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恋人は先生

 内緒だけれど。
 ホントのホントに誰にも内緒で、秘密だけれど。
 パパにもママにも言えない秘密で、友達にだって言えないけれど。
(ちゃんと恋人がいるんだよ、ぼく)
 しかも、先生。学校の先生でうんと年上、二十三歳も上の先生。
 ぼくの大好きなハーレイ先生、片想いじゃなくて、ホントの恋人。


 ぼくのことを「チビ」って呼ぶけれど。
 キスも許してくれないけれども、それでもホントに恋人なんだ。
 だって、学校では「ブルー君」だけど、ぼくの家では「ブルー」って。
 「俺のブルー」って呼んでくれたりする日だってある、ぼくの恋人。
 学校で会ったら「ハーレイ先生」、ぼくの家ではただの「ハーレイ」。
 だけど先生、ぼくの先生。


 ぼくとハーレイ、出会いは学校。ぼくの学校で初めて出会った。
 忘れもしない五月の三日に、ハーレイが転任して来たから。
 新しくやって来た古典の先生、会った途端に一目惚れ。
 お互いストンと恋に落ちた、って言ったらロマンチックだけれど。
 恋した途端にぼくは血まみれ、ハーレイの方は大慌て。
 ぼくに聖痕が出ちゃったから。右目や肩から血が溢れたから。


 とんでもなかった恋の始まり、出会いの後は救急車。
 告白する間も、される間もなくて、見事に気絶しちゃった、ぼく。
 ハーレイが一緒に救急車に乗って来てくれたことも知らずに気絶していた、ぼく。
 気が付いた時は病院のベッド、もうハーレイはいなかった。
 学校に帰って行ってしまって、ぼくの側にはいなかった。


 だけど壊れなかった恋。消えてしまわなかった一目惚れ。
 ハーレイはぼくを好きなまんまで、ぼくもハーレイを好きなまま。
 恋した途端にぼくが気絶で、告白する間も無かったけれど。
 されてる暇も無かったけれども、恋はきちんと伝わった。
 ぼくとハーレイとは恋人同士で、今だってずっと、恋人同士。


 きっと嘘だと言われると思う、こんな恋だと話したら。
 告白する間も、される間も無くて、それでも恋人同士だなんて。
 しかもお互い、一目惚れ。会った途端に恋をした。
 嘘みたいだけれど本当の話、ホントのホントにあったこと。
 五月の三日に起こった出来事、学校の先生に恋をしちゃって、先生の方も…。


(ぼくもハーレイも、両想い…)
 片想いなんて、していない。ほんの一瞬も、していやしない。
 お互いに好きで、一目惚れ。会った瞬間、もう両想い。
 告白なんかは要りもしなくて、される必要も何処にもなくて。
 ストンと恋に落ちてしまって、もう運命の恋人同士。
 ぼくはハーレイしか見えやしないし、ハーレイもぼくしか見ていないんだ。
 だって、そういう恋だから。ホントに恋人同士だから。


 誰にも言えない恋の秘密は、恋の始まりよりも前。
 出会う前から恋人同士で、前のぼくたちの恋がまた始まった。
 ぼくもハーレイも生まれ変わりで、生まれ変わる前にも恋人同士。
 ぼくたちの恋は前の続きで、だけど前よりもっと素敵で。


(今度はちゃんと…)
 学校の先生と生徒でいる間が終わったら。
 ハーレイを「先生」と呼ばなくていい日がやって来たなら、もう堂々と恋人同士。
 誰にも内緒にしなくてもいいし、手だって繋げる。何処へだって行ける。
 前のぼくたちには出来なかった恋が、誰もが祝福してくれる恋が出来るぼくたち。


 その日が来るまで、先生と生徒。
 誰にも内緒で、秘密の恋。パパにもママにも、友達にだって。
 だけど幸せ、ホントに幸せ。
 ぼくの大好きなハーレイ先生、ぼくの家ではただのハーレイ。
 そんなハーレイに恋をしたことが、ハーレイ先生に恋をしたことが、とても幸せ。


 ぼくの恋人は学校の先生、誰にも内緒で秘密だけれど。
 いつか秘密じゃなくなった時は、先生はもうぼくの先生じゃない。
 ぼくの恋人、ぼくだけの恋人、手を繋いで歩いていける人。
 ずうっと二人で歩いて行くんだ、幸せ一杯の未来に向かって…。

 

       恋人は先生・了


※ブルー君とハーレイ先生の恋、言わば究極の一目惚れ。会った途端に恋ですもんね。
 おまけに二人は先生と生徒、素敵だよね、と書いてみましたv






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