介。
 幼稚園の先生か、幼稚園バスの運転手のハーレイも、恐らく「人気者」だろう。
 他の子たちに引っ張りだこで、幼稚園では、ブルーが近付けるチャンスは少なそう。
(守り役だって、どうなるのかな…?)
 学校に行くまでの間だけで終わりそうだし、と溜息が零れ落ちてしまう。
 幼稚園の先生などのハーレイだった場合は、学校に入った時点で、多分、お別れ。


 困っちゃうよね、とブルーは「今の出会い」に感謝する。
 今の学校で出会ったからこそ、結婚までの待ち時間も少ない上に、一緒にいられる時間も多い。
(それに、ハーレイが家に来たって…)
 座って貰うための椅子もある上、テーブルもある。
 ブルーが寝込んでいる時に尋ねて来てくれても、ハーレイは其処で過ごしている。
(本棚もあるから、目に付いた本を取って読めるし…)
 いいことずくめの部屋なんだから、と眺め回して、ハタと気付いた。
(出会った場所が、幼稚園だったら…)
 ハーレイは「大人が過ごすには、退屈すぎる部屋」で、長い時間を費やす羽目に陥る。
 幼稚園時代のブルーに、「お茶の時間」は存在しなかった。
(…お茶じゃなくって、おやつの時間で…)
 母はティーセットを用意しないで、カップにミルクやココアを入れて渡してくれた。
 お菓子は今と変わらなくても、お皿は小ぶりな「幼児用」だった。
(…ハーレイ先生が来てくれるから、って…)
 母がティーセットを出して来るとは思えない。
 ハーレイが好むコーヒーを淹れて、お菓子の皿とセットで、トレイに乗っけて…。
(絨毯の上に置いて行くのか、ちょっとした台を据えて、其処に置くのか…)
 どちらにしたって、ブルーと「テーブルを挟んで、向かい合わせ」の時間にはならない。
 お茶の時間を楽しむと言うより、ハーレイもブルーも、マイペースで「おやつ」を味わう。
(ぼくは積み木で遊んだりしてる合間に…)
 少しずつ食べて、ハーレイは、微笑みながらコーヒー片手に「見守り」だろう。


(…そんな時間に、キスを強請りに出掛けても…)
 断られてしまう以前に、様にならない。
 頬っぺたに「お菓子の欠片」をくっつけたブルーが、「ぼくにキスして」では、笑われるだけ。
(おまけに、ハーレイに抱き付こうとしても…)
 ぼくの身体が小さすぎるし、背中まで手が回らないかも、とブルーは愕然とさせられた。
 まるで似合わない「恋人同士」で、今よりも酷くて情けない感じになって来る。
(…ハーレイと出会ったの、幼稚園だったら…)
 二人きりで過ごす時間があっても、噛み合わないよ、と頭の中がぐるぐるしそう。
 そういう出会いだった時には、きっと後まで笑い話で、ハーレイにからかわれ続ける人生。
(そんな人生、嫌すぎるから…!)
 もっと早くに出会いたかったけど、と思いはしても、限界がある。
 幼稚園での再会は「早すぎる」上に、尾を引きそうだから、諦めておこう。
 ハーレイとの出会いの場所が幼稚園だったら、ハーレイには似合わない恋人だから…。



           幼稚園だったら・了


※ハーレイ先生と出会った場所が幼稚園だったら、と想像してみたブルー君ですけど。
 今よりも厄介な日々になりそう。第一、ハーレイ先生と釣り合いが取れないらしいですv






拍手[0回]

PR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
 管理人のみ閲覧
 
Copyright ©  -- つれづれシャングリラ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]