どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。
ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。
この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
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書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
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過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。
※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。![]()
何処から読んでも無問題ですv
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。
拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!
書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。
書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。
書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。
書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。
書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。
書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。
拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。
書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。
書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。
書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。
書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。
書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。
書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。
書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。
書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。
書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。
書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。
書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。
書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。
書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。
書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。
書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。
書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。
書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。
書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。
書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。
書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。
書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。
書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。
書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。
書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。
書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。
目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらv![]()
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/
目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/
目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
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目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
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※拍手下さった方、ありがとうございます~!![]()
あれが運命の出会いだったな、とハーレイが、ふと考えたこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(…心臓が止まりそうになったんだが…)
いきなり生徒が血塗れなんだし、と衝撃の瞬間は忘れられない。
ブルーに聖痕が現れた日のことで、居合わせた教師は、ハーレイだけだった。
事故だと思って駆け寄った途端、膨大な記憶が蘇って来た。
遠く遥かな時の彼方で、自分が何と呼ばれていたのか、血塗れの生徒が誰なのかも。
(……まさに運命の巡り合わせで……)
奇跡のように再会出来たのが、前の生での愛おしい人。
今日は会えずに終わったけれども、明日には、きっと会えるだろう。
明日が駄目でも、明後日もある。
その次の日も、ちゃんとあるのだし、週末はブルーの家を訪ねるのだから。
もっと早くに出会いたかった、と思う気持ちは否定出来ない。
神様が決めた巡り合わせだけに、「あの日しか無かった」と分かってはいる。
前の学校で引き留められたせいで、着任が遅れてしまったのも仕方ない。
それでも「もしも」と考えるほどに、ブルーと再会してから後の人生は素晴らしい。
(あいつに会えていなかったなら、今日の俺だって…)
ただの寂しい独身人生、とハーレイは苦笑してしまう。
ブルーと再会する前の自分が「寂しい独身」だったとは、まるで思いはしないけれども。
独身人生には違いなくても、ハーレイなりに日々を楽しんでいた。
ジョギングをしたり、料理に凝ったり、趣味の読書に勤しんだりと、自分の時間を有効活用。
教師の仕事が多忙な時でも、一人暮らしに不満を覚えはしなかった。
(残業を済ませて家に帰ったら、真っ暗な部屋でも…)
灯りを点けたら明るくなるのだし、寂しさなどは感じない。
どちらかと言えば、ブルーと出会った後の今の方が、そうした場面で寂しくなる。
(…帰って来たって、あいつは家にいないんだしな…)
そいつが寂しい、とブルーの顔を思い浮かべたら、溜息が一つ零れ落ちた。
「帰ったら、ブルーが迎えてくれる暮らし」は、まだ何年も待たないと来てはくれない。
ブルーが結婚出来る年の十八歳にならない限り、この家で一緒に暮らせはしない。
今の学校を「ブルーが卒業してから」の話で、四年近くもかかる勘定。
(…それまでの間は、学校の中か、あいつの家くらいでしか…)
会えるチャンスは来ないわけだ、とハーレイは寂しく思うのだけれど、待つしかない。
あと四年ほど待っていたなら、この家にブルーを迎えられる。
(……たった四年だ……)
俺の任期は、その後、数年くらいだろうな、と「今の学校」で過ごす期間を考えてみた。
同じ学校に何年いるかは、厳密に言えば、明確な決まりは設けられていない。
「このくらいだ」という目安はあるのだけれど、誰もが「そうなる」わけではない。
(現場と、周りの状況次第で…)
同じ学校で長く教師をする者もいれば、短めの期間で転勤してゆく者も少なくなかった。
ハーレイの場合も、長く勤めた学校もあれば、そこそこの期間で別れた学校もある。
今の学校が「どちらになるのか」は、任期が終わるまで分からないだろう。
早い転勤になったとしたなら、ブルーが在学している間に、他の学校に移ることになる。
いくら「ブルーの守り役」だからと言っても、特別扱いは無いかもしれない。
(そもそも、あいつが卒業しちまったら…)
守り役を続けられはしないし、卒業までの期間限定で、その任に就いているというだけ。
学校の側で、やむを得ない事情が出来てしまえば、任期が終わるよりも前に、転勤もある。
(…運次第か…)
あいつの卒業まで、今の学校で教師をしてるかどうかは、とハーレイは気付かされた。
何処かの学校で「ハーレイ」のような人材が必要になったら、転勤だろう。
今すぐとまでは言われなくても、年度末には辞令が出る。
「この学校に赴任してくれ」と指示が来た時は、従うしかない。
(…転勤したら、今の暮らしは続けられないよな…)
仕事帰りに、あいつの家に寄り道なんぞは出来やしないぞ、と一番に考えた。
転勤先の学校が、ほんの近くで、隣の校区くらいだったら、帰り道に寄ることも出来る。
とはいえ、そうそう幸運は無くて、過去の経験からしてみても、新しい学校がある場所は遠い。
(隣の校区どころか、このデカい町の反対側で…)
車を飛ばして走って来たって、半時間以上はかかるとかな、と溜息が出そう。
来られない距離ではないのだけれども、帰りに気軽に行けそうにない。
(第一、俺には苦ではなくても…)
ブルーの両親は、そうは考えないだろう。
(わざわざ時間を作って、遠い所から来るわけだから…)
恐縮するのは目に見えているし、もうそれだけで、充分に高いハードルだった。
毎日など、とても来られない。
(せいぜい、週に一回か二回…)
家に行ければ上等だ、という気がする。
今は近いから、金曜日の仕事帰りに寄っていたって、土曜も平気で訪問出来る。
ところが、「遠路はるばる」となった場合は、金曜に時間が取れたとしても、行きにくい。
ブルーの両親に「息子のためだけに、申し訳ない」と、気を遣わせてしまうだろうから。
こいつは困った、と「転勤」の文字が、ハーレイの頭の中で回り始める。
ブルーと一緒に暮らし始めた後のことなら、問題は無い。
「来年から、別の学校らしい」とブルーに告げれば、それでおしまい。
ブルーが「そうなの? ぼくも知ってる学校かな?」と知りたがる程度。
(でもって、俺が転勤してから後に、ドライブついでに…)
「此処が新しい学校なんだ」と、ブルーに車から見せてやればいい。
グラウンドに知り合いの教師がいたなら、駐車場に車を止めたっていい。
(俺の嫁さんだから、学校の中を見せてやってもいいだろうか、と…)
尋ねさえすれば、多分、断られはしないだろう。
「どうぞ、どうぞ」と招き入れてくれて、グラウンドだけを見るつもりでも…。
(校舎の中まで見せてくれるとか、運が良ければ、ちょいとお茶まで…)
淹れて貰えることもあるよな、と自分もやったことがあるから、想像がつく。
部活の指導で学校にいた時、何度か、そういう場面があった。
(鍵を開けなきゃ、校舎に入れないなら別なんだが…)
開いているなら、中に入って見て貰っても構わない。
お茶を出せる場所があった時には、お茶を淹れたし、後で咎められることも無かった
(…新しい職場が、結婚した後に来たら、そのコースで…)
ブルーを案内出来るけれども、その前だったら、ピンチでしかない。
(……あいつを案内してやるどころか、家にも御無沙汰……)
月に何回、顔を出せるやら、と考えただけで頭痛を覚えてしまいそう。
ハーレイ自身も寂しいけれども、ブルーは「寂しい」どころの騒ぎではない。
今でさえ、「ハーレイ、来てくれなかったじゃない!」と不満げな顔を見せる日がある。
転勤して学校で会えない上に、家にも殆ど来ないとなったら、どうなることやら。
(それこそ毎日、泣きの涙で…)
過ごしかねんぞ、と思うものだから、転勤は勘弁して欲しい。
いくら人材が不足していて、「ハーレイ先生、是非に!」などと、頭を下げて頼まれても。
「行ってくれるなら、特別に手当てを出すから」と、給料を上げる条件を出されても。
(あいつが本当に必要なものは、守り役じゃなくて…)
前の生での恋人なんだ、と分かっているから、祈るしかない。
転勤の話が来るかどうかは、もう本当に、運の問題。
何処かで人材が不足しない限り、今の学校にいられる期間は、充分にある。
ブルーが卒業してゆく年を迎えても、まだ数年は勤められる筈だった。
(……神様、どうぞ、今の学校で……)
当分の間、お願いします、とハーレイは祈らないではいられない。
ブルーが在籍している間に転勤したら、大変だから。
ハーレイが寂しく思う以上に、愛おしい人が寂しがる上、涙を流す日々だろうから…。
転勤したら・了
※転勤について考えてみた、ハーレイ先生。ブルー君と結婚した後なら、問題はゼロ。
けれど、ブルー君が卒業する前に、転勤となると、とんでもないことになりそうですねv
人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。
ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。
「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。
「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。
そういったわけで、正解は二つ。
ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
そうしたら…。
「あのね、チビには違いないけど…」
チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
叩いても、痛くないように。
「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。
困った時には・了
今は、そこそこいるんだよね、と小さなブルーは、ふと考えた。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(ぼくの身近には、いないんだけれど…)
人間が全てミュウな今では、タイプ・ブルーも少なくはない。
「サイオンは使わない」ことが社会のマナーだから、空を飛ぶ人などがいないだけ。
(…飛べないタイプ・ブルーなら、此処に一人…)
今のぼくだって、タイプ・ブルーなんだけどな、と苦笑してしまう。
前の生で自在に使えたサイオン、それが不器用になってしまった。
(思念波も、ろくに紡げないから…)
人類の方に近いのかも、と思うくらいに、今のブルーは「ミュウらしくない」。
時の彼方で「そう」だったならば、成人検査も通過していそう。
(…シロエはともかく、マツカの方はバレていなくて…)
キースの側近を勤め上げたほどだし、前のブルーでも、生き延びられたろう。
身体が弱い点があるから、研究者か何か、大人しい仕事に就いて、平穏無事な生涯。
(…表に出てない、タイプ・ブルーなら…)
そう出来たんじゃあ、と思ったはずみに、別の考えがヒョイと浮かんだ。
(…タイプ・ブルー、前のぼくじゃなくても、良かったんじゃあ…?)
他の人でも務まったよね、と仲間たちの顔を頭に描いた。
ゼルでもいいし、ヒルマンでもいい。
女性の「ソルジャー」も、ダメということは無かっただろう。
(一応、女性の基本は、ママになることで…)
養父母コースが一般的だったけれど、軍人やメンバーズにだって、女性がいた。
エラやブラウがタイプ・ブルーだったとしても、不都合な点はありそうにない。
(……だけど、一番、向いていそうなのは……)
ハーレイじゃないかな、と前の生からの恋人の名を挙げてみた。
キャプテン・ハーレイだったわけだし、ソルジャーも充分、務まりそう。
(…ソルジャーとして、やっていくために、ビジュアルの方は…)
関係無いと思うんだよね、と「前の自分との違い」を、ブルーは一蹴した。
「ソルジャー・ブルー」は今の時代も、写真集が編まれるくらいに「美しかった」。
逆に「キャプテン・ハーレイ」の方は、「美しくない」と評判だった。
(…シャングリラの女の人たちが作ってた、薔薇の花びらで出来たジャム…)
数が少なくて、配る時にはクジ引きをした。
そのクジが入った箱が、ハーレイの前だけを素通りしたほど、不似合いとされていた。
(前のハーレイ、綺麗じゃないから、薔薇のジャムなんか、似合わないって…)
決め付けられて、クジ引きの対象からは除外だった。
(だけど、そんなの、シャングリラが平和だったからの話で…)
戦いの道を走ってゆくなら、顔の美醜は意味が無い。
サイオンが強くて「戦える」ことが、ソルジャーの唯一の条件と言える。
(指導者としての資質だったら、ハーレイだって、充分あったし…)
ハーレイがピッタリ、と「前の生で、タイプ・ブルーになれそうな人」に選び出した。
前の自分と違う人でも、かまわないんじゃあ、と想像の翼を羽ばたかせる。
「もしも、タイプ・ブルーに生まれた人が、違っていたなら」と。
遠く遥かな時の彼方で、最初に「誕生した」ミュウ。
実際はブルーだったけれども、ただのミュウなら、先に生まれていたかもしれない。
(タイプ・ブルーじゃなければ、成人検査で何かあっても…)
検査用の機械は壊れないから、誰も気付きはしないだろう。
「ミュウの存在」が知れた後でも、マツカが無事に通過していた例もある。
(…前のハーレイが、タイプ・ブルーだった場合は、最初のミュウになるわけで…)
タイプ・ブルー・オリジンだよね、と「前の自分」に人類がつけた名前を進呈した。
成人検査の機械を壊して、サイオンに目覚めた前のハーレイに、想像の中で。
(…タイプ・ブルー・オリジン…)
そう呼ばれるようになった「前のハーレイ」は、どうするだろう。
(ぼくとは、色々、違っていそう…)
目覚めた時から違いそうだよ、と容易に分かる。
前のハーレイも「頑丈だった」から、力に目覚めて、保安部隊が駆け付けたって…。
(うんと落ち着いて、対応出来そう…)
シールドを展開するのも、銃撃を防いだ後の行動にしても。
(いくらハーレイでも、初めてサイオンを爆発させたら…)
身体の方がついてゆきはしないし、保安部隊に取り押さえられてしまいそう。
(でも、取り押さえられてるって段階で、前のぼくとは…)
大違いだし、と前の自分の「情けなさ」に溜息が出そう。
前の自分は気を失って、気付いた時には、檻に閉じ込められていた。
ハーレイの場合は、小突かれながら、檻に連れて行かれて、押し込まれるのに違いない。
(頑丈なミュウで、心だって、うんと強かったから…)
檻の中での暮らしが始まったって、絶望したりはしないだろう。
(ぼくみたいに、成長を止めてしまって、子供のままで…)
全て諦めて生きてゆくより、前を見詰めて生きてゆきそう。
「いつか必ず、此処を出てやる」と、人体実験に耐えて、歯を食いしばって。
(…ハーレイだったら、出来そうだよね…)
最初から、タイプ・ブルー・オリジンらしい生き方、と誇らしくなる。
前の生から愛する人だし、想像の中でも、頼もしい。
(人類がメギドを持って来る前に、仲間たちを逃がして脱出だって…)
ハーレイだったら、きっと出来るよ、と夢が広がる。
人類が「ミュウ」を脅威と位置付ける前に、動き出していたら、逃げられただろう。
研究施設の警備が甘くて、研究者たちも「考え方が甘かった」頃だったならば、出来た。
(ハーレイのサイオンで、研究施設を吹っ飛ばして…)
収容されているミュウの独房だけを、きちんとシールドすれば、脱出は可能。
破壊した施設から「仲間たち」を救って、宙港まで逃げてゆけばいい。
(船は沢山あった筈だし、良さそうな船を制圧して…)
操縦者つきで宇宙に飛び出し、それから後は、アルテメシア時代のような位置付け。
(隠れられそうな場所を見付けて、其処に潜んで…)
アルタミラで生まれる「ミュウの子供」を救い出しながら、待ち続ける。
人類と本格的な戦闘に入って、地球を目指して舵を切る日まで。
(…前のぼくより、うんと早めに…)
地球に行けそう、とブルーは笑みを浮かべる。
ハーレイだったら、自分の寿命が尽きるよりも前に、地球まで辿り着くのに違いない。
「後継者探し」などはしないで、グランド・マザーも、システムも全て、自分で倒して。
(…そうなりそうだよ…)
ハーレイの方が良かったんじゃあ、と思えてしまう「タイプ・ブルー・オリジン」。
時の彼方で最初に生まれる、伝説のミュウ。
そっちの方が良さそうだよね、と考える内に、ハタと気付いた。
もしも「ハーレイ」が、タイプ・ブルー・オリジンだったら、前のブルーは、どうだろう。
(ハーレイの代わりに、タイプ・グリーンなのかな?)
それはいいとして、何処で「ハーレイ」に出会うかが、大いに問題。
上手い具合に「ハーレイよりも後に生まれて」、子供だったとしても、厄介そう。
(…研究施設で、脱出の時に、見付けて貰えても…)
ハーレイは「とても忙しい」から、自分で探しに来てくれるかどうか。
仲間を指揮して陣頭なのだし、別の誰かが来るかもしれない。
(…ハーレイが来たら、ぼくを見付けて…)
「おい、坊主! 大丈夫か? 急げ、逃げるぞ!」と手を引いてくれても…。
(他の人だと、そうはいかないよね…)
その人が、手を引いて逃げてくれても、ハーレイと出会えるわけではない。
ハーレイは指揮を執り続けたまま、船が宇宙へ出ることだろう。
(…後は、ハーレイ、船のトップで…)
やるべきことが山とあるから、ブルーにまで目を配れはしない。
(もっと後になって生まれて来たって、救出されて…)
ハーレイの船に迎え入れられるだけで、挨拶だけで終わってしまいそう。
ブルーを待っているのは「子供の世話をする係」や教師で、ハーレイは来ない。
(……うーん……)
運命の出会いをしてるチャンスは無さそう、と愕然となった。
ハーレイが「ブルー」に一目惚れしてくれる機会は、全く無さそうなコース。
(…ぼくにしたって、どうなのかなあ…?)
尊敬している人で終わって、それだけになってしまうのかも。
(ソルジャー・ハーレイ、凄い人だ、って…)
見上げて暮らすだけの人生、恋は生まれず、別の誰かと生きてゆくかもしれない。
(…そんなの、困ってしまうから!)
タイプ・ブルー・オリジンがハーレイだなんて、と思うものだから、神に心から感謝した。
前の自分の人生は辛い部分も多かったけれど、幸せだった。
(タイプ・ブルー・オリジン、前のぼくとは違っていたなら…)
ハーレイと恋が出来ないんだよ、と「ぼくで良かった」と、ホッと安堵の溜息をつく。
「あれでいいんだ」と、「ハーレイじゃダメ」と…。
違っていたなら・了
※前の生でのサイオン・タイプ。ブルーではなくて、ハーレイがタイプ・ブルー。
地球へは早く行けそうですけど、恋をしているチャンスが無さそう。困りますよねv
今のあいつも同じなんだが、とハーレイが思い浮かべた、ブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
(ついでに言えば、今の世の中、タイプ・ブルーのヤツは、そこそこ…)
いるんだよな、と面白くもある。
珍しいことには違いなくても、前の生の頃ほど希少ではない。
(サイオンを使わないのがマナーなせいで、誰がそうかは分かりにくいが…)
空を飛んでるヤツもいないし、と笑みが零れて来る。
瞬間移動をしている者にも、街中でお目にかかれはしない。
(お蔭で、ブルーが不器用なのも、目立たないよな)
あいつはサイオンが、まるで駄目だし、と可笑しいけれども、事実だった。
今のブルーは、サイオンの扱いが上手ではない。
持っていないのと変わらないほど、何も出来ないと言ってもいいだろう。
(…あいつ、悔しがっているんだが…)
平和な世界の証拠だ、と嬉しくもある。
タイプ・ブルーの出番が無いのは、ミュウの時代になったからこそ。
今も人類と戦っていたら、ブルーのサイオンも、眠ってはいない。
(何処かで必ず、目を覚まして…)
前の生と同じに戦うことになっていた。
そうはならずに済んだ世界は、青い水の星まで蘇っている。
(神様に、感謝しないとな…)
前のあいつは可哀相すぎた、と考えていて、ハタと気付いた。
(なんで、あいつがタイプ・ブルーだったんだ…?)
別に俺でもいいじゃないか、と思わないでもない。
ブルーよりも遥かに頑丈なのだし、そちらの方が良かったのでは、という気がする。
(前の俺は、タイプ・グリーンに生まれたんだが…)
違っていたら、とハーレイは顎に手を当てた。
ブルーではなくて、前の自分が「タイプ・ブルー」だった場合、どうなっていたのか。
(……ふうむ……)
目覚める条件としては、成人検査でいいんだよな、と前のブルーと重ね合わせる。
成人検査を受けに行ったら、記憶を消去されそうになって、前のブルーは覚醒した。
(俺にしたって、多分、そうだろう)
あまりハッキリ覚えちゃいないが、とハーレイは苦笑する。
覚醒した後、劇的に変化した環境と、過酷な人体実験で忘れてしまった。
とはいえ、サイオンが目覚めるほどの衝撃なのだし、記憶の消去が原因だろう。
(でもって、俺がタイプ・ブルーなら…)
前のブルーの時と同じで、最初に現れたミュウになりそう。
「タイプ・ブルー・オリジン」が、ブルーからハーレイに入れ替わる。
(俺の人生、出だしからして変わりそうだぞ…)
正確に言えば途中からだが、と「成人検査」以降を想像してみることにした。
前のハーレイは「ブルーよりも後」の生まれで、人類は「ミュウの扱い」に慣れていた。
(成人検査で判明したら、直ぐに捕獲で…)
研究施設に送られたけれど、「最初のミュウ」となれば変わって来る。
(前のあいつは、成人検査用の機械を壊しちまって…)
保安部隊の者が駆け付け、銃撃を受けたと、ブルーから聞いた。
覚醒したのが「ハーレイ」にしても、そうなったろう。
(…咄嗟にシールドで受け止められても、その後がどうか…)
ブルーは倒れちまったんだが、と前の自分と比較してみると、違うかもしれない。
前のハーレイは「聴力が弱かった」だけで、身体の方は頑丈だった。
(銃撃されても、倒れないかもな…)
捕獲されるのは同じだろうが、と「十四歳の子供」と、保安部隊のプロを比べる。
(タイプ・ブルーでも、目覚めたばかりじゃ…)
爆発的な力を使った直後は、ふらついたりもするだろう。
其処へ「戦闘のプロ」が来るわけなのだし、抵抗してみても敵いそうにない。
(…前と同じで、檻の中だな…)
押し込まれちまって、不味い餌ばかり食わせられる日々だ、とゲンナリした。
その上、人体実験を繰り返されるのでは、気力が失せてしまいそうだけれど…。
(なんと言っても、俺なんだしなあ…)
不屈の精神で踏ん張りそうだ、と自分のことだから、ハッキリと分かる。
前のブルーは「成長してみても、未来など無い」と諦め切って、成長を止めた。
(あいつだったから、そうなっただけで…)
俺なら育ち続けそうだ、と自信ならある。
「負けてたまるか」と起死回生のチャンスに賭けて、餌を食べながら育ち続ける。
子供の身体と精神よりも、大人の方が「強くなる」のは、間違いない。
自分で道を切り開くならば、育った方が、断然、いい。
檻の中で順調に育つ間に、周りだって見えてくるだろう。
年月が経てば、新しいミュウが生まれ始める。
それを察知するだけの「力と知恵」も、身についていそう。
(檻の数が増えて来たとか、その程度ならば、見れば分かるし…)
もっと詳しく知りたかったら、人類どもの心を読めばいいんだ、とニヤリと笑う。
研究者たちも、檻と外との移動をさせる者たちも、「メンバーズ」ではない。
サイオンに対する訓練などは受けていないし、隙を狙えば「読み取れた」だろう。
(そうすりゃ、俺の知識も増えていくしな)
具体的な脱出プランも立てられそうだ、と思う通りで、人類は、まだ無防備だった。
彼らがメギドを持ち出す前に、施設を破壊し、仲間たちを連れての脱出も可能。
(宇宙船を奪って、逃げるにしたって…)
アルタミラ事変でも出来たわけだし、ぶっつけ本番で出来ると思う。
(もっとも、事前に準備するなら…)
操縦出来る者もつけて奪えばいいんだ、と「物騒なこと」を考え付いた。
脱出した仲間たちを引き連れ、宙港に着いたら、どの船を奪うにしても、選び放題。
(食料などを、たっぷり積んでて、大型船で…)
武装していりゃ、お誂え向きだ、と「夢のよう」でも、実際、あったに違いない。
人類軍の船が寄港していれば、充分、有り得る。
(物資を補給してる間は、殆どのヤツが船を降りるし…)
そういう船を奪うまでだな、と「脱出コース」を描き出す。
船に残っている者を「制圧する」のは、タイプ・ブルーなら苦にもならない。
最低限の者を船に残して、他は降ろして、操縦者に「出せ!」と命じるだけ。
(船を攻撃された所で、俺さえいれば…)
丸ごとシールド出来るんだ、と「タイプ・ブルー」の能力をフルに発揮しての脱出劇。
逃げ出した後は、アルテメシア時代と同様、隠れながらの日々になるだけ。
(アルタミラにも、雲はそこそこ…)
あったわけだし、其処に潜んで、ミュウの子供を救出しながら「時を待つ」。
奪い取った船の操縦にしても、人類軍の者から知識を読み取り、出来るようになる。
(そうすりゃ、元の乗員の記憶を消して、地上に戻して…)
ミュウだけの船の出来上がりだ、と大満足で考える内に、不意に思い出した。
(…ありゃ?)
前のあいつは、と顔が浮かんだ「前のブルー」は何処にいるのか。
(…俺よりも後に生まれるんだし、船の何処かに…)
乗っていてくれると思うけれども、タイプ・ブルーではない「ただのミュウ」。
(俺がタイプ・ブルーなら、タイプ・グリーンか?)
実際とは逆になるんだしな、と「前のブルー」の居場所を探してみる。
脱出劇の時にいたのか、その後に「救い出した」子供か、どちらにしても、影が薄そう。
(成人検査直後か、チビの子供が、船にいたって…)
大脱出を指揮した「ハーレイ」と出会う機会は、そうは無い。
ハーレイは多忙な日々を送って、ブルーは船で教育されている日々。
(…果たして、会える時が来るやら…)
おまけに会っても「一目惚れ」なんか無さそうだよな、とハーレイは天を仰いだ。
もっとも、書斎の中に空は無いから、仰いだ先には「天井」だけれど。
(ブルーに会っても、チビの子供が、頑張ってるだけで…)
可愛い子だな、と思う程度で、惚れ込んだりはしないだろう。
ブルーの方でも、多分、同じで、「船で一番偉い、おじさん」を尊敬の目で見上げるだけ。
(教師にしたって、俺が如何に偉いか、日頃、教えているんだろうし…)
気安く口を利ける人ではない、とブルーは思い込んでいる。
最初の出会いは「挨拶」くらいで、それから後も、接点は大して無いままなのに違いない。
(…あいつがいたって、お互い、惚れ込まないんじゃなあ…)
最後まで「ただの仲間」なだけか、と思うものだから、それは勘弁願いたい。
(…前の人生、サイオン・タイプが、違っていたら…)
大惨事だ、とハーレイは首を竦めて、改めて神に感謝した。
前の自分がタイプ・ブルーなら、ブルーと出会っても、恋は無いから。
お互い、相手に惚れ込むことが無いまま、人生、終わっていただろうから…。
違っていたら・了
※前の生で、自分がタイプ・ブルーだったら、と考えてみたハーレイ先生。順調そう。
脱出も上手くいきそうですけど、ブルーに出会っても恋をしない人生。悲しいですよねv
