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どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。



ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。

この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
 
※お知らせ。emoji
 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、お気に入りがあればポチッとどうぞ。
 
      
過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。

※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。emoji
 何処から読んでも無問題ですv

  
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
 
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
 
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
 
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。

拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!

書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。

書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。

書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。

書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。

書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
 
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。

書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。

拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
 
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
 
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。

書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
         
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
    
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。

書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
     
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
 
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
        
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
        
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
          
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
          
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
           
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
             
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
                        
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
            
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
 
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。

書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
   
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
    
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
     
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
       
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
        
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
 
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
  
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
   
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。

書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
     
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。

書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
   
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
    
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
  
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
          
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
          
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。

書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
 
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
              
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
               
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。

書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
                               
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
                                 
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。

書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
                           
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
                           
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
 
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
  
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
   
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
    
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
     
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。

書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
      
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
        
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
          
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
          
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。

書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
 
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。

書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
  
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
              
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。

書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
                 
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
                 
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。

書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
 
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
                    
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
                                                    
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。

書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。

書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
                                                
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
                                       
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
                                        
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
                                         
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
                                            
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。

書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。

書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
                                      
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。

書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
 
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
                                          
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
                              
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
                          
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。

書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
                              
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
                            
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
                                               
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。

書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。

書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
                       
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
 
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。

書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。

書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
 
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
                       
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
                                  
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
                        
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
                           
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。

書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
                       
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。

書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。

書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。

目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらvemoji
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/

目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/

目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/600/

目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/727/
        
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 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、励ましにぽちっと…貰えると感謝。

※拍手下さった方、ありがとうございます~!emoji
     
                     
                       
           


       

拍手[2回]

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「ねえ、ハーレイ。素直になるのは…」
 大切だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
 お前は素直なんじゃないのか、とハーレイは尋ね返した。
 今のブルーは、子供だけあって、素直だと思う。
 自分の気持ちを隠すよりかは、直接ぶつけて来るタイプ。
(…これ以上、素直になられてもなあ…)
 我儘になってしまうだけでは、と首を傾げるしかない。
 するとブルーは、「ちょっぴり、反省中…」と口籠った。
「今のぼくじゃなくって、前のことなんだけど…」
 後悔先に立たずで、もう遅いけどね、と溜息を零して。


「前のお前だって?」
 確かに素直じゃなかったかもな、とハーレイは大きく頷く。
 前のブルーは「自分に対して」素直とは言えなかった。
 自分さえ我慢していれば、と様々な気持ちを押し殺した。
「それで? 今になってから、反省中だ、と?」
「そう…。失敗しちゃっていたのかも、ってね…」
 もしも素直になっていたなら、とブルーは昔話を始めた。
「アルテメシアから逃げた直後も、そうなんだけど…」
 ジョミーに「頼む」と言えていたら、とブルーは俯く。
「ナスカの時でも、それと同じで…」
 一人で全部しようとしないで、話せば良かった、と。
「メギドに飛んで行っちまったことだな?」
 ジョミーに後を頼んだだけで、とハーレイはブルーを睨む。
 「お前がジョミーを頼っていたら、全て変わった」と。
「…分かってる…」
 ホントに素直じゃなかったよね、とブルーは猛省中らしい。


 ブルーが言うには、メギド以前に素直になるべき。
 目覚めた直後の騒ぎはともかく、その後にあったチャンス。
「ナスカに残った仲間たちだけど、ぼくが目覚めて…」
 地球に行きたいと言ってたらどう、とブルーは問うた。
「みんなを残して行けはしないし、船に乗ってくれ、って」
「なるほどな…。ジョミーの頼みじゃ、誰も聞かんが…」
 ソルジャー・ブルーとなれば違うな、とハーレイも認めた。
 十五年間も眠ったままでも、前のブルーは偉大な指導者。
 目覚めて「行こう」と宣言されたら、逆らう者などいない。
「そうでしょ? ぼくはホントに、地球を見たかったし…」
 寿命が尽きるとしても、行きたかった、とブルーは返した。
「どうしても見たい、って素直になれていたらね…」
「そうかもしれん…」
 時すでに遅しというものだが、とハーレイも嘆きたくなる。
 前のブルーが素直だったら、色々と違っていたのだろう。


 遠く遥かな時の彼方で、素直になれずに生きた前のブルー。
 そう生きるしかなかったとはいえ、反省点は存在する。
 今の平和な時代に振り返ってみれば、間違えていた選択肢。
 「前のブルーが犠牲になる」より、回り道でも選べた進路。
 長い時間がかかったとしても、時代はミュウに味方した筈。
「…お前、失敗しちまったんだな…」
「そうみたい…。だから、とっても思うんだけど…」
 ハーレイにも失敗して欲しくない、とブルーは真剣な口調。
「今のハーレイ、自分に素直になれてないもの…」
「なんだって?」
 俺は自由に生きているが、とハーレイは瞳を瞬かせた。
 仕事をしている時はあっても、自分を殺してなどはいない。
 上手く手抜きをしてみたりもして、前よりも楽だと言える。
 「キャプテン・ハーレイ」だった頃には、不可能だった。
 自分に素直に生きているのに、ブルーの指摘は心外すぎる。


(…はて…?)
 いったい何処が素直じゃないんだ、とハーレイは首を捻る。
 思い当たるような節は無いから、途惑うしかない。
 するとブルーは、「やっぱりね…」と呆れ返った顔をした。
「ハーレイも、前のぼくの場合に似ているのかも…」
 そんな風に生きるしか道が無いから、と赤い瞳に同情の光。
「ごめんね、ぼくの姿が子供だから…」
 ハーレイ、素直になれないんでしょ、とブルーは嘆いた。
「育った姿で出会えていたら、違ってたのに…」
 素直に生きた方がいいと思うよ、とブルーが近付いて来る。
 「キスくらいだったら、してもいいから」と。


(……そう来たか……!)
 その手に乗ってたまるもんか、とハーレイは拳を握った。
「馬鹿野郎!」
 真剣に聞いた俺も馬鹿だったが、とブルーの頭に軽く一発。
 悪戯小僧には、素直に「お仕置き」するべき。
 素直に生きた方がいいなら、心のままに、コッツンと…。



         素直になるのは・了




拍手[0回]

(今のぼくなら、前の人生、もっと上手に…)
 生きられるかな、と小さなブルーは、ふと考えた。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…今のぼくはチビで、子供の姿なんだけど…)
 前の自分の記憶を全て持っているから、前の生を、上手くやり直すことが出来そう。
(転生モノって、そういう形の話もあるのかな?)
 人気が高いジャンルだよね、と今のブルーは、よく知っている。
 何かのはずみで「生まれ変わった」人の物語で、その生き様が醍醐味で人を惹き付ける。
(生まれ変わった先で、前の自分の記憶や知識を活かして…)
 人生を過ごしてゆくわけだけれど、生まれ変わった人物がガラリと変わってしまう。
 意地悪なキャラになるべき所が、いい人になってしまっていて、周りの調子を狂わせたりも。
(…悪役の筈が、優しい人のポジションだったりするんだよ)
 自分だったら「此処は、こうする」と思う通りに動き回れば、悪役が善人になっても仕方ない。
 他にも様々な物語が幾つもあって、どれも話題を呼んでいるジャンルが「転生モノ」。
(ぼくの場合は、ちょっと珍しいパターンになりそう…)
 生まれ変わって「やり直す」んだから、と面白いアイデアに引き込まれてゆく。
 前の生を「今の自分」の知識や記憶を活用しながら、やり直してゆくという物語。


(前の人生、やり直すんなら…)
 まずは成人検査の所からかな、と「前の自分」の「一番古い記憶」を引っ張り出した。
 成人検査でミュウに変化したせいで、人生そのものが狂ってしまって、記憶は其処から始まる。
(…前のぼくの記憶、これよりも古いの、無いんだよね…)
 でも、とブルーは顎に手を当て、時の彼方を思い出してみた。
 今の自分が「やり直す」場合、記憶の一番古い所からになるとは思えない。
(赤ん坊の時代は、論外だとしても…)
 学校に通っていた頃くらいには、戻っていそう。
 「やり直す」のは、スタート地点からの人生になる。
(……そうすると……)
 上手く立ち回って、成人検査を受けないままで、逃げ出すことも出来るだろう。
 「今のブルー」は運転免許も持っていないし、宇宙船の操縦は無理なのだけれど…。
(やり直すんなら、前のぼくだし…)
 無免許なのは変わらなくても、操船技術は「持っている」。
 「前のハーレイ」が、キャプテンに就任した後、懸命に技術を磨く間に、ブルーも覚えた。
 厨房出身だった「キャプテン・ハーレイ」を育て上げた、シミュレーターがあったから。
(前のぼく、ハーレイの練習に付き合って…)
 シミュレーターを「ゲーム感覚」で使いこなして、ハーレイ以上の成績を叩き出していた。
 けれど、今の時代は、宇宙船の仕組みが変わったせいで、過去の栄光は通用しない。
 「キャプテン・ハーレイ」本人の、「今のハーレイ」も、宇宙船の操船などは出来ない時代。
(今の時代だったら、無理なんだけど…)
 遠く遥かな時の彼方でなら、ブルーにだって「操縦」は出来る。
(船を奪って、何処か遠くへ…)
 逃げてゆくのが良さそうかな、と考えたけれど、その先が上手くいきそうにない。
(機械の目からは隠れられても、ミュウの未来を見捨てるのと同じで…)
 自分だけしか得をしないよ、とブルーは溜息を一つ零した。
 「今の自分」の記憶があるわけなのだし、自分が何を放り出したか、分かってしまう。


 こんなのじゃ駄目だ、と「やり直す」地点は、変えるしかない。
 大勢のミュウの命と未来を「捨ててしまってまで」、図太く生きてゆくのは難しすぎる。
(ソルジャー・ブルーの存在自体が、宇宙から消えてしまうしね…)
 駄目すぎるよ、と悲しいけれども、「ソルジャー・ブルー」は大物だった。
(…転生したら、ソルジャー・ブルーだった、なんていう小説があっても…)
 ちっとも不思議じゃないくらいだし、と自覚せざるを得ない「前の自分」の重要さ。
 今の自分が「やりたい通り」に「やり直す」ことは、時代の流れまで変えてしまうだろう。
(…ソルジャー・ブルー、いないわけにはいきそうにないよ…)
 成人検査は回避不可能らしいよね、と小さなブルーは、頭痛がしそう。
 あの忌まわしい「検査」を受けたが最後、前の自分の子供時代の記憶は消される。
(転生モノだし、今のぼくの記憶まで消えはしないんだけど…)
 なんだか悔しい、と腹立たしくなっても、「運命」だと思って耐えるしかない。
 成人検査の後に落ちた地獄も、「生き延びられる」ことを知っているなら、耐えられそう。
(…もっと早くに、脱出したって…)
 大切な人が「いない」んだよ、と「ハーレイ」の顔を思い浮かべた。
 「やり直しの人生」で、「ハーレイに出会いたい」のならば、我慢して生きる以外に無い。
(アルタミラが、メギドで燃えるよりも前に…)
 前のハーレイだけを「助け出す」ことは出来ても、ハーレイは、きっと従ってくれない。
(他のヤツらは、どうするんだ、って…)
 ハーレイならば「尋ねて来る」に決まっているから、脱出自体が「大脱走」に化ける。
 人類が「ミュウを閉じ込めていた」施設を丸ごと、破壊してからの逃走劇。
(…宇宙船、上手く見付かればいいんだけれど…)
 どうなのかな、と「今のブルー」の知識の中にも、当時の宙港の仕組みは入っていない。
 常駐している宇宙船の数も、離発着する宇宙船のスケジュールも、謎でしかない。
(…メギドが来る前に、逃げ出すのは無理…)
 失敗するのに決まっているよ、と思うものだから、これも「前の通り」にしか運んでくれない。
(ミュウの仲間を、ほんの少しばかり…)
 多めに助け出せる程度なんだ、と歯噛みしてみても、どうにも出来ない。


(…前のぼくって、やり直しさえも難しいくらい…)
 凄い人生を生きていたみたい、とブルーはフウと溜息をついて、次に進んだ。
 アルタミラでも「やり直せない」のなら、チャンスは「脱出してから」後のことになる。
(…アルタミラから逃げて、アルテメシアに辿り着くまでは…)
 人類軍にも出会わなかったし、「やり直したい」ほどの出来事は無かった。
 アルテメシアでも平穏な日々で、「今の自分の記憶」の出番は、ミュウの子供の救出だろう。
(助け損ねた子供たちなら、一人残らず覚えてるから…)
 先回りをすれば、どの子も「無事に」シャングリラに迎えられる。
(もしかしたら、そうやって助け出した子供たちの中に…)
 優秀な人材が混じってるかも、と前向きに考えていて、ハタと気付いた。
(……大物は、ジョミー……)
 タイプ・ブルーは、ジョミー以外に「いなかった」んだよ、と現実を見詰めざるを得ない。
 どう頑張っても、ジョミーが「早めに生まれて来る」コースを、作れはしない。
 寿命の残りが少なくなるまで、頼もしいジョミーは生まれて来ない。
(…やり直すんなら、ジョミーとの出会いになるんだけれど…)
 最低最悪な出会いだったし、と「今の自分」も思うけれども、変えようが無さそう。
(分かりました、って素直に船に来るような「ジョミー」は…)
 強いだけの「ミュウ」でしかないよ、と嫌というほど分かっている。
 「ソルジャー・ブルー」に逆らうほどの人材だったからこそ、後のソルジャー・シンがあった。
(…ジョミーに嫌われて、追っかけて行って…)
 後釜に据えるしか無いんだってば、と「また、躓いた」。
 「やり直せない」のは、ジョミーについても「同じ」らしい。
(ジョミーと衝突しちゃったツケが、ずっと響いて…)
 アルテメシアを追われた後に、十五年間も「眠り続ける」ことになってしまった。
 出来るものなら「やり直したい」ポイントだけれど、体調までは「変えられはしない」。
 眠り続けて、ナスカで再び目覚める時まで、「やり直せる」地点は一つも無い。


(……ナスカなんて……)
 やり直すのは、どう転がっても無理そうだよ、とブルーは頭を抱えてしまった。
 「今の自分」の記憶があっても、それを活かせる場面の中に「前の自分」が存在しない。
(…鍵になるのは、キースなんだけどな…)
 格納庫で出会う直前まで、ぼくは「目覚めてくれない」んだし、と嘆きたくなる。
 前の自分が「眠ったままで、目覚めない」以上、記憶があっても「やり直し」は出来ない。
(…やり直すんなら、此処が最大の山場に違いないんだけどね…)
 前のぼくの人生、やり直すことも出来ないみたい、と超特大の溜息をついた。
 やり直して「違う展開」に変えてみたくても、やり方を見付けることが出来そうにない。
(…前のぼくって、大物すぎだよ…)
 誰か上手に書いてくれないかな、とプロの作家に頼みたくなる。
 「人生を上手くやり直す」ためのシナリオを。
 誰も不幸になりはしなくて、前の自分も幸せになれる筋書きの物語。
 『転生したら、ソルジャー・ブルーだった』という、うんと素敵な「転生モノ」を…。



          やり直すんなら・了


※前の生をやり直すのなら、どうすればいいか、考え始めたブルー君。転生モノの一種。
 ところが上手くやり直すには、ハードルが高すぎる前の生。プロ作家の出番かもv






拍手[0回]

(今の人生、やり直しみたいなモンなんだよなあ…)
 実際には前の続きなんだが、とハーレイが、ふと考えたこと。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(考え方によっては、やり直しとも言えるだろう)
 前の生では出来なかった沢山のことを、青い地球の上でやっていけるし、やり直し。
 しかも愛おしい人も一緒で、素晴らしい人生を送ってゆけそう。
(…前のあいつを失くした時には、俺の人生、真っ暗になってしまって…)
 それから後は、どう生きていたかも記憶が定かではない。
 白いシャングリラのキャプテンとしては、全て覚えているのだけれども、他が怪しい。
(個人的なことになったら、他人事のようで…)
 傍観者でしかないんだよな、と思うくらいに、「自分」を捨ててしまっていた。
 前のブルーが「いない」人生、それには意味が無かったから。
(今から、人生、やり直せるのは、有難いぞ)
 ちょいと時代がズレちまったが、と苦笑はしても、青く蘇った地球での人生。
 時代が少しズレていようが、前の自分が「英雄扱い」の世界だろうが、構わない。
 愛おしい人と「やり直せる」なら、例え地獄の底であろうと、きっと自分は幸せだろう。
(…とはいえ、地獄は御免蒙りたいが…)
 前の生だけで充分だしな、と時の彼方を思い返して、別の考えがヒョイと浮かんだ。
 同じ「人生」を「やり直す」のなら、前の生だと、どうなるのだろう、と。
 遠く遥かな時の彼方に、「前の自分」の人生がある。
 「キャプテン・ハーレイ」として生きた時代で、その「人生」を、やり直すという考え。
(転生モノってヤツが、色々とあって…)
 死んだ人間が、生まれ変わって「別の人生」を生きてゆくという物語がある。
 「今の自分」が、「前の自分」に生まれ変わるのも、「転生モノ」でいいのだろうか。


(……ふうむ……)
 その手の知識に詳しくはないが、とハーレイは少し首を捻った。
 「転生モノ」に該当するのか、しないのかまでは、知識不足で分からない。
 古典の教師をやっている上、現代小説なども好きだとはいえ、範疇外の疑問になる。
(その手の知識は、持っちゃいないし…)
 まあいいとしよう、と「転生モノ」かどうかは、棚上げにして先に進んだ。
 「今の自分」が、「前の自分」に生まれ変わって、その人生を生きてみるのも、興味深い。
(生まれ変わりなんだし、今の俺と、条件は変わらないんだよなあ?)
 何処の時点で記憶があるかは、運次第だが、と想像の翼を羽ばたかせる。
(生まれつき持っていたっていいし、途中からでもいいんだが…)
 先が分かっている人生だしな、とハーレイはコーヒーのカップを傾けた。
 「今の自分」の記憶を持っているなら、「人生の先」は分かっている。
 前のブルーと「メギドの炎で燃え上がる地獄」で出会って、後にメギドのせいで別れた。
(…まるでメギドが鍵のようだな…)
 メギドが人生の節目とは酷い、と思いはしても、今では「済んでしまったこと」でしかない。
 「仕方なかった」で終わりなのだけれど、「やり直し」ならば「違って来る」。
(転生モノの醍醐味と言えば、そういった点で…)
 定型的な筈の物語が、「転生」という要素で、ガラリと変わってゆくのが王道だろう。
 「本来、こういった人は、こう生きる」と誰もが頷く所が、人が変わって、生き方も変わる。
 「今の自分」が「前の自分」に「生まれ変わった」場合にしたって、当て嵌まりそう。
(…メギドの辺りを、ちょいとだな…)
 今の俺ならではの知識でもって、書き換えてやれば、と思わず笑みを湛えてしまった。
 始まりの方の「メギド」は、そのままにしておいても、問題は無い。
 ちょっぴり欲を出していいなら、当時は「持ち合わせなかった」記憶をプラスしてやれば…。
(閉じ込められてたシェルターが、壊れちまってて…)
 救出が間に合わなかった仲間を、先回りして何人も救い出せる。
 何処のシェルターが「無事に残っていたか」は、今の自分が覚えている。
 救出するのを後に回せば、壊れていたシェルターが「無事な間」に、きっと救える。


(よし、物語の出だしは、なかなかに…)
 良さそうじゃないか、とハーレイは自画自賛した。
 滑り出しとしては上々、幸先のいいスタートを切ることが出来そう。
(其処から先は、多分、大して…)
 大きく変わりはしないんだよな、と時の彼方を思い返した。
 幸いなことに、人類軍との「本格的な戦闘」は、アルテメシアに着くまで無かった。
 アルテメシアでも、ジョミーを救出するまでの間は、平穏な日々が流れていた。
(今の俺の記憶で救い出せるのは、そう多くなくて…)
 ミュウの子供を助ける程度だよな、と「助け損ねた子供」の数だけ指を折ってみる。
(…恐らく、この子たちの全てを…)
 俺の記憶で助けられるぞ、と「救出失敗」の理由を挙げて、ハーレイは大きく頷いた。
(そうなりゃ、ジョミーの救出にしても…)
 先回り出来る部分はありそうだが、と思うけれども、その件は、後でいいだろう。
(……問題は、メギド……)
 ナスカで出て来た、例のヤツだ、と忌まわしい惑星破壊兵器に舌打ちをする。
 流石に「メギド」は、今の自分の記憶があっても、手も足も出ない。
 使える兵器は限られているし、白いシャングリラでは「破壊出来ない」。
(…壊せないなら、アレが来るのを…)
 阻むか、キースがメギドを持ち出す前に、シャングリラでナスカから脱出するか。
(現実的な選択としては、後者で…)
 ナスカに残ろうとした者たちを、全て殴り倒してでも、強引に船に乗り込ませる。
(皆を乗せたら、ブリッジで舵をしっかり握って、シャングリラ、発進! とだ…)
 俺が号令すれば行けるぞ、とシナリオを描く。
 メギドが来る前に、ワープしさえすれば、誰もナスカで死にはしないし、前のブルーも…。
(失くさないで済んで、かなり時間がかかったとしても…)
 地球まで連れて行けそうだよな、とハーレイは笑んだ。
 「今の自分」の記憶さえあれば、前の自分が辿った道より、旅は短い。
 訪れるだろう様々な危機をヒョイと乗り越え、シャングリラは地球に辿り着ける。
 もっとも、そうして着いた「憧れの地球」の姿は、とても無残なものなのだけれど。


 前のブルーが、地球で目覚めて、赤茶けている星を見たなら、悲しむだろう。
 青い水の星を長く夢見て、焦がれ続けていたのだから。
(しかしだな…)
 どうにも出来んし、ご愛敬で勘弁して欲しい、と「転生モノ」の中のブルーに、心で詫びる。
(地球という星に生きて行けただけでも、良しとして…)
 青くない点は許してくれよ、と苦笑していて、別のルートを考え付いた。
(…メギド自体は破壊出来んが、アレが来るのを…)
 阻む方法、無いわけでも、と「非現実的だ」としか言えない方の、選択肢の先を。
(メギドが来たのは、キースがアレを持ち出したせいで…)
 ヤツさえいなけりゃ、どうとでもなるな、と「転生モノ」ならではの展開を。
(要は、キースが…)
 消えてくれればいいってことだ、と顎に手を当て、ニヤリと笑う。
(今の俺なら、先回りして…)
 ヤツを殺してしまうことが出来るぞ、と「あの後に起きた」事実を挙げてゆく。
(一度目のチャンスは、ヤツがナスカに下りて来た時で…)
 他の仲間が何と言おうが、「撃ち落とせ!」と、たった一言、命じればいい。
 キースが乗って降下して来る小型機、それを落とせば、キースは「死ぬ」。
(…実際、緊迫した場面だったし…)
 「キャプテン・ハーレイ」の判断ならば、ジョミーも従うことだろう。
 第一、ジョミーは、あの時には…。
(ナスカに下りてたわけなんだしな…?)
 俺が、撃墜させたとしたって、事後報告に過ぎん、と嬉しくなった「名案」だけども…。


(…待てよ?)
 キースが死んだら、其処から先は、どうなるんだ、と「穴」に気付いた。
 当時のキースは「悪」そのものでも、後には「人類の世界を根底から変えた英雄」になる。
(…もしも、キースを消しちまったら…)
 前のブルーは存命だけれど、地球までの旅路が、どうなるのやら、と深い溜息が零れ落ちた。
(……難問だな……)
 転生モノってヤツの中でも、人生は難しいのかもしれん、と苦い笑いをうかべるしかない。
(…やり直すなら、今の俺の人生くらいが、丁度いいのかもな…)
 平和な青い地球の上で、とカップを傾け、納得した。
 「俺の人生、これでいいんだ」と、満足で。
 今の新しい人生をくれた、神に心からの感謝をこめて、カップを乾杯のように掲げて…。



           やり直すなら・了


※前の自分に転生したなら、上手く人生をやり直せる、と思い付いたハーレイ先生。
 けれど、キースを消してしまうのは無理で、縛りが多そう。今の人生が良さそうですねv








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「ねえ、ハーレイ。過保護にするのは…」
 良くないよね、と小さなブルーが、ぶつけた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 過保護って…?」
 お前の場合は違うだろう、とハーレイは直ぐに返した。
 今のブルーも、前と同じに虚弱体質。
 必然的に、両親が手を掛けて世話をすることになる。
「お前、身体が弱いんだからな?」
 お母さんたちは過保護ではない、と諭すように説明した。
 束縛されているように感じるとしても、それは違う、と。
「いいか、お母さんたちは、お前のことを考えて…」
「分かってるってば、そうじゃなくって…」
 一般論の話なんだよ、とブルーは少し困った顔をしている。
 「ぼくも確かに、過保護っぽいけれどね」と。


「すまん、別件だったんだな?」
 勘違いをして悪かった、とハーレイは詫びた。
 ブルーの問いが急だっただけに、早とちりした、と潔く。
「きちんと聞いてから、答えるべきだった…」
「ううん、ちっとも。ぼくの方にも、非があるんだし」
 それでね、とブルーは話を元に戻した。
「過保護にする人、少なくないけど、どう思う?」
「うーむ…。前の俺たちの時代とは違うからなあ…」
 マニュアル通りの育児じゃないぞ、とハーレイは首を捻る。
 SD体制の時代だったら、育児は違った。
 機械が教えたマニュアル通りに育てるだけで、子は育った。
 ついでに言うなら、実子ではなくて、養子を育てた世界。
「そうだね…。自分の子供だと、うんと事情が…」
 変わっちゃうよね、とブルーは大きく頷いた。
 「カリナなんかは、そのせいで命を落としちゃった」とも。


 カリナは、過保護だったわけではない。
 ただ、愛情が深くて大きすぎた。
 トォニィを失ったと思い込んだせいで、自分を追い込んだ。
 前のハーレイは、ブルーと違って、現場を見ている。
 だから「そうだったな…」と深い溜息を零すことになった。
「カリナの場合は、少し違うが、過保護すぎて…」
 子供も自分も縛っちまう親は確かにいる、とフウと溜息。
 「その点については、機械も悪くはなかったかもな」とも。
「やっぱり? 相談役で、アドバイザーだったしね…」
 育児についてのプロだったよ、とブルーも頷く。
「もしも機械が今もあったら、過保護、ダメかな?」
「そうなるだろう。ユニバーサルからの、お呼び出しで…」
 子育て方針を指導されるな、とハーレイは苦笑する。
 「もっと手抜きを」と、テラズナンバー直々の仰せだ、と。


「そっか、ハーレイの考え、ぼくと同じなんだね?」
「そうだな、過保護は良くない。事情にもよるんだが…」
 お前の場合は違うわけだし、安心しろ、と太鼓判を押した。
 「大丈夫だから、今まで通りでいていいんだ」と。
「でも…。それは身体が弱いって部分だけでさ…」
 他の部分は普通なんだし、とブルーは真剣な表情になった。
「ぼくに過保護なのは、ハーレイなんだし…」
「はあ? 俺が過保護に扱ってるのも…」
 お母さんたちと同じ事情だ、とハーレイは即座に否定する。
「病気の時に野菜スープを作ってやるのも、その一つだぞ」
「そうじゃなくって、子供扱い…」
 キスをするには早すぎるって、とブルーは唇を尖らせた。
 「過保護だと思う」と、赤い瞳で睨み付けて。
 「ぼくの中身は、前と全く同じなのに」と、恨みがましく。


(そう来やがったか…!)
 今日もやられた、とハーレイは拳を軽く握った。
「馬鹿野郎! その件にしても、過保護ではない!」
 今のお前は子供なんだし、俺は正しい、とブルーを叱る。
「お前に自覚が無いというだけで、充分、子供だ!」
 過保護と違って配慮だしな、と銀色の頭をコツンと叩いた。
 「勘違いするな」と、罠にはめようとした「悪い子供」を。
 計略だけは一人前な「今のブルー」に、お仕置きとして…。


       過保護にするのは・了




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