(学校って、なんだか…)
ブリッジみたい、と考えたブルー。
学校ではなくて、家に帰ってから。自分の部屋に戻ってから。
そう考えた理由はごくごく単純、単なるブルーの思い付き。
学校に行けば、ハーレイも自分もよそ行きの顔で過ごしているから。
恋人同士の語らいどころか、親しげにさえも振舞えないから。
ブルーの家で過ごす時だと、ハーレイは「ブルー」と親しげに名前を呼ぶけれど。
学校だと「ブルー君」になる。他の生徒と同じ扱い、呼び捨てにしては貰えない。
ブルーの方でもそれは同じで、ハーレイを呼ぶなら「ハーレイ先生」。
互いの呼び名もよそよそしくなってしまう学校、それが学校。
だからブリッジだと思ってしまった、白いシャングリラのブリッジのようだと。
前の生で過ごした白い船。ハーレイが舵を握っていた船。
そのハーレイの居場所だったブリッジ、白いシャングリラの心臓部。
其処にはブルーも顔を出したけれど、様々な用で出掛けたけれど。
ハーレイに会っても恋人同士の語らいどころか、親しげな振舞いも出来なくて。
ソルジャーの貌で立っていただけ、ハーレイもキャプテンだっただけ。
(学校とブリッジ、やっぱり似てる…)
いくら会えても、同じ時間を過ごしてはいても、互いに親しく触れ合えない場所。
語らう時にも互いの立場が邪魔をする場所、学校とブリッジ。
まるで全く似てはいないけれど、それがある場所も、その形すらも。
学校があるのは青い地球の上で、頼りなく空に浮かんではいない。
ブリッジのように計器が並んでもいない、もちろん舵だってついてはいない。
似ている所はたった一つだけ、ハーレイと親しく出来ないことで…。
(他は全然、違うんだけどな…)
形も違うし大きさだって、と思い浮かべてみた学校。
白いシャングリラはとても大きくて、学校が丸ごと入りそうだけれど。
ブリッジだけならきっと、学校のグラウンドに充分置ける。
ハーレイがいつも座っていた場所、コアブリッジなら職員室にでも置けそうで。
(職員室サイズ…)
ホントに似てる、とブルーの唇から漏れた溜息。
職員室こそまさにブリッジ、ハーレイが一番よそよそしくなってしまう場所。
学校の廊下や中庭などなら、ちょっとした話も出来るのに。
「ハーレイ先生!」と声を掛ければ、「おっ、元気そうだな」と声が返るのに。
職員室だとそうはいかない、きちんと挨拶、それと用件。
用が終われば話も終わりで、そんな所までブリッジに似ている。
ソルジャーだった頃、「それじゃ」とブリッジを後にしたように。
ハーレイと個人的な言葉も交わさず、マントを翻して去って行ったように。
ブリッジと学校、傍目には似てはいないのに。
並べて置いても、誰も似ているとは言わないだろうに、共通点。
けれども、それは自分たち二人だけのこと。自分とハーレイだけのこと。
前の生でも今の生でも、秘密の恋人同士だから。
誰にも内緒の恋人同士で過ごしているから、学校とブリッジが似てしまう。
恋人同士としては振舞えない場所、よそよそしくなってしまう場所。
学校もブリッジもどちらも同じで、けして親しくは振舞えなくて。
(でも、学校…)
今はそういう場所だけれども、自分が大きく育ったならば。
学校の生徒でいる時期が過ぎて、ハーレイと共に暮らせる時が来たならば。
(ぼく、ハーレイがいる学校へ行ける…?)
ハーレイに何かを届けに行くとか、そんな用事が出来たなら。
そういう時なら、学校の中でもきっと「ハーレイ」と呼べるのだろう。
ハーレイも「ブルー」と呼んでくれるだろう、優しい笑顔で。
もしかしたらキスだって出来るかもしれない、挨拶のキスが。触れるだけのキスが。
(うん、きっと…)
そんなチャンスも訪れるだろう、ハーレイと暮らし始めたならば。
学校がブリッジではなくなる時が。似ているとさえ思わなくなる、幸せな時が。
今はブリッジに似た学校だけれど、今だけの我慢。
いつかハーレイと結婚したなら、もうブリッジとは似ても似つかなくなるのだから…。
学校とブリッジ・了
※学校とブリッジ。似ていると思ったブルー君ですけど、似ているのは今の間だけ。
いつかハーレイ先生に届けに行くのは何なんでしょうね、忘れ物かな…?