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どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。



ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。

この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
 
※お知らせ。emoji
 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、お気に入りがあればポチッとどうぞ。
 
      
過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。

※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。emoji
 何処から読んでも無問題ですv

  
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
 
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
 
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
 
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。

拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!

書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。

書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。

書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。

書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。

書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
 
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。

書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。

拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
 
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
 
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。

書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
         
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
    
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。

書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
     
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
 
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
        
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
        
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
          
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
          
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
           
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
             
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
                        
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
            
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
 
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。

書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
   
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
    
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
     
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
       
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
        
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
 
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
  
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
   
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。

書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
     
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。

書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
   
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
    
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
  
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
          
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
          
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。

書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
 
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
              
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
               
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。

書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
                               
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
                                 
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。

書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
                           
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
                           
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
 
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
  
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
   
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
    
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
     
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。

書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
      
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
        
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
          
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
          
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。

書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
 
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。

書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
  
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
              
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。

書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
                 
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
                 
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。

書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
 
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
                    
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
                                                    
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。

書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。

書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
                                                
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
                                       
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
                                        
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
                                         
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
                                            
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。

書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。

書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
                                      
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。

書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
 
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
                                          
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
                              
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
                          
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。

書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
                              
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
                            
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
                                               
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。

書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。

書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
                       
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
 
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。

書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。

書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
 
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
                       
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
                                  
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
                        
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
                           
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。

書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
                       
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。

書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。

書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。

目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらvemoji
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/

目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/

目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/600/

目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/727/
        
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 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、励ましにぽちっと…貰えると感謝。

※拍手下さった方、ありがとうございます~!emoji
     
                     
                       
           


       

拍手[2回]

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(…転勤か…)
 あれが運命の出会いだったな、とハーレイが、ふと考えたこと。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(…心臓が止まりそうになったんだが…)
 いきなり生徒が血塗れなんだし、と衝撃の瞬間は忘れられない。
 ブルーに聖痕が現れた日のことで、居合わせた教師は、ハーレイだけだった。
 事故だと思って駆け寄った途端、膨大な記憶が蘇って来た。
 遠く遥かな時の彼方で、自分が何と呼ばれていたのか、血塗れの生徒が誰なのかも。
(……まさに運命の巡り合わせで……)
 奇跡のように再会出来たのが、前の生での愛おしい人。
 今日は会えずに終わったけれども、明日には、きっと会えるだろう。
 明日が駄目でも、明後日もある。
 その次の日も、ちゃんとあるのだし、週末はブルーの家を訪ねるのだから。


 もっと早くに出会いたかった、と思う気持ちは否定出来ない。
 神様が決めた巡り合わせだけに、「あの日しか無かった」と分かってはいる。
 前の学校で引き留められたせいで、着任が遅れてしまったのも仕方ない。
 それでも「もしも」と考えるほどに、ブルーと再会してから後の人生は素晴らしい。
(あいつに会えていなかったなら、今日の俺だって…)
 ただの寂しい独身人生、とハーレイは苦笑してしまう。
 ブルーと再会する前の自分が「寂しい独身」だったとは、まるで思いはしないけれども。
 独身人生には違いなくても、ハーレイなりに日々を楽しんでいた。
 ジョギングをしたり、料理に凝ったり、趣味の読書に勤しんだりと、自分の時間を有効活用。
 教師の仕事が多忙な時でも、一人暮らしに不満を覚えはしなかった。
(残業を済ませて家に帰ったら、真っ暗な部屋でも…)
 灯りを点けたら明るくなるのだし、寂しさなどは感じない。
 どちらかと言えば、ブルーと出会った後の今の方が、そうした場面で寂しくなる。
(…帰って来たって、あいつは家にいないんだしな…)
 そいつが寂しい、とブルーの顔を思い浮かべたら、溜息が一つ零れ落ちた。
 「帰ったら、ブルーが迎えてくれる暮らし」は、まだ何年も待たないと来てはくれない。


 ブルーが結婚出来る年の十八歳にならない限り、この家で一緒に暮らせはしない。
 今の学校を「ブルーが卒業してから」の話で、四年近くもかかる勘定。
(…それまでの間は、学校の中か、あいつの家くらいでしか…)
 会えるチャンスは来ないわけだ、とハーレイは寂しく思うのだけれど、待つしかない。
 あと四年ほど待っていたなら、この家にブルーを迎えられる。
(……たった四年だ……)
 俺の任期は、その後、数年くらいだろうな、と「今の学校」で過ごす期間を考えてみた。
 同じ学校に何年いるかは、厳密に言えば、明確な決まりは設けられていない。
 「このくらいだ」という目安はあるのだけれど、誰もが「そうなる」わけではない。
(現場と、周りの状況次第で…)
 同じ学校で長く教師をする者もいれば、短めの期間で転勤してゆく者も少なくなかった。
 ハーレイの場合も、長く勤めた学校もあれば、そこそこの期間で別れた学校もある。
 今の学校が「どちらになるのか」は、任期が終わるまで分からないだろう。
 早い転勤になったとしたなら、ブルーが在学している間に、他の学校に移ることになる。
 いくら「ブルーの守り役」だからと言っても、特別扱いは無いかもしれない。
(そもそも、あいつが卒業しちまったら…)
 守り役を続けられはしないし、卒業までの期間限定で、その任に就いているというだけ。
 学校の側で、やむを得ない事情が出来てしまえば、任期が終わるよりも前に、転勤もある。


(…運次第か…)
 あいつの卒業まで、今の学校で教師をしてるかどうかは、とハーレイは気付かされた。
 何処かの学校で「ハーレイ」のような人材が必要になったら、転勤だろう。
 今すぐとまでは言われなくても、年度末には辞令が出る。
 「この学校に赴任してくれ」と指示が来た時は、従うしかない。
(…転勤したら、今の暮らしは続けられないよな…)
 仕事帰りに、あいつの家に寄り道なんぞは出来やしないぞ、と一番に考えた。
 転勤先の学校が、ほんの近くで、隣の校区くらいだったら、帰り道に寄ることも出来る。
 とはいえ、そうそう幸運は無くて、過去の経験からしてみても、新しい学校がある場所は遠い。
(隣の校区どころか、このデカい町の反対側で…)
 車を飛ばして走って来たって、半時間以上はかかるとかな、と溜息が出そう。
 来られない距離ではないのだけれども、帰りに気軽に行けそうにない。
(第一、俺には苦ではなくても…)
 ブルーの両親は、そうは考えないだろう。
(わざわざ時間を作って、遠い所から来るわけだから…)
 恐縮するのは目に見えているし、もうそれだけで、充分に高いハードルだった。
 毎日など、とても来られない。
(せいぜい、週に一回か二回…)
 家に行ければ上等だ、という気がする。
 今は近いから、金曜日の仕事帰りに寄っていたって、土曜も平気で訪問出来る。
 ところが、「遠路はるばる」となった場合は、金曜に時間が取れたとしても、行きにくい。
 ブルーの両親に「息子のためだけに、申し訳ない」と、気を遣わせてしまうだろうから。


 こいつは困った、と「転勤」の文字が、ハーレイの頭の中で回り始める。
 ブルーと一緒に暮らし始めた後のことなら、問題は無い。
 「来年から、別の学校らしい」とブルーに告げれば、それでおしまい。
 ブルーが「そうなの? ぼくも知ってる学校かな?」と知りたがる程度。
(でもって、俺が転勤してから後に、ドライブついでに…)
 「此処が新しい学校なんだ」と、ブルーに車から見せてやればいい。
 グラウンドに知り合いの教師がいたなら、駐車場に車を止めたっていい。
(俺の嫁さんだから、学校の中を見せてやってもいいだろうか、と…)
 尋ねさえすれば、多分、断られはしないだろう。
 「どうぞ、どうぞ」と招き入れてくれて、グラウンドだけを見るつもりでも…。
(校舎の中まで見せてくれるとか、運が良ければ、ちょいとお茶まで…)
 淹れて貰えることもあるよな、と自分もやったことがあるから、想像がつく。
 部活の指導で学校にいた時、何度か、そういう場面があった。
(鍵を開けなきゃ、校舎に入れないなら別なんだが…)
 開いているなら、中に入って見て貰っても構わない。
 お茶を出せる場所があった時には、お茶を淹れたし、後で咎められることも無かった
(…新しい職場が、結婚した後に来たら、そのコースで…)
 ブルーを案内出来るけれども、その前だったら、ピンチでしかない。


(……あいつを案内してやるどころか、家にも御無沙汰……)
 月に何回、顔を出せるやら、と考えただけで頭痛を覚えてしまいそう。
 ハーレイ自身も寂しいけれども、ブルーは「寂しい」どころの騒ぎではない。
 今でさえ、「ハーレイ、来てくれなかったじゃない!」と不満げな顔を見せる日がある。
 転勤して学校で会えない上に、家にも殆ど来ないとなったら、どうなることやら。
(それこそ毎日、泣きの涙で…)
 過ごしかねんぞ、と思うものだから、転勤は勘弁して欲しい。
 いくら人材が不足していて、「ハーレイ先生、是非に!」などと、頭を下げて頼まれても。
 「行ってくれるなら、特別に手当てを出すから」と、給料を上げる条件を出されても。
(あいつが本当に必要なものは、守り役じゃなくて…)
 前の生での恋人なんだ、と分かっているから、祈るしかない。
 転勤の話が来るかどうかは、もう本当に、運の問題。
 何処かで人材が不足しない限り、今の学校にいられる期間は、充分にある。
 ブルーが卒業してゆく年を迎えても、まだ数年は勤められる筈だった。
(……神様、どうぞ、今の学校で……)
 当分の間、お願いします、とハーレイは祈らないではいられない。
 ブルーが在籍している間に転勤したら、大変だから。
 ハーレイが寂しく思う以上に、愛おしい人が寂しがる上、涙を流す日々だろうから…。



          転勤したら・了


※転勤について考えてみた、ハーレイ先生。ブルー君と結婚した後なら、問題はゼロ。
 けれど、ブルー君が卒業する前に、転勤となると、とんでもないことになりそうですねv






拍手[0回]

「ねえ、ハーレイ。困った時には…」
 人に頼る方がいいのかな、と小さなブルーが尋ねて来た。
 二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
 何か困ったことでもあるのか、とハーレイの方も問い返す。
 急に訊かれても、質問の答えを出すことは出来ない。
「俺に訊く前に、まずは訊きたいヤツというのを…」
 きちんと整理してからにしてくれ、と注文をつけた。
 ブルーが何で困っているのか、状況によって答えが異なる。
 そう説明したら、ブルーは「分かった」と、素直に頷いた。
「あのね…。ぼくがハーレイに訊いているのは…」
 解決までの道のりなんだよ、とブルーは少し首を傾げた。


 ブルーが言うには、一般論を知りたいらしい。
 何か困ったことが出来たら、自分で解決するべきなのか。
 それとも人に頼っていいのか、どちらなのか。
「ハーレイは、どっちが立派だと思う?」
 自力で解決してしまうのと、人を頼るのと、という質問。
「ふうむ…。困りごとにもよるだろうなあ…」
 一般論にしたって、二通りだ、とハーレイは腕組みをした。
 自力で解決か、人を頼るか、どちらも正解、と。
「えっと…? それって、どういう意味?」
 分からないよ、とブルーはキョトンとしている。
「そうかもな。答えが二つじゃ、謎なんだろうが…」
 本当に両方とも正しいんだ、とハーレイは解説し始めた。


「いいか、一つは、自分で解決するべきヤツで…」
 困りごとの原因がハードルの時だ、とブルーに語る。
「自分で乗り越えなくちゃならん時には、ハードルだな」
「…ハードル?」
「ああ。分かりやすく言うなら、宿題もそうだ」
 学校で出される宿題ってヤツは大事で、やらなきゃいかん。
 それも自分で仕上げてこそで、人を頼っちゃいけないんだ。
 自分の力がつかないからな。
「…そっか…。自分でやらなきゃ、意味が無いよね」
「分かったか? 難しそうに見えていたって、実はだな…」
 宿題は出来ることしか出さない、と教師の立場から説いた。
「学校で習った知識の範囲で、答えは導き出せるんだ」
 きちんと発展させてやればな、と宿題の意義も教えてやる。
 知識をモノにしてゆくためにも、人に頼るな、と。


「そうだよね…。だったら、もう一つの正解の方は?」
 人に頼るのは、どんな時なの、とブルーは興味深々らしい。
 答えが二つあるというなら、もう一つは、と。
「そうさな、そっちはハードルと言うよりは、壁で…」
 壁を乗り越えるのは難しいだろ、とハーレイは語ってゆく。
 乗り越える人も、ぶち壊す人も、いないことはない。
 とはいえ、どちらも出来ない人が多くて、頼るのが早い。
「例を出すなら、家で使う何かが、故障したとか…」
 お前、洗濯機とかを修理出来るか、とハーレイは訊いた。
「ううん、出来ない…」
「それが普通だ、人に頼るしかないヤツだぞ」
 洗濯出来なきゃ困るんだから、と軽く肩を竦めてみせる。
「手洗いしとけばいいじゃないか、というヤツも…」
 無理に動かしちまうヤツも、とハーレイは苦笑した。
「どちらもゼロとは言いやしないが、ダメなヤツだろ?」
 根本的な解決、出来てないしな、というのが正解の理由。
 修理しないと駄目な機械は、人に頼んで修理すべきだ、と。


 そういったわけで、正解は二つ。
 ブルーが知りたい一般論というのが、二つに分かれる。
「うーん…。ぼくの困りごと、どっちなのかなあ…?」
「なんだ、困りごと、持っていたのか?」
 人に頼る方なら力を貸すぞ、とハーレイは笑んだ。
「せっかく俺がいるわけなんだし、遠慮なく頼れ」
「本当に? 難しいかもしれないのに?」
 頼ってもいいの、とブルーは瞳を瞬かせる。
「いいさ、機械の修理じゃなさそうだしな」
 何も壊れていなさそうだし、とブルーの部屋を見回す。
「せいぜい、掃除の手伝いだろ?」
 チビのお前じゃ届かないとか、と天井を指した。
 そうしたら…。


「あのね、チビには違いないけど…」
 チビになったせいで、キスが貰えなくて、という困りごと。
「ハーレイ、頼っていいんだよね?」
 ぼくにキスして、と頼って来たから、叱り飛ばした。
「馬鹿野郎! そいつは壁じゃない、ハードルの方だ!」
 成長したら乗り越えられるしな、と銀色の頭を拳でコツン。
 叩いても、痛くないように。
 「そいつは自力で解決するモンだ」と、お説教つきで…。



        困った時には・了




拍手[0回]

(…タイプ・ブルーかあ…)
 今は、そこそこいるんだよね、と小さなブルーは、ふと考えた。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(ぼくの身近には、いないんだけれど…)
 人間が全てミュウな今では、タイプ・ブルーも少なくはない。
 「サイオンは使わない」ことが社会のマナーだから、空を飛ぶ人などがいないだけ。
(…飛べないタイプ・ブルーなら、此処に一人…)
 今のぼくだって、タイプ・ブルーなんだけどな、と苦笑してしまう。
 前の生で自在に使えたサイオン、それが不器用になってしまった。
(思念波も、ろくに紡げないから…)
 人類の方に近いのかも、と思うくらいに、今のブルーは「ミュウらしくない」。
 時の彼方で「そう」だったならば、成人検査も通過していそう。
(…シロエはともかく、マツカの方はバレていなくて…)
 キースの側近を勤め上げたほどだし、前のブルーでも、生き延びられたろう。
 身体が弱い点があるから、研究者か何か、大人しい仕事に就いて、平穏無事な生涯。
(…表に出てない、タイプ・ブルーなら…)
 そう出来たんじゃあ、と思ったはずみに、別の考えがヒョイと浮かんだ。
(…タイプ・ブルー、前のぼくじゃなくても、良かったんじゃあ…?)
 他の人でも務まったよね、と仲間たちの顔を頭に描いた。
 ゼルでもいいし、ヒルマンでもいい。
 女性の「ソルジャー」も、ダメということは無かっただろう。
(一応、女性の基本は、ママになることで…)
 養父母コースが一般的だったけれど、軍人やメンバーズにだって、女性がいた。
 エラやブラウがタイプ・ブルーだったとしても、不都合な点はありそうにない。


(……だけど、一番、向いていそうなのは……)
 ハーレイじゃないかな、と前の生からの恋人の名を挙げてみた。
 キャプテン・ハーレイだったわけだし、ソルジャーも充分、務まりそう。
(…ソルジャーとして、やっていくために、ビジュアルの方は…)
 関係無いと思うんだよね、と「前の自分との違い」を、ブルーは一蹴した。
 「ソルジャー・ブルー」は今の時代も、写真集が編まれるくらいに「美しかった」。
 逆に「キャプテン・ハーレイ」の方は、「美しくない」と評判だった。
(…シャングリラの女の人たちが作ってた、薔薇の花びらで出来たジャム…)
 数が少なくて、配る時にはクジ引きをした。
 そのクジが入った箱が、ハーレイの前だけを素通りしたほど、不似合いとされていた。
(前のハーレイ、綺麗じゃないから、薔薇のジャムなんか、似合わないって…)
 決め付けられて、クジ引きの対象からは除外だった。
(だけど、そんなの、シャングリラが平和だったからの話で…)
 戦いの道を走ってゆくなら、顔の美醜は意味が無い。
 サイオンが強くて「戦える」ことが、ソルジャーの唯一の条件と言える。
(指導者としての資質だったら、ハーレイだって、充分あったし…)
 ハーレイがピッタリ、と「前の生で、タイプ・ブルーになれそうな人」に選び出した。
 前の自分と違う人でも、かまわないんじゃあ、と想像の翼を羽ばたかせる。
 「もしも、タイプ・ブルーに生まれた人が、違っていたなら」と。


 遠く遥かな時の彼方で、最初に「誕生した」ミュウ。
 実際はブルーだったけれども、ただのミュウなら、先に生まれていたかもしれない。
(タイプ・ブルーじゃなければ、成人検査で何かあっても…)
 検査用の機械は壊れないから、誰も気付きはしないだろう。
 「ミュウの存在」が知れた後でも、マツカが無事に通過していた例もある。
(…前のハーレイが、タイプ・ブルーだった場合は、最初のミュウになるわけで…)
 タイプ・ブルー・オリジンだよね、と「前の自分」に人類がつけた名前を進呈した。
 成人検査の機械を壊して、サイオンに目覚めた前のハーレイに、想像の中で。
(…タイプ・ブルー・オリジン…)
 そう呼ばれるようになった「前のハーレイ」は、どうするだろう。
(ぼくとは、色々、違っていそう…)
 目覚めた時から違いそうだよ、と容易に分かる。
 前のハーレイも「頑丈だった」から、力に目覚めて、保安部隊が駆け付けたって…。
(うんと落ち着いて、対応出来そう…)
 シールドを展開するのも、銃撃を防いだ後の行動にしても。
(いくらハーレイでも、初めてサイオンを爆発させたら…)
 身体の方がついてゆきはしないし、保安部隊に取り押さえられてしまいそう。
(でも、取り押さえられてるって段階で、前のぼくとは…)
 大違いだし、と前の自分の「情けなさ」に溜息が出そう。
 前の自分は気を失って、気付いた時には、檻に閉じ込められていた。
 ハーレイの場合は、小突かれながら、檻に連れて行かれて、押し込まれるのに違いない。
(頑丈なミュウで、心だって、うんと強かったから…)
 檻の中での暮らしが始まったって、絶望したりはしないだろう。
(ぼくみたいに、成長を止めてしまって、子供のままで…)
 全て諦めて生きてゆくより、前を見詰めて生きてゆきそう。
 「いつか必ず、此処を出てやる」と、人体実験に耐えて、歯を食いしばって。


(…ハーレイだったら、出来そうだよね…)
 最初から、タイプ・ブルー・オリジンらしい生き方、と誇らしくなる。
 前の生から愛する人だし、想像の中でも、頼もしい。
(人類がメギドを持って来る前に、仲間たちを逃がして脱出だって…)
 ハーレイだったら、きっと出来るよ、と夢が広がる。
 人類が「ミュウ」を脅威と位置付ける前に、動き出していたら、逃げられただろう。
 研究施設の警備が甘くて、研究者たちも「考え方が甘かった」頃だったならば、出来た。
(ハーレイのサイオンで、研究施設を吹っ飛ばして…)
 収容されているミュウの独房だけを、きちんとシールドすれば、脱出は可能。
 破壊した施設から「仲間たち」を救って、宙港まで逃げてゆけばいい。
(船は沢山あった筈だし、良さそうな船を制圧して…)
 操縦者つきで宇宙に飛び出し、それから後は、アルテメシア時代のような位置付け。
(隠れられそうな場所を見付けて、其処に潜んで…)
 アルタミラで生まれる「ミュウの子供」を救い出しながら、待ち続ける。
 人類と本格的な戦闘に入って、地球を目指して舵を切る日まで。
(…前のぼくより、うんと早めに…)
 地球に行けそう、とブルーは笑みを浮かべる。
 ハーレイだったら、自分の寿命が尽きるよりも前に、地球まで辿り着くのに違いない。
 「後継者探し」などはしないで、グランド・マザーも、システムも全て、自分で倒して。
(…そうなりそうだよ…)
 ハーレイの方が良かったんじゃあ、と思えてしまう「タイプ・ブルー・オリジン」。
 時の彼方で最初に生まれる、伝説のミュウ。


 そっちの方が良さそうだよね、と考える内に、ハタと気付いた。
 もしも「ハーレイ」が、タイプ・ブルー・オリジンだったら、前のブルーは、どうだろう。
(ハーレイの代わりに、タイプ・グリーンなのかな?)
 それはいいとして、何処で「ハーレイ」に出会うかが、大いに問題。
 上手い具合に「ハーレイよりも後に生まれて」、子供だったとしても、厄介そう。
(…研究施設で、脱出の時に、見付けて貰えても…)
 ハーレイは「とても忙しい」から、自分で探しに来てくれるかどうか。
 仲間を指揮して陣頭なのだし、別の誰かが来るかもしれない。
(…ハーレイが来たら、ぼくを見付けて…)
 「おい、坊主! 大丈夫か? 急げ、逃げるぞ!」と手を引いてくれても…。
(他の人だと、そうはいかないよね…)
 その人が、手を引いて逃げてくれても、ハーレイと出会えるわけではない。
 ハーレイは指揮を執り続けたまま、船が宇宙へ出ることだろう。
(…後は、ハーレイ、船のトップで…)
 やるべきことが山とあるから、ブルーにまで目を配れはしない。
(もっと後になって生まれて来たって、救出されて…)
 ハーレイの船に迎え入れられるだけで、挨拶だけで終わってしまいそう。
 ブルーを待っているのは「子供の世話をする係」や教師で、ハーレイは来ない。


(……うーん……)
 運命の出会いをしてるチャンスは無さそう、と愕然となった。
 ハーレイが「ブルー」に一目惚れしてくれる機会は、全く無さそうなコース。
(…ぼくにしたって、どうなのかなあ…?)
 尊敬している人で終わって、それだけになってしまうのかも。
(ソルジャー・ハーレイ、凄い人だ、って…)
 見上げて暮らすだけの人生、恋は生まれず、別の誰かと生きてゆくかもしれない。
(…そんなの、困ってしまうから!)
 タイプ・ブルー・オリジンがハーレイだなんて、と思うものだから、神に心から感謝した。
 前の自分の人生は辛い部分も多かったけれど、幸せだった。
(タイプ・ブルー・オリジン、前のぼくとは違っていたなら…)
 ハーレイと恋が出来ないんだよ、と「ぼくで良かった」と、ホッと安堵の溜息をつく。
 「あれでいいんだ」と、「ハーレイじゃダメ」と…。



            違っていたなら・了


※前の生でのサイオン・タイプ。ブルーではなくて、ハーレイがタイプ・ブルー。
 地球へは早く行けそうですけど、恋をしているチャンスが無さそう。困りますよねv






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(…タイプ・ブルーか…)
 今のあいつも同じなんだが、とハーレイが思い浮かべた、ブルーの顔。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
(ついでに言えば、今の世の中、タイプ・ブルーのヤツは、そこそこ…)
 いるんだよな、と面白くもある。
 珍しいことには違いなくても、前の生の頃ほど希少ではない。
(サイオンを使わないのがマナーなせいで、誰がそうかは分かりにくいが…)
 空を飛んでるヤツもいないし、と笑みが零れて来る。
 瞬間移動をしている者にも、街中でお目にかかれはしない。
(お蔭で、ブルーが不器用なのも、目立たないよな)
 あいつはサイオンが、まるで駄目だし、と可笑しいけれども、事実だった。
 今のブルーは、サイオンの扱いが上手ではない。
 持っていないのと変わらないほど、何も出来ないと言ってもいいだろう。
(…あいつ、悔しがっているんだが…)
 平和な世界の証拠だ、と嬉しくもある。
 タイプ・ブルーの出番が無いのは、ミュウの時代になったからこそ。
 今も人類と戦っていたら、ブルーのサイオンも、眠ってはいない。
(何処かで必ず、目を覚まして…)
 前の生と同じに戦うことになっていた。
 そうはならずに済んだ世界は、青い水の星まで蘇っている。


(神様に、感謝しないとな…)
 前のあいつは可哀相すぎた、と考えていて、ハタと気付いた。
(なんで、あいつがタイプ・ブルーだったんだ…?)
 別に俺でもいいじゃないか、と思わないでもない。
 ブルーよりも遥かに頑丈なのだし、そちらの方が良かったのでは、という気がする。
(前の俺は、タイプ・グリーンに生まれたんだが…)
 違っていたら、とハーレイは顎に手を当てた。
 ブルーではなくて、前の自分が「タイプ・ブルー」だった場合、どうなっていたのか。
(……ふうむ……)
 目覚める条件としては、成人検査でいいんだよな、と前のブルーと重ね合わせる。
 成人検査を受けに行ったら、記憶を消去されそうになって、前のブルーは覚醒した。
(俺にしたって、多分、そうだろう)
 あまりハッキリ覚えちゃいないが、とハーレイは苦笑する。
 覚醒した後、劇的に変化した環境と、過酷な人体実験で忘れてしまった。
 とはいえ、サイオンが目覚めるほどの衝撃なのだし、記憶の消去が原因だろう。
(でもって、俺がタイプ・ブルーなら…)
 前のブルーの時と同じで、最初に現れたミュウになりそう。
 「タイプ・ブルー・オリジン」が、ブルーからハーレイに入れ替わる。
(俺の人生、出だしからして変わりそうだぞ…)
 正確に言えば途中からだが、と「成人検査」以降を想像してみることにした。
 前のハーレイは「ブルーよりも後」の生まれで、人類は「ミュウの扱い」に慣れていた。
(成人検査で判明したら、直ぐに捕獲で…)
 研究施設に送られたけれど、「最初のミュウ」となれば変わって来る。


(前のあいつは、成人検査用の機械を壊しちまって…)
 保安部隊の者が駆け付け、銃撃を受けたと、ブルーから聞いた。
 覚醒したのが「ハーレイ」にしても、そうなったろう。
(…咄嗟にシールドで受け止められても、その後がどうか…)
 ブルーは倒れちまったんだが、と前の自分と比較してみると、違うかもしれない。
 前のハーレイは「聴力が弱かった」だけで、身体の方は頑丈だった。
(銃撃されても、倒れないかもな…)
 捕獲されるのは同じだろうが、と「十四歳の子供」と、保安部隊のプロを比べる。
(タイプ・ブルーでも、目覚めたばかりじゃ…)
 爆発的な力を使った直後は、ふらついたりもするだろう。
 其処へ「戦闘のプロ」が来るわけなのだし、抵抗してみても敵いそうにない。
(…前と同じで、檻の中だな…)
 押し込まれちまって、不味い餌ばかり食わせられる日々だ、とゲンナリした。
 その上、人体実験を繰り返されるのでは、気力が失せてしまいそうだけれど…。
(なんと言っても、俺なんだしなあ…)
 不屈の精神で踏ん張りそうだ、と自分のことだから、ハッキリと分かる。
 前のブルーは「成長してみても、未来など無い」と諦め切って、成長を止めた。
(あいつだったから、そうなっただけで…)
 俺なら育ち続けそうだ、と自信ならある。
 「負けてたまるか」と起死回生のチャンスに賭けて、餌を食べながら育ち続ける。
 子供の身体と精神よりも、大人の方が「強くなる」のは、間違いない。
 自分で道を切り開くならば、育った方が、断然、いい。


 檻の中で順調に育つ間に、周りだって見えてくるだろう。
 年月が経てば、新しいミュウが生まれ始める。
 それを察知するだけの「力と知恵」も、身についていそう。
(檻の数が増えて来たとか、その程度ならば、見れば分かるし…)
 もっと詳しく知りたかったら、人類どもの心を読めばいいんだ、とニヤリと笑う。
 研究者たちも、檻と外との移動をさせる者たちも、「メンバーズ」ではない。
 サイオンに対する訓練などは受けていないし、隙を狙えば「読み取れた」だろう。
(そうすりゃ、俺の知識も増えていくしな)
 具体的な脱出プランも立てられそうだ、と思う通りで、人類は、まだ無防備だった。
 彼らがメギドを持ち出す前に、施設を破壊し、仲間たちを連れての脱出も可能。
(宇宙船を奪って、逃げるにしたって…)
 アルタミラ事変でも出来たわけだし、ぶっつけ本番で出来ると思う。
(もっとも、事前に準備するなら…)
 操縦出来る者もつけて奪えばいいんだ、と「物騒なこと」を考え付いた。
 脱出した仲間たちを引き連れ、宙港に着いたら、どの船を奪うにしても、選び放題。
(食料などを、たっぷり積んでて、大型船で…)
 武装していりゃ、お誂え向きだ、と「夢のよう」でも、実際、あったに違いない。
 人類軍の船が寄港していれば、充分、有り得る。
(物資を補給してる間は、殆どのヤツが船を降りるし…)
 そういう船を奪うまでだな、と「脱出コース」を描き出す。
 船に残っている者を「制圧する」のは、タイプ・ブルーなら苦にもならない。
 最低限の者を船に残して、他は降ろして、操縦者に「出せ!」と命じるだけ。
(船を攻撃された所で、俺さえいれば…)
 丸ごとシールド出来るんだ、と「タイプ・ブルー」の能力をフルに発揮しての脱出劇。
 逃げ出した後は、アルテメシア時代と同様、隠れながらの日々になるだけ。


(アルタミラにも、雲はそこそこ…)
 あったわけだし、其処に潜んで、ミュウの子供を救出しながら「時を待つ」。
 奪い取った船の操縦にしても、人類軍の者から知識を読み取り、出来るようになる。
(そうすりゃ、元の乗員の記憶を消して、地上に戻して…)
 ミュウだけの船の出来上がりだ、と大満足で考える内に、不意に思い出した。
(…ありゃ?)
 前のあいつは、と顔が浮かんだ「前のブルー」は何処にいるのか。
(…俺よりも後に生まれるんだし、船の何処かに…)
 乗っていてくれると思うけれども、タイプ・ブルーではない「ただのミュウ」。
(俺がタイプ・ブルーなら、タイプ・グリーンか?)
 実際とは逆になるんだしな、と「前のブルー」の居場所を探してみる。
 脱出劇の時にいたのか、その後に「救い出した」子供か、どちらにしても、影が薄そう。
(成人検査直後か、チビの子供が、船にいたって…)
 大脱出を指揮した「ハーレイ」と出会う機会は、そうは無い。
 ハーレイは多忙な日々を送って、ブルーは船で教育されている日々。
(…果たして、会える時が来るやら…)
 おまけに会っても「一目惚れ」なんか無さそうだよな、とハーレイは天を仰いだ。
 もっとも、書斎の中に空は無いから、仰いだ先には「天井」だけれど。


(ブルーに会っても、チビの子供が、頑張ってるだけで…)
 可愛い子だな、と思う程度で、惚れ込んだりはしないだろう。
 ブルーの方でも、多分、同じで、「船で一番偉い、おじさん」を尊敬の目で見上げるだけ。
(教師にしたって、俺が如何に偉いか、日頃、教えているんだろうし…)
 気安く口を利ける人ではない、とブルーは思い込んでいる。
 最初の出会いは「挨拶」くらいで、それから後も、接点は大して無いままなのに違いない。
(…あいつがいたって、お互い、惚れ込まないんじゃなあ…)
 最後まで「ただの仲間」なだけか、と思うものだから、それは勘弁願いたい。
(…前の人生、サイオン・タイプが、違っていたら…)
 大惨事だ、とハーレイは首を竦めて、改めて神に感謝した。
 前の自分がタイプ・ブルーなら、ブルーと出会っても、恋は無いから。
 お互い、相手に惚れ込むことが無いまま、人生、終わっていただろうから…。



           違っていたら・了


※前の生で、自分がタイプ・ブルーだったら、と考えてみたハーレイ先生。順調そう。
 脱出も上手くいきそうですけど、ブルーに出会っても恋をしない人生。悲しいですよねv







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