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困った時には
「ねえ、ハーレイ。困った時には…」
 人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
 二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
 何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
 急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
 きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
 ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
 そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
 解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。


 ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
 何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
 それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
 自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
 一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
 自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
 分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
 本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。


「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
 困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
 学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
 それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
 自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
 宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
 きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
 知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。


「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
 人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
 答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
 壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
 乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
 とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
 お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
 洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
 無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
 根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
 修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。


 そういったわけで、正解は二つ。
 ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
 人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
 頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
 何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
 チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
 そうしたら…。


「あのね、チビには違いないけど…」
 チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
 ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
 成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
 叩いても、痛くないように。
 「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。



        困った時には・了




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