思い付きって
「ねえ、ハーレイ。思い付きって…」
大切だよね、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? たった今、何か思い付いたのか?」
まあいいんだが、とハーレイは苦笑しながら返した。
「お前、いきなり思い付くしな」
それでどうした、とブルーに向かって尋ねてみる。
「俺にして欲しいようなことでも、出来たのか?」
いつものヤツなら、お断りだぞ、とハーレイは釘を刺した。
こういった時のブルーは、要注意。
ろくでもないことを思い付いては、無理なおねだり。
(…キスをしろとか、うるさいんだ…)
チビのくせに、とブルーを睨んだけれども、違ったらしい。
ブルーは「違うってば!」と、不満そうに頬を膨らませた。
「ただの質問みたいなものなんだよ」
思い付きというのは、閃きとかで、とブルーが説明する。
「ほら、色々と思い付くでしょ?」
何かする時でなくても、とブルーは赤い瞳を瞬かせた。
「いろんなアイデア、そうやって出て来るもので…」
発明だって、そうじゃないかな、とハーレイを見詰める。
あれこれ考えて順序立てるだけでは、ダメそうだよ、と。
「ぐるぐるしちゃって、煮詰まってくだけで…」
頭の中は、それで一杯、とブルーは自分の頭を指差す。
「そうなった時に、お茶とかで休憩していたら…」
いいアイデアが閃くものじゃないの、と言われれば、そう。
実際、大発明の切っ掛けになることも多い。
「なるほどなあ…。確かに、思い付きは大切かもな」
お前の場合は、違う気がするが、とハーレイは慎重になる。
此処でウッカリ「その通りだ」と同意するのは危険だろう。
「ハーレイ、疑っているんでしょ?」
よく、そんなので、先生やってるよね、とブルーは膨れる。
「生徒が思い付いたアイデア、否定するわけ?」
「いや、それは…。まずは話を聞いてだな…」
それから中身を検討なんだ、とハーレイは答えた。
「いいアイデアか、そうでないかは、聞いてみないと…」
「だったら、ぼくのも聞くべきでしょ!」
初っ端から否定するなんて…、とブルーは眉を吊り上げた。
「生徒の前で同じことをしたら、嫌われちゃうよ?」
「だから、しないと…」
「ぼくだけ、違う枠になるわけなの!?」
ハーレイの生徒の一人なのに、とブルーは怒り始めた。
フグみたいに頬を膨らませて、プンスカと。
「ハーレイ、いつも酷いんだから!」と、睨み付けて。
とはいえ、ハーレイの方にも言い分はある。
ブルーは生徒の一人に違いなくても、特別な枠の中にいる。
ハーレイは「ブルーの守り役」なのだし、学校でも承知。
「お前なあ…。違う枠になっても、当然だろう?」
毎日のように家庭訪問だぞ、とハーレイは説いた。
「他の生徒なら、其処まではしない」と、守り役について。
「言わば特別扱いなんだし、向き合い方も変わるよな?」
「うーん…。頭ごなしに否定するのは、違うと思う…」
いつだって、そういう調子なんだから、とブルーも粘る。
「もっと、きちんと扱ってよね」と、諦めないで。
「そう言われてもなあ…。ところで、お前の思い付きは…」
この問答を吹っ掛けることだったのか、とハーレイは訊く。
どうも、そうとしか思えないから、確認をした方がいい。
「押し問答で終わりそうだし、早い間に切り上げろよ?」
するとブルーは、更に頬っぺたを膨らませた。
「やっぱり、聞く気なんか無いでしょ!」
分からず屋だよね、と散々、怒り続けた果てに…。
「ハーレイ、今ので少しは懲りた?」
ぼくの思い付きを聞くべきだ、って、とブルーが尋ねる。
「否定しないで聞いていたなら、ぼくは怒らないよ?」
「…そうだな、俺が悪かった…」
すまん、とハーレイは謝ったけれど、次の瞬間、後悔した。
ブルーの顔が、たちまち笑顔に変わったから。
「懲りたんだったら、謝ってよね!」
お詫びはキスで充分だから、とブルーは、それは嬉しそう。
思い付いた通りに、上手く話が転がったらしい。
「馬鹿野郎!」
お前の思い付きなどは聞かなくていい、とハーレイは叱る。
「どうせ、ろくでもないことなんだしな!」
現に、たった今、証明されたぞ、とブルーの頭をコツン。
軽く一発お見舞いするのが、今のブルーに似合いだから…。
思い付きって・了
大切だよね、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? たった今、何か思い付いたのか?」
まあいいんだが、とハーレイは苦笑しながら返した。
「お前、いきなり思い付くしな」
それでどうした、とブルーに向かって尋ねてみる。
「俺にして欲しいようなことでも、出来たのか?」
いつものヤツなら、お断りだぞ、とハーレイは釘を刺した。
こういった時のブルーは、要注意。
ろくでもないことを思い付いては、無理なおねだり。
(…キスをしろとか、うるさいんだ…)
チビのくせに、とブルーを睨んだけれども、違ったらしい。
ブルーは「違うってば!」と、不満そうに頬を膨らませた。
「ただの質問みたいなものなんだよ」
思い付きというのは、閃きとかで、とブルーが説明する。
「ほら、色々と思い付くでしょ?」
何かする時でなくても、とブルーは赤い瞳を瞬かせた。
「いろんなアイデア、そうやって出て来るもので…」
発明だって、そうじゃないかな、とハーレイを見詰める。
あれこれ考えて順序立てるだけでは、ダメそうだよ、と。
「ぐるぐるしちゃって、煮詰まってくだけで…」
頭の中は、それで一杯、とブルーは自分の頭を指差す。
「そうなった時に、お茶とかで休憩していたら…」
いいアイデアが閃くものじゃないの、と言われれば、そう。
実際、大発明の切っ掛けになることも多い。
「なるほどなあ…。確かに、思い付きは大切かもな」
お前の場合は、違う気がするが、とハーレイは慎重になる。
此処でウッカリ「その通りだ」と同意するのは危険だろう。
「ハーレイ、疑っているんでしょ?」
よく、そんなので、先生やってるよね、とブルーは膨れる。
「生徒が思い付いたアイデア、否定するわけ?」
「いや、それは…。まずは話を聞いてだな…」
それから中身を検討なんだ、とハーレイは答えた。
「いいアイデアか、そうでないかは、聞いてみないと…」
「だったら、ぼくのも聞くべきでしょ!」
初っ端から否定するなんて…、とブルーは眉を吊り上げた。
「生徒の前で同じことをしたら、嫌われちゃうよ?」
「だから、しないと…」
「ぼくだけ、違う枠になるわけなの!?」
ハーレイの生徒の一人なのに、とブルーは怒り始めた。
フグみたいに頬を膨らませて、プンスカと。
「ハーレイ、いつも酷いんだから!」と、睨み付けて。
とはいえ、ハーレイの方にも言い分はある。
ブルーは生徒の一人に違いなくても、特別な枠の中にいる。
ハーレイは「ブルーの守り役」なのだし、学校でも承知。
「お前なあ…。違う枠になっても、当然だろう?」
毎日のように家庭訪問だぞ、とハーレイは説いた。
「他の生徒なら、其処まではしない」と、守り役について。
「言わば特別扱いなんだし、向き合い方も変わるよな?」
「うーん…。頭ごなしに否定するのは、違うと思う…」
いつだって、そういう調子なんだから、とブルーも粘る。
「もっと、きちんと扱ってよね」と、諦めないで。
「そう言われてもなあ…。ところで、お前の思い付きは…」
この問答を吹っ掛けることだったのか、とハーレイは訊く。
どうも、そうとしか思えないから、確認をした方がいい。
「押し問答で終わりそうだし、早い間に切り上げろよ?」
するとブルーは、更に頬っぺたを膨らませた。
「やっぱり、聞く気なんか無いでしょ!」
分からず屋だよね、と散々、怒り続けた果てに…。
「ハーレイ、今ので少しは懲りた?」
ぼくの思い付きを聞くべきだ、って、とブルーが尋ねる。
「否定しないで聞いていたなら、ぼくは怒らないよ?」
「…そうだな、俺が悪かった…」
すまん、とハーレイは謝ったけれど、次の瞬間、後悔した。
ブルーの顔が、たちまち笑顔に変わったから。
「懲りたんだったら、謝ってよね!」
お詫びはキスで充分だから、とブルーは、それは嬉しそう。
思い付いた通りに、上手く話が転がったらしい。
「馬鹿野郎!」
お前の思い付きなどは聞かなくていい、とハーレイは叱る。
「どうせ、ろくでもないことなんだしな!」
現に、たった今、証明されたぞ、とブルーの頭をコツン。
軽く一発お見舞いするのが、今のブルーに似合いだから…。
思い付きって・了
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