(よし、久しぶりに…)
洗ってやるぞ、とハーレイは愛車をポンと叩いた。
小さなブルーと再会してから、週末は大抵、出掛けていたから。
ブルーの家へと出向いていたから、洗えなかった車。
もちろん洗ってやってはいた。
愛車なのだし、汚れたままにはさせられない。
なにしろ汚れが目立つ色の車、前の自分のマントの色。
埃がついたら一目で分かる。
それを綺麗に乗ってやるのが好きだった。
汚れてきたな、と思えば休日にせっせと洗ってやっていた。自分の手で。
ところがブルーと出会ってしまって、そうそう時間が取れなくなって。
車を洗ってやれなくなった。
自分の手では、自分の家のガレージでは、とても。
けれども大事な車だから。大切に乗ってやりたいから。
「すまないな」と謝りながらも、プロに任せて洗って貰った。
俺が洗ってやれなくてすまんと、暫くは我慢してくれと。
そうして迎えた、よく晴れた週末。
いつもよりずっと早い時間に目が覚めた。
ブルーの家に出掛けてゆくには早すぎる時間に、気持ち良く。
(飯を食っても時間が余るぞ…)
軽くジョギングでも、と考えかけて気が付いた。ハタと思い出した。
ガレージに停めてある、あの緑色の車のことを。
(あいつを洗ってやればいいんだ)
ジョギングにゆくのも気持ちいいけれど、車も気持ち良くなりたいだろう。
ピカピカに洗って欲しいだろう。
ついこの間、プロに任せたばかりだけれど。
洗車を頼んだばかりだけれども、洗ってやりたい、自分の手で。
(うん、充分に…)
時間はあるな、と腹ごしらえから。
(腹が減っては戦が出来ぬ、と言うからな)
トーストを焼いて、ソーセージにオムレツ、もちろんサラダも。
時計はまだまだ早い時間で、朝の日射しも眩しいから。
もう絶好の洗車日和というものだ。
朝からピカピカ、車だってきっと最高の気分になってくれるだろう。
(生憎と今日は乗らないんだがな)
ブルーの家には運動を兼ねて歩いてゆくから。
天気のいい日には歩いてゆこうと決めているから、今日は乗らない車だけれど。
(すまなかったな、俺が洗ってやれなくて)
今日は洗ってやるからな、と洗車用のホースを持ち出した。
乗れる間は大切に乗ってやりたい車。
いつかブルーが大きくなったら、最初のドライブに行きたい車。
まだまだお世話になりたい愛車なのだし、心をこめて洗ってやろう。
洗車のプロに任せておくより、やはり自分の手でピカピカに。
(いつかは、あいつと洗うのもいいな)
ブルーが大きくなったなら。
「大事に洗ってやってくれよ」と声を掛けながら、二人で洗車。
そんな休日もいいだろう。
今はまだ一人で洗うけれども、ブルーの家へと出掛ける前の洗車だけれど。
ピカピカに洗って、綺麗にして。
大切に乗ってやりたい車。
いつかブルーとドライブするまで、ブルーと二人で洗える日まで。
「よろしく頼むぞ」
ずっと元気に走ってくれよ、と車を洗う。週末の朝に、今日は乗らない緑色の愛車を…。
洗車・了
※ハーレイ先生の愛車。汚れが目立ちそうな色なんですよね、綺麗ですけど。
大切な車を洗ってピカピカ。ハーレイ先生、きっと御機嫌v