カテゴリー「拍手御礼」の記事一覧
「ねえ、ハーレイ。思い付きって…」
大切だよね、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? たった今、何か思い付いたのか?」
まあいいんだが、とハーレイは苦笑しながら返した。
「お前、いきなり思い付くしな」
それでどうした、とブルーに向かって尋ねてみる。
「俺にして欲しいようなことでも、出来たのか?」
いつものヤツなら、お断りだぞ、とハーレイは釘を刺した。
こういった時のブルーは、要注意。
ろくでもないことを思い付いては、無理なおねだり。
(…キスをしろとか、うるさいんだ…)
チビのくせに、とブルーを睨んだけれども、違ったらしい。
ブルーは「違うってば!」と、不満そうに頬を膨らませた。
「ただの質問みたいなものなんだよ」
思い付きというのは、閃きとかで、とブルーが説明する。
「ほら、色々と思い付くでしょ?」
何かする時でなくても、とブルーは赤い瞳を瞬かせた。
「いろんなアイデア、そうやって出て来るもので…」
発明だって、そうじゃないかな、とハーレイを見詰める。
あれこれ考えて順序立てるだけでは、ダメそうだよ、と。
「ぐるぐるしちゃって、煮詰まってくだけで…」
頭の中は、それで一杯、とブルーは自分の頭を指差す。
「そうなった時に、お茶とかで休憩していたら…」
いいアイデアが閃くものじゃないの、と言われれば、そう。
実際、大発明の切っ掛けになることも多い。
「なるほどなあ…。確かに、思い付きは大切かもな」
お前の場合は、違う気がするが、とハーレイは慎重になる。
此処でウッカリ「その通りだ」と同意するのは危険だろう。
「ハーレイ、疑っているんでしょ?」
よく、そんなので、先生やってるよね、とブルーは膨れる。
「生徒が思い付いたアイデア、否定するわけ?」
「いや、それは…。まずは話を聞いてだな…」
それから中身を検討なんだ、とハーレイは答えた。
「いいアイデアか、そうでないかは、聞いてみないと…」
「だったら、ぼくのも聞くべきでしょ!」
初っ端から否定するなんて…、とブルーは眉を吊り上げた。
「生徒の前で同じことをしたら、嫌われちゃうよ?」
「だから、しないと…」
「ぼくだけ、違う枠になるわけなの!?」
ハーレイの生徒の一人なのに、とブルーは怒り始めた。
フグみたいに頬を膨らませて、プンスカと。
「ハーレイ、いつも酷いんだから!」と、睨み付けて。
とはいえ、ハーレイの方にも言い分はある。
ブルーは生徒の一人に違いなくても、特別な枠の中にいる。
ハーレイは「ブルーの守り役」なのだし、学校でも承知。
「お前なあ…。違う枠になっても、当然だろう?」
毎日のように家庭訪問だぞ、とハーレイは説いた。
「他の生徒なら、其処まではしない」と、守り役について。
「言わば特別扱いなんだし、向き合い方も変わるよな?」
「うーん…。頭ごなしに否定するのは、違うと思う…」
いつだって、そういう調子なんだから、とブルーも粘る。
「もっと、きちんと扱ってよね」と、諦めないで。
「そう言われてもなあ…。ところで、お前の思い付きは…」
この問答を吹っ掛けることだったのか、とハーレイは訊く。
どうも、そうとしか思えないから、確認をした方がいい。
「押し問答で終わりそうだし、早い間に切り上げろよ?」
するとブルーは、更に頬っぺたを膨らませた。
「やっぱり、聞く気なんか無いでしょ!」
分からず屋だよね、と散々、怒り続けた果てに…。
「ハーレイ、今ので少しは懲りた?」
ぼくの思い付きを聞くべきだ、って、とブルーが尋ねる。
「否定しないで聞いていたなら、ぼくは怒らないよ?」
「…そうだな、俺が悪かった…」
すまん、とハーレイは謝ったけれど、次の瞬間、後悔した。
ブルーの顔が、たちまち笑顔に変わったから。
「懲りたんだったら、謝ってよね!」
お詫びはキスで充分だから、とブルーは、それは嬉しそう。
思い付いた通りに、上手く話が転がったらしい。
「馬鹿野郎!」
お前の思い付きなどは聞かなくていい、とハーレイは叱る。
「どうせ、ろくでもないことなんだしな!」
現に、たった今、証明されたぞ、とブルーの頭をコツン。
軽く一発お見舞いするのが、今のブルーに似合いだから…。
思い付きって・了
大切だよね、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? たった今、何か思い付いたのか?」
まあいいんだが、とハーレイは苦笑しながら返した。
「お前、いきなり思い付くしな」
それでどうした、とブルーに向かって尋ねてみる。
「俺にして欲しいようなことでも、出来たのか?」
いつものヤツなら、お断りだぞ、とハーレイは釘を刺した。
こういった時のブルーは、要注意。
ろくでもないことを思い付いては、無理なおねだり。
(…キスをしろとか、うるさいんだ…)
チビのくせに、とブルーを睨んだけれども、違ったらしい。
ブルーは「違うってば!」と、不満そうに頬を膨らませた。
「ただの質問みたいなものなんだよ」
思い付きというのは、閃きとかで、とブルーが説明する。
「ほら、色々と思い付くでしょ?」
何かする時でなくても、とブルーは赤い瞳を瞬かせた。
「いろんなアイデア、そうやって出て来るもので…」
発明だって、そうじゃないかな、とハーレイを見詰める。
あれこれ考えて順序立てるだけでは、ダメそうだよ、と。
「ぐるぐるしちゃって、煮詰まってくだけで…」
頭の中は、それで一杯、とブルーは自分の頭を指差す。
「そうなった時に、お茶とかで休憩していたら…」
いいアイデアが閃くものじゃないの、と言われれば、そう。
実際、大発明の切っ掛けになることも多い。
「なるほどなあ…。確かに、思い付きは大切かもな」
お前の場合は、違う気がするが、とハーレイは慎重になる。
此処でウッカリ「その通りだ」と同意するのは危険だろう。
「ハーレイ、疑っているんでしょ?」
よく、そんなので、先生やってるよね、とブルーは膨れる。
「生徒が思い付いたアイデア、否定するわけ?」
「いや、それは…。まずは話を聞いてだな…」
それから中身を検討なんだ、とハーレイは答えた。
「いいアイデアか、そうでないかは、聞いてみないと…」
「だったら、ぼくのも聞くべきでしょ!」
初っ端から否定するなんて…、とブルーは眉を吊り上げた。
「生徒の前で同じことをしたら、嫌われちゃうよ?」
「だから、しないと…」
「ぼくだけ、違う枠になるわけなの!?」
ハーレイの生徒の一人なのに、とブルーは怒り始めた。
フグみたいに頬を膨らませて、プンスカと。
「ハーレイ、いつも酷いんだから!」と、睨み付けて。
とはいえ、ハーレイの方にも言い分はある。
ブルーは生徒の一人に違いなくても、特別な枠の中にいる。
ハーレイは「ブルーの守り役」なのだし、学校でも承知。
「お前なあ…。違う枠になっても、当然だろう?」
毎日のように家庭訪問だぞ、とハーレイは説いた。
「他の生徒なら、其処まではしない」と、守り役について。
「言わば特別扱いなんだし、向き合い方も変わるよな?」
「うーん…。頭ごなしに否定するのは、違うと思う…」
いつだって、そういう調子なんだから、とブルーも粘る。
「もっと、きちんと扱ってよね」と、諦めないで。
「そう言われてもなあ…。ところで、お前の思い付きは…」
この問答を吹っ掛けることだったのか、とハーレイは訊く。
どうも、そうとしか思えないから、確認をした方がいい。
「押し問答で終わりそうだし、早い間に切り上げろよ?」
するとブルーは、更に頬っぺたを膨らませた。
「やっぱり、聞く気なんか無いでしょ!」
分からず屋だよね、と散々、怒り続けた果てに…。
「ハーレイ、今ので少しは懲りた?」
ぼくの思い付きを聞くべきだ、って、とブルーが尋ねる。
「否定しないで聞いていたなら、ぼくは怒らないよ?」
「…そうだな、俺が悪かった…」
すまん、とハーレイは謝ったけれど、次の瞬間、後悔した。
ブルーの顔が、たちまち笑顔に変わったから。
「懲りたんだったら、謝ってよね!」
お詫びはキスで充分だから、とブルーは、それは嬉しそう。
思い付いた通りに、上手く話が転がったらしい。
「馬鹿野郎!」
お前の思い付きなどは聞かなくていい、とハーレイは叱る。
「どうせ、ろくでもないことなんだしな!」
現に、たった今、証明されたぞ、とブルーの頭をコツン。
軽く一発お見舞いするのが、今のブルーに似合いだから…。
思い付きって・了
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「ねえ、ハーレイ。粘り強さは…」
大切だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「粘り強さだって?」
今の話と繋がらないんだが、とハーレイはブルーを眺めた。
他愛ないことを話していたから、粘り強さの出番は無い。
「うん。…でも、思い付いた時には、質問でしょ?」
すっかり忘れてしまう前に、というブルーの言葉は正しい。
現にハーレイも、生徒たち授業中などに、よく言っている。
「質問があったら、直ぐに言えよ」と、口を酸っぱくして。
だから、ブルーにも頷くしかない。
「そうだな。忘れちまったら、駄目だからなあ…」
それで何を聞きたいんだ、とブルーの瞳を真っ直ぐに見る。
ブルーの意図が分からないだけに、気を引き締めて。
(…何度も、この手に引っ掛かったし…)
こいつの質問は、油断出来ん、とハーレイは既に経験済み。
真面目に答えてやった結果が、とんでもないことも数多い。
「…ハーレイ、ぼくを疑ってるよね…」
急に質問しちゃったから、とブルーに言われてハッとする。
(先入観ってヤツを、持ち過ぎてたか…)
疑ってかかるのは良くないよな、とハーレイは反省した。
経験則は役に立つけれど、頼り過ぎると失敗しがち。
「悪い、ついつい、思い込みでな」
すまん、と潔く頭を下げたら、ブルーはクスッと笑った。
「そう思われても、仕方ないけど…」
膨れていないで聞き直すのも、粘り強さ、とブルーは言う。
「粘り強さが皆無だったら、もう聞かないでしょ?」
「そりゃそうだ。馬鹿にされてる、と放り出してな」
粘り強さに感謝するぞ、とハーレイも大きく頷いた。
ブルーが投げ出してしまうタイプだったら、話はおしまい。
というわけで、振り出しに戻って、粘り強さの話になった。
「あのね…。さっきみたいなのも、そうなんだけど…」
諦めないでコツコツ努力は大事だよね、とブルーが尋ねる。
投げ出しちゃうより、粘り強さ、と真剣そうな瞳をして。
「うむ。たった今、証明されちまったし…」
他の面でも大事ではある、とハーレイはブルーを肯定した。
「お前には、あまり関係無さそうなんだが…」
勉強もスポーツも、粘り強さが重要だぞ、と説く。
「出来やしない、と放り出したら、それっきりだ」
勉強だったら置いて行かれて、スポーツなら負ける、と。
「そうだよね…。ぼくも毎日、頑張ってるもの」
まるで駄目だよ、と泣きそうでも、とブルーは苦笑した。
「諦めないでコツコツやっているよ」と、少し誇らしげに。
「…泣きそうだって?」
お前がなのか、とハーレイは鳶色の瞳を丸くする。
ブルーは、スポーツはともかく、優秀な生徒。
「まるで駄目だよ」と泣きそうになるとは思えない。
「…泣きそうだってば、毎日とまでは言わないけれど…」
毎日、牛乳、厳しいんだよ、とブルーの答えは奮っていた。
「紅茶に入れて飲んだ程度じゃ、足りないしね…」
朝御飯でも飲んで、頑張ってる、とブルーは自分を指差す。
「でないと、背丈が伸びないんだもの…」
だけど、ちっとも伸びてくれない、と深い溜息も零れ出た。
「一ミリさえも伸びないんだよ」と、ブルーが言う通り。
青い地球に生まれ変わって再会してから、背丈は同じまま。
ブルーの成長は止まってしまって、少しも伸びない。
(…なるほど、努力が報われない、というわけか…)
気の毒だが仕方ないことだな、とハーレイは思う。
ブルーの背丈を決めているのは、多分、神様だから。
「お前の気持ちは、分からないでもないんだが…」
子供時代を楽しめるよう、そうなんだろう、と諭してやる。
「育っちまったら、もう後戻りは出来ないしな」と。
「…粘り強さで、頑張れって?」
ちっともゴールが見えなくっても、とブルーは半ば諦め顔。
「大切なのは分かってるけど、たまに泣きそう…」
投げ出しちゃったら、ごめんなさい、と謝られた。
「ハーレイには悪いけど、チビのままかも…」
「投げ出すってか!?」
それは困る、とハーレイは慌てた。
もしもブルーが育たなくても、嫌いはならないけれども…。
「お前が育ってくれないことには、この先がだな…!」
俺も大変になっちまうぞ、と焦ると、ブルーが微笑んだ。
「そうでしょ? だったら、粘り強さを保てるように…」
励ましのキス、と注文をされたものだから…。
「馬鹿野郎!」
それとこれとは別件だ、とハーレイは軽く拳を握った。
ブルーの頭に、コツンとお見舞いするために。
粘り強さを投げ出されそうだとは、もう思わない。
(どうせ、こいつは、最初から…)
こうするつもりでいたんだしな、とブルーに、お仕置き。
「よくも騙してくれやがって」と、コッツンと。
「同情した分、馬鹿を見ちまった」と、呆れ顔で…。
粘り強さは・了
大切だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「粘り強さだって?」
今の話と繋がらないんだが、とハーレイはブルーを眺めた。
他愛ないことを話していたから、粘り強さの出番は無い。
「うん。…でも、思い付いた時には、質問でしょ?」
すっかり忘れてしまう前に、というブルーの言葉は正しい。
現にハーレイも、生徒たち授業中などに、よく言っている。
「質問があったら、直ぐに言えよ」と、口を酸っぱくして。
だから、ブルーにも頷くしかない。
「そうだな。忘れちまったら、駄目だからなあ…」
それで何を聞きたいんだ、とブルーの瞳を真っ直ぐに見る。
ブルーの意図が分からないだけに、気を引き締めて。
(…何度も、この手に引っ掛かったし…)
こいつの質問は、油断出来ん、とハーレイは既に経験済み。
真面目に答えてやった結果が、とんでもないことも数多い。
「…ハーレイ、ぼくを疑ってるよね…」
急に質問しちゃったから、とブルーに言われてハッとする。
(先入観ってヤツを、持ち過ぎてたか…)
疑ってかかるのは良くないよな、とハーレイは反省した。
経験則は役に立つけれど、頼り過ぎると失敗しがち。
「悪い、ついつい、思い込みでな」
すまん、と潔く頭を下げたら、ブルーはクスッと笑った。
「そう思われても、仕方ないけど…」
膨れていないで聞き直すのも、粘り強さ、とブルーは言う。
「粘り強さが皆無だったら、もう聞かないでしょ?」
「そりゃそうだ。馬鹿にされてる、と放り出してな」
粘り強さに感謝するぞ、とハーレイも大きく頷いた。
ブルーが投げ出してしまうタイプだったら、話はおしまい。
というわけで、振り出しに戻って、粘り強さの話になった。
「あのね…。さっきみたいなのも、そうなんだけど…」
諦めないでコツコツ努力は大事だよね、とブルーが尋ねる。
投げ出しちゃうより、粘り強さ、と真剣そうな瞳をして。
「うむ。たった今、証明されちまったし…」
他の面でも大事ではある、とハーレイはブルーを肯定した。
「お前には、あまり関係無さそうなんだが…」
勉強もスポーツも、粘り強さが重要だぞ、と説く。
「出来やしない、と放り出したら、それっきりだ」
勉強だったら置いて行かれて、スポーツなら負ける、と。
「そうだよね…。ぼくも毎日、頑張ってるもの」
まるで駄目だよ、と泣きそうでも、とブルーは苦笑した。
「諦めないでコツコツやっているよ」と、少し誇らしげに。
「…泣きそうだって?」
お前がなのか、とハーレイは鳶色の瞳を丸くする。
ブルーは、スポーツはともかく、優秀な生徒。
「まるで駄目だよ」と泣きそうになるとは思えない。
「…泣きそうだってば、毎日とまでは言わないけれど…」
毎日、牛乳、厳しいんだよ、とブルーの答えは奮っていた。
「紅茶に入れて飲んだ程度じゃ、足りないしね…」
朝御飯でも飲んで、頑張ってる、とブルーは自分を指差す。
「でないと、背丈が伸びないんだもの…」
だけど、ちっとも伸びてくれない、と深い溜息も零れ出た。
「一ミリさえも伸びないんだよ」と、ブルーが言う通り。
青い地球に生まれ変わって再会してから、背丈は同じまま。
ブルーの成長は止まってしまって、少しも伸びない。
(…なるほど、努力が報われない、というわけか…)
気の毒だが仕方ないことだな、とハーレイは思う。
ブルーの背丈を決めているのは、多分、神様だから。
「お前の気持ちは、分からないでもないんだが…」
子供時代を楽しめるよう、そうなんだろう、と諭してやる。
「育っちまったら、もう後戻りは出来ないしな」と。
「…粘り強さで、頑張れって?」
ちっともゴールが見えなくっても、とブルーは半ば諦め顔。
「大切なのは分かってるけど、たまに泣きそう…」
投げ出しちゃったら、ごめんなさい、と謝られた。
「ハーレイには悪いけど、チビのままかも…」
「投げ出すってか!?」
それは困る、とハーレイは慌てた。
もしもブルーが育たなくても、嫌いはならないけれども…。
「お前が育ってくれないことには、この先がだな…!」
俺も大変になっちまうぞ、と焦ると、ブルーが微笑んだ。
「そうでしょ? だったら、粘り強さを保てるように…」
励ましのキス、と注文をされたものだから…。
「馬鹿野郎!」
それとこれとは別件だ、とハーレイは軽く拳を握った。
ブルーの頭に、コツンとお見舞いするために。
粘り強さを投げ出されそうだとは、もう思わない。
(どうせ、こいつは、最初から…)
こうするつもりでいたんだしな、とブルーに、お仕置き。
「よくも騙してくれやがって」と、コッツンと。
「同情した分、馬鹿を見ちまった」と、呆れ顔で…。
粘り強さは・了
「ねえ、ハーレイ。復習するのは…」
大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「復讐だと!?」
また物騒な話だな、とハーレイは面食らった。
前のブルーも、そうだったけれど、今のブルーも大人しい。
(…こいつが、復讐するだって…?)
いったい何が起こったんだ、と鳶色の瞳を見開くしかない。
友人と喧嘩をしたにしたって、復讐というのは極端すぎる。
「おいおいおい…。そりゃ、大事かもしれないが…」
黙っていたんじゃダメなんだが…、とハーレイは説いた。
「しかし、仕返しするのは勧めないぞ」
他の手段を考えてみろ、とブルーの赤い瞳を覗き込む。
「仕返しされたら、相手も腹が立つからな」
やり返されてヒートアップだ、と諭してやる。
火に油を注ぐような真似はするな、とブルーを見詰めて。
「えっと…? ハーレイ、勘違いしていない?」
ぼくが言うのは復習だよ、とブルーは同じ言葉を口にした。
「確かに、響きはソックリだけど、予習の反対」
「…はあ?」
そっちなのか、とハーレイの目が真ん丸になる。
予習なら、今のブルーに似合いで、予習するから優等生。
(…しかしだな…)
復習も当然している筈なのに、思い付きさえしなかった。
(…だから、復讐だとばかり…)
すっかり勘違いしちまったんだ、とハーレイは苦笑する。
「復習の方で良かったよな」と、心の底からホッとして。
「悪かった、俺の勘違いだ」
お前だって復習するだろうに、とブルーに頭を下げる。
「俺が来る前に、宿題とセットで、熱心にな」
「うん。積み残したら、後で困っちゃうしね」
習って初めて、分かることもあるから、とブルーは笑んだ。
「予習してても、間違えちゃってる時もあるし」と。
今のブルーは優秀だけれど、失敗することもあるらしい。
「古典とかね」と、ペロリと舌を出した。
「前のぼくだと知らない言葉で、難しいから」と、正直に。
今のハーレイは、古典の教師。
ブルーが「予習していても、間違える」のが少し嬉しい。
前のブルーに教えたものは、生活の知識が多かった。
いわゆる「勉強」は、教える機会などは無かった。
(…ヒルマンとエラがいたからなあ…)
俺の知識じゃ敵わなかった、と認めざるを得ない昔のこと。
それが今度は、「教えてやれる」ものがドッサリ。
だからブルーに微笑み掛けた。
「なるほど、そっちの復習か…。大事なことだぞ」
古典は厄介な分野だしな、と脅してもみる。
「今は普通の文字で読めるわけだが、上の学校だと違うぞ」
「えっ?」
何があるの、と驚くブルーに教えてやった。
「うんと昔の頃は、書いてある文字が今と違うんだ」
文字は同じでも筆で流れるように書くとか…、と説明する。
「まだ平仮名が無くて、漢字ばかりとかな」
「ええ……」
そんなの、ぼくじゃ歯が立たないよ、とブルーは嘆いた。
「予習どころか、復習ばかりになっちゃいそう」と。
「そうなるな。俺も苦労をしたもんだ」
復習だけで精一杯で、とハーレイは肩を竦めてみせる。
「柔道と水泳がメインだったし、予習までは無理だ」とも。
「そうなんだ…。だけど、今では先生だよね」
復習はホントに大事みたい、とブルーは感心している様子。
「ハーレイ、古典の先生だもの」と尊敬に溢れた眼差しで。
「俺が実例というわけだ」
復習も大いに頑張れよ、とハーレイはブルーを激励した。
「予習するのも大事なんだが、復習もだ」と。
「分かった! それじゃ、復習しておかないと…」
困る前に、とブルーは立ち上がるから、勉強かもしれない。
帰宅してから時間が足りずに「積み残した」分の復習。
(よしよし、勉強するんだったら…)
休みの日でも頑張るべきだ、と思ったのだけれど…。
(…何なんだ、俺に質問か?)
積み残したヤツは古典なのか、と近付くブルーを眺める。
「教科書を持って来ればいいのに」と考えながら。
そうしたら…。
「キスの復習、しなくっちゃね!」
前のぼくしかしてないから、とブルーが顔を近付けて来た。
「いざという時、下手になってたら、困っちゃうでしょ?」
「馬鹿野郎!」
それが普通だ、とハーレイはブルーの顔を躱して睨んだ。
「いいか、世の中、普通は初心者ばかりなんだぞ!」
予習しているヤツもいなけりゃ、復習もだ、と叱り付ける。
「 そんな復習、しなくてもいい!」と、拳を軽く握った。
銀色の頭に一発お見舞いするために。
どうせブルーは懲りないけれど、けじめだから、と…。
復習するのは・了
大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「復讐だと!?」
また物騒な話だな、とハーレイは面食らった。
前のブルーも、そうだったけれど、今のブルーも大人しい。
(…こいつが、復讐するだって…?)
いったい何が起こったんだ、と鳶色の瞳を見開くしかない。
友人と喧嘩をしたにしたって、復讐というのは極端すぎる。
「おいおいおい…。そりゃ、大事かもしれないが…」
黙っていたんじゃダメなんだが…、とハーレイは説いた。
「しかし、仕返しするのは勧めないぞ」
他の手段を考えてみろ、とブルーの赤い瞳を覗き込む。
「仕返しされたら、相手も腹が立つからな」
やり返されてヒートアップだ、と諭してやる。
火に油を注ぐような真似はするな、とブルーを見詰めて。
「えっと…? ハーレイ、勘違いしていない?」
ぼくが言うのは復習だよ、とブルーは同じ言葉を口にした。
「確かに、響きはソックリだけど、予習の反対」
「…はあ?」
そっちなのか、とハーレイの目が真ん丸になる。
予習なら、今のブルーに似合いで、予習するから優等生。
(…しかしだな…)
復習も当然している筈なのに、思い付きさえしなかった。
(…だから、復讐だとばかり…)
すっかり勘違いしちまったんだ、とハーレイは苦笑する。
「復習の方で良かったよな」と、心の底からホッとして。
「悪かった、俺の勘違いだ」
お前だって復習するだろうに、とブルーに頭を下げる。
「俺が来る前に、宿題とセットで、熱心にな」
「うん。積み残したら、後で困っちゃうしね」
習って初めて、分かることもあるから、とブルーは笑んだ。
「予習してても、間違えちゃってる時もあるし」と。
今のブルーは優秀だけれど、失敗することもあるらしい。
「古典とかね」と、ペロリと舌を出した。
「前のぼくだと知らない言葉で、難しいから」と、正直に。
今のハーレイは、古典の教師。
ブルーが「予習していても、間違える」のが少し嬉しい。
前のブルーに教えたものは、生活の知識が多かった。
いわゆる「勉強」は、教える機会などは無かった。
(…ヒルマンとエラがいたからなあ…)
俺の知識じゃ敵わなかった、と認めざるを得ない昔のこと。
それが今度は、「教えてやれる」ものがドッサリ。
だからブルーに微笑み掛けた。
「なるほど、そっちの復習か…。大事なことだぞ」
古典は厄介な分野だしな、と脅してもみる。
「今は普通の文字で読めるわけだが、上の学校だと違うぞ」
「えっ?」
何があるの、と驚くブルーに教えてやった。
「うんと昔の頃は、書いてある文字が今と違うんだ」
文字は同じでも筆で流れるように書くとか…、と説明する。
「まだ平仮名が無くて、漢字ばかりとかな」
「ええ……」
そんなの、ぼくじゃ歯が立たないよ、とブルーは嘆いた。
「予習どころか、復習ばかりになっちゃいそう」と。
「そうなるな。俺も苦労をしたもんだ」
復習だけで精一杯で、とハーレイは肩を竦めてみせる。
「柔道と水泳がメインだったし、予習までは無理だ」とも。
「そうなんだ…。だけど、今では先生だよね」
復習はホントに大事みたい、とブルーは感心している様子。
「ハーレイ、古典の先生だもの」と尊敬に溢れた眼差しで。
「俺が実例というわけだ」
復習も大いに頑張れよ、とハーレイはブルーを激励した。
「予習するのも大事なんだが、復習もだ」と。
「分かった! それじゃ、復習しておかないと…」
困る前に、とブルーは立ち上がるから、勉強かもしれない。
帰宅してから時間が足りずに「積み残した」分の復習。
(よしよし、勉強するんだったら…)
休みの日でも頑張るべきだ、と思ったのだけれど…。
(…何なんだ、俺に質問か?)
積み残したヤツは古典なのか、と近付くブルーを眺める。
「教科書を持って来ればいいのに」と考えながら。
そうしたら…。
「キスの復習、しなくっちゃね!」
前のぼくしかしてないから、とブルーが顔を近付けて来た。
「いざという時、下手になってたら、困っちゃうでしょ?」
「馬鹿野郎!」
それが普通だ、とハーレイはブルーの顔を躱して睨んだ。
「いいか、世の中、普通は初心者ばかりなんだぞ!」
予習しているヤツもいなけりゃ、復習もだ、と叱り付ける。
「 そんな復習、しなくてもいい!」と、拳を軽く握った。
銀色の頭に一発お見舞いするために。
どうせブルーは懲りないけれど、けじめだから、と…。
復習するのは・了
「ねえ、ハーレイ。悪ガキよりも…」
いい子の方が得なのかな、と小さなブルーがぶつけた質問。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
今はそういう話じゃないが、とハーレイは面食らった。
子供時代の武勇伝を語っていたなら、聞かれそうではある。
けれど、話題は…。
(学校とかの話どころか、菓子の話で…)
接点がまるで見当たらない。
ブルーは「そうだね、お菓子は関係ないかも」と返した。
「だけど、もしかしたら関係あるのかな?」
悪ガキだと貰い損ねそう、というのがブルーの言い分。
お菓子を分けて配るような時、悪ガキは貰えないだとか。
「あー…。そりゃまあ、俺もたまには…」
貰えなかった時があったな、とハーレイは肩を竦めた。
「おふくろに、お預けを食らっちまって…」
次の日まで食えなかったんだ、と失敗談を白状する。
両親は菓子を食べているのに、ハーレイの分が無かった日。
「やっぱりね…」
いい子の方がいいのかも、とブルーは可笑しそうに笑った。
「ハーレイにだって、覚えがあるんだから」と。
「うーむ…。その点については、否定出来んが…」
一概にそうとも言い切れないぞ、とハーレイは腕組みする。
「悪ガキの方が得をするのも、たまにはな」と大真面目に。
「そうなの? 損ばかりしていそうなんだけど…」
学校でだって叱られてるし、とブルーは不思議そうな顔。
「悪戯した子は、大目玉だよ」と実例を挙げて。
黒板に落書きした子は掃除当番、他にも色々、と数多い例。
「そういった輩には、当然の罰というヤツだな」
自業自得と言うだろうが、とハーレイは大きく頷いた。
「その手のヤツは罰を受けるが、悪さの方向性でだ…」
結果は変わって来るんだぞ、とブルーに昔話をしてやった。
悪ガキだった子供時代に、ご近所の家で柿を盗もうとした。
「生垣を抜けて入って、木に登ってたら…」
「その家の人に見付かったわけ?」
「よりにもよって、頑固爺にな」
思い切り雷が落ちたんだが…、とハーレイは続ける。
「爺さん、木には登るな、脆いから折れるぞ、と…」
説教してから、柿の実をもいでくれたんだ、と思い出話。
「美味いんだぞ」と土産用にも分けて貰って帰った、と。
ハーレイを叱った頑固爺は、クソ度胸のガキに優しかった。
「ワシを怖がって誰も来んのに、いい度胸だ」と。
柿の木が脆くて折れる話も、脅しではなくて本当のこと。
誰も登りに来ないだろうと思っていたから、放ってあった。
「お前さんみたいなヤツが来るなら、看板だな」とも。
翌日の朝には、もう注意書きが出来ていたという。
「危ない! 折れるから、木には登らない!」という札。
札は柿の木にぶら下げてあって、家の玄関に張り紙が一枚。
「柿の実、食べ頃です。欲しい人は声を掛けて下さい」と。
それが切っ掛けになって、柿の実を貰いに行く子が出来た。
札は年中ぶら下がったままで、柿の季節は玄関先に張り紙。
頑固爺の家は、以来、子供に人気だったらしい。
柿を貰いに行った子供を、頑固爺は忘れなかった。
他の季節に通り掛かったら、菓子をくれたり、親切だった。
つまり、ハーレイは、「頑固爺の家」を新規開拓。
暑い盛りにはジュースも貰える、子供の人気スポットを。
「いいか? あの時、俺が盗みに行かなかったら…」
頑固爺の家は怖いままだぞ、とハーレイは得意げに語る。
「菓子やジュースを貰うことなど、誰も思わん」と。
「…ホントだね…。悪ガキでないと、出来ないよね…」
いい子だったら盗まないし、とブルーは瞳を丸くしている。
「悪ガキの方が得をするのも、ちゃんとあるんだ」とも。
「分かったか? お前の場合は、いい子の方だから…」
得をする日は来そうにもないな、とハーレイは笑う。
「それとも、悪さに挑戦してみるか?」と、ニヤニヤと。
「悪さって、ぼくが?」
「木に登れとは言わないがな」
悪ガキの世界もいいもんだぞ、と「お得な話」を披露する。
叱られる代わりに、美味しい結果が待っていた例を。
そうしたら…。
「分かった、ハーレイ、悪ガキがオススメなんだね?」
やってみる、とブルーは椅子から立ち上がった。
「悪ガキだったら、コレもアリでしょ」と、近付いて来る。
「ハーレイがキスをくれないんなら、ぼくが強奪!」
貰っちゃうね、とブルーの顔が迫って、ハーレイは唸った。
「馬鹿野郎!」
その悪ガキは叱られる方だ、とブルーを一喝、払いのける。
「雷、落ちて当然だからな!」
嫌というほど説教だ、と椅子に座らせ、銀色の頭をコツン。
拳で軽く一発お見舞い、それから長い説教の時間。
ブルーが必死に言い訳しても、聞きもしないで。
「ごめんなさい!」と詫びを入れても、放っておいて説教。
悪ガキには似合いの時間なのだし、今日の所はそれでいい。
ブルーが自分で選んだ以上は、悪ガキ仕様で…。
悪ガキよりも・了
いい子の方が得なのかな、と小さなブルーがぶつけた質問。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
今はそういう話じゃないが、とハーレイは面食らった。
子供時代の武勇伝を語っていたなら、聞かれそうではある。
けれど、話題は…。
(学校とかの話どころか、菓子の話で…)
接点がまるで見当たらない。
ブルーは「そうだね、お菓子は関係ないかも」と返した。
「だけど、もしかしたら関係あるのかな?」
悪ガキだと貰い損ねそう、というのがブルーの言い分。
お菓子を分けて配るような時、悪ガキは貰えないだとか。
「あー…。そりゃまあ、俺もたまには…」
貰えなかった時があったな、とハーレイは肩を竦めた。
「おふくろに、お預けを食らっちまって…」
次の日まで食えなかったんだ、と失敗談を白状する。
両親は菓子を食べているのに、ハーレイの分が無かった日。
「やっぱりね…」
いい子の方がいいのかも、とブルーは可笑しそうに笑った。
「ハーレイにだって、覚えがあるんだから」と。
「うーむ…。その点については、否定出来んが…」
一概にそうとも言い切れないぞ、とハーレイは腕組みする。
「悪ガキの方が得をするのも、たまにはな」と大真面目に。
「そうなの? 損ばかりしていそうなんだけど…」
学校でだって叱られてるし、とブルーは不思議そうな顔。
「悪戯した子は、大目玉だよ」と実例を挙げて。
黒板に落書きした子は掃除当番、他にも色々、と数多い例。
「そういった輩には、当然の罰というヤツだな」
自業自得と言うだろうが、とハーレイは大きく頷いた。
「その手のヤツは罰を受けるが、悪さの方向性でだ…」
結果は変わって来るんだぞ、とブルーに昔話をしてやった。
悪ガキだった子供時代に、ご近所の家で柿を盗もうとした。
「生垣を抜けて入って、木に登ってたら…」
「その家の人に見付かったわけ?」
「よりにもよって、頑固爺にな」
思い切り雷が落ちたんだが…、とハーレイは続ける。
「爺さん、木には登るな、脆いから折れるぞ、と…」
説教してから、柿の実をもいでくれたんだ、と思い出話。
「美味いんだぞ」と土産用にも分けて貰って帰った、と。
ハーレイを叱った頑固爺は、クソ度胸のガキに優しかった。
「ワシを怖がって誰も来んのに、いい度胸だ」と。
柿の木が脆くて折れる話も、脅しではなくて本当のこと。
誰も登りに来ないだろうと思っていたから、放ってあった。
「お前さんみたいなヤツが来るなら、看板だな」とも。
翌日の朝には、もう注意書きが出来ていたという。
「危ない! 折れるから、木には登らない!」という札。
札は柿の木にぶら下げてあって、家の玄関に張り紙が一枚。
「柿の実、食べ頃です。欲しい人は声を掛けて下さい」と。
それが切っ掛けになって、柿の実を貰いに行く子が出来た。
札は年中ぶら下がったままで、柿の季節は玄関先に張り紙。
頑固爺の家は、以来、子供に人気だったらしい。
柿を貰いに行った子供を、頑固爺は忘れなかった。
他の季節に通り掛かったら、菓子をくれたり、親切だった。
つまり、ハーレイは、「頑固爺の家」を新規開拓。
暑い盛りにはジュースも貰える、子供の人気スポットを。
「いいか? あの時、俺が盗みに行かなかったら…」
頑固爺の家は怖いままだぞ、とハーレイは得意げに語る。
「菓子やジュースを貰うことなど、誰も思わん」と。
「…ホントだね…。悪ガキでないと、出来ないよね…」
いい子だったら盗まないし、とブルーは瞳を丸くしている。
「悪ガキの方が得をするのも、ちゃんとあるんだ」とも。
「分かったか? お前の場合は、いい子の方だから…」
得をする日は来そうにもないな、とハーレイは笑う。
「それとも、悪さに挑戦してみるか?」と、ニヤニヤと。
「悪さって、ぼくが?」
「木に登れとは言わないがな」
悪ガキの世界もいいもんだぞ、と「お得な話」を披露する。
叱られる代わりに、美味しい結果が待っていた例を。
そうしたら…。
「分かった、ハーレイ、悪ガキがオススメなんだね?」
やってみる、とブルーは椅子から立ち上がった。
「悪ガキだったら、コレもアリでしょ」と、近付いて来る。
「ハーレイがキスをくれないんなら、ぼくが強奪!」
貰っちゃうね、とブルーの顔が迫って、ハーレイは唸った。
「馬鹿野郎!」
その悪ガキは叱られる方だ、とブルーを一喝、払いのける。
「雷、落ちて当然だからな!」
嫌というほど説教だ、と椅子に座らせ、銀色の頭をコツン。
拳で軽く一発お見舞い、それから長い説教の時間。
ブルーが必死に言い訳しても、聞きもしないで。
「ごめんなさい!」と詫びを入れても、放っておいて説教。
悪ガキには似合いの時間なのだし、今日の所はそれでいい。
ブルーが自分で選んだ以上は、悪ガキ仕様で…。
悪ガキよりも・了
「ねえ、ハーレイ。諦めないのは…」
大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「ん? 急にどうした?」
何かあるのか、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
「お前のことだし、宿題とかではないんだろうが…」
早めにやっちまうことはあっても、とハーレイは尋ねる。
ブルーが「諦めたくなる」ような何かが、あるのかと。
「ううん、そういう話じゃなくって…」
考え方の問題かな、とブルーは首を軽く傾げた。
「宿題とかでも、そうなんだけど…」
いろんな物に壁があるよね、とブルーは続ける。
「勉強もそうだし、運動とかでも、壁にぶつかる時…」
そういう時にどうするのか、と挙げられた例。
諦めないで努力すべきか、投げ出してしまっていいのか。
「どっちだと思う?」
ぼくは諦めない方がいいと思うけど、というのが質問。
「ふうむ…。一般論というヤツを聞きたいんだな?」
「そう。ケースバイケース、とは言うけどね…」
傾向としては、どっちが正しいのかな、とブルーは真剣。
努力が無駄になったとしても、頑張るべきか、と。
「なるほどなあ…。無駄骨ってこともあるわけで…」
運動なんかは、特にそうだな、とハーレイは正直に頷いた。
「勉強だったら、努力次第で、多少、時間がかかっても…」
結果を出せることは多いんだが…、と腕組みをする。
頭の出来は色々だけに、理解に時間がかかる生徒も多い。
とはいえ、「理解出来た」ことは忘れないから、報われる。
それまで意味が掴めなかった数式なども、きちんと解ける。
「しかしだな…。運動の場合は、個人の資質が大きくて…」
努力したって結果が出るとは限らんぞ、とフウと溜息。
実際、身体を壊すくらいに練習したって、駄目な子もいる。
柔道部で教える生徒たちでも、その点は注意しておくべき。
「線引きというのは、したくないんだが…」
諦めさせてることも多いんだ、とハーレイは説明した。
「本人は、うんとやる気があって、練習量を…」
増やしたいとか行って来るんだがな、と顔を曇らせる。
「ハーレイ、諦めさせてるの?」
「そりゃそうだろう。出来ないことは、出来んしな…」
長年やってりゃ分かるモンだ、と柔道のことを説いてやる。
「どう頑張っても無理なヤツには、させちゃいけない」
「怪我しちゃう、って?」
「分かってくれたか? 言われたヤツは、引かないがな…」
怪我をするぞ、と言っても聞かん、とハーレイは苦笑した。
「勝手に自主練しに来ちまって、怪我をするヤツも…」
「いたりするわけ?」
「残念ながら、その通りでな…」
力量不足とか以前なんだが、というハーレイの悩みの種。
「諦めるべき時には、諦めて欲しい」と、両手を広げて。
「でないと、俺の仕事が増えるってわけだ」
病院まで連れてって、家まで送って…、とブルーに話す。
「たまに、お前が困るヤツだな」と、オマケもつけた。
「そっか、ハーレイが帰りに寄ってくれない日…」
アレの原因、そういうのなんだ、とブルーの瞳が瞬いた。
「確かに困るね、諦めてくれた方がいいんだけど…」
「そう思うだろ? 一般論とは正反対だが…」
諦めが肝心なこともある、とハーレイは軽く肩を竦めた。
「教師としては、努力を説きたいがな」と。
「そうだよね…。やっぱり努力が一番だもんね…」
諦めろなんて言いにくそう、とブルーも相槌を打った。
「普段、教室で言ってることとは、逆なんだもの…」
「言わされる方は、本当に辛いんだぞ…」
ついでに生徒に恨まれちまうし、とハーレイは零した。
「分からず屋だと思われちまって、挙句に怪我な有様で…」
「…大変なんだね、先生って…」
頑張ってね、とブルーはハーレイを励ました。
「そういう生徒でも、諦めないで対応してあげてよ」と。
「すまんな、愚痴になっちまった」
一般論の方が良かったな、とハーレイはブルーに謝った。
「まあ、アレだ。諦めないのは、大事ってことで…」
「ぼくが尋ねた方で合ってる?」
「お前の場合は、柔道部員じゃないからな」
特殊なケースは放っておけ、と笑みを浮かべる。
「諦めないで、コツコツ努力するのが一番だぞ」
大抵は…、と言ったら、ブルーも、ニッコリと笑んだ。
「分かった、ぼくも諦めないよ!」
ハーレイにキスをして貰うのを、とブルーは勝ち誇った顔。
「それは努力をしていいんでしょ?」と。
(…そう来たか!)
騙されたぞ、とハーレイはグッと詰まって、拳を握る。
真面目に話してやっていたのに、ブルーの狙いは別だった。
「馬鹿野郎!」
そんな努力はしなくていい、と銀色の頭に拳をコツン。
「諦めちまえ」と、「頭に怪我をさせられる前にな」と…。
諦めないのは・了
大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「ん? 急にどうした?」
何かあるのか、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
「お前のことだし、宿題とかではないんだろうが…」
早めにやっちまうことはあっても、とハーレイは尋ねる。
ブルーが「諦めたくなる」ような何かが、あるのかと。
「ううん、そういう話じゃなくって…」
考え方の問題かな、とブルーは首を軽く傾げた。
「宿題とかでも、そうなんだけど…」
いろんな物に壁があるよね、とブルーは続ける。
「勉強もそうだし、運動とかでも、壁にぶつかる時…」
そういう時にどうするのか、と挙げられた例。
諦めないで努力すべきか、投げ出してしまっていいのか。
「どっちだと思う?」
ぼくは諦めない方がいいと思うけど、というのが質問。
「ふうむ…。一般論というヤツを聞きたいんだな?」
「そう。ケースバイケース、とは言うけどね…」
傾向としては、どっちが正しいのかな、とブルーは真剣。
努力が無駄になったとしても、頑張るべきか、と。
「なるほどなあ…。無駄骨ってこともあるわけで…」
運動なんかは、特にそうだな、とハーレイは正直に頷いた。
「勉強だったら、努力次第で、多少、時間がかかっても…」
結果を出せることは多いんだが…、と腕組みをする。
頭の出来は色々だけに、理解に時間がかかる生徒も多い。
とはいえ、「理解出来た」ことは忘れないから、報われる。
それまで意味が掴めなかった数式なども、きちんと解ける。
「しかしだな…。運動の場合は、個人の資質が大きくて…」
努力したって結果が出るとは限らんぞ、とフウと溜息。
実際、身体を壊すくらいに練習したって、駄目な子もいる。
柔道部で教える生徒たちでも、その点は注意しておくべき。
「線引きというのは、したくないんだが…」
諦めさせてることも多いんだ、とハーレイは説明した。
「本人は、うんとやる気があって、練習量を…」
増やしたいとか行って来るんだがな、と顔を曇らせる。
「ハーレイ、諦めさせてるの?」
「そりゃそうだろう。出来ないことは、出来んしな…」
長年やってりゃ分かるモンだ、と柔道のことを説いてやる。
「どう頑張っても無理なヤツには、させちゃいけない」
「怪我しちゃう、って?」
「分かってくれたか? 言われたヤツは、引かないがな…」
怪我をするぞ、と言っても聞かん、とハーレイは苦笑した。
「勝手に自主練しに来ちまって、怪我をするヤツも…」
「いたりするわけ?」
「残念ながら、その通りでな…」
力量不足とか以前なんだが、というハーレイの悩みの種。
「諦めるべき時には、諦めて欲しい」と、両手を広げて。
「でないと、俺の仕事が増えるってわけだ」
病院まで連れてって、家まで送って…、とブルーに話す。
「たまに、お前が困るヤツだな」と、オマケもつけた。
「そっか、ハーレイが帰りに寄ってくれない日…」
アレの原因、そういうのなんだ、とブルーの瞳が瞬いた。
「確かに困るね、諦めてくれた方がいいんだけど…」
「そう思うだろ? 一般論とは正反対だが…」
諦めが肝心なこともある、とハーレイは軽く肩を竦めた。
「教師としては、努力を説きたいがな」と。
「そうだよね…。やっぱり努力が一番だもんね…」
諦めろなんて言いにくそう、とブルーも相槌を打った。
「普段、教室で言ってることとは、逆なんだもの…」
「言わされる方は、本当に辛いんだぞ…」
ついでに生徒に恨まれちまうし、とハーレイは零した。
「分からず屋だと思われちまって、挙句に怪我な有様で…」
「…大変なんだね、先生って…」
頑張ってね、とブルーはハーレイを励ました。
「そういう生徒でも、諦めないで対応してあげてよ」と。
「すまんな、愚痴になっちまった」
一般論の方が良かったな、とハーレイはブルーに謝った。
「まあ、アレだ。諦めないのは、大事ってことで…」
「ぼくが尋ねた方で合ってる?」
「お前の場合は、柔道部員じゃないからな」
特殊なケースは放っておけ、と笑みを浮かべる。
「諦めないで、コツコツ努力するのが一番だぞ」
大抵は…、と言ったら、ブルーも、ニッコリと笑んだ。
「分かった、ぼくも諦めないよ!」
ハーレイにキスをして貰うのを、とブルーは勝ち誇った顔。
「それは努力をしていいんでしょ?」と。
(…そう来たか!)
騙されたぞ、とハーレイはグッと詰まって、拳を握る。
真面目に話してやっていたのに、ブルーの狙いは別だった。
「馬鹿野郎!」
そんな努力はしなくていい、と銀色の頭に拳をコツン。
「諦めちまえ」と、「頭に怪我をさせられる前にな」と…。
諦めないのは・了