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毎日が幸せ

「ふふっ、幸せ」
 テーブルを挟んで向かい合わせに座ったブルーが、微笑むから。
 それは幸せそうな顔で言うから、ハーレイは訊いた。
「幸せって…。今日は何かいいこと、あったか?」
「あるよ、毎日」
「毎日?」
「そう、毎日。毎日、幸せ」
 うんと幸せ、とブルーの笑顔が弾ける。
 子供らしい顔で、十四歳の子供の愛らしい顔で。

 
 前の生では遠い記憶の彼方にある顔。
 アルタミラからの脱出直後のブルーがこういう顔立ちだった。
 けれども、ブルーは幸せそうに笑っただろうか?
 こうも幸せそうに笑っていたか、と考えてみても思い出せない。
 笑顔のブルーは見たのだろうけども、此処まで幸せそうだったか。
 毎日が幸せと言うほどにブルーは幸せだったか、と。

 
「お前、そんなに幸せなのか?」
「そうだよ、ハーレイは幸せじゃないの?」
 だってハーレイと一緒なんだよ、とブルーの赤い瞳が輝く。
 ハーレイと一緒に地球に居るのだと、毎日のように会えるのだと。
「これで幸せじゃなければ、嘘。そんなの、間違い」
 ぼくはとっても幸せだもの、と歌うように桜色の唇が紡ぐ。
 毎日がとても幸せなのだと、今日も、明日も、それに明後日も。

 
「昨日だって、その前だって幸せなんだよ」
 ハーレイに会ってからずうっと幸せ、とブルーは笑顔。
 出会ってからずっと幸せでたまらないのだから、と。
「だって、そうでしょ? ハーレイと一緒」
 また会えたもの、と煌めく赤い二つの宝石。
 ハーレイに会えたと、ハーレイに地球の上で会えたと。

 
「ハーレイは毎日、幸せじゃないの?」
 地球に来られたのに幸せじゃないの、ハーレイは?
「…俺の場合は少し違うな」
「えっ…?」
 不安そうな色がブルーの顔に広がるから。
 幸せの笑顔が曇ってゆくから。

 
 
 「馬鹿」とハーレイはブルーの額を指で弾いた。
「地球はどうでもいいんだ、俺は」
 お前だ、お前、と愛くるしい顔の小さな恋人を見詰めてやる。
 俺の幸せはお前なのだと、お前に会えたことが嬉しいのだと。
「お前に会えたから幸せさ、俺も」
 俺だって、毎日が幸せなんだ。
 今日も、明日も、明後日もな…。
 
 
 
      毎日が幸せ・了


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