どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。
ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。
この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
※お知らせ。
書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
拍手システム入れてみました、お気に入りがあればポチッとどうぞ。
過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。
※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。
何処から読んでも無問題ですv
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。
拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!
書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。
書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。
書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。
書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。
書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。
書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。
拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。
書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。
書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。
書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。
書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。
書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。
書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。
書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。
書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。
書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。
書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。
書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。
書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。
書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。
書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。
書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。
書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。
書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。
書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。
書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。
書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。
書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。
書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。
書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。
書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。
書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。
目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/
目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/
目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/600/
目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/727/
※お知らせ。
書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
拍手システム入れてみました、励ましにぽちっと…貰えると感謝。
※拍手下さった方、ありがとうございます~!
うんと幸せになるんだよな、とハーレイが思い浮かべた恋人の顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
遠く遥かな時の彼方では、ブルーとの恋は成就しなかった。
二人だけの間の秘密で終わって、おまけにブルーを失くしてしまった。
(しかし今度は、何の支障も無いわけで…)
チビのブルーが結婚出来る年になったら、この家で一緒に暮らしてゆける。
あと何年かの間の辛抱、それからは幸せ一杯の日々が続いてゆく。
家に帰ればブルーがいるし、朝もブルーに送り出されて仕事に行ける。
休みの時には、ドライブに行ったり、旅行したりと、この青い地球を満喫する。
前の生でブルーと交わした約束、それを叶えてゆくために。
(約束、山ほどしたからなあ…)
どれを最初にすればいいやら、と可笑しくなってしまうけれども、それも楽しい。
ブルーと色々相談しながら、夢だったことを現実にする。
高山に咲く青いケシを見るとか、本物のサトウカエデの森を訪ねるとか。
(忙しくなるぞ、結婚したら)
休みは全部、あちこち飛び回る間に終わりそうだ、と苦笑する。
とはいえ、今のブルーも身体が弱いし、休みも取らねばならないだろう。
休養する間が、実質上の休みという勘定になりそうだ。
(あいつは家でのんびり過ごして、俺はジョギングに出掛けて行って…)
ジムのプールで軽く泳いで、それから家に帰って来る。
帰る頃には、ちょうど昼前くらいだろうか。
(そこから俺が飯を作って、二人で食べて…)
ブルーは午後もゆっくり昼寝で、ハーレイの方も自分だけの時間を過ごせそう。
書斎で本を広げて読むとか、リビングの床で昼寝だとか。
(きっと、そういう未来だよなあ…)
結婚したら、と頬を緩めて、早く時間が経って欲しい、と願ってしまう。
待つのは苦にはならないけれども、ブルーと一緒に暮らす日だって、待ち遠しい。
(あいつの前では、ゆったり構えているんだが…)
実は一日千秋かもな、とコーヒーのカップを傾ける。
「俺だって、早く結婚したいんだ」と。
せっかく生まれ変わって来たのに、ブルーとの恋が成就するのは、何年も先になるのだから。
そうは言っても、この待ち時間も、生まれ変わって来たからこそ。
前のブルーとの恋の続きを、青い地球の上で、という神様の粋な計らい。
(新しい命と身体を貰って、新しい人生を生きてるわけで…)
いわば白紙のようにまっさら、真っ白な上に新しい恋を描いてゆく。
今のブルーと、あれこれ夢を叶えて、旅行をして。
時には喧嘩をしてしまったりと、様々なことが起きるのだろう。
前の生では、夢にも思いはしなかったことが、ヒョッコリと降って来たりもして。
(…なんたって、平和な世界なんだし…)
何が起きても知れてはいるが…、と考えてみる。
「ヒョッコリと起きる」何かについて、「例えば、どんな?」と首を捻って。
(…ペットなんかは、あるかもなあ…)
今のブルーは、今のハーレイが子供の頃に飼っていた猫に興味がある。
本当の飼い主はハーレイの母だったけれど、ブルーにとっては、大事なことではない。
「ハーレイの家には、猫がいた」という所がポイントと言えるだろう。
(ミーシャの話をしてやると、いつも嬉しそうだし…)
もしかしたら「ぼくもペットを飼ってみたい」と、ある日、強請ってくるかもしれない。
「飼っていいなら猫がいいな」と、「ミーシャみたいに、真っ白なのを」と。
(…そう強請られたら、反対する理由は無いからなあ…)
ペットの寿命は長くはないし、いずれ別れの時が来る。
ブルーがそれを承知で言うなら、ペットを飼うのを許してやって…。
(家に真っ白な猫が一匹…)
新しい家族になって加わり、ブルーの愛を奪ってゆく。
ハーレイが「ただいま」と帰宅したって、ブルーは猫をしっかりと抱いて…。
(おかえりなさい、と出て来るだけで、下手をしたなら…)
出て来る代わりに、猫と遊んでいるかもしれない。
あるいは毛皮の手入れに夢中で、ハーレイが家に帰ったことにも気が付かないとか。
(……うーむ……)
そいつはキツイ、と泣きそうだけれど、仕方ない。
ブルーには新しい人生を楽しむ権利があって、ペットとの日々も、その一つ。
前の生からの恋人がいても、新しい家族がいるのなら…。
(そっちに愛情、移っちまっても…)
何も文句は言えないよな、と溜息が一つ零れてしまった。
「ヒョッコリ降って来るのは、コレか」と、新しい人生ならではの試練を思って。
「他にも何かありそうだよな」と、こめかみを軽く揉んだりもして。
新しい命を貰ったブルーは、新しい人生を歩んでゆく。
前のブルーとは違う人生になって当然、それが自然なことだろう。
(ペットと暮らして、うんと可愛がって…)
ハーレイのことがお留守になるのも、おかしくはないし、責められもしない。
(むしろ喜ぶべきことで…)
温かく見守ってやるべきなんだよな、と分かってはいる。
前のブルーには、ペットを飼うことは不可能だった。
「青い鳥が欲しい」という細やかな夢も、白いシャングリラでは叶わなかった。
(だから、あいつは…)
青い鳥の代わりに、青い毛皮のナキネズミで我慢するしかなくて、そのナキネズミも…。
(ペットには出来なかったんだ…)
色々と事情があったからな、と時の彼方を思い出す。
それを鮮やかに覚えているから、ブルーの愛をペットに奪われたって、耐えるしかない。
前のブルーには出来なかったことを、今のブルーがするというなら、それだって…。
(約束したことを叶えてゆくのと同じで、前のあいつの夢だから…)
仕方ないさ、とフウと溜息、ペットが来た時は諦めるしかないだろう。
ブルーを盗られてしまっても。
「あれっ、ハーレイ、帰っていたの?」と、かなり経つまで気付かれなくても。
(…俺は晩飯の支度をしながら、ブルーが気付いてくれるまで…)
待つしか道は無いんだよな、と情けないけれど、我慢しなければ。
今のブルーが歩む人生、それを横から邪魔してはいけない。
何故なら、ブルーの人生だから。
新しい命と身体を貰って、生きているのは「ブルー」だから。
(…俺だって、ブルーに出会うまで…)
好き放題に生きて来たわけなのだし、ブルーにしても同じこと。
「ハーレイ」が現れるのが早かっただけで、もっと遅くに出会うのならば…。
(あいつも人生を満喫してから、俺と再会出来たんだしな…)
俺の勝手で縛っちゃ駄目だ、と自分自身に言い聞かせる。
ペットにブルーを盗られようとも、グッと我慢で、見守るべきだ、と。
(俺の方が年上なんだしなあ…)
しかし、ペットはキツイよな、と肩を竦める。
ブルーの愛を、横から奪ってゆくなんて。
よりにもよって白い猫なんかに、大事なブルーを盗られるなんて。
(猫だぞ、猫…!)
おまけに名前はミーシャかもな、と頭の中がクラクラしそう。
相手が同じ人間だったら、此処は一発、勝負を挑んで、ブルーの心を…。
(取り戻す、ってことも出来るんだろうが、猫ではなあ…)
そもそも勝負になりやしない、と頭を抱えたくもなる。
同じ土俵に立てない猫には、どう頑張っても敵いはしない。
ついでに、同じ家で暮らしているわけなのだし、分が悪すぎる。
(ブルーが「今夜は、ミーシャと寝るよ」と抱いてベッドに行っちまったら…)
俺はベッドでも一人じゃないか、と軽くショックを受けてしまった。
なんという手強い恋敵だろう、ペットを飼われてしまったら。
(…だが、飼いたいと言われたら…)
許してやるしかないんだよな、と悲しい気持ちがこみ上げてくる。
「なんてこった」と、「しかし、あいつの人生なんだ」と、泣きたい気分になって来た。
(頼むから、ペットを飼いたいだなんて…)
言ってくれるなよ、と祈りたいけれど、ブルーの人生の邪魔は出来ない。
新しい人生の邪魔をするなど、絶対にしてはいけないこと。
(…相手が人間様じゃなかった分だけ、マシだと思って…)
猫は我慢だ、と自分の心を宥め、懇々と諭した所で、ハタと気付いた。
今のブルーが新しい人生を歩んでゆくなら、前のブルーとは色々な部分が違って来る。
本物の両親から生まれた上に、幸せ一杯に育ったのだから…。
(もしかしなくても、好みも前とは違うってわけで…)
人間様の好みの方でも、そうなるのかも、とクラリと来た。
今のブルーは、たまたま「ハーレイと再会した」から、今はハーレイに「惚れている」。
前の生からの恋人に夢中で、ハーレイしか見えていないのだけれど…。
(…ひょっとしたら、俺とは違うタイプの人間が…)
今のあいつの好みなのかも、と恐ろしい考えに背筋がゾクリと冷えてゆく。
これから人生を歩んでゆく間に、ブルーは「出会う」のかもしれない。
今のブルーの好みにピッタリ、そういうタイプの人間に。
「ハーレイよりも、カッコよくない?」と、思わず惹かれてしまう「誰か」に。
(…俺とは全く、違うタイプに…)
目を向けないとは言い切れないぞ、と本当に怖くなって来た。
違う人生を歩んでいるなら、好みだって変わりもするだろう。
前のブルーが生きた人生の場合だったら、「ハーレイが一番」なのだけれども…。
(…今のあいつだと、違うタイプに…)
惚れちまうこともあるんだよな、と足元が崩れ落ちてゆきそう。
ペットどころか、自分以外の「人間様」に、ブルーを盗られてしまうのかも、と。
それだけは無い、と思いたい。
今の自分には「ブルーだけ」だし、ブルーもきっと、そうなるように…。
(神様が計らって下さったからこそ、聖痕があって…)
俺たちは出会えたんだしな、と思いはしても、確証があるわけではない。
神から「そうだ」と聞いてはいないし、証文だって貰っていない。
(…まさか、まさか…な…?)
今のブルーは違うタイプに惚れちまうとか、と怖い考えが止まらない。
「そうではない」とは、誰も言ってはくれないから。
新しい人生を歩むブルーが、「違うタイプに」惚れない保証は何処にも無くて…。
(そうなった時は、俺は一人で…)
ポツンと残されちまうのか、と身体が震え出しそう。
ある日、ブルーが、違うタイプに惚れたなら。
まだ結婚もしていないのなら、ブルーは新しく「惚れた」相手に心を移して去ってゆく。
前の生からの恋人のことは、もはや、どうでもよくなって。
新しく見付けた恋に夢中になって、「ハーレイ」は頭から消えてしまって。
(そいつは困る…!)
大いに困る、と思うものだから、今のブルーには、ペットで済ませて貰いたい。
新しく愛情を注ぐ相手を作るのだったら、人間様ではなくて、ペットで。
(…あいつの人生、縛っちゃ駄目だと思いはするが…)
違うタイプに惚れるのだけは勘弁してくれ、と強く目を閉じ、神に祈らずにはいられない。
青い地球の上で、ブルーと生きてゆきたいから。
ペットにブルーを盗られようとも、同じ家で暮らしてゆきたいから…。
違うタイプに・了
※ブルー君の好みが「ハーレイ」とは違うタイプかも、と思ってしまったハーレイ先生。
違う人生を生きているなら、そういうことも有り得そう。それは勘弁して欲しいですよねv
諦めちゃったらダメだよね、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「難しいって…。そいつは、宿題なのか?」
珍しいな、とハーレイは鳶色の瞳を軽く見開いた。
ブルーはいわゆる「優等生」で、成績優秀で頭がいい。
運動の類は駄目だけれども、苦手科目は無かった筈だ。
それが宿題で行き詰まるとは…、と少し可笑しい。
けれどブルーは、「ううん」と、即座に首を横に振った。
「今日は違うよ、そりゃ、ぼくだって、ごくたまに…」
宿題で詰まることもあるけれど、とブルーが首を竦める。
「ホントに、たまに」と、滅多に無いのを強調して。
「分かった、分かった。要は、今回は違うんだな?」
今回は、とハーレイは、わざと繰り返してやった。
意地になって否定するブルーが、とても面白かったから。
「笑わないでよ! でも、本当に違うんだって!」
今回はね、とブルーも「今回は」と其処に力を入れて来た。
「宿題じゃなくって、パズルだってば!」
「パズル…?」
「そう! ハーレイ、こんなの解けるわけ?」
コレなんだけど、とブルーが出して来たのは新聞だった。
丸ごとではなくて「切り抜いた」もので、確かにパズルだ。
数字を入れてゆくらしいけれども、解けないらしい。
「ああ、コレか…。こいつは、ちょいと厄介かもな」
お前の鉛筆、貸してくれるか、とハーレイは戦闘開始した。
この類ならば、学生の頃に流行っていたから、何とかなる。
ただし、時間はそれなりにかかる。
見た瞬間に「こうだ」と閃くものとは違って、根気が必要。
「うーむ…。ここにこう、と…。いや、こっちだな」
でもって次は…、と升目を埋めてゆくのをブルーが見守る。
「そっか、そうやって解いていくんだ…?」
「お前、知らずにやっていたのか?」
「そうだよ、だって解き方、何処にも載ってなくって…」
上級者向けってあっただけ、とブルーは苦笑した。
「だけど、ぼくには無理だったんだよ」とパズルを指して。
どうやらブルーは、「上級者向け」に挑戦しただけらしい。
解き方も分かっていないというのに、出来る気になって。
「お前なあ…。まずは自分の力量ってヤツを、だ…」
把握しないとダメだろうが、とハーレイは呆れ顔になる。
「難しい以前の問題だろう」と、無理なものは無理、と。
「そう思う? ぼくがあそこで諦めてたら…」
コレは解けないままなんだよね、とブルーは鉛筆を出した。
「もしかしなくても、ここ、コレじゃない?」
合ってるかな、とブルーが書いた数字は正解だった。
「ほう…。だったら、ここも分かるのか?」
「んーとね、多分なんだけど…。コレでいいかな?]
あんまり自信が無いんだけれど、と書き込んだ数字は正解。
ブルーはパズルの「解き方」を理解したのに違いない。
「なるほどなあ…。俺が解くのを見て覚えた、と」
「うん。でも、諦めていたら、解けないままだよね?」
新聞を切り抜いて来なかったら、というのは正しい。
まるで間違ってはいないのだから、正論だった。
ついでに言うなら、諦めないのが大切なのも、また正しい。
だからハーレイは笑顔で言った。
「その通りだな」と、ブルーの言葉を肯定して。
「お前が言うのも、間違っちゃいない。正しいことだ」
諦めたらゲームオーバーだしな、とハーレイは笑う。
「試合だったら終わっちまう」と、柔道を少し説明して。
柔道の試合には、決まりが色々あるのだけれど…。
「相手に技をかけられた時に、技によっては、だ…」
かけられただけで試合終了にはならん、と教えてやる。
試合時間がまだあるのならば、チャンスはある。
相手の技から逃れられたら、一転、攻撃に移れもする。
そうなった時は一発逆転、勝利を掴むことだって出来る。
「もう完全に負けだろうな、と誰もが思うくらいでも…」
「勝てちゃうんだ?」
「そういうことだな、まさに劇的な勝利ってヤツだ」
何度も実際、見て来たんだぞ、とハーレイは大きく頷く。
「今の学校に来てからだって、あったんだしな」と。
「そうなんだ…。だったら、やっぱり、難しくっても…」
「諦めちゃダメだ、ってことだな、うん」
お前の場合は頭で勝負になるんだろうが、と相槌を打つ。
「柔道なんかは出来やしないし、パズルくらいだな」と。
「まあ、そうだけど…」
そうなんだけど、とブルーは赤い瞳を瞬かせた。
「他にも諦めちゃダメなことがね」と、難しい顔で。
「まだあるのか?」
お次は何だ、とハーレイの目が丸くなる。
「上級者向け」のパズルは他にもあったのだろうか。
(…俺の手に負えるヤツならいいが…)
解けなかったら、今日は一日パズルなのか、と悲しくなる。
せっかくブルーと過ごせる日なのに、パズルだなんて。
そうしたら…。
「あのね、どうしたらハーレイにキスを貰えるか…」
諦めちゃったらダメだもんね、とブルーが微笑む。
「頑張らないと」と、「難しくっても、諦めないで」と。
「馬鹿野郎!」
それは違う、とハーレイは軽く拳を握った。
銀色の頭をコツンと叩いて、その挑戦を阻止するために。
そんな難問には挑むことなく、諦めるのが正解だから…。
難しくっても・了
なんだか縁が遠くなったよね、と小さなブルーは、ふと考えた。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…お昼寝するより、ハーレイと話していたいから…)
すっかり御無沙汰になっちゃった、と昼寝というものを思い返してみる。
昼寝をしなくなった、とは言わないけれども、時間は減った。
ハーレイと再会する前だったら、昼寝をするなら、ぐっすり、たっぷりだったのに。
(…今だと、ハーレイが来ない時しか…)
そういう昼寝は出来ないわけで、ついでにハーレイが来ないとなると、落ち着かない。
ハーレイが来ない休日となったら、頭の中がぐるぐる回って、昼寝するような気分には…。
(全然、なって来ないんだってば!)
ホントにダメ、と自分の頭をポカポカと叩く。
なんとも子供じみた幼い感情、独占欲とも言うかもしれない。
それが昼寝の邪魔をするせいで、ハーレイが来ない日は起きたまま。
「今、ハーレイはどうしてるかな?」と気になって。
研修だったら、まだマシだけれど、柔道部の活動で来ないとなったら酷くなる。
柔道部員が「ハーレイ先生」を独占していて、寄越してくれないわけだから。
ハーレイの方も、柔道部の生徒にかかりっきりで、面倒を見ているに違いない。
練習や試合を熱心に指導し、終わった後には、食事にだって連れて行く。
「よく頑張ったな」と、ブルーも好きでたまらない笑顔を、柔道部員たちに振り撒いて。
一人一人に言葉を掛けて、肩を叩いてやったりもして。
(それから、みんなでお店に入って…)
ハーレイが「何でも好きに注文しろよ」と、気前よく皆に言うのだろう。
「支払いのことは気にするなよな」と、「食べ盛りなんだから、好きなだけ食え」と。
(…きっとそうだ、って考え始めてしまったら…)
眠気なんかは消えてしまって、昼寝をしているどころではない。
逆に目が冴え、窓の外に何度も視線をやっては、苛立つばかりで昼寝なんかしていられない。
窓からの風が気持ち良くても、昼寝にピッタリの天気でも。
ハーレイと再会する前だったら、「ちょっとお昼寝」と、横になっていたのは確実でも。
(……ぼくって、心が狭いわけ?)
そうじゃないよね、と自分自身を振り返ってみて、「違うと思う」と結論を出す。
前の自分の頃と違って、ハーレイを独占出来ないせいで、そうなるのだろう。
ソルジャー・ブルーだった頃なら、ハーレイは「当たり前に」側にいたのだから。
そうだったよね、と時の彼方を思うけれども、果たして本当に「そう」だったのか。
ハーレイは常に側にいたのか、違ったのか。
(…ずっと側にいたなんてことは、なかったっけ…)
だってキャプテンだったんだしね、と答えは簡単にポンと出て来た。
前のハーレイは白いシャングリラを預かるキャプテン、今よりも遥かに多忙だった。
それこそ昼寝をする時間も無く、いつもブリッジにいたと言ってもいいだろう。
(…前のハーレイが昼間に寝たのは、仮眠くらいで…)
昼寝などしていなかったのだし、暇だったという筈がない。
当然、「ソルジャー・ブルーの側にいる」のは、空き時間か、報告などの用がある時。
それ以外は、仕事が終わる時間まで、青の間には来ないで、ブリッジにいた。
(…そうなんだけど、でも…)
前のハーレイが何処にいようと、前の自分には「安心出来る」理由があった。
文字通りに最強のタイプ・ブルーで、強大なサイオンを誇っていたからこその裏技。
(…シャングリラ中に、サイオンの糸を張っていたほど…)
前の自分はサイオンの扱いに優れていたから、何の心配もしていなかった。
ハーレイが船の何処にいたって、知ろうと思えば直ぐに分かったし、姿も見られた。
「今はブリッジにいるんだよね」とか、「食堂なんだ」といった具合に。
(…そういうの、出来なくなっちゃったから…)
今のぼくは、気になりすぎて昼寝も出来ないんだよ、と溜息をつく。
もっとも、人間が全てミュウになっている、今の時代だと…。
(知りたくっても、サイオンで調べたりするのは、マナー違反で…)
やったら駄目だと言われちゃう、と思いはしても、やっている人はいる気がする。
恋人が来てくれなかった日に、つい探ってしまう人は、この世の中に…。
(絶対いない、ってわけがないって!)
人間、そこまで立派じゃないし、と自分自身に言い訳してから気が付いた。
「そういう人は、きっといるから」と真似をしようにも、今の自分には出来ないらしい。
不器用になってしまったサイオン、それを使って探ろうとしても…。
(努力するだけ、無駄なんだってば…!)
ハーレイの姿も見えて来ないよ、と悔しくなって涙が出そう。
「これじゃ昼寝は出来やしない」と、「ハーレイがいないと、落ち着かなくて」と。
更に言うなら、ハーレイが訪ねて来てくれた日は…。
(どんなに具合が悪い時でも、頑張って起きていたいほど…)
時間が惜しくて寝たくないから、「寝ろ」と言われて、渋々眠ることになる。
ハーレイが「俺が起こしてやるから」と言ってくれても、ベッドの側にいてくれても。
そっと手を握って「ぐっすり眠れ」と、優しい声で告げてくれても。
(……うーん……)
そうなってくると、昼寝は当分、出来ないらしい。
まるで出来ないわけではなくても、ハーレイが来てくれている時に限定で…。
(ちゃんと早めに起こしてよね、って念を押すから、寝てる時間も…)
ぐっすり、たっぷりとはいかない勘定。
ハーレイの声で起こされるまでの、限られた時間しか昼寝は出来ない。
(じゃあ、どうしたら…)
前みたいにゆっくり、お昼寝出来るの、と「これから先」を考えてみたら、長かった。
結婚出来る年を迎えて、ハーレイと一緒に暮らし始めるまで無理だろう。
それまではきっと、今と同じで、「ハーレイのことが気になりすぎて」眠れない。
たとえ婚約したとしたって、ハーレイには仕事があるのだから。
(…柔道部の活動でお出掛けしちゃう日も、きっとあるよね…?)
そういった時は、今の自分と同じ状態になってしまって、気に掛かるのに違いない。
「ハーレイは、今、何をしてるの?」と、「部員のみんなと、食事なのかな?」などと。
なんとも心が狭いけれども、こればかりは自分でも、どうにもならない。
気にしないでいられる強さは無いし、マナー違反をしてでも探るサイオンも持ってはいない。
(お昼寝、うんと先まで、お預け…)
ハーレイと結婚するまでは…、と悲しい気分で、その一方で楽しみでもある。
前の生では、ハーレイは昼寝が出来ない仕事に就いていた。
シャングリラのキャプテンに昼寝は無理で、昼間に寝たのは「仮眠」だけ。
(…前のぼくは、お昼寝していたけれど…)
身体が弱るよりも前から、昼寝は好きな時間にしていた。
「ちょっと寝よう」とベッドに入って、ぐっすり、たっぷり、気が向くままに。
(でも、ハーレイには…)
そんな余暇など無かったのだし、今度はゆっくり眠って欲しい。
好きな時間に、好きなだけ。
気が向いた時にベッドに出掛けて、自然に目が覚める時間まで。
(うん、いいよね…)
前のハーレイには出来なかったんだもの、と頬を緩めて嬉しくなる。
青い地球まで二人で来たから、「昼寝するハーレイ」を見ることが出来る。
今はまだ、ずっと先の話で、結婚するまで、目にすることは出来ないけれど。
ハーレイと一緒に暮らす家でしか、その光景は見られないけれど。
(…よく寝てるよね、って側で眺めて…)
ぼくは本でも読んでいようかな、と幸せな気持ちで一杯になった。
今は「ハーレイがやってくれている」立場を、「今度は、ぼくがやるんだよ」と。
ハーレイの寝顔を見守りながら、読書をしたり、お茶を飲んだりといった具合に。
とても素敵な未来の時間。
前の生では見られなかった「ハーレイの昼寝」を、ベッドの側に座って眺める。
顔立ちをよくよく観察したり、寝息に耳を傾けたりと、飽きもしないで、のんびりと。
(…ホントに幸せ…)
うんと幸せ、と思ったけれども、どうだろう。
一緒に暮らし始めて直ぐなら、確かに飽きずに、幸せたっぷりだろうけれども…。
(ハーレイのお昼寝、その内、当たり前のことになっちゃうんだよね…?)
もう珍しくもなくなって…、と「それ」は容易に想像がついた。
最初の間は新鮮な時間で、驚きも発見も、きっと沢山。
けれども、当たり前になったら、飽きてしまうのは時間の問題かもしれない。
そして飽きたら、ブルーを待っているものは…。
(…なんでいつまでも寝ているの、って…)
ハーレイの横でイライラしながら、「まだ起きないの?」と腹を立て始めるという現象。
「起きたら一緒に散歩に行こう、って寝る前に約束していなかった?」と。
あるいは「おやつの時間で、お茶の支度も出来てるのに!」などと、眉を吊り上げて。
(…ホントにありそう…)
二人で朝からケーキを焼いて、「おやつに食べよう」という時だってあるだろう。
ハーレイが昼寝をしている間に、ケーキを切って、お茶の支度も整えたのに…。
(起きてこなくて、気持ちよさそうに寝ちゃってて…)
ぼくだけケーキを食べるわけにも…、と思うものだから、困った事態になりそうではある。
寝ているハーレイを叩き起こすか、ケーキを食べるのは諦めるか。
(…二人で作ったケーキだったら、まだいいんだけど…!)
今のハーレイの大好物は、パウンドケーキというヤツだった。
それも「ブルーの母が焼いたケーキ」で、ハーレイの母のと全く同じ味らしい。
いわゆる「おふくろの味」だと聞いて、それをブルーも作りたくなった。
ハーレイに喜んで食べて欲しくて、「ぼくも作れるようになるんだ」と決意している。
いずれ母からレシピと作り方を教わり、上手に焼くために練習をして…。
(ハーレイのために焼くんだから、って…)
大きな夢を描いているわけで、結婚する頃には、作れるようになっているだろう。
だから二人で暮らす家では、何度も焼いて、ハーレイと食べて…。
(ハーレイが「やっぱり、これが最高だよな」って…)
褒めてくれるのが嬉しくて、その日も朝から頑張って焼いて、お茶の時間になったのに…。
(…そのハーレイが、お昼寝中で…)
起きて来ないなんて最悪だから、と涙が出そう。
せっかく作ったパウンドケーキが、テーブルの上で待ちぼうけなんて。
ケーキどころか、ケーキを焼いたブルー自身も、一人きりで放っておかれるなんて。
(あんまりだってば…!)
それって酷い、と思いはしても、昼寝するのはハーレイの自由。
現に自分も、ついさっきまで「当分、縁が無さそうだよね」と昼寝を懐かしんでいた。
「ハーレイと結婚するまでは無理」と、「それまでは時間限定みたい」と。
(…じゃあ、どうしたら…?)
どうすればいいの、と悩んでしまう。
昼寝の時間は、どうすれば戻って来るのだろうか。
思い付いた時にベッドに入って、好きなだけ、ぐっすり、たっぷり眠れる昼寝。
今の自分には出来ない昼寝を取り戻すには、結婚するしか無さそうではある。
ところがどっこい、結婚したら、ハーレイにも「昼寝する権利」があって…。
(…前のハーレイには出来なかったこと、ぼくは誰よりも知っているから…)
ハーレイに向かって「昼寝しちゃダメ!」などと言えはしないし、叩き起こすのも…。
(なんだか悪いし、昼寝するんなら、どうするのが…)
いいのかな、と頭を抱えてしまったけれども、閃きが天から降って来た。
「一緒に寝ればいいんだよ!」と。
ハーレイと一緒に昼寝するなら、お互い様になるだろう。
どっちが後まで寝ていたとしても、それは「その時の条件次第」。
時によっては、ハーレイの方が先に目覚めて、夕方になっても起きないブルーを…。
(よく寝てるよな、ってクスクス笑って…)
何度も寝顔を覗いたりしながら、夕食の支度をするかもしれない。
「今日のおやつは、デザートになってしまいそうだな」などと、鼻歌交じりに。
「自分でケーキを焼いてたくせに」と、「まあ、いいんだが」と、可笑しそうに。
(…ぼくの方が先に起きちゃった時も…)
たまにはこういう時もあるよね、とハーレイの鼻をつまんだりして、のんびりと待つ。
「パウンドケーキは日持ちするから」と、「明日の方が美味しいくらいかもね」と。
(味が馴染んで、うんと美味しく…)
食べられる類のケーキもあるから、二人でケーキを焼いた時でも、ゆったり待てそう。
二人で昼寝を始めたのなら、一緒に昼寝していたのなら。
(うん、ハーレイと昼寝するんなら…)
一緒が一番、と答えは出たから、もう困らない。
ハーレイと二人で暮らし始めたら、ゆっくり昼寝で、ハーレイも一緒に昼寝だから…。
昼寝するんなら・了
※ハーレイ先生と暮らし始めるまで、ゆっくり昼寝は出来そうにないブルー君ですけど。
結婚したら、ハーレイ先生にも昼寝の権利があるのです。一緒に昼寝をするのが良さそうv
とんと御無沙汰になっちまったな、とハーレイが思い出した、心地よいこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(どのくらい、御無沙汰してるんだ?)
いつから昼寝をしていないやら、と指を折りながら時を遡ってみる。
今年の夏休みは、全くしてはいなかった。
大抵はブルーの家で過ごして、そうでない日は柔道部の活動などで出掛けてばかり。
家でのんびり昼寝する暇は、まるで無かったと言うべきか。
(しかし、柔道部だとか、学校関係の方はともかく…)
ブルーの家に行っていた日は、「暇が無かった」では通らない。
暇だからこそ、前の生からの恋人の家に出掛けて行って…。
(あいつと話して、一緒に飯を食ったりもして…)
朝から晩までいたわけなのだし、暇だからこそできることだろう。
その代わり、昼寝が出来なかったというだけで。
訪問先の家で寝るなど、失礼でしかないのだから。
(学生時代なら、そいつも充分、アリだったんだが…)
現に友達の家で寝てたぞ、と思うけれども、今は学生時代ではない。
ブルーも友達ではなくて教え子、ブルーの両親は保護者なのだし、ハーレイが行けば…。
(立派に「お客様」でだな…)
お客様な以上、「どうぞ」と勧められない限りは、昼寝は出来ない。
もっとも、昼寝を勧める家など、そうそうありはしないけれども。
(…海辺の家なら、季節によってはあるんだろうが…)
夏になったら海水浴で賑わう場所なら、客人を招いて海に行くことも珍しくない。
海で泳げば、楽しくても体力は消耗するから、海から戻って来た後に…。
(おやつの前に昼寝でも、と涼しい部屋に案内してくれて…)
ごゆっくりどうぞ、と言われそうではある。
もちろん家人も別の部屋で昼寝で、起きているのはペットくらいで…。
(うんとゆったり時間が流れて、おやつの時間も遅めになって…)
夕食も、遅い時間になりそうな感じ。
起き出してくるのが遅かったならば、自然と全てがずれてゆく。
夕方近くに冷えたスイカを切っておやつで、夕食は長い夏の日がとっぷり暮れてから。
(飯を食ったら、花火とかだな)
海辺の夜だと定番だぞ、と思うけれども、ブルーの家は海辺ではない。
当然、海水浴も無いから、昼寝を勧めてくれはしなくて、それで終わった夏休み。
暇はたっぷりあったというのに、一度も昼寝をしないままで。
その前は…、と更に遡ったけども、夏休みの前は、ごくごく普通の一学期。
ついでに途中からの転任、最初の間は、どちらかと言えば忙しかった。
かてて加えて、ブルーのクラスへ授業をしに足を踏み入れた途端…。
(あいつがいきなり、血を流したから…)
腰を抜かさんばかりに驚き、駆け寄った時に記憶が戻った。
自分は何者だったのか。
大量の血を流して倒れたブルーは、自分にとって誰だったのか。
(其処から後は、あいつに付き添って救急車に乗って…)
生きた心地もしなかった上に、聖痕なのだと分かった後は、人生がすっかり変わってしまった。
ブルーと共に生きてゆこう、という方向へ。
今はまだチビの子供だけれども、いずれは一緒に暮らすのだ、と。
(だからだな…)
守り役という役目にかこつけ、せっせとブルーの家に通った。
休日も、仕事が終わった後にも、時間さえあればブルーの家へと出掛けてゆく。
ブルーの家で過ごす間は、当然、「お客様」なのだから…。
(昼寝をどうぞ、と言われるわけもないからなあ…)
すっかり御縁が無くなったものが、忘れ果てていた「昼寝の時間」だった。
昼寝は、心地よいものなのに。
チビのブルーと出会うより前は、昼寝することもよくあった。
休日にジョギングなどをした後、家に帰って、水分と栄養を補給してから横になる。
昼寝する場所は、気分次第。
寝室に行って、カーテンを閉めて、ベッドに潜るのもいいし…。
(レースのカーテンだけにしておいて、窓も開け放して…)
明るい部屋でベッドに入って寝るのも、なかなかにいい具合ではある。
庭の緑の匂いが届けば、山のホテルにいるような気分。
(リビングの床で寝るというのも、悪くないんだ)
絨毯の上にゴロンと転がり、横には飲み物などを乗っけたトレイを置いておく。
ふと目が覚めたら、起き上がって飲み物を口にして…。
(それからコロンと、また転がって…)
夕方まで寝て、「いい日だった」と伸びをして起きて、夕食の支度。
昼寝する前に用意しておいた、食材などを取り出して。
「今日は有意義に過ごせたよな」と、大満足で。
有意義も何も、かなりの時間を「寝ていた」くせに。
昼寝の間は何もしなくて、家事も仕事も、何もこなしてはいなかったのに。
(しかし、昼寝の魅力と良さは、だ…)
そういう所にあるんだよな、と思い返して、「寝ていないな…」と顎に手を当てた。
ずいぶん長く「していない」わけで、これから先も、きっと出来ない。
ブルーの家に出掛けてゆくなら、昼寝している暇は無いから。
暇だからこそ「ブルーの家に出掛ける」勘定、ブルーの家では「出来ない」昼寝。
お客様に昼寝を勧めはしないし、こればっかりは仕方ない。
(…うーむ…)
前の俺だってしていないしな、と自分で自分を慰める。
遠く遥かな時の彼方では、昼寝をしている暇は無かった。
もう文字通りに「無かった」と断言出来るし、昼寝したのは「仮眠」と言う。
白いシャングリラを預かるキャプテン、その立場では、のんびり昼寝をするなどは…。
(言語道断というヤツで…)
けして許されるものではなくて、自分自身でも「許さなかった」。
他の者たちが何と言おうと、「いや、大丈夫だ」とブリッジに立って「起きて」過ごした。
昼寝に相応しい時間に寝たのは、緊張が長く続いて、休息の必要があった時だけ。
「これ以上、起きて立っているより、寝た方がいい」と判断したなら、寝に行った。
「すまないが、少し仮眠してくる」と、ブリッジの仲間に断って。
どれほどの時間で戻って来るのか、それもきちんと伝えてから。
(でもって、部屋に戻ったら…)
起きるべき時間にアラームをセットし、ブリッジの者にも頼んでおいた。
「この時間になったら、起こしてくれ」と。
「俺も目覚ましはかけておくんだが、万一ということがあるからな」と、念のために。
(…あの頃の俺に比べたら…)
昼寝出来ないくらいが何だ、と思うけれども、昼寝していた頃の記憶も「ある」のが今。
どんなに心地よいものなのか、今の自分は「知っている」。
チビのブルーに出会うより前は、何度も昼寝をしていたから。
子供時代から昼寝していたし、学生時代も友人の家で寝ていたもの。
教師の仕事を始めてからは、気ままな一人暮らしなだけに…。
(気が向いた時に、ゆっくり昼寝で…)
好き放題に寝られたんだが、と昼寝出来た頃が懐かしい。
あの心地よい時は当分、自分の許には帰って来ない。
チビのブルーの家に出掛けて、「お客様」をやっている間は。
ブルーの家は海辺の家ではないから、お客様に昼寝を勧めはしないし、どうしようもない。
まさか「昼寝をしたいから」と、ブルーの家には行かないで…。
(家でゆっくり昼寝したなら、あいつ、怒るどころじゃ済まないぞ…)
俺だってそんな気分になれるわけもないしな、と思う以上は、お預けでいるしかないだろう。
どうやら、ブルーと暮らし始めるまで、昼寝するのは無理らしい。
昼寝に割ける時間は無くて、昼寝するような時間があるなら、ブルーのために使うべき。
つまりは、そうする必要が無くなる時が来るまで、昼寝とは縁が遠のいたまま。
(…気持ちよく昼寝出来るようになるのは、あいつと暮らし始めてからで…)
それまで我慢するしかないな、と思った所でハタと気付いた。
「待てよ?」と、ブルーの顔を頭に描いて考える。
ブルーと一緒に暮らしているなら、家には「ブルーがいる」わけで…。
(あいつが同じ家にいるのに、俺は昼寝が出来るのか?)
果たして「それ」は許されるのか、と疑問がフツフツと湧き上がって来た。
ブルーが家にいるというのに、「昼寝してくる」と部屋に戻ろうものなら、どうなるか。
(カーテンを閉めて、ベッドに潜り込む前に…)
怒り狂ったブルーが追い掛けて来て、寝室の扉を開け放ちそう。
バンッ! と凄い勢いで。
「何をするの!」と、「昼寝だなんて、信じられない!」と血相を変えて。
(…あいつを放って、昼寝に行ってしまったら…)
そうなりそうだ、と肩を竦めた。
結婚して一緒に暮らし始めた、前の生から愛したブルー。
それを放って昼寝するなど、デリカシーに欠けた行為でしかない。
ブルーが怒りに燃えていたって、誰も「ハーレイ」に同情してはくれないだろう。
「自業自得だ」とブルーの肩を持ち、ハーレイを責めることはあっても。
「なんという酷い恋人だろう」と、呆れ果てた顔で手を広げはしても。
(…それはマズイぞ…)
どう見ても俺が悪いじゃないか、と思うし、事実、そのように受け取られる。
ブルーにも、耳にした他の人たちにも。
(俺は昼寝をしたいだけだというのに、そうなるのか…?)
今と同じにはいかないのか、と思考を巡らせ、「駄目だな…」とフウと溜息をついた。
ブルーと二人で暮らしているなら、ブルーを放ってはおけないだろう。
「出会う前」のような昼寝のスタイル、それを実行してはいけない。
もれなくブルーは怒るだろうし、世間の意見も、ブルーの方に…。
(同調するってモンだよなあ…?)
多分、と「もう戻らない」昼寝の時間を思う。
好きな時間に、好きなスタイル、それで寝るのが「心地よい」のに。
昼寝の真骨頂とも言っていいのに、ブルーと暮らし始めた後には難しい。
ブルーに合わせてやらないことには、ブルーの機嫌を損ねてしまって、昼寝どころでは…。
(なくなるよなあ、間違いなく…)
寝室まで追い掛けて来られちまって、と思うものだから、工夫するしかないだろう。
ブルーと一緒に暮らし始めた後、昼寝するなら。
縁が遠のいている「心地よい時間」を、もう一度、取り戻したいのなら。
(…そうなると、あいつを誘うしか…)
あいつも一緒に昼寝するしかないんだよな、と答えは直ぐに浮かぶけれども…。
(どうなることやら…)
寝室はともかくリビングの床は、身体の弱いブルーには不向きかもしれない。
下手をしたなら身体が冷えて、体調を崩してしまいかねない。
(それを防ぐには、あいつのための敷物か何かを…)
調達して来て、昼寝の時には床に敷く。
そしてブルーが眠りに落ちたら、上にも何か掛けてやらねば。
(…でないと、風邪を引きそうだしなあ…)
ということは、俺は先には寝られないのか、と気付いて「そうか…」と苦笑した。
前の通りの昼寝のスタイル、それは不可能になるらしい。
一人で気ままに昼寝したのでは、ブルーのためにはならないから。
ブルーが怒るか、体調を崩すか、どちらかに転んでしまう以上は、これからは…。
(昼寝するなら、あいつも誘って、あいつの面倒を見てやりながら…)
寝るしかないっていうことだよな、とガッカリだけれど、それもいい。
ブルーと二人で暮らすためなら、気ままな昼寝は捨てられる。
どうせ遥かな時の彼方では、昼寝などしてはいないから。
昼寝も無ければ、ブルーと二人きりでの暮らしも、夢でしかなかったのだから…。
昼寝するなら・了
※ブルー君と再会してから、昼寝していないハーレイ先生。昼寝が懐かしいですけど…。
これから先に昼寝をするなら、ブルー君より先には寝られないのです。世話してあげないとv