(…ふふっ、大好き…)
大好きだよ、と幸せの言葉を繰り返す。
ハーレイのことが一番好き、と心の中で。
眠る前のひと時、ベッドの中で。
明かりを消した部屋で、ベッドにもぐって。
幸せな一日を振り返るひと時、至福の時間。
ハーレイは此処にいないけれども、何ブロックも離れた所にいるのだけれど。
(でも、大好き…)
誰よりも好き、と魔法の呪文を繰り返しながら微笑む小さなブルー。
大好きだよ、と。
これだけで心が温かくなる。幸せな気持ちが溢れて来る。
ハーレイと一緒に暮らせない寂しさ、それを幸せに変えてくれる呪文。
大好きだよ、と唱えるだけで。
此処にいない人の耳元で囁くかのように、心で繰り返し唱えるだけで。
それを言える人がいるのだから。恋している人がいるのだから。
(大好きでないと言えないんだよ)
それに、その人が「大好き」を許してくれないと。
でないと言葉は届きはしないし、聞いて貰える筈などもなくて。
お前なんか嫌いだと、見たくもないと言われてしまえばそれでおしまい。
片想いどころか恋は破れて、失恋するしかないわけで…。
(キスは許して貰えないけど…)
許して貰える「大好き」の言葉。
何度言ってもハーレイは決して叱りはしないし、怒りもしない。
それは穏やかに笑ってくれるか、「俺もだ」と優しく抱き締めてくれるか。
大好きな人は同じだけ「大好き」を返してくれる。
自分みたいに抱き付く代わりに、甘える代わりに、ハーレイだから出来るやり方で。
(ホントのホントの、ホントに大好き…)
今日もハーレイと共に過ごした、幸せな時間を二人で過ごせた。
キスは出来なくても、「大好き」を確かめ合える時間を。
「大好き」と何度も言える時間を、ハーレイに「大好き」を届けられる時間を。
そして貰った、沢山の「大好き」。ハーレイから貰った「大好き」の気持ち。
「大好き」と自分が言った分だけ、もしかしたら、もっと、もっと沢山。
(ハーレイもぼくのことが好き…)
だからこそ言える「大好き」の言葉。ハーレイからも貰える「大好き」。
ハーレイは「大好き」と言いはしないけれど、「好きだ」と言ってくれるのだけれど。
そうでなければ「愛している」。「俺もお前を愛している」と。
(愛してる…)
ハーレイの真似をして言ってみた途端、恥ずかしさで染まってしまった頬。
胸の奥がキュウッとなってしまって、「愛してる」とはもう言えない。
(…大好きと同じなんだけど…!)
言ってることは同じなのに、とパジャマの胸元を押さえれば脈打つ鼓動。
ドキドキと高鳴る心臓の音。
(…前のぼくって…!)
どうして何度も言えたのだろうか、「愛してる」と。
「大好き」と同じに聞こえるけれども、「愛してる」はもっと熱い響きで。
キスを交わすのと変わらないくらい、きっと大人が使う言葉で。
(ぼくって、やっぱり…)
チビなのだろうか、ハーレイが言う通り子供だろうか?
「愛してる」とハーレイに言えないから。
眠る前の呪文で真似てみてさえ、この始末だから。
「大好き」がお似合いの小さな子供で、恋をするにはまだ早すぎで…。
(ううん、そんなこと…)
絶対にない、と思うけれども、もう言えない。
「愛してる」とは繰り返せない。
だから続ける、「大好きだよ」と。
幸せな眠りに落ちてゆきながら、「ハーレイのことが大好きだよ」と…。
大好きの言葉・了
※ハーレイ先生と幸せに過ごした日の夜、こんな風にして眠るのでしょう。
一緒に暮らせなくて寂しい分だけ、「大好き」の言葉の呪文ですv