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ハーレイ日和

(いい天気…!)
 今日も晴れてる、とブルーが開けた窓のカーテン。
 とうに昇った真夏の太陽、抜けるような青空が広がる朝。
 こんな日はきっと…。
(ハーレイ、歩いて来てくれるんだよ)
 何ブロックも離れた場所から、ブルーの足では歩けそうもない遠くから。
 ハーレイの家は其処にあるから、其処で暮らしているのだから。


 夏休みに入って会える日が増えた、平日でもハーレイと会えるようになった。
 それが嬉しくて早く覚める目、目覚まし時計の出番が無くなるほどに。
 鳴るよりも前に起きてしまって、もう要らないと止めるくらいに。
 今朝も早くにパチリと覚めた目、一番に眺めた窓の方。
 カーテンの向こうの明るさからして、多分、晴れだと思ったけれど。
 隙間から射した光の筋にも気付いたけれども、確かめたいから。
 ベッドから下りてカーテンを開けた、晴れているかと。
 空は青いかと、雲など湧いてはいないだろうかと。


 そうして開けてみたカーテンの向こう、眩しい太陽があったから。
 爽やかに晴れた夏空だったから、大満足で。
(ハーレイと庭でお茶が飲めるよ)
 庭で一番大きな木の下、其処に置かれたテーブルと椅子でデートが出来る。
 ハーレイが作ってくれた場所。
 見付けてくれた素敵な場所。
 此処でデートだと、持って来てくれたキャンプ用のテーブルと椅子が気に入ったから。
 ハーレイと初めてデートが出来たと嬉しかったから、今も好きな場所。
 キャンプ用だったテーブルと椅子は、別の物に変わってしまったけれど。
 父が買ってくれた白いテーブルと椅子が、いつも置かれているのだけれど。


 今日もデートだと、ハーレイと庭でお茶にしようと浮き立つ心。
 ハーレイに意外にも似合う白い椅子、それからテーブル。
 前の生で暮らした白いシャングリラと同じに白いからなのだろうか。
 ハーレイには白が似合うのだろうか、褐色の肌を引き立てるから。
 学校で着ていた白いワイシャツも良く似合っていた、今から思えば。
 夏休みの今はワイシャツを着ては来ないけれども、白い半袖シャツの日もあって。
 そういうシャツも似合っていたな、と庭を見ながら考えていて…。


(ハーレイ、夏が似合うんだよね)
 似合うといえば、と思い浮かべる、夏の日射しが似合う恋人を。
 木漏れ日が射す木陰の白い椅子も似合うけれども、それよりも夏。
 テーブルと椅子が置かれた場所まで歩く途中の夏の庭。
 眩い陽の光を浴びて其処を歩いてゆくハーレイの肌も、大きな身体も夏そのもので。
 そんな気がする、ハーレイは夏だと。


 前に誕生日を尋ねてみた時、「当ててみろ」などと言われたけれど。
 その時も夏が似合う気がして、そう答えたら正解で。
 八月の二十八日に生まれたハーレイ、夏の日射しが似合うハーレイ。
 じりじりと肌を焦がす熱さも、痛いくらいに強い日射しも。
 夏だと思ってしまうハーレイ、夏の暑さにも負けないハーレイ。


 今日のように午前中からやって来るなら、暑さも酷くはないけれど。
 歩いて来たって負担は少なくなりそうだけれど、そうでない日も歩くハーレイ。
 柔道部の指導に学校へ行って、午後から訪ねて来る時も。
 学校から此処まで日盛りの道を、帽子の一つも被りもせずに。
 照り付ける真夏の太陽の下をハーレイは歩く、苦にもしないで。
 ちっとも大したことなどはないと、夏は暑くて当然だろうと。


 夏でも雨は降るけれど。
 曇りの日だってあるのだけれども、ハーレイには明るい太陽が似合う。
 晴れた日が似合う、今日みたいに。
 朝からカラリと晴れている日が、雨とも雲とも縁の無い日が。
(白い雲なら似合うんだけどね?)
 夏空に浮かぶ白い雲。
 むくむくと聳え立つ入道雲でも、ずっと遠くで湧いたものなら似合うと思う。
 雨を運んで来られない場所に聳えた雲なら、空の青さを引き立てるから。
 夏ならではの力強さを感じさせてくれる雲だから。


(ハーレイ日和…)
 ふっと心を言葉が掠めた、「ハーレイ日和」と。
 晴れた日を指す言葉が「日和」で、色々なものに繋がる言葉で。
 小春日和に、行楽日和。
 他にも幾つも、いろんな日和。
 今日のような日は「ハーレイ日和」だと思ってしまった、ハーレイに似合う晴れた夏の日。
 こんな日がきっとハーレイ日和、と。


 ハーレイが歩いて来てくれるだろう、雨など少しも降りそうにない日。
 入道雲が湧いたとしたって、遠くで夕立になるだけで。
 今日はそういう日なのだと思う、ハーレイに似合いの夏の一日、と。
 そんな予感がしてくる青空、雲の欠片も見当たらない空。
(うん、きっとハーレイ日和なんだよ)
 今日はそういうお天気の日、と心で呟く、「ハーレイ日和」と。
 ハーレイにとても似合う夏の日、こういう日はきっとハーレイ日和、と。


 もう少ししたら、朝食が済んだら、ハーレイが歩いてやって来る。
 何ブロックも離れた場所から、ハーレイ日和の夏空の下を。
 自分の足では歩けそうもない距離を、ものともせずに。
 「今日は暑いな」と口で言いはしても、汗の一つも浮かべもせずに。
 だからハーレイには夏が良く似合う、暑い夏はハーレイの季節だと思う。
 ハーレイ日和はこんな夏の日、晴れ渡って雲の欠片も無い日。
 雲が湧くならずっと遠くに高い入道雲、むくむくと盛り上がる力強い雲。
 それがハーレイ日和だと思う、ハーレイに似合う晴れた夏の日。


(今日はハーレイ日和だよね?)
 きっとそうだ、と窓の向こうの空を見上げて、声に出してみる。
 「ハーレイ日和」と。
 そうしたらドキンと跳ね上がった心、素敵な響きの「ハーレイ日和」。
 ハーレイが歩いてやって来るのにピッタリの晴れの日、夏の日射しが眩しい日。
 空までがハーレイのような気がした、「ハーレイ日和」と言ってみただけで。
 世界の全部が丸ごとハーレイ、まるですっぽりと包まれたように。
 今日は丸ごとハーレイの日だと、ハーレイみたいな天気だから、と。


 ハーレイに似合う日、ハーレイ日和。
 真夏の太陽が明るく射す日で、雲の一つも無い青空。
 雲を浮かべるなら遠い所に高い入道雲、この辺りに雨を運ばない場所に。
 抜けるような空と、力強い雲と、そんな天気がハーレイ日和。
 きっとそうだと、とても素敵な思い付きだと、窓の向こうを眺めるけれど。
 いい言葉だと思うけれども、それをハーレイに言ったなら…。


(…笑われちゃう?)
 ハーレイは古典の教師だから。
 言わば言葉のプロのようなもので、「日和」にも詳しそうだから。
 「なんだ、そいつは」と呆れられそうで、訂正なんかもされそうで。
(…ありそうだよね…)
 ハーレイ日和などありはしないと、日和という言葉はそういう風には使わないと。
 お前の使い方は間違っていると、その場で授業が始まりそうで。
 せっかく二人でデートをしようと思っているのに、庭のテーブルにも出られそうになくて。
(そこの辞典を持って来い、って言われるんだよ)
 辞典で日和を調べてみろと、使用例もきちんとチェックしろと。
 古典の教師のハーレイが登場、恋人のハーレイは何処かへ引っ込んでしまいそうだから。


(ハーレイ日和は内緒にしなくちゃ…)
 ぼくだけの言葉、と胸に仕舞った、こっそり一人で使っておこうと。
 授業は御免蒙りたいから、ハーレイと楽しく過ごしたいから。
 今日はハーレイ日和なのだし、庭のテーブルと椅子とでデート。
 そうするためにも内緒にせねば、と「ハーレイ日和」を仕舞い込む。
 ぼくだけの秘密のハーレイ日和、と…。

 

         ハーレイ日和・了


※ブルー君が考えた「ハーレイ日和」。よく晴れた夏の日がハーレイ日和ですけれど…。
 内緒にしておくブルー君です、「ブルー日和」があると知ったらビックリでしょうねv

※当サイトのペットのウィリアム君。本日で生後801日になりました!
 「801」です、「ハーレイの日」です。
 お祝いにショートを上げました。ブルー君のお話ですけどねv






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