過保護にするのは
「ねえ、ハーレイ。過保護にするのは…」
良くないよね、と小さなブルーが、ぶつけた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 過保護って…?」
お前の場合は違うだろう、とハーレイは直ぐに返した。
今のブルーも、前と同じに虚弱体質。
必然的に、両親が手を掛けて世話をすることになる。
「お前、身体が弱いんだからな?」
お母さんたちは過保護ではない、と諭すように説明した。
束縛されているように感じるとしても、それは違う、と。
「いいか、お母さんたちは、お前のことを考えて…」
「分かってるってば、そうじゃなくって…」
一般論の話なんだよ、とブルーは少し困った顔をしている。
「ぼくも確かに、過保護っぽいけれどね」と。
「すまん、別件だったんだな?」
勘違いをして悪かった、とハーレイは詫びた。
ブルーの問いが急だっただけに、早とちりした、と潔く。
「きちんと聞いてから、答えるべきだった…」
「ううん、ちっとも。ぼくの方にも、非があるんだし」
それでね、とブルーは話を元に戻した。
「過保護にする人、少なくないけど、どう思う?」
「うーむ…。前の俺たちの時代とは違うからなあ…」
マニュアル通りの育児じゃないぞ、とハーレイは首を捻る。
SD体制の時代だったら、育児は違った。
機械が教えたマニュアル通りに育てるだけで、子は育った。
ついでに言うなら、実子ではなくて、養子を育てた世界。
「そうだね…。自分の子供だと、うんと事情が…」
変わっちゃうよね、とブルーは大きく頷いた。
「カリナなんかは、そのせいで命を落としちゃった」とも。
カリナは、過保護だったわけではない。
ただ、愛情が深くて大きすぎた。
トォニィを失ったと思い込んだせいで、自分を追い込んだ。
前のハーレイは、ブルーと違って、現場を見ている。
だから「そうだったな…」と深い溜息を零すことになった。
「カリナの場合は、少し違うが、過保護すぎて…」
子供も自分も縛っちまう親は確かにいる、とフウと溜息。
「その点については、機械も悪くはなかったかもな」とも。
「やっぱり? 相談役で、アドバイザーだったしね…」
育児についてのプロだったよ、とブルーも頷く。
「もしも機械が今もあったら、過保護、ダメかな?」
「そうなるだろう。ユニバーサルからの、お呼び出しで…」
子育て方針を指導されるな、とハーレイは苦笑する。
「もっと手抜きを」と、テラズナンバー直々の仰せだ、と。
「そっか、ハーレイの考え、ぼくと同じなんだね?」
「そうだな、過保護は良くない。事情にもよるんだが…」
お前の場合は違うわけだし、安心しろ、と太鼓判を押した。
「大丈夫だから、今まで通りでいていいんだ」と。
「でも…。それは身体が弱いって部分だけでさ…」
他の部分は普通なんだし、とブルーは真剣な表情になった。
「ぼくに過保護なのは、ハーレイなんだし…」
「はあ? 俺が過保護に扱ってるのも…」
お母さんたちと同じ事情だ、とハーレイは即座に否定する。
「病気の時に野菜スープを作ってやるのも、その一つだぞ」
「そうじゃなくって、子供扱い…」
キスをするには早すぎるって、とブルーは唇を尖らせた。
「過保護だと思う」と、赤い瞳で睨み付けて。
「ぼくの中身は、前と全く同じなのに」と、恨みがましく。
(そう来やがったか…!)
今日もやられた、とハーレイは拳を軽く握った。
「馬鹿野郎! その件にしても、過保護ではない!」
今のお前は子供なんだし、俺は正しい、とブルーを叱る。
「お前に自覚が無いというだけで、充分、子供だ!」
過保護と違って配慮だしな、と銀色の頭をコツンと叩いた。
「勘違いするな」と、罠にはめようとした「悪い子供」を。
計略だけは一人前な「今のブルー」に、お仕置きとして…。
過保護にするのは・了
良くないよね、と小さなブルーが、ぶつけた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 過保護って…?」
お前の場合は違うだろう、とハーレイは直ぐに返した。
今のブルーも、前と同じに虚弱体質。
必然的に、両親が手を掛けて世話をすることになる。
「お前、身体が弱いんだからな?」
お母さんたちは過保護ではない、と諭すように説明した。
束縛されているように感じるとしても、それは違う、と。
「いいか、お母さんたちは、お前のことを考えて…」
「分かってるってば、そうじゃなくって…」
一般論の話なんだよ、とブルーは少し困った顔をしている。
「ぼくも確かに、過保護っぽいけれどね」と。
「すまん、別件だったんだな?」
勘違いをして悪かった、とハーレイは詫びた。
ブルーの問いが急だっただけに、早とちりした、と潔く。
「きちんと聞いてから、答えるべきだった…」
「ううん、ちっとも。ぼくの方にも、非があるんだし」
それでね、とブルーは話を元に戻した。
「過保護にする人、少なくないけど、どう思う?」
「うーむ…。前の俺たちの時代とは違うからなあ…」
マニュアル通りの育児じゃないぞ、とハーレイは首を捻る。
SD体制の時代だったら、育児は違った。
機械が教えたマニュアル通りに育てるだけで、子は育った。
ついでに言うなら、実子ではなくて、養子を育てた世界。
「そうだね…。自分の子供だと、うんと事情が…」
変わっちゃうよね、とブルーは大きく頷いた。
「カリナなんかは、そのせいで命を落としちゃった」とも。
カリナは、過保護だったわけではない。
ただ、愛情が深くて大きすぎた。
トォニィを失ったと思い込んだせいで、自分を追い込んだ。
前のハーレイは、ブルーと違って、現場を見ている。
だから「そうだったな…」と深い溜息を零すことになった。
「カリナの場合は、少し違うが、過保護すぎて…」
子供も自分も縛っちまう親は確かにいる、とフウと溜息。
「その点については、機械も悪くはなかったかもな」とも。
「やっぱり? 相談役で、アドバイザーだったしね…」
育児についてのプロだったよ、とブルーも頷く。
「もしも機械が今もあったら、過保護、ダメかな?」
「そうなるだろう。ユニバーサルからの、お呼び出しで…」
子育て方針を指導されるな、とハーレイは苦笑する。
「もっと手抜きを」と、テラズナンバー直々の仰せだ、と。
「そっか、ハーレイの考え、ぼくと同じなんだね?」
「そうだな、過保護は良くない。事情にもよるんだが…」
お前の場合は違うわけだし、安心しろ、と太鼓判を押した。
「大丈夫だから、今まで通りでいていいんだ」と。
「でも…。それは身体が弱いって部分だけでさ…」
他の部分は普通なんだし、とブルーは真剣な表情になった。
「ぼくに過保護なのは、ハーレイなんだし…」
「はあ? 俺が過保護に扱ってるのも…」
お母さんたちと同じ事情だ、とハーレイは即座に否定する。
「病気の時に野菜スープを作ってやるのも、その一つだぞ」
「そうじゃなくって、子供扱い…」
キスをするには早すぎるって、とブルーは唇を尖らせた。
「過保護だと思う」と、赤い瞳で睨み付けて。
「ぼくの中身は、前と全く同じなのに」と、恨みがましく。
(そう来やがったか…!)
今日もやられた、とハーレイは拳を軽く握った。
「馬鹿野郎! その件にしても、過保護ではない!」
今のお前は子供なんだし、俺は正しい、とブルーを叱る。
「お前に自覚が無いというだけで、充分、子供だ!」
過保護と違って配慮だしな、と銀色の頭をコツンと叩いた。
「勘違いするな」と、罠にはめようとした「悪い子供」を。
計略だけは一人前な「今のブルー」に、お仕置きとして…。
過保護にするのは・了
PR
COMMENT
- <<やり直すなら
- | HOME |
- 飽きられちゃったら>>
