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店先だったなら
(教室だったとは、限らないよね…)
 ぼくとハーレイの出会いの場所、とブルーの頭に浮かんだ考え。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(たまたま、教室だっただけだし…)
 グラウンドとか、廊下だったとかもありそう、と学校内の場所を挙げてみる。
 ハーレイは転任して来たばかりだったし、何処で会っても、おかしくはない。
 ブルーのクラスで授業があったせいで、あの時、入って来たに過ぎない。
(…ぼくが学校に着いて、教室へ行く前に…)
 何処かで会ったら、其処で初対面になる。
 たちまち聖痕が表れ、その後の流れは、実際に起こったことと変わらないだろう。
(…何処で会っても、人騒がせで…)
 救急車が来たり、野次馬の生徒が押し掛けて来たりと、学校中が大騒ぎに違いない。
 授業中だったのは、不幸中の幸いだったと言えるだろうか。
(…他のクラスからの野次馬、少ない方だったと思うから…)
 始業のベルが鳴る前のグラウンドだとか、休み時間の廊下では、そうはいかない。
 駆け付けた先生や、ハーレイ自身が「落ち着いて!」「教室に戻りなさい」と叫ぶほどの騒動。
 その日は一日、学校中が落ち着かなくて、生徒たちは授業に身が入らなかった恐れも大きい。
 もっとも、ブルーのクラスだけは、そういう有様だったらしいけれども。


 そうは言っても、教室内で良かったと思う。
 学校中に大迷惑をかけるよりかは、ブルーのクラス限定で済ませておきたい。
(…学校だった分だけ、まだマシなのかも…)
 外の道路じゃ、やっぱり大騒ぎだよ、とブルーにも分かる。
 路線バスで最寄りのバス停に着いた直後に、出会っていたなら、通行人も何人もいる。
 学校の始業時間は早めなのだし、通勤客だって通り掛かる時間帯だった。
(…歩道を歩いてる人の他にも、車で出勤中の人もいるよね…)
 外でも野次馬が集まっちゃいそう、と容易に想像が出来てしまう。
 通行人は足を止めるし、車の人だって、スピードを落として通って、停まる車も出て来そう。
 ただの野次馬だと、車を停めたら叱られそうでも、応急手当が出来る場合は、話が異なる。
 「どうしました!?」などと呼び掛けながら、走って来るだろう。
(…救急車を呼びに走る人だって、ハーレイじゃなくって…)
 通りすがりの誰かで、ハーレイは「すみませんが」と、学校への連絡を頼むしかない。
 「表の通りで生徒が倒れたので、救急車には、私が付き添います」という伝言。
 それから、ブルーの生徒手帳を調べて、両親への連絡などもして貰わねばならない。
 表通りで出会っていたなら、教室以上の大騒ぎは確実だった。
(…おまけに、聖痕現象…)
 目撃していた人が多いわけだし、新聞に載っていたのだろうか。
 単独で記事にされることはなくても、「居合わせたんです!」という目撃者の寄稿。
 ちょっとした日々の出来事が投稿されるコーナーだったら、目玉投稿になりそうだった。


(…うーん…。表通りなだけで、騒ぎが倍以上かなあ…)
 生徒と先生だけの学校で大正解だよ、と思ったはずみに、別のシチュエーションが掠めた。
 表通りよりも人が多くて、目立ちそうな場所は幾らでもある。
 公園もそうだし、繁華街でもそう。
 ショッピングセンターなどだった時にも、間違いなく人垣が出来て、野次馬だらけ。
(…何処にしたって、ぼくが全く行かないわけじゃないし…)
 本屋さんとかも危なそうだよ、と本好きのハーレイと自分の行動パターンを考慮してみる。
 バッタリ会うのが書店の中でも、充分、有り得る。
(ショッピングセンターだって、たまに行くんだし、ハーレイも行くし…)
 大迷惑なのは、お店の場合かも、とブルーは肩を竦めた。
 買物という心浮き立つイベントの場所が、一瞬の間に、流血の惨事で台無しになってしまう。
 自分が怪我をしたわけでなくても、居合わせた「誰か」が、血塗れでは恐ろしい。
 しかも「子供」が血を流しながら倒れて、動かないのでは、たまらない。
(…十四歳だと、まだまだ子供で、見てた人たち、可哀相に、って…)
 心配したり、動揺したり、ザワザワザワと揺れ動くばかり。
 小さな子供が居合わせたりしたら、最悪だろう。
(…こっちに来なさい、って手を引っ張ったり、抱え上げたり…)
 事故の現場を見せないように、懸命に駆け去ってゆくしかなさそう。
 幼い子供の心に「傷」が残ってしまっては、夜に悪夢にうなされたりもするだろうから。


 店という場所だけは避けないと、と思うけれども、実際、無事に避けられた。
 ハーレイが教室に来るという、平穏なケースで終わった出会い。
(…お店じゃなくって、ホントに良かった…)
 神様は其処まで考えてくれていたんだ、と感謝しながら、また考えが逸れた。
(もしも、ハーレイのお店だったら、どうなるんだろう…?)
 学校の先生の代わりに、何かのお店、と思い付いたら、ポンと出たのが菓子店だった。
 前のハーレイは厨房出身だったけれども、今のハーレイも、料理を得意としている。
 プロのスポーツ選手にならずに、選んだ道が教師で、料理人という選択もあった。
(学校を出た後、料理の専門学校に進んだって、いいんだものね…)
 お父さんたちに学費を頼まなくても、働きながら行けそうだから、と空想の翼を広げてみる。
 ハーレイだったら、料理店を始めるよりも、菓子店の方になりそう。
 子供が気軽に立ち寄れる店で、大人向けにカフェも併設していて、店があるのは住宅街。
(手広くやるより、お馴染みさんたちと、和気あいあいのお店で…)
 店主をする方が、ハーレイには、よく似合う。
 そういった店を近所で始めて、ブルーが評判を聞いて出掛けて行ったら、店先で出会う。


(…出会った途端に、聖痕なんだけど…)
 ハーレイの方でも思い出すから、居合わせた客が騒ぎ出しても、上手く鎮めるだろう。
 自分で救急車を呼んだ後には、客たちに「すみませんが、今日は休業で」と詫びの挨拶。
 店のドアには「臨時休業」の札が出されて、ハーレイは救急車に乗ってゆく。
 客たちに「お詫びです」と菓子を渡して、後日、再訪してくれるよう、埋め合わせの約束。
(…ハーレイなんだし、きっと、そんな風…)
 店先だったなら、うんと迷惑かけてしまいそう、と分かっているのに、ワクワクする。
 そんな出会いも悪く無さそうで、ハーレイの店の常連になるのも楽しそう。
 聖痕の現場を見ていた客とも、引き合わせて貰って、仲良しになって。
(…ハーレイの店の、お馴染みになって、行く度に、お菓子のサービス…)
 あるといいなあ、と自分本位で考えてしまうのは、まだまだ子供の証拠かもしれない。
 出会いの場所が店先だったなら、大迷惑をかけるに違いないのに、嬉しいのだから…。



            店先だったなら・了

※ブルー君が想像してみた、ハーレイ先生との出会いの場所。学校以外もありそう。
 もしも、ハーレイが店主の店なら、大迷惑をかけてしまっても、ブルー君は嬉しいかもv





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