幼稚園なら
(幼稚園なら、って話もあったっけな…)
そういえば、とハーレイが、ふと思い出したこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
生まれ変わって再び出会えた、愛おしい人との再会の場所は学校だった。
そのブルーと何度も話した間に、幼稚園説が出て来た。
(あいつが幼稚園児の頃に出会えていたら、と話したんだが…)
幼稚園で出会っていたなら、どうなったろう、とハーレイは気になり始めた。
(公園とかで会うのは、ありがちなんだが…)
そのものズバリは、かなり難しそう。
幼稚園という場所柄、部外者が訪れることは殆ど無い。
(親が行くのも、参観日とかで…)
それ以外の者が訪問するなら、学校活動の一環で出掛ける程度。
幼稚園の子供たちが「出て来る」機会の方が何倍も多い。
(…ふうむ…)
出会いからしてハードルが高いぞ、とハーレイは、この難題に取り組むことにした。
ブルーと幼稚園で出会うためには、ハーレイも幼稚園に入らないといけない。
今の学校は、下の学校と違って、幼稚園の子たちと一緒に動く行事は無かった。
(…俺に子供がいるわけじゃないし、どうやって入り込んだモンだか…)
関係者になるしか道は無いな、と思うし、それが手っ取り早そうだ。
幼稚園の先生になるか、送迎バスの運転手になって、雑用などもこなす立場か。
(…あいつの側にいる時間を、たっぷり取りたかったら、先生だな…)
柔道も水泳も、まるで出番は無さそうだが、と悔しいけれども、贅沢は言えない。
古典の教師の道に行かずに、幼稚園の先生になれる道を真っ直ぐ進んで、幼稚園へ。
(そもそも、そこからして有り得ない気が…)
してしまうだけに厳しそうだ、と前提条件の時点で、つまずいてしまいそう。
「やはり俺には向いていない」と、進路変更、結局は古典の教師で落ち着くコース。
(…出会いの場には、向いてないんだ…)
幼稚園ってトコはな、と深い溜息が零れ落ちてしまう。
出会う前から門前払いで、幼稚園には入れないのが「ハーレイ」らしい。
(…その辺の所は、ご都合主義で…)
おとぎ話のように上手く乗り越え、幼稚園の先生になれていたなら、どうなるだろう。
ブルーが入園してくるまでの間は、「ハーレイ先生」と慕われるだろうか。
(…身体がデカいし、肩車もしてやれるしな…)
絨毯などが敷いてある場所なら、子供たちを乗せて馬になるのも、お安い御用。
一度に三人くらいは乗せられそうだし、かなり人気が高いかもしれない.
(…順風満帆で先生をやっていたら、ある日、ブルーが入園して来て…)
その場で聖痕が現れ、血塗れの姿になるというのは変わらない。
(今の学校の時と同じで、大騒ぎで…)
俺が救急車に乗って付き添いなんだ、と「実際にあった出来事」と、やっと繋がった。
ブルーの記憶も、ハーレイの記憶も戻って来るから、暫くの間は、同じように時が流れる。
互いに再会を喜び合って、時間を共有出来るけれども…。
(…なにしろ、あいつは幼稚園児で…)
扱い方が難しそうだ、と次の難問が降って来た。
十四歳のブルーでさえも、何かと我儘、困らされている恋人ではある。
幼稚園児のブルーとなったら、その比ではないように思えてしまう。
(…そうでなくても、我慢が出来ない年の頃だし…)
約束事を決めてみたって、ブルーには、きっと守れない。
「幼稚園では、俺を先生らしく扱え」と教え込んでも、遠慮しないで親し気に話す。
他の子たちが「ハーレイ先生」と呼んでいる中、ブルーだけが「ハーレイ」と呼び掛けて。
(その上、下手に親しいモンだから…)
肩車も馬も、他の子たちが並んで待つ中、割り込んで来そう。
「ハーレイ、ぼくにも!」と列をかき分け、悪びれもしないで先頭に立って。
(俺が「こら、並ばないとダメじゃないか!」と叱ったら…)
たちまちフグのように膨れっ面か、でなければ大きな声で泣き出す。
「ハーレイ先生、酷い!」と、自分が悪かったことなど、考えもせずに棚に上げて大泣き。
(…泣き声を聞いて、他の先生が…)
飛んで来るのは目に見えているし、ハーレイが叱られる方かもしれない。
「ブルー君の気持ちも、考えてあげて」と、子供は我慢が出来ないことを説かれて。
「もっと優しい言い方をして、分かりやすく!」と、お説教まで食らいそう。
もちろんブルーは、お説教の間も、「お話、まだ終わらないのかな?」と無邪気に待つだけ。
なんてこった、とハーレイは軽く頭痛がして来た。
幼稚園でのブルーとの出会いは、再会した後も「ご難続き」の日々らしい。
人気者の「ハーレイ先生」を巡って、ブルーの独占欲が発揮される。
(仕事帰りに、あいつの家に寄るのは、控えないとな…)
でなきゃ一層、増長するぞ、と思うものだから、会える時間は今よりも減ることだろう。
幼すぎるブルーが「ハーレイ先生は、ぼくだけの先生」と勘違いしないよう、距離を取る。
(…今のあいつよりも、何倍も厄介…)
いくら中身が「ブルー」でもな、と容易に想像出来てしまう。
今のブルーでも、前のブルーに比べて「抑えが効かない」。
幼稚園児のブルーとなったら、我儘放題、コントロールは不可能に近い。
(…自制心を、と教え込んでも、その自制心が…)
備わる前の時代なんだ、と分かっているから、どうにもならない。
ブルーが育って「分別がつく」年頃になるまで、トラブル続きの日かもしれない。
(ハーレイ先生は、ブルーも、他の子も、お気に入りのオモチャで…)
奪い合いしては大騒ぎなのか、とハーレイは書斎の天井を仰いだ。
「幼稚園時代のブルー」はともかく、「幼稚園での出会い」を避けられたのは幸運だった。
(…もしも出会いが、幼稚園なら…)
俺が幼稚園の先生だったら、と溜息しか出ない有様なのだし、今の出会いでいいのだろう。
今のブルーも、かなり厄介な「ませた子供」とはいえ、幼稚園児のブルーよりはマシ。
(…出会ってた場所が幼稚園なら、ご難続きで卒園してった後もだな…)
付き合いが続いて、今のブルーの時代もやって来るんだ、とハーレイは軽く肩を竦めた。
(幼稚園で出会って、あいつが結婚出来る年になるまで…)
待ちぼうけどころか、受難までだぞ、と思うものだから、神様に感謝するしかない。
「今の出会いで幸運でした」と、振り回される年数が少なめなことを…。
幼稚園なら・了
※もしも、ブルー君と幼稚園で出会っていたら、と考えてみたハーレイ先生。
幼稚園の先生のハーレイの奪い合いとか、トラブルが多そう。今の出会いが一番ですよねv
そういえば、とハーレイが、ふと思い出したこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
生まれ変わって再び出会えた、愛おしい人との再会の場所は学校だった。
そのブルーと何度も話した間に、幼稚園説が出て来た。
(あいつが幼稚園児の頃に出会えていたら、と話したんだが…)
幼稚園で出会っていたなら、どうなったろう、とハーレイは気になり始めた。
(公園とかで会うのは、ありがちなんだが…)
そのものズバリは、かなり難しそう。
幼稚園という場所柄、部外者が訪れることは殆ど無い。
(親が行くのも、参観日とかで…)
それ以外の者が訪問するなら、学校活動の一環で出掛ける程度。
幼稚園の子供たちが「出て来る」機会の方が何倍も多い。
(…ふうむ…)
出会いからしてハードルが高いぞ、とハーレイは、この難題に取り組むことにした。
ブルーと幼稚園で出会うためには、ハーレイも幼稚園に入らないといけない。
今の学校は、下の学校と違って、幼稚園の子たちと一緒に動く行事は無かった。
(…俺に子供がいるわけじゃないし、どうやって入り込んだモンだか…)
関係者になるしか道は無いな、と思うし、それが手っ取り早そうだ。
幼稚園の先生になるか、送迎バスの運転手になって、雑用などもこなす立場か。
(…あいつの側にいる時間を、たっぷり取りたかったら、先生だな…)
柔道も水泳も、まるで出番は無さそうだが、と悔しいけれども、贅沢は言えない。
古典の教師の道に行かずに、幼稚園の先生になれる道を真っ直ぐ進んで、幼稚園へ。
(そもそも、そこからして有り得ない気が…)
してしまうだけに厳しそうだ、と前提条件の時点で、つまずいてしまいそう。
「やはり俺には向いていない」と、進路変更、結局は古典の教師で落ち着くコース。
(…出会いの場には、向いてないんだ…)
幼稚園ってトコはな、と深い溜息が零れ落ちてしまう。
出会う前から門前払いで、幼稚園には入れないのが「ハーレイ」らしい。
(…その辺の所は、ご都合主義で…)
おとぎ話のように上手く乗り越え、幼稚園の先生になれていたなら、どうなるだろう。
ブルーが入園してくるまでの間は、「ハーレイ先生」と慕われるだろうか。
(…身体がデカいし、肩車もしてやれるしな…)
絨毯などが敷いてある場所なら、子供たちを乗せて馬になるのも、お安い御用。
一度に三人くらいは乗せられそうだし、かなり人気が高いかもしれない.
(…順風満帆で先生をやっていたら、ある日、ブルーが入園して来て…)
その場で聖痕が現れ、血塗れの姿になるというのは変わらない。
(今の学校の時と同じで、大騒ぎで…)
俺が救急車に乗って付き添いなんだ、と「実際にあった出来事」と、やっと繋がった。
ブルーの記憶も、ハーレイの記憶も戻って来るから、暫くの間は、同じように時が流れる。
互いに再会を喜び合って、時間を共有出来るけれども…。
(…なにしろ、あいつは幼稚園児で…)
扱い方が難しそうだ、と次の難問が降って来た。
十四歳のブルーでさえも、何かと我儘、困らされている恋人ではある。
幼稚園児のブルーとなったら、その比ではないように思えてしまう。
(…そうでなくても、我慢が出来ない年の頃だし…)
約束事を決めてみたって、ブルーには、きっと守れない。
「幼稚園では、俺を先生らしく扱え」と教え込んでも、遠慮しないで親し気に話す。
他の子たちが「ハーレイ先生」と呼んでいる中、ブルーだけが「ハーレイ」と呼び掛けて。
(その上、下手に親しいモンだから…)
肩車も馬も、他の子たちが並んで待つ中、割り込んで来そう。
「ハーレイ、ぼくにも!」と列をかき分け、悪びれもしないで先頭に立って。
(俺が「こら、並ばないとダメじゃないか!」と叱ったら…)
たちまちフグのように膨れっ面か、でなければ大きな声で泣き出す。
「ハーレイ先生、酷い!」と、自分が悪かったことなど、考えもせずに棚に上げて大泣き。
(…泣き声を聞いて、他の先生が…)
飛んで来るのは目に見えているし、ハーレイが叱られる方かもしれない。
「ブルー君の気持ちも、考えてあげて」と、子供は我慢が出来ないことを説かれて。
「もっと優しい言い方をして、分かりやすく!」と、お説教まで食らいそう。
もちろんブルーは、お説教の間も、「お話、まだ終わらないのかな?」と無邪気に待つだけ。
なんてこった、とハーレイは軽く頭痛がして来た。
幼稚園でのブルーとの出会いは、再会した後も「ご難続き」の日々らしい。
人気者の「ハーレイ先生」を巡って、ブルーの独占欲が発揮される。
(仕事帰りに、あいつの家に寄るのは、控えないとな…)
でなきゃ一層、増長するぞ、と思うものだから、会える時間は今よりも減ることだろう。
幼すぎるブルーが「ハーレイ先生は、ぼくだけの先生」と勘違いしないよう、距離を取る。
(…今のあいつよりも、何倍も厄介…)
いくら中身が「ブルー」でもな、と容易に想像出来てしまう。
今のブルーでも、前のブルーに比べて「抑えが効かない」。
幼稚園児のブルーとなったら、我儘放題、コントロールは不可能に近い。
(…自制心を、と教え込んでも、その自制心が…)
備わる前の時代なんだ、と分かっているから、どうにもならない。
ブルーが育って「分別がつく」年頃になるまで、トラブル続きの日かもしれない。
(ハーレイ先生は、ブルーも、他の子も、お気に入りのオモチャで…)
奪い合いしては大騒ぎなのか、とハーレイは書斎の天井を仰いだ。
「幼稚園時代のブルー」はともかく、「幼稚園での出会い」を避けられたのは幸運だった。
(…もしも出会いが、幼稚園なら…)
俺が幼稚園の先生だったら、と溜息しか出ない有様なのだし、今の出会いでいいのだろう。
今のブルーも、かなり厄介な「ませた子供」とはいえ、幼稚園児のブルーよりはマシ。
(…出会ってた場所が幼稚園なら、ご難続きで卒園してった後もだな…)
付き合いが続いて、今のブルーの時代もやって来るんだ、とハーレイは軽く肩を竦めた。
(幼稚園で出会って、あいつが結婚出来る年になるまで…)
待ちぼうけどころか、受難までだぞ、と思うものだから、神様に感謝するしかない。
「今の出会いで幸運でした」と、振り回される年数が少なめなことを…。
幼稚園なら・了
※もしも、ブルー君と幼稚園で出会っていたら、と考えてみたハーレイ先生。
幼稚園の先生のハーレイの奪い合いとか、トラブルが多そう。今の出会いが一番ですよねv
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