起きてゆけば「おはよう」と笑顔の両親、朝食で始まるブルーの朝。
朝の光が明るく射し込む、ダイニングのテーブルの自分の席で。
腰掛ける前に母に訊かれる、「トーストはいつもと同じでいいの?」と。
トーストの厚さも、焼き加減も好みを知っている母。
「うん!」と答えれば焼いて貰える、いつものキツネ色のトースト。
父は「たまには分厚いのも食べたらどうだ?」などと横から言いたがるけれど。
もっと食べろと、足りなさすぎだと、口癖のように言っているけれど。
朝の食卓、小さなブルーは食が細くて、沢山はとても食べられない。
トーストとミルクがあれば充分、そう思ってしまいがちだけど。
(しっかり食べなきゃ…)
大きくなれない、前の自分と同じ背丈に育てない。
前の自分と同じ背丈に育たない限り、ハーレイとキスも出来ないし…。
だから頑張って食べねばならない、トーストとミルクで充分だという気がしても。
お腹の具合が悪くなければ朝食はしっかり、それが信条。
(だけど分厚いトーストは無理…)
父のお勧めの分厚いトースト、ブルーには大きすぎるトースト。
いくらしっかり食べると言っても、それではトーストだけでお腹が一杯、もう入らない。
背丈を伸ばそうと飲み続けているミルクも、全部飲めるか怪しいくらい。
ミルクはきちんと飲みたいのだから、分厚いトーストは避けねばならない。
ついでに栄養バランスもあるし、同じ食べるならトーストの他にサラダか何か。
父の理想だとオムレツにソーセージ、野菜サラダとなるけれど。
母にしたって、卵料理とサラダくらいは、といつも勧めてくれるけれども。
朝から沢山は食べられないブルー、朝でなくとも食が細いブルー。
(オムレツくらいは…)
食べておかなくちゃ、と今日も朝から一大決心、母に頼んでオムレツを一つ。
父に言わせれば「オムレツとも言えない」、卵を一個だけ使ったオムレツ。
ブルーにしてみれば、卵一個は立派なオムレツなのだけど。
チーズを入れたりして貰った日は、とても頑張って食べたと思えるオムレツだけれど。
父にとってはオムレツは卵を二つが基本で、ブルーのオムレツは小さすぎ。
「卵一個の目玉焼きはトーストに乗せて食べるもんだぞ」などと笑われてしまう。
卵を一個しか使わないオムレツはバターやジャムと同じ扱い、トーストのお供。
食べた内にも入らないのがブルーのオムレツ、小さなオムレツ。
それでもブルーからすれば立派な一品、しっかり食べたと思えるオムレツ。
たっぷりのバターでふんわり焼いて貰って、熱々の味を頬張った。
(うん、これで…)
今日の朝食は上出来だと思う、自分でも頑張って食べていると思う。
卵一個のオムレツだけれど、父にはオムレツ扱いして貰えないオムレツだけど。
これを食べたら栄養がついて、きっと背丈も…。
(伸びるといいな…)
そう思うから、もう一頑張り。
野菜サラダを取り分けて貰った、お皿にほんの少しだけ。
トマトを一切れとキュウリとレタス、全部合わせても大した量ではないけれど。
卵一個のオムレツと、ほんの少しのサラダ。
今朝は上出来だと、よく頑張っていると、自分を褒めたい気分なのに。
父にからかわれた、「なんだ、そのサラダは小鳥の餌か?」と。
小鳥並みだと、小鳥の餌に丁度いいくらいの量しかないと。
小鳥はサラダにドレッシングをかけないのに。
フォークを使って食べもしないし、これは立派なサラダなのに。
「酷いよ、パパ!」
小鳥じゃないよ、と膨れたけれども、「いや、小鳥だ」と笑っている父。
オムレツもサラダもほんの少しで、自分から見れば小鳥並みだと。
「それじゃ大きくなれないぞ、ブルー」
これくらいは食べておかないと、と父の皿からソーセージが一本やって来た。
小指くらいのミニサイズならばまだマシだけれども、もっと大きいのが。
ブルーの目にはホットドッグの具くらいに映る大きなものが。
こんなのは無理、と叫んだけれど。
とても入らないと慌てたけれども、「大丈夫でしょ?」と笑顔の母。
「その分、おやつを少し減らしておけばいいわよ」と。
「困るんだけど!」
おやつはちゃんと欲しいんだけど、と言ったばかりに大笑いされた朝の食卓。
けれども、おやつはきちんと欲しい。減らされるだなんて、とんでもない。
(今日はハーレイが来るんだから…!)
ハーレイが来てくれる土曜日だから。
おやつは一緒に、満足のゆくだけ食べたいから。
お腹一杯でも頑張らなくちゃ、とブルーはソーセージを片付けにかかった。
朝食が済んだら、部屋の掃除を頑張ろう。
少しでも早くお腹を減らして、ハーレイと二人、幸せにおやつを食べられるように…。
朝食の風景・了
※ブルー君の朝の食卓、こんな感じになるのでしょう。頑張って食べても、この有様。
今日は朝からきっと満腹、掃除に力が入りそうですねv
- <<変わっちゃいない
- | HOME |
- 贅沢な朝食>>