違っていたら
(…タイプ・ブルーか…)
今のあいつも同じなんだが、とハーレイが思い浮かべた、ブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
(ついでに言えば、今の世の中、タイプ・ブルーのヤツは、そこそこ…)
いるんだよな、と面白くもある。
珍しいことには違いなくても、前の生の頃ほど希少ではない。
(サイオンを使わないのがマナーなせいで、誰がそうかは分かりにくいが…)
空を飛んでるヤツもいないし、と笑みが零れて来る。
瞬間移動をしている者にも、街中でお目にかかれはしない。
(お蔭で、ブルーが不器用なのも、目立たないよな)
あいつはサイオンが、まるで駄目だし、と可笑しいけれども、事実だった。
今のブルーは、サイオンの扱いが上手ではない。
持っていないのと変わらないほど、何も出来ないと言ってもいいだろう。
(…あいつ、悔しがっているんだが…)
平和な世界の証拠だ、と嬉しくもある。
タイプ・ブルーの出番が無いのは、ミュウの時代になったからこそ。
今も人類と戦っていたら、ブルーのサイオンも、眠ってはいない。
(何処かで必ず、目を覚まして…)
前の生と同じに戦うことになっていた。
そうはならずに済んだ世界は、青い水の星まで蘇っている。
(神様に、感謝しないとな…)
前のあいつは可哀相すぎた、と考えていて、ハタと気付いた。
(なんで、あいつがタイプ・ブルーだったんだ…?)
別に俺でもいいじゃないか、と思わないでもない。
ブルーよりも遥かに頑丈なのだし、そちらの方が良かったのでは、という気がする。
(前の俺は、タイプ・グリーンに生まれたんだが…)
違っていたら、とハーレイは顎に手を当てた。
ブルーではなくて、前の自分が「タイプ・ブルー」だった場合、どうなっていたのか。
(……ふうむ……)
目覚める条件としては、成人検査でいいんだよな、と前のブルーと重ね合わせる。
成人検査を受けに行ったら、記憶を消去されそうになって、前のブルーは覚醒した。
(俺にしたって、多分、そうだろう)
あまりハッキリ覚えちゃいないが、とハーレイは苦笑する。
覚醒した後、劇的に変化した環境と、過酷な人体実験で忘れてしまった。
とはいえ、サイオンが目覚めるほどの衝撃なのだし、記憶の消去が原因だろう。
(でもって、俺がタイプ・ブルーなら…)
前のブルーの時と同じで、最初に現れたミュウになりそう。
「タイプ・ブルー・オリジン」が、ブルーからハーレイに入れ替わる。
(俺の人生、出だしからして変わりそうだぞ…)
正確に言えば途中からだが、と「成人検査」以降を想像してみることにした。
前のハーレイは「ブルーよりも後」の生まれで、人類は「ミュウの扱い」に慣れていた。
(成人検査で判明したら、直ぐに捕獲で…)
研究施設に送られたけれど、「最初のミュウ」となれば変わって来る。
(前のあいつは、成人検査用の機械を壊しちまって…)
保安部隊の者が駆け付け、銃撃を受けたと、ブルーから聞いた。
覚醒したのが「ハーレイ」にしても、そうなったろう。
(…咄嗟にシールドで受け止められても、その後がどうか…)
ブルーは倒れちまったんだが、と前の自分と比較してみると、違うかもしれない。
前のハーレイは「聴力が弱かった」だけで、身体の方は頑丈だった。
(銃撃されても、倒れないかもな…)
捕獲されるのは同じだろうが、と「十四歳の子供」と、保安部隊のプロを比べる。
(タイプ・ブルーでも、目覚めたばかりじゃ…)
爆発的な力を使った直後は、ふらついたりもするだろう。
其処へ「戦闘のプロ」が来るわけなのだし、抵抗してみても敵いそうにない。
(…前と同じで、檻の中だな…)
押し込まれちまって、不味い餌ばかり食わせられる日々だ、とゲンナリした。
その上、人体実験を繰り返されるのでは、気力が失せてしまいそうだけれど…。
(なんと言っても、俺なんだしなあ…)
不屈の精神で踏ん張りそうだ、と自分のことだから、ハッキリと分かる。
前のブルーは「成長してみても、未来など無い」と諦め切って、成長を止めた。
(あいつだったから、そうなっただけで…)
俺なら育ち続けそうだ、と自信ならある。
「負けてたまるか」と起死回生のチャンスに賭けて、餌を食べながら育ち続ける。
子供の身体と精神よりも、大人の方が「強くなる」のは、間違いない。
自分で道を切り開くならば、育った方が、断然、いい。
檻の中で順調に育つ間に、周りだって見えてくるだろう。
年月が経てば、新しいミュウが生まれ始める。
それを察知するだけの「力と知恵」も、身についていそう。
(檻の数が増えて来たとか、その程度ならば、見れば分かるし…)
もっと詳しく知りたかったら、人類どもの心を読めばいいんだ、とニヤリと笑う。
研究者たちも、檻と外との移動をさせる者たちも、「メンバーズ」ではない。
サイオンに対する訓練などは受けていないし、隙を狙えば「読み取れた」だろう。
(そうすりゃ、俺の知識も増えていくしな)
具体的な脱出プランも立てられそうだ、と思う通りで、人類は、まだ無防備だった。
彼らがメギドを持ち出す前に、施設を破壊し、仲間たちを連れての脱出も可能。
(宇宙船を奪って、逃げるにしたって…)
アルタミラ事変でも出来たわけだし、ぶっつけ本番で出来ると思う。
(もっとも、事前に準備するなら…)
操縦出来る者もつけて奪えばいいんだ、と「物騒なこと」を考え付いた。
脱出した仲間たちを引き連れ、宙港に着いたら、どの船を奪うにしても、選び放題。
(食料などを、たっぷり積んでて、大型船で…)
武装していりゃ、お誂え向きだ、と「夢のよう」でも、実際、あったに違いない。
人類軍の船が寄港していれば、充分、有り得る。
(物資を補給してる間は、殆どのヤツが船を降りるし…)
そういう船を奪うまでだな、と「脱出コース」を描き出す。
船に残っている者を「制圧する」のは、タイプ・ブルーなら苦にもならない。
最低限の者を船に残して、他は降ろして、操縦者に「出せ!」と命じるだけ。
(船を攻撃された所で、俺さえいれば…)
丸ごとシールド出来るんだ、と「タイプ・ブルー」の能力をフルに発揮しての脱出劇。
逃げ出した後は、アルテメシア時代と同様、隠れながらの日々になるだけ。
(アルタミラにも、雲はそこそこ…)
あったわけだし、其処に潜んで、ミュウの子供を救出しながら「時を待つ」。
奪い取った船の操縦にしても、人類軍の者から知識を読み取り、出来るようになる。
(そうすりゃ、元の乗員の記憶を消して、地上に戻して…)
ミュウだけの船の出来上がりだ、と大満足で考える内に、不意に思い出した。
(…ありゃ?)
前のあいつは、と顔が浮かんだ「前のブルー」は何処にいるのか。
(…俺よりも後に生まれるんだし、船の何処かに…)
乗っていてくれると思うけれども、タイプ・ブルーではない「ただのミュウ」。
(俺がタイプ・ブルーなら、タイプ・グリーンか?)
実際とは逆になるんだしな、と「前のブルー」の居場所を探してみる。
脱出劇の時にいたのか、その後に「救い出した」子供か、どちらにしても、影が薄そう。
(成人検査直後か、チビの子供が、船にいたって…)
大脱出を指揮した「ハーレイ」と出会う機会は、そうは無い。
ハーレイは多忙な日々を送って、ブルーは船で教育されている日々。
(…果たして、会える時が来るやら…)
おまけに会っても「一目惚れ」なんか無さそうだよな、とハーレイは天を仰いだ。
もっとも、書斎の中に空は無いから、仰いだ先には「天井」だけれど。
(ブルーに会っても、チビの子供が、頑張ってるだけで…)
可愛い子だな、と思う程度で、惚れ込んだりはしないだろう。
ブルーの方でも、多分、同じで、「船で一番偉い、おじさん」を尊敬の目で見上げるだけ。
(教師にしたって、俺が如何に偉いか、日頃、教えているんだろうし…)
気安く口を利ける人ではない、とブルーは思い込んでいる。
最初の出会いは「挨拶」くらいで、それから後も、接点は大して無いままなのに違いない。
(…あいつがいたって、お互い、惚れ込まないんじゃなあ…)
最後まで「ただの仲間」なだけか、と思うものだから、それは勘弁願いたい。
(…前の人生、サイオン・タイプが、違っていたら…)
大惨事だ、とハーレイは首を竦めて、改めて神に感謝した。
前の自分がタイプ・ブルーなら、ブルーと出会っても、恋は無いから。
お互い、相手に惚れ込むことが無いまま、人生、終わっていただろうから…。
違っていたら・了
※前の生で、自分がタイプ・ブルーだったら、と考えてみたハーレイ先生。順調そう。
脱出も上手くいきそうですけど、ブルーに出会っても恋をしない人生。悲しいですよねv
今のあいつも同じなんだが、とハーレイが思い浮かべた、ブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
(ついでに言えば、今の世の中、タイプ・ブルーのヤツは、そこそこ…)
いるんだよな、と面白くもある。
珍しいことには違いなくても、前の生の頃ほど希少ではない。
(サイオンを使わないのがマナーなせいで、誰がそうかは分かりにくいが…)
空を飛んでるヤツもいないし、と笑みが零れて来る。
瞬間移動をしている者にも、街中でお目にかかれはしない。
(お蔭で、ブルーが不器用なのも、目立たないよな)
あいつはサイオンが、まるで駄目だし、と可笑しいけれども、事実だった。
今のブルーは、サイオンの扱いが上手ではない。
持っていないのと変わらないほど、何も出来ないと言ってもいいだろう。
(…あいつ、悔しがっているんだが…)
平和な世界の証拠だ、と嬉しくもある。
タイプ・ブルーの出番が無いのは、ミュウの時代になったからこそ。
今も人類と戦っていたら、ブルーのサイオンも、眠ってはいない。
(何処かで必ず、目を覚まして…)
前の生と同じに戦うことになっていた。
そうはならずに済んだ世界は、青い水の星まで蘇っている。
(神様に、感謝しないとな…)
前のあいつは可哀相すぎた、と考えていて、ハタと気付いた。
(なんで、あいつがタイプ・ブルーだったんだ…?)
別に俺でもいいじゃないか、と思わないでもない。
ブルーよりも遥かに頑丈なのだし、そちらの方が良かったのでは、という気がする。
(前の俺は、タイプ・グリーンに生まれたんだが…)
違っていたら、とハーレイは顎に手を当てた。
ブルーではなくて、前の自分が「タイプ・ブルー」だった場合、どうなっていたのか。
(……ふうむ……)
目覚める条件としては、成人検査でいいんだよな、と前のブルーと重ね合わせる。
成人検査を受けに行ったら、記憶を消去されそうになって、前のブルーは覚醒した。
(俺にしたって、多分、そうだろう)
あまりハッキリ覚えちゃいないが、とハーレイは苦笑する。
覚醒した後、劇的に変化した環境と、過酷な人体実験で忘れてしまった。
とはいえ、サイオンが目覚めるほどの衝撃なのだし、記憶の消去が原因だろう。
(でもって、俺がタイプ・ブルーなら…)
前のブルーの時と同じで、最初に現れたミュウになりそう。
「タイプ・ブルー・オリジン」が、ブルーからハーレイに入れ替わる。
(俺の人生、出だしからして変わりそうだぞ…)
正確に言えば途中からだが、と「成人検査」以降を想像してみることにした。
前のハーレイは「ブルーよりも後」の生まれで、人類は「ミュウの扱い」に慣れていた。
(成人検査で判明したら、直ぐに捕獲で…)
研究施設に送られたけれど、「最初のミュウ」となれば変わって来る。
(前のあいつは、成人検査用の機械を壊しちまって…)
保安部隊の者が駆け付け、銃撃を受けたと、ブルーから聞いた。
覚醒したのが「ハーレイ」にしても、そうなったろう。
(…咄嗟にシールドで受け止められても、その後がどうか…)
ブルーは倒れちまったんだが、と前の自分と比較してみると、違うかもしれない。
前のハーレイは「聴力が弱かった」だけで、身体の方は頑丈だった。
(銃撃されても、倒れないかもな…)
捕獲されるのは同じだろうが、と「十四歳の子供」と、保安部隊のプロを比べる。
(タイプ・ブルーでも、目覚めたばかりじゃ…)
爆発的な力を使った直後は、ふらついたりもするだろう。
其処へ「戦闘のプロ」が来るわけなのだし、抵抗してみても敵いそうにない。
(…前と同じで、檻の中だな…)
押し込まれちまって、不味い餌ばかり食わせられる日々だ、とゲンナリした。
その上、人体実験を繰り返されるのでは、気力が失せてしまいそうだけれど…。
(なんと言っても、俺なんだしなあ…)
不屈の精神で踏ん張りそうだ、と自分のことだから、ハッキリと分かる。
前のブルーは「成長してみても、未来など無い」と諦め切って、成長を止めた。
(あいつだったから、そうなっただけで…)
俺なら育ち続けそうだ、と自信ならある。
「負けてたまるか」と起死回生のチャンスに賭けて、餌を食べながら育ち続ける。
子供の身体と精神よりも、大人の方が「強くなる」のは、間違いない。
自分で道を切り開くならば、育った方が、断然、いい。
檻の中で順調に育つ間に、周りだって見えてくるだろう。
年月が経てば、新しいミュウが生まれ始める。
それを察知するだけの「力と知恵」も、身についていそう。
(檻の数が増えて来たとか、その程度ならば、見れば分かるし…)
もっと詳しく知りたかったら、人類どもの心を読めばいいんだ、とニヤリと笑う。
研究者たちも、檻と外との移動をさせる者たちも、「メンバーズ」ではない。
サイオンに対する訓練などは受けていないし、隙を狙えば「読み取れた」だろう。
(そうすりゃ、俺の知識も増えていくしな)
具体的な脱出プランも立てられそうだ、と思う通りで、人類は、まだ無防備だった。
彼らがメギドを持ち出す前に、施設を破壊し、仲間たちを連れての脱出も可能。
(宇宙船を奪って、逃げるにしたって…)
アルタミラ事変でも出来たわけだし、ぶっつけ本番で出来ると思う。
(もっとも、事前に準備するなら…)
操縦出来る者もつけて奪えばいいんだ、と「物騒なこと」を考え付いた。
脱出した仲間たちを引き連れ、宙港に着いたら、どの船を奪うにしても、選び放題。
(食料などを、たっぷり積んでて、大型船で…)
武装していりゃ、お誂え向きだ、と「夢のよう」でも、実際、あったに違いない。
人類軍の船が寄港していれば、充分、有り得る。
(物資を補給してる間は、殆どのヤツが船を降りるし…)
そういう船を奪うまでだな、と「脱出コース」を描き出す。
船に残っている者を「制圧する」のは、タイプ・ブルーなら苦にもならない。
最低限の者を船に残して、他は降ろして、操縦者に「出せ!」と命じるだけ。
(船を攻撃された所で、俺さえいれば…)
丸ごとシールド出来るんだ、と「タイプ・ブルー」の能力をフルに発揮しての脱出劇。
逃げ出した後は、アルテメシア時代と同様、隠れながらの日々になるだけ。
(アルタミラにも、雲はそこそこ…)
あったわけだし、其処に潜んで、ミュウの子供を救出しながら「時を待つ」。
奪い取った船の操縦にしても、人類軍の者から知識を読み取り、出来るようになる。
(そうすりゃ、元の乗員の記憶を消して、地上に戻して…)
ミュウだけの船の出来上がりだ、と大満足で考える内に、不意に思い出した。
(…ありゃ?)
前のあいつは、と顔が浮かんだ「前のブルー」は何処にいるのか。
(…俺よりも後に生まれるんだし、船の何処かに…)
乗っていてくれると思うけれども、タイプ・ブルーではない「ただのミュウ」。
(俺がタイプ・ブルーなら、タイプ・グリーンか?)
実際とは逆になるんだしな、と「前のブルー」の居場所を探してみる。
脱出劇の時にいたのか、その後に「救い出した」子供か、どちらにしても、影が薄そう。
(成人検査直後か、チビの子供が、船にいたって…)
大脱出を指揮した「ハーレイ」と出会う機会は、そうは無い。
ハーレイは多忙な日々を送って、ブルーは船で教育されている日々。
(…果たして、会える時が来るやら…)
おまけに会っても「一目惚れ」なんか無さそうだよな、とハーレイは天を仰いだ。
もっとも、書斎の中に空は無いから、仰いだ先には「天井」だけれど。
(ブルーに会っても、チビの子供が、頑張ってるだけで…)
可愛い子だな、と思う程度で、惚れ込んだりはしないだろう。
ブルーの方でも、多分、同じで、「船で一番偉い、おじさん」を尊敬の目で見上げるだけ。
(教師にしたって、俺が如何に偉いか、日頃、教えているんだろうし…)
気安く口を利ける人ではない、とブルーは思い込んでいる。
最初の出会いは「挨拶」くらいで、それから後も、接点は大して無いままなのに違いない。
(…あいつがいたって、お互い、惚れ込まないんじゃなあ…)
最後まで「ただの仲間」なだけか、と思うものだから、それは勘弁願いたい。
(…前の人生、サイオン・タイプが、違っていたら…)
大惨事だ、とハーレイは首を竦めて、改めて神に感謝した。
前の自分がタイプ・ブルーなら、ブルーと出会っても、恋は無いから。
お互い、相手に惚れ込むことが無いまま、人生、終わっていただろうから…。
違っていたら・了
※前の生で、自分がタイプ・ブルーだったら、と考えてみたハーレイ先生。順調そう。
脱出も上手くいきそうですけど、ブルーに出会っても恋をしない人生。悲しいですよねv
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