忍者ブログ

痛かったけれど

 とても痛かったんだけど。
 とっても、とっても痛かったけれど、ぼくの大事な宝物。
 ぼくの身体に現れた聖痕、前のぼくがキースに撃たれた傷痕。
 痛くて気絶しちゃったけれども、あれがハーレイを連れて来てくれた。
 ハーレイともう一度会わせてくれた。この地球の上で。


(痛かったんだけどね…)
 チビのぼくには痛すぎた傷。
 前のぼくはきっと、とっても我慢強かったんだ。
 気絶しないでメギドを沈めた。
 あんなに沢山撃たれたのに。最後は右目まで撃たれたのに。


(でも、前のぼくだって…)
 傷は頑張って耐えたけれども、痛みにはちゃんと勝ったんだけれど。
 大切なものを失くしてしまった。
 あまりに痛くて、傷の痛みが酷すぎて。
 右手に持ってたハーレイの温もり、それを落として失くしてしまった。


(今のぼくは気絶しちゃったけれど…)
 ハーレイが駆け寄って来てくれていたのも、ろくに覚えていやしない。
 抱き起こしてくれたのも、記憶が曖昧。
 救急車の中でハーレイが手を握って励ましてくれたらしいけど…。
 「大丈夫だからな」「すぐ病院に着くからな」って、声を掛けてくれてたらしいんだけど。
 それはなんにも覚えていないし、声も温もりも覚えていない。
 ハーレイが握ってくれていた筈の手のことも、何もかも、まるで。
 だけどハーレイは握ってくれていたんだ、気絶しちゃったぼくの手を。
 前のぼくが温もりを落として失くした、その手を、きっと。


(ハーレイの温もり…)
 聖痕はとっても痛かったけれど、ぼくから温もりを奪わなかった。
 奪う代わりに返してくれた。
 温もりだけじゃなくって、ハーレイを丸ごと。
 前のぼくが失くした温もりをくれる、ハーレイを丸ごと連れて来てくれた。


 だから聖痕は、ぼくの宝物。
 痛いのは二度と御免だけれども、ぼくの大事な宝物。
(それに、聖痕…)
 また起こさないように、っていう理由で守り役になってくれたハーレイ。
 それも無期限、いつまでも側にいてくれる。
 ぼくに聖痕が出来ちゃったから。


(ホントのホントに痛かったけど…)
 前のぼくはホントに痛い目に遭ったし、大切なものを失くしたけれど。
 同じ傷の痕が、ずうっと後になってから宝物になるって知っていたなら…。
(右手、凍えなかったのかな?)
 いつかハーレイとまた出会えるよ、って分かっていたら。
 独りぼっちでも、泣きじゃくらないで微笑んで死んでいったんだろうか…?
 またハーレイと会えるんだ、って。


(きっと、そう…)
 そうなんだろうと思うから。
 撃たれちゃったぼくに、前のぼくに教えてあげたいけれど。
 ぼくの声はきっと届かない。
 届くわけがないから、そうっと宝物を抱き締める。
 ハーレイを連れて来てくれた傷痕、会わせてくれた大事な聖痕。
 撃たれた時には痛いだけだった、あの傷とそっくり同じに出来てる、ぼくの聖痕。
 もう二度と浮かびはしないけれども、聖痕は大切な宝物だから…。

 

     痛かったけれど・了


※チビのブルー君には痛すぎた聖痕、気絶しちゃったわけですけれど。
 こんな感じで宝物です、痛かったのとは別みたいですよ?



拍手[0回]

PR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
 管理人のみ閲覧
 
Copyright ©  -- つれづれシャングリラ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]