忍者ブログ

カテゴリー「書き下ろし」の記事一覧
(…今日は会えずに終わっちまったが…)
 明日は間違いなく会えるだろうさ、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で、コーヒー片手に。
 前の生から愛した恋人、生まれ変わってまた巡り会えた愛おしい人、それがブルー。
 十四歳の子供になってしまったけれども、ブルーは帰って来てくれた。
 青く蘇った水の星の上で、新しい命と身体を貰って。
 今は自分の教え子のブルー。
 学校に行けば、大抵、会うことが出来る。
 会えないままで放課後が来ても、仕事の帰りにブルーの家に寄ることも出来る。
(今日は、どっちもダメだったんだが…)
 きっと明日には会える筈だぞ、と自分の仕事に感謝した。
 今の仕事は古典の教師で、明日はブルーのクラスでの授業。
(あいつが欠席してない限りは…)
 其処で会えるし、もしもブルーが休んでいたなら、仕事帰りに見舞いに出掛ける。
 明日は会議などの予定も無いから、柔道部の部活を済ませた後で。
(…頼むから、誰も怪我してくれるなよ?)
 でないと俺の予定がパアだ、と柔道部の部員の無事を祈った。
 誰かが怪我でもしようものなら、病院に連れて行かねばならない。
 すると時間を取られてしまって、ブルーの家に出掛けるどころか…。
(…怪我した生徒を家まで車で送り届けて、そいつの家で…)
 お茶を御馳走になる羽目に…、と分かっているから、部員には無事でいて貰わねば。
 部活の後には、ブルーの家へ。
 ブルーが元気に登校していても、それとこれとは話が別。
(学校じゃ、教師と教え子だしなあ…)
 そういう風にしか振る舞えなくて、会話にしたって、ブルーは敬語を使って話す。
 遠い昔に、前の自分が、前のブルーにそうしたように。
 ソルジャーとキャプテンの恋というのは、誰にも知られてはならなかったから。
 教師と教え子の恋と同じで、秘めておかねばいけなかったから。
(…遠慮なく、あいつと話すためには…)
 あいつの家に行くしかないしな、と苦笑する。
 「だから、明日には会いに行くんだ」と、「誰も怪我してくれるんじゃないぞ」と。


 明日には会える筈の恋人。
 どうせだったら、風邪など引かずに、元気に登校して来て欲しい。
 学校では教師と教え子だけれど、それでもブルーの席に姿が無かったら…。
(…残念なんてモンじゃないんだ)
 他の生徒の手前もあるから、もちろん顔には出したりしない。
 「ふむ、今日はブルーは欠席なんだな」と、教卓の上で欠席の印を書き込むだけ。
 誰かが「風邪を引いたらしいです」とでも教えてくれたら、「そうか」と静かに頷いて。
 心配でも、それは口には出さずに、「授業を始める」と話を切り替えて。
(でもって、平気な顔して、授業を…)
 するのだけれども、視線は何度も、ブルーのいない席を捉えることだろう。
 風邪を引いたというのだったら、熱は高くないか、辛くないか、と。
 特に病名を聞かなかったら、「腹を壊したか、風邪でも引いたか…」と気になって。
(学校が終わったら、あいつの家まで一直線だな)
 顔を見るまで落ち着かないぞ、と自分でもよく分かっている。
 今日のように会えずに終わった日だって、ブルーが気になって仕方ないから。
 夜にこうして思い出すほど、ブルーの顔を見たいのだから。
(…前の俺だと、あいつに会えない日なんかは…)
 一日だって無かったからな、と時の彼方に思いを馳せる。
 恋人同士だったことは伏せていたけれど、前のブルーには、毎日会えた。
 ソルジャーとキャプテン、白いシャングリラの頂点に立つ二人だったから。
 毎日、一度は顔を合わせて、色々なことを話し合うべき、と船の仲間たちは考えた。
(そういう方針だったからなあ…)
 忙しい日でも、そのための時間を確保出来るよう、朝食の席が選ばれた。
 朝食は必ず食べるものだし、青の間で会食すればいい、と。
(…朝食係まで拵えちまって…)
 青の間の奥の小さなキッチン、其処で作られていた朝食。
 それをブルーと二人で食べた。
 毎朝、必ず、顔を合わせて。
 どんなに多忙な時であろうと、朝は青の間に出掛けて行って。


 残念なことに、今はそういうわけにはいかない。
 いくらブルーの守り役とはいえ、「毎日、必ず会って下さい」とは言われていない。
(…そう言われていりゃ、なんとしてでも…)
 時間を作って、会えるんだがな、と少しばかり、もどかしい気持ち。
 今日は忙しかったけれども、何処かで時間は作れただろう。
 ブルーが欠席だったとしたって、授業の合間の空き時間になら、家まで行ける。
 ちょっと車を走らせたならば、ブルーの家に着けるから。
 ブルーの顔を見て、僅かな時間でも言葉を交わして、急いで学校に戻ればいい。
 元気に登校していた時でも、仕事を全部済ませた後で…。
(遅くなりましたが、会いに来ました、と…)
 訪ねてゆくのが許される上に、それが役目なら、歓待されることだろう。
 ブルーの両親に感謝されて。
 「お忙しいのに、本当にありがとうございます」と、夕食まで用意されたりして。
(ところがどっこい、そんな役目は…)
 俺は貰っちゃいないんだ、と残念至極。
 お蔭で、今日のように会えない日だって珍しくない。
 前の生なら、毎日、必ず会えたのに。
 ブルーが深く眠ってしまって、何年も目覚めずにいた時だって。
(…あいつに会えなくなっちまったのは…)
 いなくなっちまった後なんだよな、と零れる溜息。
 前のブルーはメギドへと飛んで、二度と戻って来なかった。
 長い長い時を共に過ごして、深い眠りに沈んでしまっていても、いてくれたのに。
 青の間を訪ねて行きさえすれば、前のブルーは、其処にいた。
 まるで目覚めることが無くても、儚く消えてしまったりはしないで。
 手を伸ばしたなら、いつでも頬に、その手に触れることさえも出来て。
(…そういうモンだと思っていたから…)
 失った後は、前の自分も死んでしまった。
 身体は生きていたのだけれども、魂は死んだ「生ける屍」。
 今の自分は、そんな羽目には陥るわけもないけれど…。


(…会えなくなったら、どうするんだ?)
 頭を過っていった考え。
 もしもブルーに会えなくなったら、と。
(……今の俺には、そんなことなど……)
 起こらないと分かっているんだがな、と言えるからこそ、「もしも」と思った。
 そういうことが起きたとしたなら、今の自分はどうするのだろう、と。
(…たまたま、教師だったから…)
 ブルーの学校に赴任した日に、今のブルーと再会出来た。
 その後も、教師と教え子として、毎日のように学校で会える。
 今日のように会えない時が続いたとしても、せいぜい数日。
(…しかしだな…)
 自分の仕事や、暮らしている場所。
 それによっては、今のブルーと再会出来ても…。
(ほんの数日、この町にいられるというだけで…)
 とても幸せな日々が過ぎたら、離れるしかないということもある。
 同じ教師の仕事にしたって、遠い所の学校で教師をしていた場合など。
(この町には、研修に来たってだけで…)
 本来だったら、ほんの一泊二日くらいでの出張。
 それをブルーと出会ったからと、何か理由を付けて延長。
(休暇だったら、取れないこともないからなあ…)
 同僚たちを拝み倒して、何日か。
 再会を遂げた愛おしい人と、思い出話などをして過ごすために。
(なんたって、ブルーはチビだから…)
 いくら前の生での恋人とはいえ、連れて帰るというわけにはいかない。
 休暇が終われば、「またな」と手を振り、住んでいる土地へ戻るしかない。
 其処へ帰れば、当分の間、ブルーに会うことは出来ないのに。
 次に会える日は、週末どころか、長期休暇しか無いだろう。
 夏休みだとか、冬休みといった学校が長い休みの時。
 その間だけ、また、この町に来る。
 少しでも長く側にいられるよう、懸命に仕事を片付けて。
 何処かに安い宿でも取って、其処からブルーの家に通って。


 そんなことなど、起こりはしない。
 ブルーに聖痕を与えた神なら、会えなくなるような出会いはさせない。
 そうだと分かっているのだけれども、考えてしまう。
 「ブルーに、会えなくなったら」と。
 いったい自分はどうするだろうと、どういう日々を送るのだろう、と。
(…同じ地球の上に、あいつがいるのに…)
 会いに行くことが出来ない暮らし。
 どんなにブルーの声が聞きたくても、顔を見たいと思っても。
(週末しか会えない、ってことになっても…)
 もう充分に辛いと思う。
 学校で顔を合わせることも出来なくて、ブルーの家にも寄れない毎日。
 会いに行けるのは土曜と日曜、そんな生活になっただけでも、きっと溜息が増えるだろう。
 日曜日の夜、家に戻る度、気分が暗く沈んでしまって。
 「また来週まで、ブルーに会えないわけだよなあ…」と、カレンダーの日付を眺めて。
(…ほんの一週間足らずでも…)
 そうなるんだ、と容易に想像がつく。
 今はブルーを軽くあしらい、「キスは駄目だ」と叱り付けたりしているけれど…。
(…週末どころか、長い休みまで会えないってことになっちまったら…)
 果たしてブルーを叱れるだろうか、今の自分と同じ調子で。
 「まだキスは早い!」と頭を小突いて、膨れっ面になるのを笑ったりもして。
(……キスは許してやれないんだが……)
 頭ごなしには叱れんかもな、と額を指でトントンと叩く。
 キスをしたいとは思わないけれど、離れたくない気持ちはあるから。
 「また帰らないといけないのか」と心が痛くて、ブルーを抱き締めたくもなるから。
(…会えなくなったら、そうなるだろうなあ…)
 今は書こうとも思わないブルー宛の手紙を、せっせと書いては、投函するとか。
 強請られても入れてやらない通信、それを自分から入れるとか。
 ブルーの声が聞きたくて。
 手紙にしたって、ブルーの返事が来るだろうから、ブルーが書いたそれを見たくて。


 会えなくなったら、きっとそうなる。
 ブルーに会えずに過ごすしかない、毎日が辛く、空虚になって。
 同僚と笑い合っていたって、心がお留守になったりもして。
(…生ける屍とまでは、いかないだろうが…)
 前の俺よりマシなんだが、と思いはしても、それは勘弁願いたい。
 ブルーに会えない日が続くなんて、考えただけでも悲しいから。
 溜息に埋もれて過ごす日々など、絶対に御免蒙りたいから…。



           会えなくなったら・了


※ブルー君と、今のようには会えなくなったら、と考えてしまったハーレイ先生。
 起こるわけがないことですけれど、そうなった時は、かなり辛そうです。会えるのが一番v








拍手[0回]

PR
(兄弟かあ……)
 今のぼくにも、いないんだよね、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…前のぼくにも、いなかったけど…)
 多分、と遠い時の彼方に思いを馳せる。
 「ソルジャー・ブルー」と呼ばれた前の自分は、子供の頃の記憶が無かった。
 成人検査で消された上に、過酷な人体実験を繰り返されたせいで。
(…育ててくれた養父母も、育った家も…)
 全く覚えていなかったから、あるいは、兄弟がいたかもしれない。
 人工子宮から生まれた子供を、血縁の無い養父母が育てていた時代でも。
(あの時代でも、ちゃんと兄弟、いたもんね…)
 とても珍しいケースだったけれど、と二組の兄弟を思い出す。
 一つは、ゼルと弟のハンス。
 成人検査でミュウと判断された後まで、離れずに一緒だった兄弟。
(…二人とも、ミュウになっちゃったんだから…)
 ゼルとハンスは、本物の兄弟だったのだろうか。
 遺伝子的にも繋がりがあった、正真正銘の兄と弟。
(……んーと……?)
 その辺のことは、自分は知らない。
 シャングリラでも調べていないし、第一、調べようが無かった。
(…ハンスは、アルタミラから逃げ出す時に…)
 開いたままだった宇宙船の扉から、外へと放り出されたから。
 燃える地獄に落ちてゆく彼を、前の自分は助けることが出来なかったから。
(…ハンスがいなくちゃ、ゼルのデータと比較出来ないし…)
 船の中では、どうにもならない。
 マザー・システムが持っていたデータを調べたならば、一目瞭然だったろうけれど…。
(そんな力は、前のぼくが生きてた時代には…)
 ミュウは持ってはいなかったから、どうだったのかは分からない。
 今の時代なら、資料を当たれば分かることでも。


 本物の兄弟だったのかどうか、確信が無いのがゼルとハンス。
(でも、もう一つ、前のぼくが知ってた兄弟は…)
 どう考えても、本物だよね、と鮮やかに覚えている双子の兄弟。
 正確に言えば双子の兄妹だった、ヨギとマヒル。
(…検査なんかはしていないけど…)
 誰もが信じて疑わなかった、双子の兄弟だという事実。
 あんな時代に、どんな機械の気まぐれだったかは謎だけれども。
(それでも、ホントに兄弟だったし…)
 人類よりも数が少ないミュウの世界だけで、二組も知っていた兄弟。
 だから「兄弟」は珍しくても、きっと、そこそこ存在していただろうと思う。
 前の自分にも、いたかもしれない。
 まるで記憶に無いというだけで、兄がいたとか、弟だとか。
(…そっちは、仕方ないんだけれど…)
 いたとしたって、ミュウになった時点でお別れだから、と零れた苦笑。
 ゼルとハンスのように「二人ともミュウ」なら、研究施設で再会しただろうけれど。
(でも、そんなのは…)
 嬉しくないや、と思うものだから、前の自分に兄弟は要らない。
 いたとしたなら、ミュウにはならずに、「ブルー」のことなど綺麗に忘れて…。
(幸せになっていて欲しいよね?)
 成人検査を無事にパスして、子供時代の記憶が薄れてしまったとしても。
 「ブルー」がミュウになった時点で、機械に「ブルー」の記憶を全て消されたとしても。
(…兄弟がいたことなんか…)
 すっかり忘れてしまっていたって、その方がいい。
 二人揃ってミュウになるより、研究施設でバッタリと顔を合わせるよりも。
(…前のぼくなら、そういうことでいいんだけれど…)
 今度は、ちょっぴり欲しかったかも、と残念な気持ちがする「兄弟」。
 せっかく青い地球に生まれて、本物の両親がいるのだから。
 今、兄弟がいたとしたなら、血の繋がった本物の兄弟。
(…お兄ちゃんとか、弟だとか…)
 いてくれたら楽しかったのに、と少し寂しい。
 「今のぼくにも、いないんだよね」と。


 今の自分に兄弟がいたら、毎日、賑やかだったろう。
 兄弟がいる友達も多いから、どんな感じかは想像がつく。
(お兄ちゃんなら、小さい頃から、ぼくの面倒を見てくれて…)
 うんと優しくて、頼もしくて、と思う一方、「でも…」と不安な面だってある。
 仲がいい筈の兄弟だって、喧嘩するのを知っているから。
 それも、とびきり、つまらないことで。
 おやつに出て来たケーキのサイズが、ほんのちょっぴり違ったとかで。
(ぼくが大きいのを食べるんだ、って…)
 優しい筈の「お兄ちゃん」でも、たまには主張したくなる。
 「ぼくの方が身体が大きいんだから、大きい方だ」と、普段なら我慢する所を。
(でもって、大きい方のケーキを…)
 サッと自分の物にしたなら、弟の方は、いつも甘やかされているから…。
(酷い、って、お兄ちゃんの頭を…)
 ポカッと殴るとか、髪の毛を掴んで引っ張るだとか、子供ならではの怒りの表現。
 子供なのだし、口よりも先に手が出てしまうこともあるから。
(…そしたら、「よくもやったな」って…)
 お兄ちゃんの方も、弟の頬っぺたを引っぱたく。
(後は、取っ組み合いの喧嘩で…)
 母が飛んで来て止めに入るまで、勝負がつかないかもしれない。
 でなければ、弟の方が、おんおんと泣いて、おやつどころではなくなるだとか。
(…そういうことも、ありそうだよね…)
 ぼくなら、おんおん泣いちゃう方だよ、と分かっている。
 「お兄ちゃん」に大きなケーキを取られた上に、頬っぺたを引っぱたかれたのだから。
(…でも、ぼくの方が、お兄ちゃんでも…)
 優しい「お兄ちゃん」でいられるかどうか、自信が無い。
 何のはずみで「いつも、弟の方ばかり…」と羨ましくなるか、分からないから。
(…そういうの、うんと困るけど…)
 でも、お兄ちゃんは欲しかったかも、と思った拍子に、閃いた。
 「前のぼくなら、いいお兄ちゃんになれそうだよ」と。
 「一日だけでいいから、なってくれないかな」と、「ぼくのお兄ちゃんに」と。


 時の彼方で「ソルジャー・ブルー」だった、前の自分。
 大勢のミュウの仲間を率いて、最後は命まで投げ出したほど。
(…もし、お兄ちゃんになってくれたら…)
 絶対、優しい筈なんだよね、と想像の翼を羽ばたかせる。
 「たった一日だけでいいから、兄弟みたいに過ごしたいな」と。
 神様が起こしてくれた奇跡で、前の自分が、この世界に来て。
(前のぼくの方が、大きいんだから…)
 お兄ちゃんだよ、と大きく頷く。
 きっと「弟」になった自分を、可愛がってくれることだろう。
 青い地球の上で暮らしているのを、羨ましいと思ったとしても、苛めないで。
 「ずるい」と頬っぺたを叩いたりせずに、「幸せそうだね」と微笑んで。
(…前のぼくが、ぼくのお兄ちゃん…)
 素敵だよね、と緩む頬。
 お兄ちゃんなのだし、前の自分にも、たった一日だけ、家族が出来る。
 「パパ、ママ!」と呼んでいい人が。
 今の自分の本物の両親、それが「前の自分」の「パパ」と「ママ」。
(…前のぼくだって、喜びそう!)
 本当の年は、両親よりも、ずっと年上だとしても。
 三百歳をとうに超えていたって、「パパ」と「ママ」がいれば嬉しい筈。
(それに、一日だけだって…)
 「お兄ちゃん」になってくれるからには、両親から見ても、大事な子供。
 母のお腹から生まれた子ではなくても、一日だけの間は、長男。
(…だから、きちんと、お兄ちゃんの部屋とか…)
 服とかだって、あるんだよね、と考える。
 神様が奇跡を起こすからには、そういったことも抜かりはないだろう。
 「お兄ちゃん」になった前の自分が、ソルジャーの衣装のまま、なんてことは。
(…もしかして、学校の制服もある?)
 それとも上の学校だろうか、そっちだったら制服は無い。
 自分の好きな服で通って、通学鞄も好みの鞄。
 そうなのかも、と広がる夢。
 「上の学校に通ってる、お兄ちゃんなんだ」と。


 そういう「お兄ちゃん」が出来るのだったら、断然、休日の方がいい。
 別々の学校に登校するより、一日、一緒に過ごしていたい。
 朝は、おんなじ食卓に着いて。
 前の自分が夢見た朝食、ホットケーキに本物のメープルシロップをかけて。
(…前のぼく、うんと感激しそう…)
 憧れ続けた地球での朝食、それを「お母さん」が作ってくれる。
 ホットケーキだけではなくって、目玉焼きなども。
(ソーセージだって、焼いてくれるし…)
 飲み物だって、「何にするの?」と尋ねてくれる母。
 ホットミルクか、紅茶にするか、紅茶にするなら、ミルクティーか、などと。
(…ぼくのホットケーキ、お兄ちゃんに…)
 一枚、譲ってあげてもいいな、と、「弟」なのに「お兄ちゃん」な気分。
 前の自分は、一日だけしか、青い地球にはいられないから。
 神様がくれた夢の一日、幸せ一杯でいて欲しいから。
(朝御飯が済んだら、パパに頼んで…)
 家族揃って、ドライブに行くのも素敵だと思う。
 前の自分が焦がれ続けた、青く輝く水の星、地球。
 当時は死の星だったけれども、前の自分は「青い」と信じていたのだから。
(…本当のことは、言えやしないし…)
 前の自分が、どんな最期を迎えたのかも、絶対、言えない。
 「青い地球に生まれて来られたんだよ」と、それだけしか。
(…ハーレイだって、来てるんだよ、って…)
 もちろん、きちんと話すけれども、ハーレイには「会いに行かせない」。
 「それより、みんなでドライブしようよ」と、連れ出して。
 ドライブに出掛けた先で食事で、帰りは街の方に行くのもいいだろう。
 前の自分は、デパートなんかは知らないから。
 知識としては知っていたって、其処で買い物していないから。
(…うんと楽しいことを、沢山…)
 でも、ハーレイに会うのだけは駄目、とキュッと拳を握り締める。
 「もしも会ったら、ハーレイを盗られちゃうから」と。
 ハーレイが今も忘れてはいない、「ソルジャー・ブルー」は、絶対に駄目、と。


(…まさか、そんなので喧嘩なんかに…)
 ならないよね、と肩を竦めた。
 前の自分は優しいのだから、「チビの子供になってしまった自分」にだって優しいだろう、と。
 「ハーレイには、絶対、会っちゃ駄目だよ」と駄々をこねても、怒りはしない、と。
(…悲しそうな顔はしそうだけれど…)
 きっと、「うん、大丈夫。分かっているよ」と頭を撫でてくれる筈。
 優しい「お兄ちゃん」らしく。
 とてもハーレイに会いたいだろうに、その気持ちを、グッと飲み込んで。
(いいな、優しいお兄ちゃん…)
 うんと我儘な弟になってしまうけれど、と夢を見る。
 「たった一日だけでいいから、前のぼく、お兄ちゃんになってくれないかな」と。
 「兄弟みたいに過ごしたいな」と、「でも、ハーレイには、会わせられないけどね」と…。



             兄弟みたいに・了


※兄弟がいたらいいのに、と思ったブルー君。前の自分なら、いいお兄ちゃんになれそう。
 うんと優しい「お兄ちゃん」が出来ても、ハーレイに会いに行くのは駄目。我儘な弟ですv









拍手[0回]

(生憎、俺には、いないんだよな…)
 兄弟ってヤツが、とハーレイが、ふと思ったこと。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(まあ、ブルーにも、いないんだから…)
 そう珍しいことでもないんだが、と分かってはいる。
 兄弟のいる人間も多いけれども、一人っ子も少なくないことは。
(…しかしだな…)
 ちょっぴり惜しい気もするんだよな、と少し残念ではある。
 せっかく青い地球の上に生まれ変わって、新しい人生を謳歌しているのだから、と。
(…前の俺だった頃も、やはり兄弟は、いなかったんだが…)
 兄弟がいたヤツもいるんだ、と今も覚えている、ゼルのこと。
 ゼルと同じにミュウと判断され、研究施設に押し込められていた、弟のハンス。
 脱出する直前まで一緒だったのに、最後の最後で、引き離されてしまった悲劇の兄弟。
(……前の俺たちは、あまりにも何も知らなさすぎて……)
 離陸する時は必ず宇宙船の扉を閉める、という大原則さえ知らなかった。
 そのせいでハンスは、開いたままだった扉から外へと放り出されて…。
(…ゼルが掴んだ手にも、ハンスを引き上げるほどの力は…)
 無かったから、ハンスは落ちてゆくしかなかった。
 炎の地獄と化したアルタミラへ、「兄さん!」と悲鳴だけを残して。
(…兄弟ってヤツは、あいつらだけかと思っていたが…)
 アルテメシアに辿り着いた後、なんと双子がやって来た。
 男女の双子だった、マヒルとヨギ。
(どういう機械の気まぐれなんだか…)
 人工子宮で子供を育てた時代なのにな、と思うけれども、二組も知っていた兄弟。
 今の時代は、子供は全て、母親から生まれて来るのだから…。
(…あの時代よりも、ずっと兄弟ってヤツが多くてだな…)
 珍しくなくなった時代なのだし、兄弟がいれば、と思ってしまう。
 もっと毎日が楽しかったかも、などと、無いもの強請りというヤツで。


 とはいえ、本当に兄弟がいたら、厄介な面もあっただろうか。
 子供時代は、おもちゃや、菓子の取り合いで喧嘩。
 少し育っても、悪さをしたなら、親にコッソリ告げ口されて…。
(おふくろと親父に、うんと叱られて…)
 夕飯の席で、自分の好物が減らされていて、告げ口をした兄弟の皿には大盛り。
 如何にもありそうな話ではある。
(…その辺の時代を無事に通り越して、大人になったら…)
 喧嘩や告げ口は消えてしまって、仲良くなれそうなのだけれども、今が問題。
 そう、去年までなら、いや、今年の五月三日になる前までならば…。
(何の問題も無かったんだが、今ではなあ…)
 俺の中身が、増えてしまったモンだから、と顎に当てた手。
 「今では、俺はキャプテン・ハーレイなんだ」と。
 若い頃から「生まれ変わりか?」と言われるくらいに、似ていた遠い昔の英雄。
 兄弟がいたなら、何度も話題になっていたろう。
 「お前、本当に、キャプテン・ハーレイじゃないのか?」と。
 それらしき記憶は残っていないか、何か覚えていないのか、などと。
(思い出す前なら、他人の空似で、赤の他人だ、って言えたんだがなあ…)
 今じゃ、そういうわけにもいかん、と苦笑する。
 本当にキャプテン・ハーレイなのだし、「赤の他人だ」というのは嘘。
 けれど、兄弟にも明かせはしない。
 明かしたならば、ブルーを巻き込んでしまうから。
(…いつかブルーが、「ぼくも、ホントのことを言うよ」と言うなら…)
 二人一緒に、前の生での記憶を明かして、生まれ変わりだと発表するかもしれない。
 全宇宙から注目を浴びて、大変なことになりそうだけれど。
 「それでもいいよ」とブルーが言うなら、反対はしない。
 けれども、そんな日が来ないなら…。
(…俺の正体は、兄弟にだって言えやしないんだ…)
 今度はブルーと生きてゆくのだし、好奇心に満ちた瞳を、ブルーに向けられたくはない。
 いくら兄弟でも、血の繋がった者であっても。


 そう考えると、兄弟は「いなくて良かった」のだろう。
 青い地球の上に生まれて来る時、神は、其処まで考慮したのだと思う。
 将来、困らないように。
 兄弟にも言えない秘密を抱えて、生きてゆかなくてもいいように。
(…親父とおふくろにも秘密なんだが、そっちはなあ…?)
 親にも言えない秘密は誰にだってあるさ、と思うものだから、気にはならない。
 兄弟に隠し事をし続けるよりは、遥かに楽な人生だろう。
(だから、これはこれでいいんだが…)
 欲しかった気もするんだよな、と思考が最初へ戻ってゆく。
 「ブルーのこととか、そういうのは抜きで」と、「いいトコ取りというヤツで」と。
 うんと都合のいい、困ることなどない兄弟。
 それがいたなら、もっと世の中、楽しめたのに、と。
(…しかし、そういう無茶な注文…)
 通りはしないし、絶対に無理。
 「一日だけでも」などというのは、もっと無茶。
(…楽しそうだと思うんだがなあ…)
 一日だけ、兄弟が出来ないモンかな、と考えた所で、閃いた。
 「前の俺だ」と。
 奇跡が起こって、たった一日だけ、兄弟が出来るというのなら…。
(血は繋がってないし、本物じゃないが…)
 前の俺と兄弟というのがいいな、と大きく頷く。
 「それなら気心も知れてるんだし」と、「お互い、知らない仲じゃないしな」と。
(…まず、名乗らないといけないだろうが…)
 前の俺と出会って、兄弟のように過ごせたら、と浮かんだ考え。
 「こいつは素敵だ」と、「なんとも楽しそうじゃないか」と。
 一日だけ、神が兄弟をくれると言うなら、前の自分を頼んでみたい。
 「本物の兄弟とは違うのですが」と、「そっくりですから、兄弟に見えると思います」と。
 そうして前の自分と出会って、兄弟のように仲良く過ごす。
 たった一日だけでいいから、この地球で。
 平和になった今の時代を、前の自分と満喫して。


(…うん、なかなかに…)
 いい感じだぞ、と想像の翼を羽ばたかせる。
 兄弟のように過ごせそうだと、きっと楽しい一日になる、と。
(瓜二つなんだし、双子ってトコだな)
 俺と、前の俺、とコーヒーのカップを傾けた。
 前の自分と出会えたならば、「俺は、未来のお前なんだ」と、自己紹介。
 「今日だけ、兄弟ってことになっているから、仲良くやろう」と。
(最初はビックリされるんだろうが…)
 前の俺だって、俺なんだから、じきに慣れるさ、と自信はある。
 「いつまでも驚いてる暇があったら、頭を切り替えて、前進だよな」と。
(前の俺やブルーが、どうなったのかは、話せやしないが…)
 いくら兄弟でも言えやしない、と伏せるしかない、前の自分とブルーの生涯。
 「色々あったが、青い地球に生まれ変われたってわけだ」と、いい面だけを話しておこう。
 「ブルーもいるぞ」と、「すっかりチビになっちまったが」と。
(…きっと、ブルーにも会いたがるんだろうが…)
 そっちに費やす時間は無いな、と傾けるカップ。
 「前の俺をブルーに盗られちまうし」と、「それじゃ、つまらん」と。
(神様だって、そういうコースはお望みじゃないさ)
 俺に兄弟を下さったんだし、俺が楽しむべきなんだ、と考える。
 「ブルーに会わせる時間があったら、その分を有効に使わないとな?」と。
 前の自分と過ごすのならば、まず一番に、何をしようか。
 自己紹介が済んだ後には、コーヒーを振る舞うべきなのだろうか。
(…なんと言っても、正真正銘、本物のコーヒー豆のヤツで、だ…)
 代用品のコーヒーなんかじゃないぞ、とカップの中身を眺めて笑む。
 「前の俺だと、シャングリラじゃ、キャロブのコーヒーだった」と。
 青い地球に「前の自分」がやって来たなら、地球で採れたコーヒーを淹れるのがいい。
 「こいつは本物のコーヒーなんだ」と、「今じゃ地球でも、コーヒー豆が採れるんだぞ」と。
(喜ぶだろうな、地球のコーヒー…)
 目に浮かぶようだ、と思う前の自分の感激ぶり。
 「美味い」と、顔を綻ばせて。
 「やっぱり本物は、うんと美味いな」と、「その上、地球のコーヒーなのか」と。


 コーヒーの後は、和食を披露してみたい。
 「俺は地球に来て腕を上げたぞ」と、「今じゃ、こういう料理があるんだ」と。
(でもって、家で軽く食ってだな…)
 それから街に繰り出すのもいい。
 遠い所で暮らす兄弟、それが故郷に帰省して来た時みたいに。
 「どうだ、あちこち変わっただろう?」とか、「此処は昔と変わらんな」と案内するように。
(前の俺だと、全く知らない街になるんだが…)
 其処の所は、ご愛敬。
 公園もいいし、繁華街だって楽しめるだろう。
(合間に、喫茶店にも入って…)
 メニューを広げて、「どれにする?」と、もちろん、自分の奢り。
 前の自分が恐縮したって、兄弟なんて、そんなものだろう。
 「いいから、今日は俺が奢る」と、「久しぶりだし、好きなだけ食えよ」と。
(晩飯だって、気に入りの店に連れてって…)
 「これが美味いぞ」とか、「この酒がいい」とか、さながら「兄貴」。
 本当は、どちらが兄になるのか、自分でも分からないけれど。
 「その身体で生きた年数」だったら、前の自分の方が当然、「兄」なのだけれど。
(…そういうことでも、その土地に詳しい方がだな…)
 「俺に任せろ」は、ごくごく自然な流れ。
 だから気分は「兄貴」なわけで、前の自分に世話を焼く。
 「青い地球を、うんと楽しんでくれ」と。
 「せっかくだから、今夜は二人で飲み明かそう」と。
(…いいよな、久しぶりに会った兄弟みたいで…)
 そんな具合に、前の俺と過ごせたらいいな、と広がる夢。
 「兄弟のように、青い地球で」と。
 自分に兄弟はいないけれども、神様がプレゼントしてくれるなら。
 たった一日、兄弟をくれると言うのだったら、「前の俺がいい」と…。



            兄弟のように・了


※兄弟がいたら楽しいのにな、と考え始めたハーレイ先生。たった一日だけでいいから、と。
 そして思い付いたのが、前の自分と兄弟のように過ごすこと。楽しそうですよねv









拍手[0回]

(きっと、ぼくたちしかいないんだよね…)
 今の世界には、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
 今日は会えずに終わったハーレイ。
 前の生から愛した恋人、生まれ変わってまた巡り会えた人だけれども…。
(ハーレイには、ちゃんと会えたんだけど…)
 それだけだよね、と白いシャングリラで共に生きた仲間の顔ぶれを思う。
 彼らは、きっと何処にもいない、と。
 もしも彼らがいるのだったら、とっくに会えていそうだから。
(……ぼくの聖痕……)
 現れた時は酷い痛みで気絶したけれど、お蔭で戻った前の生の記憶。
 ハーレイの記憶も戻ったのだし、他の仲間が何処かにいるなら、彼らの記憶も戻っただろう。
 なにしろ神が起こした奇跡で、今の自分を青い地球にまで連れて来たほど。
 時の彼方で離れてしまった、ハーレイも先に生まれ変わらせて。
 ちゃんと二人が会えるようにと、出会いの場所まで設けてくれて。
(それほど凄い神様だから…)
 他の者たちがいるというなら、会わせてくれないわけがない。
 彼らの記憶も蘇らせて、他の星に住んでいるのだったら、地球に向かわせて。
(神様だったら、そのくらいは簡単…)
 記憶が戻って来たのだったら、彼らは地球を目指すだろう。
 前の生では死の星だった、母なる地球。
 それが今では青い星になり、誰でも自由に行くことが出来る。
 人間が全てミュウになった今は、とても平和な時代だから。
 「地球へ行こう」と思いさえすれば、宇宙船の切符を買うだけでいい。
(…絶対、行きたくなるだろうから…)
 後は地球に着いた彼らを、この町へ誘導してくるだけ。
 「ブルー」か「ハーレイ」に、バッタリ出会えるように。
 この町へ行きたい気分になった彼らを、「次の角を、右へ」といった具合に移動させて。


 神の手ならば、いとも容易く出来そうなこと。
 記憶が戻った懐かしい仲間を、この町へ連れて来るということ。
(…一人、そうやって連れて来たなら…)
 他の者たちも、続々と姿を現しそうな気がする。
 最初に来たのがヒルマンだったら、旅の途中で、宙港でゼルに出会うとか。
 そのゼルが「この前、エラに会ったぞ」といった具合に、どんどん縁が繋がって。
(……アッという間に、揃っちゃいそう……)
 シャングリラにいた仲間たちが、と思うからこそ、「誰もいない」と思いもする。
 誰一人として、来てはくれないから。
 ハーレイも自分も、未だに誰とも会えていないから。
(…ちょっと残念…)
 独りぼっちじゃないからいいんだけれど、とハーレイの顔を思い浮かべる。
 前の生の最期に切れたと思った、ハーレイとの絆は、ちゃんと繋がっていた。
 青い地球の上で再び出会えて、今度こそ一緒に生きてゆける。
 チビの自分が、結婚出来る年になったなら。
 誰にも恋を隠すことなく、二人で結婚指輪を嵌めて。
(だから充分、幸せだけど…)
 他のみんなにも会いたかったな、と贅沢なことを思ってしまう。
 せっかく青い地球があるのに、他のみんなはいないだなんて、と。
(…みんなに会えたら…)
 同窓会が出来るのにな、と懐かしくなる仲間たち。
 白いシャングリラで目指した地球で、同窓会が出来たなら、と。
(あちこちの星から、みんなが、この町にやって来て…)
 何処かのホテルの宴会場とかで、それは賑やかな同窓会。
 あの時代には無かった料理やお菓子を、会場にドッサリ用意して。
 「これも食べてみてよ」と、日本の文化を復活させている、この地域の名物料理も出して。
(…今の時代だから、みんな知ってはいるだろうけど…)
 実際には食べたことが無い、という料理だって多いだろう。
 宇宙は広くて、文化も山ほどあるものだから。
 SD体制があった時代とは、まるで違った世界だから。


(ぼくは、お酒は飲めないんだけど…)
 ハーレイたちは、地球の銘酒をズラリと並べて楽しんでいそう。
 「ブルーは子供だから、飲んじゃ駄目だぞ」と、飲まないように目を光らせながら。
(…だけど、みんなが楽しいのなら…)
 ぼくはジュースで構わないや、と文句を言う気は全く無い。
 あちこちで「乾杯!」とやっていたって、ジュースを飲んでいればいいや、と。
(…そういえば、ゼルやヒルマンとかは…)
 前と同じに、すっかり年を取ってるのかな、と別の方へと向かった思考。
 若い姿の頃の彼らも、前の自分は知っているけれど…。
(…生まれ変わって来ていたって…)
 なんだか、年を取っていそう、と確信に満ちた思いがある。
 今のハーレイがそうだったように、「前の姿」が気に入っていて。
 記憶が戻っていない頃から、順調に年を重ね続けて。
(ゼルは禿げちゃって、ヒルマンも髭まで真っ白で…)
 それでも二人は、満足なのに違いない。
 「うんと貫禄があるじゃろうが」と、ゼルなんかは髭を引っ張って。
 ヒルマンだって、「お爺ちゃんらしくて、いいと思わないかね?」などと。
(……お爺ちゃん……)
 そうだ、とハタと手を打った。
 今の時代なら、ゼルもヒルマンも、本物の「おじいちゃん」になれる筈。
 若かった頃に結婚したなら、息子や娘が生まれたならば…。
(その子供たちが大きく育って、結婚して…)
 孫が生まれて、正真正銘、「おじいちゃん」。
 同窓会を開いたならば、そういうゼルやヒルマンが来て…。
(可愛いだろう、って…)
 自慢の孫の写真を見せて回るのだろうか、他の仲間に。
 「まだ幼稚園に行ってるんじゃが、利口な子でのう…」なんて。
(…女の子だったら、美人じゃろう、って…)
 自慢するよね、と可笑しくなる。
 きっとゼルなら、「どうじゃ、わしに似て美人じゃろうが」とやるだろうから。


(…ゼルに似てたら、とても大変…)
 女の子だよ、と思うけれども、「おじいちゃん」というのは、そんなもの。
 可愛い孫を自慢したくて、間違った方向へ突っ走ったり。
(ブラウとかが、「馬鹿じゃないのかい?」って笑うんだよ)
 「あんたに似てたら、美人どころじゃないだろう?」などと、遠慮なく。
 ヒルマンだって、「そうだよ、似ていないからこそ、美人じゃないかね」と。
(…ふふっ、おじいちゃんになった、ゼルやヒルマン…)
 似合いそう、と微笑ましい光景を考えていたら、違う思考が降って来た。
 「誰かが、孫になっちゃってたら?」と。
(…ゼルやヒルマンの孫なんだけど…)
 前の生での記憶を持った、白いシャングリラの仲間たちの誰か。
 そういうことだって、あるかもしれない。
 神様の粋な計らいのお蔭で、ニナやシドやら、ヤエやルリなど。
(……うん、それだって……)
 素敵かもね、と笑みが零れる。
 同窓会の席にヒルマンやゼルが、「孫なんだぞ」と連れて来る彼ら。
 まだ幼稚園に通っている利口なシドとか、美人になりそうなルリだとか。
(みんな、ビックリ…)
 おじいちゃんと、お孫さんだってビックリだけど、と記憶が戻った時のことを考えてみる。
 ある日突然、お互い、戻って来た記憶。
 白いシャングリラで生きた時代に、機関長や先生だった「おじいちゃん」に…。
(…教え子だった、シドやルリだよ?)
 幼稚園児のシドなんかだと、いくら利口でも、戸惑うだろうか。
 「おじいちゃん」が誰か、思い出したら。
 前の自分が誰だったのかが、鮮やかに頭に蘇ったら。
(…おじいちゃんの方でも、ビックリ仰天…)
 可愛い孫をどう扱ったらいいのだろう、と。
 なにしろ、シドやルリなのだから。
 可愛い孫には違いなくても、お互い、遠い時の彼方で、別の出会いをしていたのだから。


(…同窓会には、絶対、連れて行ってよね、って…)
 駄々をこねられて、連れて来るのはいいのだけれども、困りそうな日常。
 おじいちゃんは強く出られないけれど、孫の方は遠慮しないから…。
(…前と同じで頑固で嫌い、って…)
 プイッとそっぽを向かれるだとか、ゼルの場合は、大いにありそう。
 ヒルマンだったら、上手くやれるだろうに。
(元々、子供たちの面倒を見てたし…)
 困ることなんて有り得ないよね、と頷いたけれど、どうだろう。
 「孫」になった子が「誰か」によっては、ヒルマンだって困るのだろうか。
(……えーっと…?)
 ジョミーだったら、と考えたけれど、困りそうには思えない。
 ソルジャー・シンが幼稚園児でも、少年くらいに育っていても…。
(ヒルマンだしね?)
 最初は驚いても、慣れてしまったら余裕たっぷり、いい「おじいちゃん」。
 お小遣いをあげたり、食事に連れて行ったりもして。
(前の君は、とても苦労をしたからね、って…)
 うんと甘くて、きっとジョミーが恐縮するほど、色々なことをしてあげそう。
 「同窓会で地球に行ったら、あちこち旅行してみるかね?」などと。
 同窓会が終わった後にも、青い地球に長く滞在して。
(…ヒルマンだもんね…)
 誰が「孫」でも、困らないよ、と思った所で、頭に浮かんだ別の顔。
 遠く遥かな時の彼方で、前の自分を撃った人間。
(……ヒルマンの孫、キースだったとか?)
 絶対、無いとは言えないよね、と気付いた「そのこと」。
 生まれ変わって記憶を取り戻すのは、ミュウだけだなんて限らない。
 人類だって、同じに生まれ変わっていそう。
 そして何処かで、前の生での記憶を持った知り合いと巡り会ったりもして。
(だから、キースが…)
 ヒルマンの孫でも変じゃないよね、と思い至った。
 今の平和な時代だったら、何の支障も無いのだから。


(…キースのおじいちゃんが、ヒルマン…)
 それって凄い、と見開いた瞳。
 いったい、どんな具合だろうかと、流石のヒルマンも困るだろうか、と。
(…孫なんだから、キースは、まだまだ子供で…)
 前のキースが水槽の中で過ごした年齢、そんな人生の真っ最中。
 幼稚園児ということだってあるし、前の時代なら目覚めの日にも届かない下の学校の子とか。
(十四歳になっていたって、今の時代じゃ、子供なんだし…)
 キースの方も、仰天するのに違いない。
 「どうなったんだ」と、「今の私は、子供なのか?」と。
 その上、「おじいちゃん!」と慕っている祖父が、なんとヒルマン。
 宿敵だったミュウの長老の一人で、もちろん「ソルジャー・ブルー」のことも…。
(よく知ってるから、困っちゃいそう…)
 前の「自分」が仕出かしたことを、なんと伝えたらいいのかと。
 「いっそ一生、黙っていようか」と、可哀想なくらいに悩んだりもして。
(…ヒルマンだって、キースなんだ、って分かるから…)
 突然、口数が少なくなった「孫」を心配することだろう。
 「何か悩みでもあるのかね?」と、優しく尋ねて、気分転換にと連れ出したりして。
(…やっぱり、ちょっぴり困るのかもね?)
 だけど、素敵なおじいちゃんだし、キースも幸せになれそうだよ、と嬉しくなる。
 ヒルマンの孫に生まれられたら、白いシャングリラの仲間たちにも馴染めそう、と。
(…ハーレイだって、キース嫌いが治るよね、きっと)
 そんな世界なら良かったのに、と夢を見るのが止まらない。
 「もしも、あの人がいたなら」と。
 白いシャングリラの仲間もそうだし、敵だった人類側の人間。
 キースやシロエや、それにマツカやグレイブたちにも、会ってみたいな、と…。



           あの人がいたなら・了


※シャングリラの仲間たちに会えたなら、という想像から、ブルー君が考え付いた「孫」。
 ヒルマンの孫がキースだったらビックリですけど、きっとキースには、いいおじいちゃんv








拍手[0回]

(俺と…あいつしか、いないんだよな)
 どうやら今は、とハーレイが、ふと思ったこと。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(あいつは、ちゃんといてくれたんだが…)
 すっかりチビになっちまっていても、と思うのは、今日は会いそびれた人のこと。
 遠く遥かな時の彼方で、前の自分が恋をした人。
 生まれ変わってまた巡り会えた、愛おしいブルー。
(…出会うまでに、うんと時間はかかっちまったが…)
 同じ町で暮らしていたのにな、と苦笑するけれど、それでもブルーには会えた。
 お互い、前の生での記憶も戻って、元の通りに。
(いや、元通りとはいかないんだが…)
 あいつがチビの子供の間は、と額を指でトントンと叩く。
 いくら互いに恋をしていても、今のブルーは十四歳にしかならない子供。
 「ぼくにキスして」と、いくら強請られても、それに応えることは出来ない。
 何故なら、ブルーは、まだ幼いから。
 ブルー自身が何と言おうと、その事実だけは変わらない。
(心も身体も、まるっきり子供なんだよなあ…)
 アルタミラで出会った頃と同じで、と前のブルーを思い出す。
 心も身体も成長を止めて、少年の姿をしていたブルー。
 「あの頃と、まるで変わりやしない」と。
 違う所があるとしたなら、前の生での記憶があること。
 お蔭でブルーは、自分ではすっかり大人のつもり。
 唇へのキスを強請るほど。
 「どうしてキスをしてくれないの」と、何度も膨れっ面になるほど。
(…そこで膨れっ面になるのが、だ…)
 子供の証拠というヤツなんだが、と可笑しいけれども、ブルーには分からないらしい。
 正真正銘、子供だから。
 大人なら分かる心の機微など、まるで分かっていないのだから。


 とはいえ、ブルーとは会うことが出来た。
 幼すぎるのが問題だけれど、それもいつかは解決する。
 チビのブルーが、前のブルーと同じ背丈に育ったら。
 背丈が伸びてゆくのと同じに、心も成長してくれたなら。
(そしたら本当に、元の通りに…)
 あいつと恋人同士になれる、と緩む頬。
 「今度は結婚出来るんだ」と。
 誰にも恋を隠すことなく、ブルーと同じ家で暮らせる。
 何処に行くにも二人一緒で、この青い地球や、広い宇宙の旅にも出掛けて。
(そうすることが出来る時代に、俺たちは生まれて来たんだが…)
 他のヤツらは、いないんだよな、と最初の所に戻った思考。
 「どうやら、俺たちだけらしいぞ」と。
(…根拠ってヤツは無いんだが…)
 どうも、そういう気がしてならない。
 蘇った青い地球でなくても、他の星にも、「誰もいない」と。
 前の生で長い長い時を共に暮らした、懐かしい仲間。
 ゼルもヒルマンも、エラもブラウたちも、今の世界にはいないのだろう、と。
(もしも、あいつらがいるんだったら…)
 出会えていそうな気がするんだ、とコーヒーのカップを指で弾いた。
 ブルーと自分が出会えたみたいに、彼らとも巡り会えたろう、と。
(…あいつの聖痕…)
 今の自分と、ブルーが出会った奇跡の瞬間。
 遠く遥かな時の彼方で、前のブルーが負った傷跡が、今のブルーに現れた時。
(あれが、あいつに出たってことは…)
 恐らく、時が満ちたのだろう。
 二人が出会うべき時が来るまで、神が隠しておいたもの。
 それが姿を現した途端、膨大な記憶が蘇って来た。
(他のヤツらも、いるんだったら…)
 あの瞬間に、ヤツらの記憶も…、という気がする。
 そして記憶を取り戻したなら、神が彼らを自然な形で、此処へ呼び集めるだろう、と。


 半ば、確信している「それ」。
 神が彼らを呼ぶだろうこと、いるのなら、巡り会えるだろうこと。
(俺とあいつを、これだけ見事に…)
 青い地球に連れて来られた神なら、そのくらいのことは容易いと思う。
 それこそ「ついで」なのだから。
 「これはオマケ」と言わんばかりに、ちょっとした奇跡の大盤振る舞い。
 ある日バッタリ、街角でゼルに出会うとか。
 ゼルに出会ったら、「宙港でヒルマンに会ったんだぞ」といった具合に繋がる関係。
 最初はゼルに会っただけでも、アッという間にシャングリラの仲間が揃っていそう。
 ヒルマンがブラウと出会っていたとか、ブラウがエラを知っていたとか。
(神様にすれば、そのくらいはなあ…?)
 簡単だよな、と口に含んだコーヒー。
 聖痕を起こすことに比べたら、人と人とを会わせるくらいは何でもない。
(ゼルがヒルマンに出会えるように…)
 二人の思考に働きかければ、じきに二人は出会うだろう。
 「お前、もしかして…」と、互いに驚きながら。
 「ゼルじゃないか」と、「ヒルマンだよな?」と、肩を叩き合って。
(他のヤツらも、そんな風に…)
 近い所にいる者から順に、神の指が嵌めてゆくパズル。
 まるでチェスの駒を動かすみたいに、前の生の記憶を持った人間たちを動かして。
 「此処にいる人が、こっちへ行けば…」と、顔を合わせる場を拵えて。
(…聖痕に比べりゃ、何でもないよな…)
 そうやって出会った中の一人を、この町に行く気にさせるのも。
 これと言った名所は特に無いけれど、それほど不便な場所でもないし…。
(…地球とは違う星から来たって…)
 日本という地域に行ってみよう、と思い立ったら、ふらりと寄ることもあるだろう。
 移動の途中で一泊するとか、気が向いたからと滞在するとか。
 そうすれば、簡単に「ハーレイ」に会える。
 此処まで導いて来た神だったら、その旅人と「ハーレイ」とを…。
(バッタリ会わせるくらいはなあ?)
 お安い御用で、出会えば、たちまち、互いが互いを見付けるだろう、と。


 それなのに、未だに一人も巡り会わない。
 ゼルもヒルマンも、ブラウも、エラも。
(…いたら、絶対、出会えただろうと思うんだがな…)
 そしたら愉快な同窓会が出来るのに、とコーヒーのカップを傾ける。
 前の生では、死の星のままになっていた地球。
 それが蘇って、今では「ハーレイ」の生まれ育った場所で…。
(うん、それだけでも驚きだよな)
 前の俺たちは、地球の地の底で死んじまったから…、と前の自分の最期を思う。
 「その地球の上で、今じゃ同窓会が出来るぞ」と、「美味い料理も山ほどあって」と。
(でもって、ブルーも、ちゃんといるから…)
 みんなビックリするんだろうな、と思い浮かべる同窓会。
 チビになってしまったブルーの姿を、初めて見る者もいるかもしれない。
 シドやヤエやら、若い世代は、そんなブルーは知らないから。
(…すっごく可愛い、って…)
 頭を撫で回すヤツもいそうだ、とニナたちの姿が目に浮かぶよう。
 もっとも、彼らが「育った姿」になっていないと、そうはいかないのだけれど。
 彼らも子供になっていたなら、場合によっては、ヒルマンが…。
(先生みたいに引率して来て、チビの団体…)
 そういうことだって、あるのかもな、と考え始めると止まらない。
 青い地球の上で、白いシャングリラの同窓会。
 「誰もいない」と思うからこそ、あれこれと夢が広がってゆく。
(ジョミーがいるなら、慰労会もしてやらないと…)
 グランド・マザーを倒しちまった立役者だぞ、と懐かしくなる金髪の青年。
 前のブルーに連れて来られた時は、少年だったのに。
(ブルーと同じでチビになっていようが、慰労会だよな)
 酒が飲めない年齢だったら、ノンアルコールの、子供用のシャンパンを用意して。
 「お疲れ様!」と、皆で乾杯して。
(どうせ、ブルーも酒は駄目だし…)
 うん、充分に盛り上がるさ、と思うジョミーの慰労会。
 前のブルーも頑張ったけれど、SD体制にトドメを刺したのは、ジョミーなのだから。


 それもいいな、と同窓会から慰労会へと変わった想像。
 いないだろうと思うからこそ、「あの人がいたら」と見たくなる夢。
(俺とブルーの恋なんぞは…)
 自分もブルーも綺麗に忘れて、再会の喜びに浸っていそう。
 懐かしい仲間が揃っているから、もう嬉しくてたまらなくて。
(…やりたいんだがなあ、ジョミーの慰労会…)
 うんと楽しいに違いないんだ、と思った所で、ハタと気付いた。
 「ジョミーだけとは限らないぞ」と。
(……ジョミーの、戦友……)
 そいつ抜きでは、慰労会とは言えないような、と背中にタラリと流れた汗。
 再会したジョミーが少年だろうが、青年の姿をしていようが…。
(ぼくの戦友を紹介するよ、と…)
 とびきりの笑顔で、「入って!」と手招きしそうな「男」。
 地球の地の底で、ジョミーと共にグランド・マザーに刃向かい、命を落とした英雄。
(……キース・アニアン……)
 あいつがいない筈が無かった、と愕然とする。
 神がジョミーを呼び寄せたならば、当然、キースもいるのだろう、と。
 ジョミーがいたなら、キースに出会わない筈が無いから。
 きっと二人は大の親友、間違いなく、そうなるだろうから。
(…そいつは、非常に困るんだが…!)
 どんな顔をして会えばいいんだ、とカップのコーヒーに目を落とす。
 「まさか殴れやしないじゃないか」と、「愛想よく挨拶するしかないぞ」と。
(…ジョミーの大親友ではなあ…)
 どうにもならん、と悔しい上に、今のブルーは…。
(……キースの野郎を、嫌っていないと来たもんだ……)
 ジョミーとキースが少年だったら、ブルーは大喜びだろう。
 「いっぺんに友達が増えたよ、ハーレイ!」と、弾けるような笑みを輝かせて。
 「三人で遊びに行くのもいいね」と、「ハーレイ、車を出してくれない?」と。
 なにしろ、ブルーは子供だから。
 同い年くらいの友達が出来たとなったら、もう早速に、遊びに行きたい年頃だから。


(…おいおいおい…)
 そいつは御免蒙りたいぞ、と情けなくなる。
 同窓会を開いた結果が、それなんて。
 ジョミーの慰労会をやったら、キースまでやって来るなんて。
(……だが、充分にありそうだしなあ……)
 誰とも会えないままがいいのかもな、と思うけれども、懐かしい仲間。
 もしも巡り会うことが出来たら、きっと楽しい。
 たとえブルーが、キースと友達になろうとも。
 「ハーレイ、車を出してくれない?」と、遊びに行く足に使われようと…。



           あの人がいたら・了


※シャングリラの仲間たちが今の時代にいたら、と想像してみたハーレイ先生。同窓会だ、と。
 なんとも楽しそうですけれども、ジョミーが連れて来そうな親友。殴れませんよねv







拍手[0回]

Copyright ©  -- つれづれシャングリラ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]