「なんだか落ち着かないんだが…」
「そう? ぼくはそうでもないんだけれど。どうしてかな?」
首を傾げるブルーだったけれど。
ハーレイはどうにも落ち着かない様子で、頻りに首を傾げている。
「…お前は慣れているんだろう。生まれた時からこの部屋だろうが」
「えっ? 違うよ、小さい頃にはパパとママの部屋だよ」
当たり前でしょ、とブルーは唇を尖らせた。
「幼稚園にも行ってない子が、子供部屋で一人で寝られると思う?」
「そういえば、そうか…」
だが、育ってからはずっとこの部屋だろうが。違うのか?
「そうだけど…」
「だからだ、お前にとっては何処も見慣れた風景なんだ」
少々角度が違っていようが、とハーレイはフウと溜息をついた。
たまには席を取り替えてみよう、と座る場所を変えてみたけれど。
普段はブルーが座る方の椅子にハーレイが。
ハーレイが座る椅子にブルーが。
座るべき場所を取り替えただけなのに、落ち着かない。
目に入るものが違ってくる上に、窓の位置だって普段とは逆。
「…駄目だ、どうにも尻が落ち着かん」
元の椅子に戻ることにしよう、とハーレイは申し出たのだけれど。
「やだ」
嫌だ、とブルーはハーレイの指定席に座って答えた。
「ぼくはこっちも慣れてるんだよ、だってハーレイの…」
膝に座ってる時は、ぼくもこっちの椅子なんだもの。
だからこのまま、こっちがいい。
今日はこっちの椅子の気分で、この景色を眺めたい気分。
でも、ハーレイは戻りたいんだね?
「うむ。今すぐにでも元に戻りたいのだが」
「じゃあ、それでいいよ」
どいてあげるから、元に戻って。
ハーレイが座ったら、膝の上にぼくが座り直すから。
それでいいでしょ、ハーレイは元の椅子に戻れて、ぼくはこのまま。
「おい、お前…」
なんてこった、とハーレイは溜息をついたけれども。
小さな恋人はこうと決めたら譲らない。
(そういう所は昔のままだな、前のあいつだ)
ソルジャー・ブルーも頑固だった、と苦笑しながらハーレイは立つ。
元に戻るから椅子を空けてくれと、俺がお前の椅子になるから、と。
それぞれの場所・了