(ふふっ、ホットケーキ…)
これが大好き、とブルーはパクンと頬張った。
焼き上がったばかりのホットケーキが二枚、お皿の上に乗っかっている。
(ぼくは沢山食べられないから…)
少し小さめ、そういうのが二枚。
ホットケーキは「重ねてある」のが、より美味しそうに見えるから。
大きなものを一枚焼くより、断然、二枚の方がいい。
(メープルシロップたっぷりで…)
熱で溶けてゆく金色のバター、それも大切。
ホットケーキそのものも美味しいけれども、バターとメープルシロップもいい。
(両方揃うと、うんと美味しくなるんだよ)
果物やホイップクリームなどをトッピングするより、基本の食べ方が一番好き。
メープルシロップと金色のバター、これが最高だと思う。
(だって、本物のメープルシロップ…)
合成品ではなくて、砂糖カエデの樹液で出来たメープルシロップ。
混じり気なしの、樹液を煮詰めた甘いシロップは、たっぷりかけても「くどくない」。
バターの方も、地球の草を食んで育った牛のミルクのバター。
牧場で搾ったばかりのミルクを、直ぐに運んで加工してバターの出来上がり。
(食べてる草が美味しいから…)
ミルクもバターも、とても美味しくなって当然。
白いシャングリラの中で育てた、牛たちのミルクのバターより。
(ホットケーキは、こうでないとね?)
朝御飯でなくても、うんと美味しい、とナイフとフォークで食べてゆく。
こういう素敵な「ホットケーキの朝食」、それが自分の夢だったから。
「いつか地球で」と夢を抱いて、食べたいと願い続けたから。
本物のメープルシロップも、地球の草で育った牛のミルクのバターも、船には無いもの。
青い地球まで辿り着かないと、けして食べられはしないもの。
夢だった筈のホットケーキを、美味しく食べている自分。
溶けたバターを塗り付けながら、メープルシロップを絡めてやりながら。
(バターとメープルシロップの味が混ざって…)
ホントに美味しい、と頬っぺたが落ちそうに感じるほど。
前の自分の夢が叶った、地球でしか食べられないホットケーキ。
(今だと、これが当たり前で…)
その気になったら、毎朝だって食べられる。
今日のように「おやつ」になる日だってあるし、ホットケーキは食べ放題。
胃袋さえ悲鳴を上げないのならば、三枚も、それに四枚だって。
(本の挿絵とかにあるみたいに…)
ドッサリ重ねて、メープルシロップをかけたっていい。
山のような量のホットケーキに行き渡る量を、惜しみなく。
バターもたっぷり、好きなだけの大きさに切り取って。
(そういうのだって、今なら出来ちゃう…)
母に頼んで、沢山焼いて貰ったら。
「本当に全部食べられるの?」と呆れられても、「大丈夫!」と言いさえすれば。
それで残してしまったとしても、母は「やっぱりね」と苦笑するだけ。
「そんなことだと思っていたわ」と、「このホットケーキは、どうしようかしら?」と。
きっと母なら、いい使い道を考えてくれる。
メープルシロップと溶けたバターまみれの、ホットケーキの山だって。
チビの自分が食べ切れないで、「もう入らないよ」と途中で降参した後だって。
(晩御飯には使えなくても、デザートに変身しちゃうとか…)
次の日の朝に、思わぬ形に化けてテーブルに現れるとか。
「昨日のブルーのホットケーキよ」と、母がテーブルに運んで来て。
(ママなら、きっとそうだよね?)
料理上手で、お菓子作りも得意な母。
ホットケーキが山ほど残れば、それを使って別の何かを作るのだろう。
そのまま残して、次の日の朝に温め直したりはしないで。
ママだもんね、と顔が綻ぶ。
とても優しくて、叱る時でも声を荒げはしない。
山のようなホットケーキを作って貰って、残したとしても、怒鳴られはしない。
(…パパには話すんだろうけど…)
それを話して、「叱ってやって」とは言わない母。
聞いた父の方も、「此処に来なさい」と怖い顔になって怒りはしない。
どちらかと言えば、父の場合は…。
(ママにきちんと謝ったのか、って…)
確認するだけで、「謝ったよ」と答えた時には、「よし」と頭を撫でるのだろう。
「ちゃんと謝ったんならいい」と、「次から我儘、言うんじゃないぞ?」と。
(ホットケーキの残りで作った、デザートとかも…)
父は「美味いぞ」とパクパクと食べて、「怪我の功名だな」と笑顔になりそう。
「お前が沢山残さなかったら、こいつは食べられないからな?」と。
(パパもママも、うんと優しいんだから…)
ぼくのホントのパパとママだし、と嬉しくなる。
前の自分は、両親を忘れてしまったから。
十四歳になるまで育ててくれた、優しかったのだろう養父母。
その人たちを忘れてしまって、とうとう思い出せないまま。
どんな顔だったか、どんな声をした人たちだったか。
(…顔だけだったら、写真が残っていたのにね…)
テラズ・ナンバー・ファイブを倒した後に、引き出された膨大な「ミュウに関する情報」。
その中に前の自分のもあって、養父母の写真も残されていた。
今のハーレイが覚えていたから、今の自分にも伝わったけれど…。
(声はデータが無かったから…)
養父母の声は分からない。
今の両親なら、直ぐに頭に浮かぶのに。
どういう言葉を口にしそうか、それだって直ぐに分かるのに。
ホントに残念、と思うけれども、今は幸せなのだし、いい。
血が繋がった本物の両親、それが自分の父と母。
(ホットケーキも、ちゃんと本物…)
前のぼくの夢のホットケーキ、と食べる間に、不安になった。
これは本当のことだろうか、と。
本物の母が焼き上げてくれた、二枚重ねのホットケーキ。
地球の草で育った牛のミルクのバターに、砂糖カエデから採れたメープルシロップ。
(夢みたいだけど…)
こっちが夢の出来事かも、と自分の頬っぺたを抓ってみた。
夢の中なら痛くない、と前に何処かで聞いたから。
(えーっと…?)
キュッと抓っても、ギュウと抓っても、痛くない。
まさか、と頬っぺたを引っ張ってみても、少しも感じない痛み。
(…これって、夢なの…?)
どおりで「夢のホットケーキ」が此処にある筈。
山ほどの量のホットケーキを焼いてくれそうな、「本物の母」が家にいる筈。
(…ぼくはママなんか忘れてしまって…)
父の顔だって覚えていなくて、子供時代の記憶も無い。
それが自分で、「ソルジャー・ブルー」。
白いシャングリラで暮らすミュウたちの長で、向かおうとしているのが青い地球。
その地球でしか、こんなホットケーキは食べられない。
地球に着いても、「本物の両親」なんかはいない。
SD体制が敷かれた時代に、血縁のある親子は存在しないから。
子供は全て、人工子宮から「外の世界」に出されるから。
(…そうだよね…)
こんな素敵な世界なんかは何処にも無いよ、と気付かされた。
ホットケーキも、優しい両親も、全部、自分が見ている夢。
目が覚めたならば、そんな世界は無いのだから。
これは夢だ、と分かってしまうと、夢の世界にしがみ付きたくなる。
夢の世界から出たくなくなる。
(目が覚めちゃったら、ホットケーキも、ぼくのパパとママも…)
消えてしまって、それっきり。
ホットケーキなら、いつか地球まで辿り着いたら、きっと食べられるだろうけれど…。
(パパとママには…)
会えはしないし、一緒に暮らすことも出来ない。
夢の中なら、両親の家に住んでいるのに。
この夢の中で「ママ!」と呼んだら、「どうしたの?」と母が来てくれるのに。
夕食が出来る頃になったら、父も帰って来てくれる。
「ただいま」と玄関の扉を開けて、「今日も学校、楽しかったか?」と。
けれど、何もかも夢の産物。
もうじき夢は覚めてしまって、自分は「ソルジャー・ブルー」に戻る。
今は小さな子供なのに。
十四歳にしかなっていなくて、甘えん坊のチビなのに。
(起きたくないよ…)
ずっとこの夢の中にいたいよ、と我儘な気分。
ソルジャーに、それは許されないのに。
目覚ましが鳴ったら直ぐに起き出し、ソルジャーの衣装に着替えなければ。
そして船での一日が始まる。
ホットケーキが朝食に出ても、メープルシロップは合成品の船。
バターはあっても、船の中で育てた牛のミルクで作られたバター。
(ホットケーキを、ぼくが残しちゃっても…)
美味しく変身させてくれる母はいなくて、「ママに謝ったか?」と訊く父だっていない。
SD体制が敷かれた世界に、「本物の両親」はいないから。
どんな子供にもいる筈の養父母、その人たちも自分は忘れたから。
いられるものなら、この夢の中にいたいのに…。
それは出来ない、と分かっているから零れる涙。とても悲しくて。
(パパ、ママ…)
消えてしまわないで、と泣く自分の声で目が覚めた。
頬を濡らした冷たい涙で、意識が少しずつ冴えてゆく。
(……消えちゃった……)
パパもママも、それにホットケーキも…、と指で涙を拭おうとしたら。
(あれ…?)
青の間じゃないよ、と見上げた天井。
あそこの天蓋はこうじゃなかった、と暗い部屋の中を見回してみて…。
(こっちが本物…!)
ぼくの家だ、と弾んだ胸。
今の自分は十四歳にしかならない子供で、青い地球の上に生まれて来た。
さっきの夢に出て来た両親、それが本物の「パパとママ」。
夢が覚めても、消えはしなかった「夢の中の世界」。…それが「本物」だったから。
(ぼくって、幸せ…)
ホントに幸せ、と今度は嬉しくて泣きたい気分。
ハーレイにこれを話してみようか、「幸せな夢を見たんだよ」と。
「前のぼくが、今のぼくの夢を見てたよ」と、「夢が覚めても、夢は本物だったんだよ」と…。
夢が覚めても・了
※今の自分の夢を見ていたブルー君。「ソルジャー・ブルーになった」夢の中で。
何もかも夢だと思っていたのに、夢が覚めても消えなかった世界。幸せすぎる現実ですv
(いかん…!)
これはマズイ、と前方を睨んだハーレイ。
シャングリラのブリッジから見える、大きなスクリーンに映る映像。
船の外部を捉えたもので、刻一刻と船の行く手を皆に知らせてくれるのだけれど…。
他の様々なデータからして、この先は多分、機雷原。
どう避けるかが運命の分かれ目、面舵でゆくか、取舵なのか。
(しかし…)
普通の機雷だったらともかく、思考機雷なら避けるだけ無駄。
あの種の機雷は追尾どころか、船に向かって襲い掛かるもの。
ただし、「シャングリラ」という船にだけ。
人類の敵のミュウの母船を追い掛けるだけで、人類を乗せた船に危害は与えない。
船の乗員が海賊だろうが、軍規違反で逃亡中の軍人だろうが。
思考機雷に搭載された、思念波を拾うサイオン・トレーサー。
アルテメシアを追われた時に初めて出会って、それ以来、ミュウの天敵の機械。
(あれはどっちの機雷なんだ…!)
データを集めさせたいけれども、それをやったら命取り。
シャングリラの主だった機能は全て、「サイオンを使用している」から。
ステルス・デバイスも、サイオン・シールドも、レーダーでさえも。
(サイオン・レーダーの感度を高くしたなら…)
出力を上げるためにと使われるサイオン、思考機雷は「それ」を捉えて寄って来る。
普通の機雷原ならいいが、と主任操舵士のシドに叫んだ。
「面舵いっぱーい!」
「おもかーじ!」
大きく右へと変えられた進路、吉と出るのか、凶と出るのか。
並みの機雷なら、これで遭遇しないで済む。
航路は変更されたわけだし、もうこの先には機雷原など無い筈だから。
けれども、読みは甘かった。
そちらに進路を変えて間もなく、前方に機雷原の反応。
さっきの「アレ」は思考機雷で、移動したのに違いない。
「シャングリラを捕捉した」ものだから。
ミュウの母船を葬り去るべく、その前方へと回り込むのが思考機雷。
(…ワープするか!?)
ワープしたなら、この空間から一気に離脱出来るのだけれど…。
(距離が足りんぞ…!)
ワープドライブを直ぐに起動したって、「直ちに亜空間ジャンプ」は不可能。
転移先の選定に座標設定、その計算にかかる時間も必要。
ついでにワープドライブ自体も、「車のようには」いかないもの。
キーを差し込み、エンジンをかけて、急発進など出来はしなくて…。
(…車だと?)
いったい何を馬鹿なことを、と自分自身を叱咤した。
シャングリラの中には車など無いし、第一、運転したこともない。
現実逃避の最たるもので、「今の状態」から逃げ出したいから、そう考えてしまうだけ。
(落ち着かんか、馬鹿め!)
キャプテンの俺が逃げてどうする、と前方の機雷原を相手に戦う算段。
思考機雷は「追って来る」から、ワープで逃走出来ないのなら…。
「サイオン・キャノン、一斉射撃!」
前方の思考機雷を撃て、と命じた。
「サイオン・キャノン、斉射三連! 撃て!」
シャングリラが放った光の矢たち。
遙か彼方で星屑のように機雷が弾けて、誘爆しているようだけれども…。
いきなり船がガクンと揺れた。
「船尾損傷、シアンガス発生!」
「なんだと!?」
何処からなのだ、と血の気が引くよう。他にも敵が現れたのか、と。
思考機雷が載せたサイオン・トレーサー。
それを頼りに、人類軍の船が急襲ワープで追って来たという所だろう。
「敵艦か!?」
「はい、後方からの攻撃です!」
「艦種識別! 何隻いる!?」
「三隻、全てアルテミス級! 会敵予想時刻まで、あと…」
告げられた数字に愕然とした。
思考機雷を全て叩く前に、後方からの敵と遭遇する。
(どっちと先に戦うべきか…)
敵艦か、それとも思考機雷の群れなのか。
この距離でさえなかったならば、ワープで両方振り切れるけれど…。
(亜空間ジャンプをするだけの余裕は…)
とても無さそうで、出来ることは「全力で戦う」だけ。
このシャングリラの総力を挙げて、サイオン・シールドを強化して。
サイオン・キャノンを撃って撃ちまくって、逃走ルートを何処かに見付けて。
そう考える間に、またも揺れた船。
「機関部に被弾! ワープドライブ、大破!」
「くそっ…!」
他の箇所にも食らった攻撃、被害を拡大させないためには…。
「気密隔壁、閉鎖! ワープドライブは、今は必要ない!」
本当だったら「使いたい」のがワープドライブ。
使えるだけの距離と余裕があるのなら。
けれども最初から無理だったわけで、この状況でワープドライブが大破したなら…。
(逃げられないと気付けば、皆がパニック…)
それは避けねば、と「必要ない」と叫んだだけ。
本当は「それが欲しい」のに。
ワープで此処から逃げられるのなら、誰よりも先にワープを決断したいのに。
なんてことだ、と「打てそうな手」を考える。
このシャングリラが逃げ延びるために、残された手は何があるかと。
(ワープドライブが使えないなら…)
もう文字通りに「戦う」ことしか出来ないだろう。
メインエンジンが被弾する前に、突破口を何処かに作り出す。
(敵艦を落とすか、思考機雷を全部叩くか…)
どっちが早い、と考えるけれど、敵艦は三隻、それも最大のアルテミス級。
思考機雷の群れにしたって、いつも以上の数がある。
どちらを相手に向かって行っても、そう簡単に抜けられるとは思えない。
(これが渋滞だったなら…)
ちょいと横道に入るって手もあるんだが、と思ってはみても、事情が違う。
ズラリ繋がった車の列と、思考機雷やアルテミス級の戦艦とでは。
(どうして車の列になるんだ…!)
それに横道なんぞがどうした、と自分を殴りたい気分。
「現実逃避にも程があるぞ」と、「シャングリラを沈めたいのか!」と。
冷静になるべき場面なのに。
車がどうとか、渋滞だとか、「ありもしないこと」を考えるなどは論外なのに。
(今日の俺は、本当にどうかしてるぞ…)
いくらパニックになったとしても、と情けない。
今の自分の頭の中身が皆に知れたら、船は大混乱だろう。
「もう逃げられない」と、「キャプテンだって、あの有様だ」と。
シャングリラとはまるで無縁な世界の、「車」や「渋滞」を思い浮かべているのだから。
「横道があれば、そっちに入れる」と、夢物語のような解決策を。
(しっかりしろ…!)
思考機雷か、敵艦の方か、と懸命に思考を組み立ててゆく。
車なんぞは頭の中から追い出して。
道路を埋め尽くす渋滞のことも、あれば入りたい横道のことも。
そうして考え続ける間も、敵の攻撃は続いているから、次々と指示を下し続けて…。
(…何処に逃げ道があると言うんだ…!)
これでは見付け出せそうもない、と焦りながらも、「落ち着け」と皆に何度も叫んだ。
「本船はまだ持つ!」と、「諦めるな!」と、被弾する度に。
(本当に、これが車だったら…!)
こんなことにはならないんだが、と思った所で、ハッと「目覚めた」。
明かりを落とした「自分の部屋」で。
夜の夜中に、ぽかりと開いた目。浮上した意識。
(…今のは…?)
俺じゃなかったのか、とベッドの中から部屋をぐるりと見回した。
敵艦などは何処にもいなくて、思考機雷の群れも無い。
第一、ブリッジも、あのスクリーンも…。
(…あるわけがないな、今の時代じゃ…)
シャングリラはもう無いんだった、と気が付いた。
前の自分が指揮していた船、白いシャングリラは広い宇宙の何処にも無い。
あれから遥かな時が流れて、「今の自分」は地球の上にいる。
青く蘇った水の星の上に、かつて自分が目にした時には「死の星だった」地球に。
(…夢だったのか…)
どおりで酷い状況だった、とホッと息をつく。
あのまま行ったら、シャングリラが沈むのは「時間の問題」。
青の間で深く眠ったままだった、前のブルーを逃がせもせずに。
ブルーの所へ駆け付けることも叶わないまま、最期までブリッジで指揮を執り続けて…。
(とんでもない最期になるトコだったぞ?)
前のあいつと心中には違いないんだが、と零れる苦笑。
「しかし、それだと叱られるよな」と、「あいつにも顔向け出来やしない」と。
(夢だったんなら、車も渋滞も、横道のことも…)
俺がブリッジで考えるわけだ、とクックッと一人、笑い出す。
夢が覚めたら「いつもの世界」で、この時間なら小さなブルーもベッドの中。
「この夢をあいつにも話してやろう」と、「あいつだって、きっと面白がるぞ」と…。
夢が覚めたら・了
※キャプテン・ハーレイ、最大のピンチ。もはや「沈む」しか道が無さそうなシャングリラ。
けれど何もかも夢だったわけで、気付けば青い地球の上。本当に「夢で良かった」ですよねv
けれど、覚えていない天国。
前の自分も、その天使たちに会ったのだろう。
ホントに何にも覚えていない、と惜しい気持ちが募る天国。
きっとそうして、幸せに生きていたのだろう。
(いつか、ハーレイと結婚できて…)
(はてさて、俺たちは何処から来たんだか…)
まるで記憶に無いんだよな、とハーレイが浮かべた苦笑い。
ブルーの家へと出掛けて来た日に、夜の書斎でコーヒー片手に。
今日は休日、ブルーと二人で過ごしたけれど。
「キスは駄目だと言ったよな?」と、お決まりの台詞も口にしたけれど。
それでブルーが膨れっ面でも、とても幸せだった一日。
「いい日だった」と思い返して、ふと考えた。
今のブルーと、今の自分は、いったい何処から来たのだろうと。
(地球がすっかり青くなるほど…)
長い時間が経っていた。
前の自分が、死の星だった地球の地の底で、命尽きた日から。
ブルーはと言えば、もっと前から「とうに失くしていた」命。
白いシャングリラを守るためにと、一人きりでメギドを沈めて逝った。
けれど、お互い、それから後の記憶が無い。
何処にいたのか、二人一緒に過ごしていたのか、ほんの欠片さえも。
(天国だろうとは思うんだがな?)
ブルーとそういう話になる度、いつも出てくる「天国」の名前。
こうして一人で考えていても、やはり同じに天国だと思う。
今の時代は「英雄」として称えられている、前のブルーや自分たち。
機械が治めた歪んだSD体制を倒し、ミュウが平和に暮らせる世界を築いた英雄。
(…シャングリラを地球まで運んだだけの、俺はともかく…)
ブルーは間違いなく、天国に行けたことだろう。
白い翼の天使に連れられ、あのメギドから真っ直ぐに。
(俺だって、地獄行きってことはない筈だよな?)
人類軍との戦いの中で、何隻もの船を沈める指揮を執ってはいても。
「サイオン・キャノン、一斉射撃!」とブリッジで何度も叫んでいても。
地獄でないなら、行き先はブルーと同じに天国。きっとその筈。
そうは思っても、全く覚えていはしない。
ブルーと暮らした筈の天国、其処に長年いたのだろうに。
白いシャングリラで過ごした以上の、気が遠くなるような長い歳月。
死の星だった地球が蘇るほどの時を、天国で生きていた筈なのに…。
(生きてたんだと言っていいのか、其処は難しい所だが…)
天国でブルーと笑い合ったり、語り合ったり。
それは満ち足りた時だったろうに、生憎と「記憶が無い」ときた。
ブルーも自分も、まるで全く無い記憶。
天国は雲の上にあったか、其処から地上は見えたのか。
地球はもちろん、宇宙の全てを「雲の上から」見下ろすことが出来たのか。
(天国って言うほどなんだから…)
もう最高に素晴らしい世界だったのだろう。
戦いも無ければ、飢える心配も、暑さも寒さも、けして襲っては来なかった世界。
前の自分たちが生きた世界からすれば、何処を取っても「素晴らしい」場所。
(そいつを覚えていないってのは…)
残念だよな、と思ってしまう。
せっかく「最高の世界」にいたのに、何も覚えていないだなんて。
長年そこで暮らした記念に、欠片くらいは記憶があったら良かったのに。
(雲を見上げて、「あそこだった」と思うとか…)
天使の絵を見て、「こういう人が大勢いたな」と懐かしい気分に包まれるとか。
けれど「無い」のが天国の記憶。
自分の記憶をいくら探っても、小さなブルーに「覚えているか?」と尋ねてみても。
欠片も残さず消えた天国、何処にあるかも分からない世界。
「帰りたい」とは言わないけれども…。
(残念無念、というヤツだ)
前の自分の記憶なら、持っているだけに。
「そっちはあるのに、天国を忘れてしまうなんて」と。
遠い昔から、多くの人たちが憧れた世界。
それが天国、遥か雲の上にあるという場所。
大勢の人が其処を夢見た。「何処よりも素晴らしい世界なのだ」と。
地上での暮らしが厳しかったら、苦しかったら、なおのこと。
「いつか天国に行きたいものだ」と、大金を払った者までもいた。
「死んだら、必ず天の扉が開くように」と、神に仕える者たちに依頼するために。
(大金を積んでも行きたい世界で、そりゃあ素晴らしい場所でだな…)
絵にも描かれたし、本にも書かれた。
どれほど美しい世界なのかと、「其処には何の苦しみも無い」と。
(そういう所に行って来たのに…)
もったいないよな、という気分。
例えて言うなら、観光名所に行って来たのに、ド忘れしたと言うべきか。
桜の花が満開の頃に、花見で名高い場所に出掛けて、桜の下で弁当も広げた筈なのに…。
(…弁当どころか、桜の花も覚えてないとか…)
紅葉の季節に、わざわざ出掛けた紅葉狩り。
あちこちで写真も撮った筈なのに、写真もろとも「出掛けた」記憶を失くしたとか。
(そんなトコだが、それとは比較にならないぞ?)
自分が「忘れてしまった」天国。
桜や紅葉の名所などとは、格が違っているのが天国。
きっと天国なら、桜も紅葉も…。
(あるとしたなら、もう一年中…)
いつでも見頃なのだろう。
其処に出掛けてゆきさえしたなら、心ゆくまで楽しめる桜。あるいは紅葉。
他の様々な景色にしたって、天国だったら眺め放題。
(毎日の飯の方もだな…)
天国に「食事」があるというなら、望みの料理を好きなだけ。
食べたい時にはポンと出て来て、どんなに希少な「珍味」だろうと、選び放題。
そうでなければ、「天国」と呼ばれるだけの価値が無いから。
考えるほどに、悔やまれるのが「忘れた」こと。
ブルーも自分も、欠片も覚えていない「天国」。
(俺としたことが…)
ついでにブルーの方もなんだが、と苦笑するしかない事実。
二人揃って忘れてしまって、思い出すための手掛かりも持っていないから。
天国に行く前に生きた時代の、「前の自分たち」の記憶だったら今もあるのに。
(本当に片手落ちってヤツで…)
出来れば覚えていたかったよな、と思うけれども、忘れたものは仕方ない。
どんなに素敵な場所であろうが、最高に素晴らしい世界だろうが。
(うーむ…)
なんてこった、と傾けるコーヒーのカップ。
何処よりも素敵な「天国」に行って来たというのに、それを忘れてしまうとは、と。
これが観光名所だったら、周りにも呆れられるだろう。
「なんてヤツだ」と、「そんなことなら、俺が代わりに行ったのに」と。
代わりに出掛けて景色を楽しみ、けして忘れはしないのに、とも。
(俺だって、そうは思うんだがなあ…)
本当に忘れてしまったのだから、天国の欠片を追ってみたって、見付からない。
それの代わりに浮かんで来るのは、今日も見て来たブルーの笑顔。
十四歳にしかならないブルーは、すっかり子供になったけれども…。
(今もやっぱり、俺のブルーで…)
前の生から愛した恋人、生まれ変わってまた巡り会えた愛おしい人。
ブルーの家へと出掛けて行ったら、いつでも会える。
それは幸せそうなブルーに、今はちょっぴり困らされてしまう恋人に。
(ぼくにキスして、と言われてもだ…)
子供相手に、恋人同士の唇へのキスは贈れない。
だから断っては、ブルーにプウッと膨れられてしまう。「ハーレイのケチ!」と。
今日もブルーは同じに怒って、ご機嫌斜めだったのだけれど。
プンスカ膨れるブルーをからかい、苛めたりもして過ごしたけれど…。
(…待てよ?)
今の暮らしも天国だよな、と気が付いた。
子供になってしまったとはいえ、ちゃんと「ブルーがいる」世界。
前の自分は、それを失くした。前のブルーがメギドへと飛んで、二度と戻らなかった時から。
(あいつは、船に戻って来なくて…)
それからの日々は、深い孤独と絶望の中。
けれど地球まで行く他はなくて、どれほどに辛い日々だったか。
ブルーがいなくなった世界は、どんなに悲しいものだったか。
(…俺は生きちゃいたが、ただそれだけで…)
世界の全ては色を失くして、きっと楽しみさえも無かった。
何を食べても味気ないだけ、「命を繋ぐ糧」というだけ。
あの辛かった日々に比べたら、今の自分が生きる世界は…。
(まさに天国というヤツじゃないか!)
いくらブルーがチビの子供で、キスさえ交わせはしない日々でも。
同じ家で暮らすにはまだ早すぎて、訪ねて行っては「またな」と帰って来るしかなくても。
(なるほどなあ…)
天国ってヤツは此処にあったか、と嬉しくなる。
「本物の方は忘れちまったが、天国だったら、此処もそうだな」と。
今の世界も天国だよなと、もう最高に素晴らしい場所に、今の俺は生きているんだから、と…。
天国だよな・了
※天国のことを忘れてしまった、と残念な気分のハーレイ先生。きっと最高の場所だけに。
けれど気付けば、今の世界も充分、天国。ブルー君が生きていてくれるだけで、最高の世界v
(そういえば、ウサギ…)
ウサギだっけね、と小さなブルーが思ったこと。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
今日は来てくれなかったハーレイ、学校で古典を教える教師。
前の生から愛した恋人、生まれ変わってまた巡り会えた愛おしい人。
今の自分の将来の夢は、そのハーレイの「お嫁さん」。
前とそっくり同じに育って、結婚できる十八歳を迎えたら夢は必ず叶う。
けれど、ハーレイと再会する前。
今よりもずっと幼かった頃に、なりたいと思っていたものは…。
(……ウサギ……)
真っ白な毛皮に赤い瞳で、長い二本の耳を持ったウサギ。
それになるのが、幼い自分の夢だった。
幼稚園にいた、元気一杯のウサギたち。
いつもピョンピョン跳ね回っていて、疲れ知らずな、子供の友達。
生まれつき身体が弱かったから、あのウサギたちが羨ましかった。
いつ見ても元気で、生き生きしていた真っ白なウサギ。
(ぼくもウサギになれたらいいな、って…)
そうしたら、きっと元気な身体が手に入る。
一日中、走り回っていたって、倒れてしまわない身体。熱を出したりもしない身体が。
(ぼくの目、ウサギとおんなじで…)
人間には珍しい真っ赤な瞳。
生まれた時からアルビノだったし、髪は銀色、肌も真っ白。
(色だけだったら、ウサギそっくり…)
人間のくせに良く似ているから、頑張ればウサギにだってなれそう。
なる方法が分かったら。
「こうすればいいよ」と、あのウサギたちが方法を教えてくれたなら。
そう思ったから、仲良くなろうとしたウサギたち。
幼稚園の休み時間は、せっせとウサギの小屋を覗いて。
ウサギたちが外で遊ぶ時間は、「ぼくと遊ぼう」と近付いていって。
(仲良くなったら、ウサギになれる方法も…)
教えて貰えるだろうと思った、幼い自分。
ウサギと友達になれたのだったら、「一緒に暮らそう」と誘ってくれるだろう。
「ウサギになるには、こうするんだよ」と方法だって教えてくれて。
(きっと教えて貰えるよ、って…)
信じていたから、父と母にもそう言った。
「いつかウサギになりたいな」と、「ぼくがウサギになったら、飼ってね」と。
子供部屋なら持っていたけれど、ウサギは其処で暮らせない。
ウサギが住むには何かと不便で、庭の方がきっと便利な筈。
父に頼んで、ウサギの小屋を庭に作って貰えたら。
ウサギが好きなニンジンなんかを、母が運んで来てくれたなら。
(ニンジンを食べて、庭で元気に遊んで…)
とても幸せな毎日だろうし、将来の夢は、断然、ウサギ。
「ウサギがいいな」と思っていたのに、いつの間にやら忘れてしまった。
気付けば夢は「お嫁さん」。
前の生では無理だったことで、もう最高の夢だけれども…。
(ぼくがウサギになっていたなら、どうなったんだろ?)
幼かった頃の夢が叶って、真っ白なウサギだったなら。
庭にウサギ小屋を作って貰って、其処で暮らしていたのなら。
(それでも、きっと会えるよね…?)
ある日、ハーレイが生垣の向こうを通り掛かって。
たまたまジョギングで走って来たとか、そんな具合に。
(ぼくの家の辺りは、コースじゃないって言ってたけれど…)
いつも気ままに走るのだから、通る日だってきっとあるだろう。
「今日はこっちに行ってみるか」と、初めてのコースを走り始めて。
ハーレイが道を走って来たなら、どちらが先に気付くのだろう?
ウサギの自分か、ジョギング中のハーレイか。
(表の道を走って行く人は、別に珍しくないけれど…)
健康のためにと走る人なら、ごくごく馴染みの光景ではある。
だから「また誰か来た」と思う程度で、ウサギの自分はニンジンに夢中かもしれない。
みずみずしいのに齧り付きながら、「美味しいよ」と大満足で。
けれど、ハーレイの方では違う。
庭に犬やら猫のいる家は多いけれども、ウサギというのは珍しい。
おまけに芝生の色は青くて、白いウサギはよく目立つ。
いくらニンジンに夢中でも。
生垣の向こうを走るハーレイ、そちらにお尻を向けてニンジンを齧っていても。
(あんな所にウサギがいるぞ、って…)
ハーレイは立ち止まりそう。
「一休みして見て行くかな」と、「あれがこの家のペットなのか」と。
そうやって足を止めた途端に、ハーレイは気付いてくれるのだろう。
「あれはブルーだ」と、「俺のブルーが、ウサギになって帰って来た」と。
もちろん自分の方でも気付く。
ハーレイが生垣の向こうで止まって、こっちに視線を向けてくれたら。
「誰か見てる」と視線を感じて、ニンジンを放ってそちらを見たら。
(…ハーレイなんだ、って…)
ウサギの自分も、その瞬間に分かるのだろう。
聖痕なんかは出なくても。
「ハーレイ!」と叫べる声は持たなくても、思念波さえも紡げなくても。
(だって、ハーレイなんだもの…)
きっと大急ぎで駆けてゆく。
ウサギなのだし、ピョンピョンと跳ねて、ハーレイがいる所まで。
生垣の向こうには出られなくても、隙間から顔を覗かせて。
「ハーレイだよね?」と、もう大喜びで。
そうやってハーレイと再会出来たら、頭を撫でて貰えるだろう。
忘れもしない褐色の肌の、ハーレイの手が伸びて来て。
「お前だよな?」と、懐かしそうな笑みを浮かべて。
(撫でて貰って、御機嫌でいたら…)
家の中から母が出てくるかもしれない。ハーレイが立っているのに気付いて。
「ウサギ、お好きですか?」と尋ねたりして、「入ってお茶でも如何ですか?」と。
そうなったらもう、しめたもの。
ハーレイにたっぷり遊んで貰って、抱き上げたりもして貰える。
帰り際には「また来るからな」と優しい笑顔で、本当にまた来てくれるだろう。
この家の前を通るコースを、いつものジョギングコースに決めて。
通り掛かったら立ち止まってくれて、母たちだって、「中へどうぞ」と招き入れて。
(ウサギは言葉を喋れないけど…)
気持ちはきっと通じる筈。
言葉も思念波も何も無くても、ハーレイと見詰め合うだけで。
「大好きだよ」と見詰めていたなら、「俺もだ」と見詰め返されて。
何度もそうして会っている内に、ある日、ハーレイは母から聞くのだろう。
「この子、元は人間だったんですの」と、「私の一人息子ですのよ」と。
ウサギになりたい夢を叶えて、今はウサギの姿の息子。
「元はこの部屋にいたんですの」と、子供部屋にも案内して。
お気に入りだったオモチャが、今もそのままの部屋に。
人間だった頃の写真が、幾つも飾ってある部屋に。
(普通だったら、冗談だろうと思うんだろうし…)
母も「冗談かもしれませんわよ?」とコロコロ笑っていたって、ハーレイなら気付く。
「全部、本当のことなんだ」と。
「俺のブルーは、今はウサギになったんだな」と、「それがあいつの夢だったのか」と。
本当のことに気付いたのなら、ハーレイは、きっと…。
(お前、どうやってウサギになった、って…)
訊いてくれるに違いない。今のハーレイが前に言った通りに、その質問を。
ウサギになりたかった夢。
それをハーレイに話した時に、聞かされたこと。
「お前がウサギになっていたなら、俺もウサギにならなきゃな」と。
今の自分は、「飼ってくれる?」と訊いたのに。
ウサギの姿になった自分を、ハーレイは飼ってくれるだろうかと。
(ハーレイの家の庭に、小屋を作って…)
其処でハーレイに飼って貰えたら、充分、幸せ。
ハーレイの手からニンジンなどを貰って、優しく撫でて貰えたならば。
(でも、ハーレイはウサギになるって…)
そう言ってくれた。
「俺も一緒にウサギになるぞ」と、「方法はお前が知ってるからな?」と。
元は人間だった自分がウサギの姿になっているなら、方法は確かに知っている筈。
それをハーレイに懸命に伝えて、「こうするんだよ」と教えたならば…。
(ハーレイも人間をやめてしまって、ウサギになって…)
二人で一緒に暮らしてゆく。
ウサギなのだし、「二匹」と言うかもしれないけれど。
(ハーレイだったら、白じゃなくって茶色のウサギ…)
茶色の毛皮で黒い瞳の、野ウサギみたいな逞しいウサギ。
そして、庭にある小屋で暮らしてゆくよりも…。
(野原がいいって言っていたよね?)
住宅街の中の庭とは違って、広々とした郊外に広がる野原。
其処で暮らしてゆくとなったら、巣穴が必要になってくるから…。
(ハーレイが頑張って、穴を掘ってくれて…)
とても立派で、住み心地のいい家が出来るのだろう。
天気のいい日は外に出掛けて日向ぼっこで、雨の日や風が冷たい時には巣穴で過ごす。
くっつき合って色々話して、眠くなったら二人で眠って。
前の生での思い出話も、今の話も、まるで尽きない。
食事しながら話していたって、日向ぼっこの間中、ずっとお喋りだって。
(ウサギだったなら…)
そんなのもいいね、と思ってしまう。
ハーレイと二人で巣穴で暮らして、元の家にはもう帰らないで。
きっと毎日が幸せだよね、と描いてみる夢。
「ウサギになっていたとしたって、ぼくは幸せなんだから」と。
ハーレイもウサギになってくれるし、うんと仲のいいウサギのカップル。
白いウサギと茶色いウサギで、いつまでも幸せに暮らすんだよ、と…。
ウサギだったなら・了
※もしもウサギになっていたなら、と考えてしまったブルー君。どうなるんだろう、と。
ハーレイ先生なら、きっと気付いてくれますから…。二人でウサギになれるんですよねv