カテゴリー「拍手御礼」の記事一覧
「ねえ、ハーレイ。大人しい子は…」
損なのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は? 急にどうした?」
そういう場面に出くわしたのか、とハーレイは尋ねた。
今のブルーも、前のブルーも、大人しいタイプ。
(…もっとも、前のあいつの場合は…)
頑固だった分、補正されていたよな、と考えてしまう。
(確かに根っこは、大人しいんだが…)
こうと決めたら動かないんだ、と悲しい記憶が蘇った。
メギドに飛んで行った時のブルーも、そうだった。
(ナスカの仲間を、説得に行くと言っていたのに…)
実際は、船から打って出るのが目的だった。
今のブルーは、前のブルーほど頑固ではない。
十四歳にしかならないせいか、強く言ったら聞き入れる。
(前のあいつだと、有り得ないことで…)
考えてみれば損をしてるかもな、と思わないでもない。
ついでに言うなら、前のブルーも損をしていた。
大人しいのが本来だけに、自分を強く押し出しはしない。
(厨房で作った、試作メニューを食べる時にも…)
どれほど上手く出来ていようが、おかわりは無し。
皿に盛られて渡された分を食べたら、おしまいだった。
「いいと思うよ」と感想を告げて、厨房の者が勧めても…。
(ぼくはいいから、と出て行っちまって…)
残った分は、他の仲間が奪い合っていた。
ジャンケンだったり、クジを引いたり、それは楽しそうに。
すると、今のブルーは、二重に損なタイプかもしれない。
(…友達が持って来た菓子が余っちまって…)
何人か二個目を貰えそうな時に、今のブルーは主張しない。
「二個目、欲しいな」と言いはしなくて、貰えないまま。
(おまけに、最初に菓子が登場した時も…)
前のブルーの頃と違って、「ブルー用の枠」は無いだろう。
(ソルジャーじゃなくて、友達の一人というだけで…)
ブルー用の菓子を「確保しておく」必要は無い。
人数分の菓子が無ければ、ブルーが食べることは出来ない。
(六人いたって、五個しか無いって場面は多いしなあ…)
欲しい者だけ名乗り出る時、今のブルーも大人しいから…。
(名乗れなくって、枠が無いせいで…)
食べ損ねるのは確実だから、損だと言える。
前のブルーだった場合は、しない損までしている勘定。
(…ふうむ…)
さっきの質問、当然かもな、とハーレイは思い当たった。
珍しい菓子を食べ損なったとか、二個目を貰い損ねたとか。
(ありそうな話なんだよなあ…)
だったら、一押し、背中を押すか、と助言することにした。
「大人しい子は損なのか、と聞かれりゃ、そうだな」
「やっぱり…?」
ぼくって損をしているのかな、とブルーは首を傾げる。
「普段は、気にしていないんだけど…」
「美味い菓子でも、食い損なったか?」
「そんなトコかも…」
残念すぎて、とブルーが項垂れるから、ハーレイは笑んだ。
「分かってるんなら、たまには強く出るのはどうだ?」
損をするよりマシだろうが、とブルーに勧める。
「厚かましいかな、と思うくらいで丁度かもな」と。
ブルーはハーレイの言葉を聞いて、素直にコクリと頷いた。
「じゃあ、強く出てみるようにする」
「その意気だ。お前は、大人しすぎるからな」
「ありがとう、とっても参考になった!」
強く出てみるね、とブルーは、とびきりの笑顔になった。
「ハーレイ、ぼくにキスして!」
「なんだって!?」
「大人しくしてるの、やめにしておく!」
でないと損をしちゃうんだもの、とブルーは自分を指した。
「大人しく我慢してたら、未だにキスが貰えないんだよ?」
遠慮しないで言わなくっちゃ、とブルーが勝ち誇るから…。
「馬鹿野郎!」
そこは大人しくしてるべきだ、とハーレイは叱る。
「厚かましいのはお断りだ」と、「黙っていろ」と…。
大人しい子は・了
損なのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は? 急にどうした?」
そういう場面に出くわしたのか、とハーレイは尋ねた。
今のブルーも、前のブルーも、大人しいタイプ。
(…もっとも、前のあいつの場合は…)
頑固だった分、補正されていたよな、と考えてしまう。
(確かに根っこは、大人しいんだが…)
こうと決めたら動かないんだ、と悲しい記憶が蘇った。
メギドに飛んで行った時のブルーも、そうだった。
(ナスカの仲間を、説得に行くと言っていたのに…)
実際は、船から打って出るのが目的だった。
今のブルーは、前のブルーほど頑固ではない。
十四歳にしかならないせいか、強く言ったら聞き入れる。
(前のあいつだと、有り得ないことで…)
考えてみれば損をしてるかもな、と思わないでもない。
ついでに言うなら、前のブルーも損をしていた。
大人しいのが本来だけに、自分を強く押し出しはしない。
(厨房で作った、試作メニューを食べる時にも…)
どれほど上手く出来ていようが、おかわりは無し。
皿に盛られて渡された分を食べたら、おしまいだった。
「いいと思うよ」と感想を告げて、厨房の者が勧めても…。
(ぼくはいいから、と出て行っちまって…)
残った分は、他の仲間が奪い合っていた。
ジャンケンだったり、クジを引いたり、それは楽しそうに。
すると、今のブルーは、二重に損なタイプかもしれない。
(…友達が持って来た菓子が余っちまって…)
何人か二個目を貰えそうな時に、今のブルーは主張しない。
「二個目、欲しいな」と言いはしなくて、貰えないまま。
(おまけに、最初に菓子が登場した時も…)
前のブルーの頃と違って、「ブルー用の枠」は無いだろう。
(ソルジャーじゃなくて、友達の一人というだけで…)
ブルー用の菓子を「確保しておく」必要は無い。
人数分の菓子が無ければ、ブルーが食べることは出来ない。
(六人いたって、五個しか無いって場面は多いしなあ…)
欲しい者だけ名乗り出る時、今のブルーも大人しいから…。
(名乗れなくって、枠が無いせいで…)
食べ損ねるのは確実だから、損だと言える。
前のブルーだった場合は、しない損までしている勘定。
(…ふうむ…)
さっきの質問、当然かもな、とハーレイは思い当たった。
珍しい菓子を食べ損なったとか、二個目を貰い損ねたとか。
(ありそうな話なんだよなあ…)
だったら、一押し、背中を押すか、と助言することにした。
「大人しい子は損なのか、と聞かれりゃ、そうだな」
「やっぱり…?」
ぼくって損をしているのかな、とブルーは首を傾げる。
「普段は、気にしていないんだけど…」
「美味い菓子でも、食い損なったか?」
「そんなトコかも…」
残念すぎて、とブルーが項垂れるから、ハーレイは笑んだ。
「分かってるんなら、たまには強く出るのはどうだ?」
損をするよりマシだろうが、とブルーに勧める。
「厚かましいかな、と思うくらいで丁度かもな」と。
ブルーはハーレイの言葉を聞いて、素直にコクリと頷いた。
「じゃあ、強く出てみるようにする」
「その意気だ。お前は、大人しすぎるからな」
「ありがとう、とっても参考になった!」
強く出てみるね、とブルーは、とびきりの笑顔になった。
「ハーレイ、ぼくにキスして!」
「なんだって!?」
「大人しくしてるの、やめにしておく!」
でないと損をしちゃうんだもの、とブルーは自分を指した。
「大人しく我慢してたら、未だにキスが貰えないんだよ?」
遠慮しないで言わなくっちゃ、とブルーが勝ち誇るから…。
「馬鹿野郎!」
そこは大人しくしてるべきだ、とハーレイは叱る。
「厚かましいのはお断りだ」と、「黙っていろ」と…。
大人しい子は・了
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「ねえ、ハーレイ。何か、思い付いたら…」
行動に移すべきかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は?」
どういう意味だ、とハーレイは首を傾げて問い返した。
「えっとね…。ちょっと聞きたくなったから…」
聞いてみただけ、とブルーの方は、単なる好奇心らしい。
「ぼくは、どっちかと言えば、慎重な方でしょ?」
思い付きで動くのとは違うタイプ、とブルーは自分を指す。
「でも、そうじゃない人も多いし、どっちなのかな、って」
「なるほどなあ…。確かに、お前は逆になるよな」
前のお前もそうだった、とハーレイは大きく頷いた。
今も昔も、ブルーは「石橋を叩いて渡る」タイプの人間。
思い付いて直ぐに動きはしなくて、検討してから動き出す。
(…咄嗟の判断のように見えても、違うんだよな…)
凄い速さで計算しているだけだ、とハーレイは承知だった。
前のブルーは、メギドに飛んで行った時さえ、そうだろう。
(ずっと前から、そういう場面を想定していて…)
似た状況に陥った時に、自分が決めていた通りに行動した。
「自分の命は捨ててかかって、船を救う」というシナリオ。
(…前のあいつは、多すぎるくらいの危機を考慮して…)
それに応じて「どう動くべきか」を、常に頭に置いていた。
(キースの野郎が、仮死状態のトォニィを、投げた時にも…)
ブルーは素早く飛び出したけれど、とうに計算していた筈。
「地球の男」が「取りそうな手段」を、頭の中で何通りも。
(…そうでなければ、目覚めて間もない、あの身体で…)
飛び出せるものか、とハーレイには充分、分かっている。
今のブルーは、前のブルーだった頃より、マシだった。
「思い付いたら、行動に移す」部分が多い、楽観的な性格。
とはいえ、一般人と比べた場合は、そうは言えない。
(…慎重すぎるくらいに、慎重なトコがドッサリ…)
もっと気楽でいいと思うが、という気がしないでもない。
だから、ハーレイは、こう言った。
「思い付いたら、即、行動でも、いいと思うぞ」
時と場合によるんだがな、とブルーの資質も尊重しておく。
「しかし、思い付きというのも、大切なことを…」
示す言葉が、ちゃんとあるだろ、とハーレイは続けた。
「思い立ったが吉日、ってヤツ、聞いていないか?」
「知ってる!」
「ほらな、直ぐに動いて損はしない、と言う人も…」
あるって証拠だ、とハーレイはブルーに笑い掛けた。
「お前は慎重すぎるわけだが、逆もあるんだ」
たまには逆もいいと思うぞ、とハーレイは太鼓判を押す。
「これを機会に、考えてみろ」とも。
そうしたら…。
「分かった! そうしてみる!」
ブルーは椅子から立って、ハーレイの横にやって来た。
けれども、何をするわけでもなく、立っているだけ。
「おい、どうしたんだ?」
「思い付いた通りに、やっているだけ!」
気にしないで、とブルーは言うものの、気になってしまう。
何か目的があるからこそで、その目的は何なのか。
(…心を読むのは簡単なんだが、マナー違反で…)
やるべきことではないんだよな、とハーレイは溜息を零す。
ブルーの魂胆が読めない以上、放っておくしかなさそうだ。
(…まあいい、俺も好きにするさ)
茶でも飲むか、と紅茶のカップを手に取ると…。
『やった、もう少し! 早く飲んでよ!』
ブルーの心が零れたはずみに、真意がポンと伝わって来た。
『ハーレイが口を開けた所が、チャンスだってば!』
紅茶のカップを手ごと弾いて、ぼくが間に、と心の声。
「上手くいったらキスが出来る」と、ブルーは野心の塊。
「失敗したって、カップが割れるだけだよ」という考えも。
(そう来たか…!)
分かっちまった、とブルーの狙いを知れば、対処あるのみ。
油断しないで、口を開ける幅を狭くするのも手だけれど…。
「悪いが、アイスティーな気分になっちまった…」
お母さんに頼んで、氷とストロー、とハーレイは注文する。
「ついでにグラスもあると助かるんだが」と、厚かましく。
「ええっ…!?」
「そりゃまあ、礼儀知らずには違いないがな…」
思い付いたら行動なんだ、とハーレイはニッコリと笑んだ。
「たまにはこんな日だってあるさ」と、ブルーを封じて…。
思い付いたら・了
行動に移すべきかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「は?」
どういう意味だ、とハーレイは首を傾げて問い返した。
「えっとね…。ちょっと聞きたくなったから…」
聞いてみただけ、とブルーの方は、単なる好奇心らしい。
「ぼくは、どっちかと言えば、慎重な方でしょ?」
思い付きで動くのとは違うタイプ、とブルーは自分を指す。
「でも、そうじゃない人も多いし、どっちなのかな、って」
「なるほどなあ…。確かに、お前は逆になるよな」
前のお前もそうだった、とハーレイは大きく頷いた。
今も昔も、ブルーは「石橋を叩いて渡る」タイプの人間。
思い付いて直ぐに動きはしなくて、検討してから動き出す。
(…咄嗟の判断のように見えても、違うんだよな…)
凄い速さで計算しているだけだ、とハーレイは承知だった。
前のブルーは、メギドに飛んで行った時さえ、そうだろう。
(ずっと前から、そういう場面を想定していて…)
似た状況に陥った時に、自分が決めていた通りに行動した。
「自分の命は捨ててかかって、船を救う」というシナリオ。
(…前のあいつは、多すぎるくらいの危機を考慮して…)
それに応じて「どう動くべきか」を、常に頭に置いていた。
(キースの野郎が、仮死状態のトォニィを、投げた時にも…)
ブルーは素早く飛び出したけれど、とうに計算していた筈。
「地球の男」が「取りそうな手段」を、頭の中で何通りも。
(…そうでなければ、目覚めて間もない、あの身体で…)
飛び出せるものか、とハーレイには充分、分かっている。
今のブルーは、前のブルーだった頃より、マシだった。
「思い付いたら、行動に移す」部分が多い、楽観的な性格。
とはいえ、一般人と比べた場合は、そうは言えない。
(…慎重すぎるくらいに、慎重なトコがドッサリ…)
もっと気楽でいいと思うが、という気がしないでもない。
だから、ハーレイは、こう言った。
「思い付いたら、即、行動でも、いいと思うぞ」
時と場合によるんだがな、とブルーの資質も尊重しておく。
「しかし、思い付きというのも、大切なことを…」
示す言葉が、ちゃんとあるだろ、とハーレイは続けた。
「思い立ったが吉日、ってヤツ、聞いていないか?」
「知ってる!」
「ほらな、直ぐに動いて損はしない、と言う人も…」
あるって証拠だ、とハーレイはブルーに笑い掛けた。
「お前は慎重すぎるわけだが、逆もあるんだ」
たまには逆もいいと思うぞ、とハーレイは太鼓判を押す。
「これを機会に、考えてみろ」とも。
そうしたら…。
「分かった! そうしてみる!」
ブルーは椅子から立って、ハーレイの横にやって来た。
けれども、何をするわけでもなく、立っているだけ。
「おい、どうしたんだ?」
「思い付いた通りに、やっているだけ!」
気にしないで、とブルーは言うものの、気になってしまう。
何か目的があるからこそで、その目的は何なのか。
(…心を読むのは簡単なんだが、マナー違反で…)
やるべきことではないんだよな、とハーレイは溜息を零す。
ブルーの魂胆が読めない以上、放っておくしかなさそうだ。
(…まあいい、俺も好きにするさ)
茶でも飲むか、と紅茶のカップを手に取ると…。
『やった、もう少し! 早く飲んでよ!』
ブルーの心が零れたはずみに、真意がポンと伝わって来た。
『ハーレイが口を開けた所が、チャンスだってば!』
紅茶のカップを手ごと弾いて、ぼくが間に、と心の声。
「上手くいったらキスが出来る」と、ブルーは野心の塊。
「失敗したって、カップが割れるだけだよ」という考えも。
(そう来たか…!)
分かっちまった、とブルーの狙いを知れば、対処あるのみ。
油断しないで、口を開ける幅を狭くするのも手だけれど…。
「悪いが、アイスティーな気分になっちまった…」
お母さんに頼んで、氷とストロー、とハーレイは注文する。
「ついでにグラスもあると助かるんだが」と、厚かましく。
「ええっ…!?」
「そりゃまあ、礼儀知らずには違いないがな…」
思い付いたら行動なんだ、とハーレイはニッコリと笑んだ。
「たまにはこんな日だってあるさ」と、ブルーを封じて…。
思い付いたら・了
「ねえ、ハーレイ。許すことって…」
大切だと思う、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 許すって…?」
いったい何の話なんだ、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
ブルーは今朝から上機嫌で、怒っているようには見えない。
「そのままの意味だよ。例えば、ハーレイの場合だと…」
キースを許すことは出来るの、とブルーは凄い例を出した。
今の生では、未だ、キースと出会ってはいない。
ブルーもハーレイも、遠く遥かな時の彼方で出会ったきり。
けれど、その時、キースが何をしたかが問題だった。
「うーむ…。キースってか…?」
今の俺にヤツを許せと、とハーレイは思わず唸った。
前の生では、キースがブルーを撃ったことを知らなかった。
だから、後に地球の上で出会った時には、何もしていない。
(…会談を控えて、地球に降下した時なんぞには…)
キャプテンとしての立場で、国家主席のキースに挨拶した。
言葉を交わして、握手までしてしまったことを、今でも…。
(…ずっと、後悔し続けてるんだ…)
今のブルーに聞いて以来な、と小さなブルーの顔を眺める。
たとえブルーが此処にいようが、憎い仇には違いない。
(秋咲きの朝顔、品種名がキース・アニアンで…)
そうと知ったら、毟りたくなったぞ、と思うくらいに憎い。
そんなキースを許せるのか、と尋ねられたら、答えは否。
(俺は一生、ヤツを許せん!)
今の生で運良く出会えたならば、許せそうだが、と呻く。
(もしも会えたら、一発、思い切り、殴り飛ばして…)
ブルーを撃った件は、水に流せそうでも、というのが現状。
「ハーレイ、やっぱり、許せないんだ?」
「…残念ながら、俺は其処まで人間が出来ていなくて…」
とても無理だ、とハーレイは潔く白旗を掲げた。
「許すというのは、確かに大切ではあるんだが…」
「自分の気持ちが追い付かないなら、仕方ないわけ?」
「そうだな、自分を、無理に押し殺してまで…」
許すことを優先しろとは言えんな、とハーレイは苦笑する。
大の大人も出来ないことを、子供のブルーには強いれない。
「そっか、ハーレイでも無理なんだったら…」
許せなくても、許されるよね、とブルーは笑んだ。
「そうなるが…。なんだ、友達と喧嘩中なのか?」
早めの仲直りを勧めるぞ、とハーレイは提案しておく。
友人同士の喧嘩だったら、グッと堪えて許すことも大切。
そう思うから、ブルーに説こうとしたら…。
「友達じゃなくって、ハーレイだよ!」
「俺!?」
喧嘩なんぞをしてはいないぞ、とハーレイは仰天した。
今日も昨日も、その前にしても、怒らせるようなことは…。
(…していないよな…?)
どう考えても、と振り返る間に、ブルーが言った。
「許せないのは、キスだってば!」
いつも頬っぺたで、そればっかり、とブルーは膨れる。
唇にキスをしてはくれない、とフグみたいな顔で。
(……その件か……)
許せないからキスをしろ、と来たか、とハーレイは呆れた。
そういうことなら、許せないのは、ハーレイにしても同じ。
「よし、分かった。今日の所は、これで失礼しよう」
「えっ!?」
キスの話は、とブルーは驚くけれども、サラリと無視した。
「許せないっていうトコについては、俺も同じだしな?」
いくら許すことが大切だろうが、さっきの話、とニンマリ。
「キスをする気にはなれんし、今日は帰るぞ」
「ちょ、ちょっと…!」
謝るから、帰らないで、とブルーは必死で、可笑しくなる。
(…キースの話まで持ち出して、俺をだ…)
追い詰めて来たんだし、懲りておけ、とハーレイは立った。
「ではな」と、椅子をテーブルの方へと寄せて。
「少し早いが、今から帰れば、食料品店に寄って…」
美味い晩飯を作れそうだし、とブルーを脅して楽しむ。
(本当の所は、帰る気なんぞ、まるで全く…)
ありはしないが、と帰るふりをして、からかい続ける。
「たまには、こんな返り討ちもいいさ」と、扉の前で…。
許すことって・了
大切だと思う、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 許すって…?」
いったい何の話なんだ、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
ブルーは今朝から上機嫌で、怒っているようには見えない。
「そのままの意味だよ。例えば、ハーレイの場合だと…」
キースを許すことは出来るの、とブルーは凄い例を出した。
今の生では、未だ、キースと出会ってはいない。
ブルーもハーレイも、遠く遥かな時の彼方で出会ったきり。
けれど、その時、キースが何をしたかが問題だった。
「うーむ…。キースってか…?」
今の俺にヤツを許せと、とハーレイは思わず唸った。
前の生では、キースがブルーを撃ったことを知らなかった。
だから、後に地球の上で出会った時には、何もしていない。
(…会談を控えて、地球に降下した時なんぞには…)
キャプテンとしての立場で、国家主席のキースに挨拶した。
言葉を交わして、握手までしてしまったことを、今でも…。
(…ずっと、後悔し続けてるんだ…)
今のブルーに聞いて以来な、と小さなブルーの顔を眺める。
たとえブルーが此処にいようが、憎い仇には違いない。
(秋咲きの朝顔、品種名がキース・アニアンで…)
そうと知ったら、毟りたくなったぞ、と思うくらいに憎い。
そんなキースを許せるのか、と尋ねられたら、答えは否。
(俺は一生、ヤツを許せん!)
今の生で運良く出会えたならば、許せそうだが、と呻く。
(もしも会えたら、一発、思い切り、殴り飛ばして…)
ブルーを撃った件は、水に流せそうでも、というのが現状。
「ハーレイ、やっぱり、許せないんだ?」
「…残念ながら、俺は其処まで人間が出来ていなくて…」
とても無理だ、とハーレイは潔く白旗を掲げた。
「許すというのは、確かに大切ではあるんだが…」
「自分の気持ちが追い付かないなら、仕方ないわけ?」
「そうだな、自分を、無理に押し殺してまで…」
許すことを優先しろとは言えんな、とハーレイは苦笑する。
大の大人も出来ないことを、子供のブルーには強いれない。
「そっか、ハーレイでも無理なんだったら…」
許せなくても、許されるよね、とブルーは笑んだ。
「そうなるが…。なんだ、友達と喧嘩中なのか?」
早めの仲直りを勧めるぞ、とハーレイは提案しておく。
友人同士の喧嘩だったら、グッと堪えて許すことも大切。
そう思うから、ブルーに説こうとしたら…。
「友達じゃなくって、ハーレイだよ!」
「俺!?」
喧嘩なんぞをしてはいないぞ、とハーレイは仰天した。
今日も昨日も、その前にしても、怒らせるようなことは…。
(…していないよな…?)
どう考えても、と振り返る間に、ブルーが言った。
「許せないのは、キスだってば!」
いつも頬っぺたで、そればっかり、とブルーは膨れる。
唇にキスをしてはくれない、とフグみたいな顔で。
(……その件か……)
許せないからキスをしろ、と来たか、とハーレイは呆れた。
そういうことなら、許せないのは、ハーレイにしても同じ。
「よし、分かった。今日の所は、これで失礼しよう」
「えっ!?」
キスの話は、とブルーは驚くけれども、サラリと無視した。
「許せないっていうトコについては、俺も同じだしな?」
いくら許すことが大切だろうが、さっきの話、とニンマリ。
「キスをする気にはなれんし、今日は帰るぞ」
「ちょ、ちょっと…!」
謝るから、帰らないで、とブルーは必死で、可笑しくなる。
(…キースの話まで持ち出して、俺をだ…)
追い詰めて来たんだし、懲りておけ、とハーレイは立った。
「ではな」と、椅子をテーブルの方へと寄せて。
「少し早いが、今から帰れば、食料品店に寄って…」
美味い晩飯を作れそうだし、とブルーを脅して楽しむ。
(本当の所は、帰る気なんぞ、まるで全く…)
ありはしないが、と帰るふりをして、からかい続ける。
「たまには、こんな返り討ちもいいさ」と、扉の前で…。
許すことって・了
「ねえ、ハーレイ。困った時には…」
人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。
ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。
「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。
「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。
そういったわけで、正解は二つ。
ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
そうしたら…。
「あのね、チビには違いないけど…」
チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
叩いても、痛くないように。
「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。
困った時には・了
人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。
ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。
「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。
「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。
そういったわけで、正解は二つ。
ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
そうしたら…。
「あのね、チビには違いないけど…」
チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
叩いても、痛くないように。
「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。
困った時には・了
「ねえ、ハーレイ。やられっ放しは…」
良くないのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? やられっ放し?」
急にどうした、とハーレイはポカンとした。
ブルーは大人しい子だから、何かされているのだろうか。
「うん。悪戯とか、意地悪とか、色々あるでしょ?」
やり返した方がいいものなの、とブルーは続けた。
なんとも物騒な話ではある。
ハーレイは、一気に緊張した。
人間が全てミュウの今では、深刻なトラブルは起こらない。
そうなる前に、互いに思念で理解し合って、それで解決。
(しかしだ…)
子供の場合は、まだバランスが上手く取れない。
「理解し合おう」と考える前に、口や手が先に出がち。
止める係は、親や教師で、今のハーレイは教師。
もしかして俺の出番なのか、とハーレイは身構えた。
ブルーの担任ではないけれど、守り役として対処すべき。
「お前、その手のヤツで、困ってるのか?」
どうなんだ、と確認したら、ブルーはコクリと頷いた。
「ちょっぴりだけどね…。基本は仲良しだから」
「なるほどなあ…」
ありがちなヤツだ、とハーレイには直ぐに分かった。
子供同士は、歯止めが利きにくい。
最初は軽い悪戯や意地悪、それが次第に加速してゆく。
相手の気持ちが分からないから、加減も知らない。
(嫌がられていない、と勘違いして…)
大人しい子に、やっちまうんだ、と教師の勘が告げている。
きっとブルーも、巻き込まれたのだろう。
(とはいえ、もう解決の糸口、見えているよな)
俺は背中を押すだけでいい、とハーレイは少しホッとした、
こういうトラブルが起きた時には、行動力が肝になる。
「やられている子」が、「嫌だ」と気持ちを伝えること。
(口で言うのが一番なんだが、やり返すってのも…)
ストレートに伝わるから、方法の一つには違いない。
ブルーに「その気」があるのだったら、そうしてもいい。
(もっとも、こいつに、出来るんだろうか?)
なんと言っても、ブルーだしな、と心配ではある。
大人しい上に、前の生では「ソルジャー・ブルー」。
「自分一人が我慢すれば」で、メギドまで飛んだほど。
(…どうするかなあ…)
背中の押し方、と悩ましい。
「やり返していい」と言った所で、ブルーが従うかどうか。
それでも、此処は押すべきだろう。
勢いをつけてやらないと、と励ましてやることにした。
「そうだな、やり返すというのも、止めはしないぞ」
一発、ガツンとやって来い、とハーレイはウインクした。
「悪戯なんだか、意地悪なんだか、俺は知らんが」
「やり返してやった方がいいわけ?」
じっと我慢をしてるよりも、とブルーが確認する。
「ホントにいいの?」と、赤い瞳を瞬かせて。
「ああ。でないと、ソレは収まらんしな」
お前のサイオンは不器用すぎて、とハーレイは付け加える。
「普通だったら、なんとなくでも伝わることもあるが…」
「ぼくだと、ぼくの気持ちは、分かって貰えないしね…」
「そういうことだ。親や教師の出番が来ちまう」
まず、お互いを理解しろ、と割って入りに、と苦笑い。
「そうなる前に、やり返してやれ」
相手に気持ちを伝えるんだ、とハーレイは背中を押した。
「遠慮しないで、ガッツンとな!」
やられた通りにやって来い、とブルーを励ます。
そうしたら…。
「分かった、ハーレイ、意地悪で嫌い!」
大嫌いだってば、とブルーは拳をグッと握った。
「やり返してやる!」
いつも叩かれてばかりだしね、とハーレイの頭をゴッツン。
椅子から立って、パッと側に来て、真上から一発。
「うわっ、何をするんだ!?」
「ハーレイ、自分で言ったじゃない!」
やり返した方がいいって、とブルーは勝ち誇った笑み。
「キスの代わりに、コレばっかりだもの!」
悪戯なのか、意地悪なのか、分かんないけど、という理屈。
(……うーむ……)
逆の立場になっちまった、とハーレイは頭を抱えるだけ。
ブルーが言うのも、一理あるから。
いくら理由を並べてみたって、ブルーから見れば意地悪。
(…やり返されるしかないよなあ…)
痛かったぞ、と白旗を掲げて、仲直り。
キスはしないで、ひたすら「すまん」と謝り続けて…。
やられっ放しは・了
良くないのかな、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? やられっ放し?」
急にどうした、とハーレイはポカンとした。
ブルーは大人しい子だから、何かされているのだろうか。
「うん。悪戯とか、意地悪とか、色々あるでしょ?」
やり返した方がいいものなの、とブルーは続けた。
なんとも物騒な話ではある。
ハーレイは、一気に緊張した。
人間が全てミュウの今では、深刻なトラブルは起こらない。
そうなる前に、互いに思念で理解し合って、それで解決。
(しかしだ…)
子供の場合は、まだバランスが上手く取れない。
「理解し合おう」と考える前に、口や手が先に出がち。
止める係は、親や教師で、今のハーレイは教師。
もしかして俺の出番なのか、とハーレイは身構えた。
ブルーの担任ではないけれど、守り役として対処すべき。
「お前、その手のヤツで、困ってるのか?」
どうなんだ、と確認したら、ブルーはコクリと頷いた。
「ちょっぴりだけどね…。基本は仲良しだから」
「なるほどなあ…」
ありがちなヤツだ、とハーレイには直ぐに分かった。
子供同士は、歯止めが利きにくい。
最初は軽い悪戯や意地悪、それが次第に加速してゆく。
相手の気持ちが分からないから、加減も知らない。
(嫌がられていない、と勘違いして…)
大人しい子に、やっちまうんだ、と教師の勘が告げている。
きっとブルーも、巻き込まれたのだろう。
(とはいえ、もう解決の糸口、見えているよな)
俺は背中を押すだけでいい、とハーレイは少しホッとした、
こういうトラブルが起きた時には、行動力が肝になる。
「やられている子」が、「嫌だ」と気持ちを伝えること。
(口で言うのが一番なんだが、やり返すってのも…)
ストレートに伝わるから、方法の一つには違いない。
ブルーに「その気」があるのだったら、そうしてもいい。
(もっとも、こいつに、出来るんだろうか?)
なんと言っても、ブルーだしな、と心配ではある。
大人しい上に、前の生では「ソルジャー・ブルー」。
「自分一人が我慢すれば」で、メギドまで飛んだほど。
(…どうするかなあ…)
背中の押し方、と悩ましい。
「やり返していい」と言った所で、ブルーが従うかどうか。
それでも、此処は押すべきだろう。
勢いをつけてやらないと、と励ましてやることにした。
「そうだな、やり返すというのも、止めはしないぞ」
一発、ガツンとやって来い、とハーレイはウインクした。
「悪戯なんだか、意地悪なんだか、俺は知らんが」
「やり返してやった方がいいわけ?」
じっと我慢をしてるよりも、とブルーが確認する。
「ホントにいいの?」と、赤い瞳を瞬かせて。
「ああ。でないと、ソレは収まらんしな」
お前のサイオンは不器用すぎて、とハーレイは付け加える。
「普通だったら、なんとなくでも伝わることもあるが…」
「ぼくだと、ぼくの気持ちは、分かって貰えないしね…」
「そういうことだ。親や教師の出番が来ちまう」
まず、お互いを理解しろ、と割って入りに、と苦笑い。
「そうなる前に、やり返してやれ」
相手に気持ちを伝えるんだ、とハーレイは背中を押した。
「遠慮しないで、ガッツンとな!」
やられた通りにやって来い、とブルーを励ます。
そうしたら…。
「分かった、ハーレイ、意地悪で嫌い!」
大嫌いだってば、とブルーは拳をグッと握った。
「やり返してやる!」
いつも叩かれてばかりだしね、とハーレイの頭をゴッツン。
椅子から立って、パッと側に来て、真上から一発。
「うわっ、何をするんだ!?」
「ハーレイ、自分で言ったじゃない!」
やり返した方がいいって、とブルーは勝ち誇った笑み。
「キスの代わりに、コレばっかりだもの!」
悪戯なのか、意地悪なのか、分かんないけど、という理屈。
(……うーむ……)
逆の立場になっちまった、とハーレイは頭を抱えるだけ。
ブルーが言うのも、一理あるから。
いくら理由を並べてみたって、ブルーから見れば意地悪。
(…やり返されるしかないよなあ…)
痛かったぞ、と白旗を掲げて、仲直り。
キスはしないで、ひたすら「すまん」と謝り続けて…。
やられっ放しは・了
