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「ねえ、ハーレイ。復習するのは…」
 大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「復讐だと!?」
 また物騒な話だな、とハーレイは面食らった。
 前のブルーも、そうだったけれど、今のブルーも大人しい。
(…こいつが、復讐するだって…?)
 いったい何が起こったんだ、と鳶色の瞳を見開くしかない。
 友人と喧嘩をしたにしたって、復讐というのは極端すぎる。
「おいおいおい…。そりゃ、大事かもしれないが…」
 黙っていたんじゃダメなんだが…、とハーレイは説いた。
「しかし、仕返しするのは勧めないぞ」
 他の手段を考えてみろ、とブルーの赤い瞳を覗き込む。
「仕返しされたら、相手も腹が立つからな」
 やり返されてヒートアップだ、と諭してやる。
 火に油を注ぐような真似はするな、とブルーを見詰めて。


「えっと…? ハーレイ、勘違いしていない?」
 ぼくが言うのは復習だよ、とブルーは同じ言葉を口にした。
「確かに、響きはソックリだけど、予習の反対」
「…はあ?」
 そっちなのか、とハーレイの目が真ん丸になる。
 予習なら、今のブルーに似合いで、予習するから優等生。
(…しかしだな…)
 復習も当然している筈なのに、思い付きさえしなかった。
(…だから、復讐だとばかり…)
 すっかり勘違いしちまったんだ、とハーレイは苦笑する。
 「復習の方で良かったよな」と、心の底からホッとして。
「悪かった、俺の勘違いだ」
 お前だって復習するだろうに、とブルーに頭を下げる。
「俺が来る前に、宿題とセットで、熱心にな」
「うん。積み残したら、後で困っちゃうしね」
 習って初めて、分かることもあるから、とブルーは笑んだ。
 「予習してても、間違えちゃってる時もあるし」と。
 今のブルーは優秀だけれど、失敗することもあるらしい。
 「古典とかね」と、ペロリと舌を出した。
 「前のぼくだと知らない言葉で、難しいから」と、正直に。


 今のハーレイは、古典の教師。
 ブルーが「予習していても、間違える」のが少し嬉しい。
 前のブルーに教えたものは、生活の知識が多かった。
 いわゆる「勉強」は、教える機会などは無かった。
(…ヒルマンとエラがいたからなあ…)
 俺の知識じゃ敵わなかった、と認めざるを得ない昔のこと。
 それが今度は、「教えてやれる」ものがドッサリ。
 だからブルーに微笑み掛けた。
「なるほど、そっちの復習か…。大事なことだぞ」
 古典は厄介な分野だしな、と脅してもみる。
「今は普通の文字で読めるわけだが、上の学校だと違うぞ」
「えっ?」
 何があるの、と驚くブルーに教えてやった。
「うんと昔の頃は、書いてある文字が今と違うんだ」
 文字は同じでも筆で流れるように書くとか…、と説明する。
「まだ平仮名が無くて、漢字ばかりとかな」
「ええ……」
 そんなの、ぼくじゃ歯が立たないよ、とブルーは嘆いた。
 「予習どころか、復習ばかりになっちゃいそう」と。
「そうなるな。俺も苦労をしたもんだ」
 復習だけで精一杯で、とハーレイは肩を竦めてみせる。
 「柔道と水泳がメインだったし、予習までは無理だ」とも。


「そうなんだ…。だけど、今では先生だよね」
 復習はホントに大事みたい、とブルーは感心している様子。
 「ハーレイ、古典の先生だもの」と尊敬に溢れた眼差しで。
「俺が実例というわけだ」
 復習も大いに頑張れよ、とハーレイはブルーを激励した。
 「予習するのも大事なんだが、復習もだ」と。
「分かった! それじゃ、復習しておかないと…」
 困る前に、とブルーは立ち上がるから、勉強かもしれない。
 帰宅してから時間が足りずに「積み残した」分の復習。
(よしよし、勉強するんだったら…)
 休みの日でも頑張るべきだ、と思ったのだけれど…。
(…何なんだ、俺に質問か?)
 積み残したヤツは古典なのか、と近付くブルーを眺める。
 「教科書を持って来ればいいのに」と考えながら。
 そうしたら…。


「キスの復習、しなくっちゃね!」
 前のぼくしかしてないから、とブルーが顔を近付けて来た。
「いざという時、下手になってたら、困っちゃうでしょ?」
「馬鹿野郎!」
 それが普通だ、とハーレイはブルーの顔を躱して睨んだ。
「いいか、世の中、普通は初心者ばかりなんだぞ!」
 予習しているヤツもいなけりゃ、復習もだ、と叱り付ける。
「 そんな復習、しなくてもいい!」と、拳を軽く握った。
 銀色の頭に一発お見舞いするために。
 どうせブルーは懲りないけれど、けじめだから、と…。



       復習するのは・了





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(今日は、失敗しちゃったよね…)
 ママが教えてくれてたのに、と小さなブルーが零した溜息。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…ママが作った、スイートポテト…)
 今日のおやつは、それだった。
 学校から帰る時間に出来上がるように、母が調整してくれていた。
(だけど、ちょっぴり…)
 帰宅した後、出遅れた。
 着替えたまでは良かったけれど、其処で机の上に気を取られた。
 昨日の夜に、途中まで読んだ本を置いてあったせいで。
(続き、とっても気になってて…)
 昨夜は寝るのが惜しかったほどで、夜更かししてでも読みたかった。
 けれど、身体は丈夫ではない。
 夜更かししたなら、風邪を引くとか、ろくなことにはなりそうもない。
(だから諦めて、大人しく…)
 ベッドに入って眠ったわけで、今朝も読んでいる時間は無かった。
 学校に持って行って読むという手もあったけれども、それはなんだか…。
(…せっかくの山場に、もったいなくて…)
 家に帰って、ゆっくり読もう、と思い直して、机の上に置いたままで出掛けた。
 その本が目に入ったことが、出遅れた理由。
(…おやつの後には、すぐに読めるしね…)
 ほんの一行、読んで行くだけ、と手に取ったのが敗因だった。
 そのまま本に吸い付けられてしまって、気付いた時には、母の呼び声がしていた。
(ブルー、まだなの、って…)
 呼んでいるから、急いで階段を下りて行ったら、母は庭仕事に出掛ける所。
(おやつの用意は出来てるから、って教えてくれて…)
 母は花壇の手入れに行ってしまって、ブルーは一人で残された。
 テーブルには、お茶のポットとカップが置かれて、お菓子の皿もあって、申し訳ない気分。
 いつも通りに直ぐに来たなら、お菓子は「出来立て」を食べられる筈だったから。


 母が作ったスイートポテト。
 サツマイモを潰して、滑らかに漉して、綺麗に形を整えたもの。
 オーブンから出したばかりだったら、熱々だったに違いない。
(温め直すと、美味しいわよ、って言ってたし…)
 熱い方が美味しいことも知っているから、温め直すことにした。
(…レンジでもいいけど、ママのオススメ、トースターに入れて…)
 ほんの数分、焼いて食べるという方法、その方がレンジでやるより美味しいだろう。
 母はオーブンで焼き上げたのだし、それの再現といった具合で。
(…ママが教えてくれた通りの時間と、温度にしておいて…)
 スイートポテトをトースターに入れて、後は待つだけ。
 数分なのだし、新聞でも読んで待てばいい。
 面白そうな記事もあったし、楽しく読んでいたのだけれど…。
(…トースターの方から、美味しそうな匂いがしてたのが…)
 焦げる匂いに変わっていたのに、気付くのが少し遅かった。
(あっ、大変、って…)
 慌てて飛んで行ったけれども、スイートポテトは、真っ黒に焦げてしまっていた。
 母に言われた通りに、ちゃんと温めていたというのに。
(…時間の設定、間違えたかな、ってトースターを睨んでいたら…)
 母の教えを「守らなかった」ことに気付かされた。
 おやつに遅刻したせいで、頭の中が整理されてはいなかったらしい。
(…トースターなら、ホイルで丸ごと包んでから…)
 入れなさいね、と母は確かに言って出掛けた。
「でないと、焦げてしまうわよ」とも。
 (…そんなの、覚えていなかったし…)
 スイートポテトを、お皿の上から、トースターの中へ移動させただけ。
 後は温度と時間を決めて、スタートさせたのだから、たまらない。
 スイートポテトは焦げて当然、こんがりどころか、炭みたいな見た目になってしまった。


(…中身までは、まだ焦げてはいないかな、って…)
 しょげながら皿の上に戻して、紅茶を淹れていたら、母が戻った。
 焦げたスイートポテトを見るなり、「あらまあ…」と目を丸くしていたけれど…。
(他にもあるから、待っていてね、って温め直して…)
 美味しいものを渡してくれて、焦げた方のは、母の分になった。
 「大丈夫、中はホクホクだから」と、レンジで温めて、焦げた部分を全部、剥がして。
(…ホントに、中までは焦げていなくって…)
 母は笑顔で食べていたのが、今日の「失敗」、母に迷惑を掛けてしまった。
 もしも焦がしてしまわなかったら、庭仕事から戻った後には、満足の休憩時間だったろう。
 夕食の支度に取りかかる前に、紅茶でも淹れて、スイートポテト。
 焦げてしまったものではなくて、ちゃんと綺麗に温め直して、ホクホクのものを。
(……大失敗……)
 おやつに遅れて、おまけに焦がしちゃうなんて、と情けない。
 母は「こういう日だって、たまにあるわよ」と可笑しそうだった。
 「ブルーは滅多に失敗しないし、面白い顔を見ちゃったわ」とクスクス笑いで。
(…ションボリした上、半分、パニックだったしね…)
 面白い顔になっていたのは、本当だろう。
 普段のブルーでは、とても見られない「珍しい」見世物。
 とはいえ、それで失敗したのが、帳消しに出来るわけもない。
 焦げたスイートポテトは、暫くの間、母の記憶に残りそう。
 次に「温め直す」ようなことがあったら、茶目っ気たっぷりに言われるのだろう。
 「温め直す時には、気を付けてね」と、今日の失敗を引き合いに出して。
 「きちんとホイルで包むのよ」と念を押したり、他にも注意をしたりもして。


(…ホントに、失敗…)
 いつまで言われちゃうんだろう、と肩を落として、ハタと思い当たった。
(……今日の失敗、ママの前だったから……)
 まだしもマシな方だったろう。
 あの時、近くに父もいたなら、もっと笑われて、父にも当分、注意されそう。
 「お前は焦がすから、気を付けるんだぞ」と、くどいくらいに。
(…だけどパパなら、まだマシな方で…)
 未来のぼくが心配だよ、と首を竦めた。
 今は「母におやつを作って貰う」立場だけれども、将来は違う。
 ハーレイと一緒に暮らし始めたら、おやつを作る係は、多分、ハーレイ。
(…ハーレイが好きな、ママのパウンドケーキだけは…)
 自分で焼きたいし、焼けるようにもなるだろう。
 けれど、ハーレイは、今も昔も、料理の腕は抜群なだけに…。
(…ぼくが作るの、パウンドケーキだけで…)
 他のお菓子は、料理とセットで、ハーレイが作る毎日。
 仕事がある日も、作っておいて出掛けるくらいに、ハーレイは腕を奮うと思う。
 「今日の昼飯、コレだからな。おやつも、作っておいたから」と、毎朝、満足そうに。
(…そうやって作っておいてくれたの、焦がしちゃったら…)
 今日のスイートポテト以上に、申し訳なくて、情けない気分になってしまいそう。
 「焦がしちゃったよ…」と、半ば泣き顔になっている日もありそうな気がする。
 真っ黒焦げになった「何か」を、涙が滲んだ瞳で見詰めて。
(…せっかく作ってくれたのに、って…)
 平謝りに謝りたくても、ハーレイは「いない」。
 仕事に出掛けて留守にしていて、仕事の真っ最中なのかもしれない。
 ブルーの方は「おやつの時間」で、のんびりとお茶を淹れていたって。


(……最低だよ……)
 ハーレイの心尽くしを真っ黒に焦がしてしまった上に、謝るチャンスも夜まで来ない。
 「焦げてしまった、おやつ」の代わりも、余分に作ってあった時しか無い。
(…あればいいけど…)
 無かった時には、真っ黒焦げのを食べるしかなくて、本当の美味しさは分からない。
 帰って来たハーレイに、二重の意味で謝る羽目に陥るのだろう。
 「ごめんなさい、おやつ、焦がしちゃった」と、「本当の味も、分からなかったよ」と。
(…そんなの、悲惨すぎるから…!)
 だけど、やりそう、と文字通り震え上がりそう。
 ハーレイと一緒に暮らし始めたなら、きっと、いつかは、そういう失敗。
(……ごめんなさい……!)
 今の間に先に謝っておくからね、とハーレイの家の方向を向いて謝った。
 「今日は失敗しちゃったんだけど、未来のぼくも、やりそうだから」と、頭を下げて。
(…ホントのホントに、ごめんなさい…!)
 気を付けるけど、きっと、やっちゃう、と未来のハーレイに向かって謝るしかない。
 まだまだ先の話だけれども、その時になって謝りたくても、ハーレイは、仕事中だろうから。
(作って行ってくれたの、焦がしちゃったら、ホントに、ごめん…!)
 お菓子どころか、お料理の方も焦がしそうだし、と情けないけれど、それが現実。
 「パウンドケーキしか、作れないブルー」に、お似合いの未来。
(…やっぱり、お料理、出来るようにしておいた方がいいのかも…)
 などと思ってはみても、ハーレイのことだし、「俺が作る」になってしまいそう。
 それに甘えて、いつの間にやら、油断した挙句…。
(…ハーレイが作ってくれたのを…)
 焦がしちゃうんだ、という気しかしないから、謝り続ける。
 先の未来にいる「ハーレイ」に向けて。
 「焦がしちゃったら、ごめんなさい」と、今の内から、精一杯の謝罪をこめて…。



            焦がしちゃったら・了


※お母さんが作ったスイートポテトを、焦がしてしまったブルー君。うっかりミスで。
 ハーレイ先生と暮らし始めても、やりそうな失敗。今の内から謝っておく方がいいかもv






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(…俺としたことが…)
 今日は失敗しちまったな、とハーレイが浮かべた苦笑い。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それはお馴染み。
 今夜は、他にも「お仲間」がいる。
 皿に載せて来た夜食と言うか、おやつと言うか。
(…時間的には、ちと遅いんだが…)
 食うのは俺の自由だしな、とハーレイが眺めるものは、みたらし団子。
 今日は帰りが遅かったけれど、中途半端な時間だった。
 ブルーの家に寄るには遅かっただけで、家に帰るには、さほど遅くなかった。
(…そうなるとだ…)
 少し余裕が出来てくるから、食料品店へ寄った所で、いいものを見付けた。
 出張販売に来ていた店で、みたらし団子が焼かれている。
(美味そうな匂いだったし、買って帰るか、と側に行ったら…)
 焼き上がった団子たちの隣に、半製品のが置かれていた。
 店の秘伝のタレが添えられ、団子も串に刺してある。
(…買って帰って、家で炙れば…)
 出来立ての味を再現出来るのが、売りだという。
(焼けているのを買って帰ったんでは、冷めちまうしな…)
 コレにしよう、と半製品のを買うことにした。
 家に帰れば夕食の支度などもあるし、ゆっくり味わうのならば、断然、半製品がいい。
 「一つ下さい」と注文したら、店員は親切に教えてくれた。
 焼くなら時間はこのくらい、タレも温めておくと美味しいから、と。


 そういうわけで、今夜は「みたらし団子」が皿の上にいる。
 コーヒーの友には、丁度いい。
(…美味いんだがなあ…)
 団子もタレも絶品なんだ、と頬張るけれども、悔やまれる点があるのが惜しかった。
 夕食の後に片付けをしてから、焼くことにした「みたらし団子」。
(どうせ一度に食っちまうんだし、と…)
 網に並べて焼き始めたまでは良かった。
 「このくらいかな」と火加減だって調整したし、上手く焼き上がる筈だった。
(…其処で失敗…)
 みたらし団子は、あくまで「団子」。
 魚や肉を焼くのとは違う。
 半製品でも「炙るだけ」の所まで出来ているわけで、表面が熱くなって来たなら…。
(火が通るのは、早いってな…)
 其処の所を忘れてたぞ、と我ながら情けなくなる。
 自分自身に言い訳するなら、こうだろう。
(…正月はとうに過ぎた後だし、餅を焼くようなことも無いから…)
 炙り方が、料理の方になっちまうんだ、としか言いようがない。
 「みたらし団子」は、店に並べられていた品に比べて、色黒の団子になってしまった。
 つまり「表面が焦げた」状態、真っ黒までは行っていないのが不幸中の幸い。
(…いい感じだな、と思った所で、火から離せば…)
 こんな姿にはならなかった、と焦げた団子が悲しいけれど、仕方ない。
(まあ、パリッとした皮も味わえる、とでも…)
 思っとくか、と夜食を味わう。
 固くなるほど焦げてはいないし、タレもあるから、充分、美味しい。
(…焼き上がったのを買って返って、温め直すよりは…)
 美味いんだしな、と負け惜しみをマグカップに向かって言ってみた。
 「お前さんには分けてやらんぞ」と、ニッと笑って。


 マグカップは、何も言わなかった。
 みたらし団子を寄越さない「ハーレイ」に、文句を言いはしなかったけれど…。
(…文句と言えばだな…)
 あいつなんだ、と頭に浮かんで来た、小さなブルー。
 「ハーレイ、今日は来てくれなかったよ…」と、不満だったに違いない。
 もしもブルーが、此処にいたなら…。
(焦げた団子に、文句たらたら…)
 プンスカ怒っちまっていそうだよな、とハーレイは軽く肩を竦めた。
 此処にいるのが「ブルー」だった時は、「分けてやらんぞ」と言える相手ではない。
 むしろ、みたらし団子は「ブルー」優先、ブルー用に買って来ることになっていたろう。
(…今だからこそ、俺が一人で暮らしてて…)
 好きに夜食を食べているけれど、いずれは、一人暮らしに「さよなら」を告げる。
 ブルーと一緒に暮らし始めて、食事も夜食も、ブルーと食べるわけだから…。
(今日みたいに、焦がしちまったら…)
 あいつの分も焦げるわけだ、と冷汗が出そう。
 きっとブルーは、笑って許してくれると思いはしても、自分が悲しい。
 「焦がすなんて」と、失敗したことを悔やんで、ブルーの分まで焦がしたことが悔しくて…。
(焦げた中から、マシなヤツをだ…)
 コレとコレだな、と選び出してから、ブルーに渡すのだろう。
 「すまんな、少し焦がしちまった。この辺は、少しマシだからな」と。
(…情けない上に、申し訳ない…)
 ブルーに、焦げた団子なんて、と「後悔先に立たず」を痛感させられる。
 今夜のような「少し失敗」をやらかした時は、そうなるしかない。
(…お前さんなら、何も問題無いんだがなあ…)
 お前さんも、古い馴染みなのに、と愛用のマグカップに愚痴だけれども、一方で少し嬉しい。
 ブルーが此処にいる時が来たなら、普段は、幸せ一杯だから。


 一人きりの「気ままな時間」もいい。
 みたらし団子を買って、一人で炙って、焦げたのを頬張る時間も、楽しくはある。
(とはいえ、あいつと一緒だったら…)
 毎日が、もっと充実していて、張り合いだってあることだろう。
 仕事に行くのも、家事をするのも、今よりも、ずっと。
(…そんな中でも、今夜みたいな失敗を…)
 やらかす時が来るんだよな、と「やらかす」方の自信ならある。
 ブルーと話しながら炙っている間に、焦げていたとか。
(…ありそうだぞ…)
 でもって、きっと、やっちまうんだ、と「ブルーの文句」が怖いけれども、それも今だけ。
 「ハーレイと一緒に暮らせない」から、ブルーは不満をぶつけて来る。
 何かといえば頬をプウッと膨らませては、フグみたいな顔になったりもする。
(あの頬っぺたを、両手でペシャンと…)
 潰してやって「フグが、ハコフグになっちまった」と笑い飛ばせるのも、今の間だけ。
 一緒に暮らせる時が来たなら、ブルーは、今のブルーのようにはならない。
(あいつの分まで、焦がしちまっても…)
 文句どころか、逆に謝ってくれるのだろう。
 「ごめんね、ハーレイ…。話し掛けてた、ぼくが悪いんだよ」などと、申し訳なさそうに。
(…ついでに、あいつのことだから…)
 酷く焦げた方を「ぼくが貰う」と、選び出していそう。
 「いや、大丈夫だ、俺が食うから!」と、慌てて止めに入る「自分」の姿が目に見えるよう。
 でないとブルーは、本当に「持ってゆく」だろう。
 自分用の皿に「焦げたものばかり」載せて、自分の席へと。
(…今のあいつは、まだチビだから…)
 きっと文句を言う方なんだ、と確信はしても、育ったブルーは違っていそう。
 前のブルーと「そっくり同じ」に、ハーレイのことを気遣うようになって。


(……うーむ……)
 それは喜ばしいことなんだが…、と思うけれども、文句を言って欲しくもある。
 「なんで、ハーレイ、失敗したの!?」と、焦げてしまった「みたらし団子」を見て。
 「もっと綺麗に焼けていたなら、もっと美味しく出来た筈だよ」と、未練がましく。
(…そういうブルーが、出来ちまっても…)
 俺としては、ちっともかまいやしないんだ、という気もする。
 前のブルーのように「気遣い過ぎて」、仲間たちのためにメギドまで飛んでしまうよりかは。
(…もしも、団子を焦がしちまったら…)
 文句たらたら、「ハーレイ、ウッカリしてたんじゃない?」と顔を顰めるブルーでもいい。
 酷く焦げた分を選ぶどころか、「マシなの、コレとコレだよね?」と逆の選び方。
 「ぼくはマシなの、食べておくから」と、焦げた分は全部、ハーレイに押し付けて来る。
 話し掛けて来た「ブルー」のせいで、焦げてしまった団子だろうが、遠慮しないで。
(…そうだな、下手に気遣うブルーよりかは…)
 文句なブルーの方がいいかもしれん、と大きく頷き、焦げた団子を頬張って笑む。
 「そうだ、理想は、こういうブルーかもな」と、思い付いた「ブルー」を頭に描いて。
 みたらし団子でも、他の料理でも…。
(俺がウッカリ、焦がしちまったら…)
 酷く焦げた分を選ぶわけでも、その逆でもなくて、「半分ずつがいいね」と笑顔のブルー。
 「分けて食べれば、焦げているのも、半分になるよ」と。
 「美味しい所も、焦げた所も、半分こで」と、笑ってくれる「ブルー」だといい。
 気遣いは「そのくらい」が、きっといいんだ、と心から思う。
 前のブルーのようになるより、「半分こして食べようよ」と微笑むブルーの方が、きっと…。



            焦がしちまったら・了


※みたらし団子を焦がしてしまった、ハーレイ先生。結婚した後も、やりそうなミス。
 そういう時に、ブルー君なら、どうするか。半分こを提案するブルー君だと、いいですよねv








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「ねえ、ハーレイ。悪ガキよりも…」
 いい子の方が得なのかな、と小さなブルーがぶつけた質問。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ? 急にどうした?」
 今はそういう話じゃないが、とハーレイは面食らった。
 子供時代の武勇伝を語っていたなら、聞かれそうではある。
 けれど、話題は…。
(学校とかの話どころか、菓子の話で…)
 接点がまるで見当たらない。
 ブルーは「そうだね、お菓子は関係ないかも」と返した。
「だけど、もしかしたら関係あるのかな?」
 悪ガキだと貰い損ねそう、というのがブルーの言い分。
 お菓子を分けて配るような時、悪ガキは貰えないだとか。
「あー…。そりゃまあ、俺もたまには…」
 貰えなかった時があったな、とハーレイは肩を竦めた。
「おふくろに、お預けを食らっちまって…」
 次の日まで食えなかったんだ、と失敗談を白状する。
 両親は菓子を食べているのに、ハーレイの分が無かった日。


「やっぱりね…」
 いい子の方がいいのかも、とブルーは可笑しそうに笑った。
 「ハーレイにだって、覚えがあるんだから」と。
「うーむ…。その点については、否定出来んが…」
 一概にそうとも言い切れないぞ、とハーレイは腕組みする。
 「悪ガキの方が得をするのも、たまにはな」と大真面目に。
「そうなの? 損ばかりしていそうなんだけど…」
 学校でだって叱られてるし、とブルーは不思議そうな顔。
 「悪戯した子は、大目玉だよ」と実例を挙げて。
 黒板に落書きした子は掃除当番、他にも色々、と数多い例。
「そういった輩には、当然の罰というヤツだな」
 自業自得と言うだろうが、とハーレイは大きく頷いた。
「その手のヤツは罰を受けるが、悪さの方向性でだ…」
 結果は変わって来るんだぞ、とブルーに昔話をしてやった。
 悪ガキだった子供時代に、ご近所の家で柿を盗もうとした。
「生垣を抜けて入って、木に登ってたら…」
「その家の人に見付かったわけ?」
「よりにもよって、頑固爺にな」
 思い切り雷が落ちたんだが…、とハーレイは続ける。
「爺さん、木には登るな、脆いから折れるぞ、と…」
 説教してから、柿の実をもいでくれたんだ、と思い出話。
 「美味いんだぞ」と土産用にも分けて貰って帰った、と。


 ハーレイを叱った頑固爺は、クソ度胸のガキに優しかった。
 「ワシを怖がって誰も来んのに、いい度胸だ」と。
 柿の木が脆くて折れる話も、脅しではなくて本当のこと。
 誰も登りに来ないだろうと思っていたから、放ってあった。
 「お前さんみたいなヤツが来るなら、看板だな」とも。
 翌日の朝には、もう注意書きが出来ていたという。
 「危ない! 折れるから、木には登らない!」という札。
 札は柿の木にぶら下げてあって、家の玄関に張り紙が一枚。
 「柿の実、食べ頃です。欲しい人は声を掛けて下さい」と。
 それが切っ掛けになって、柿の実を貰いに行く子が出来た。
 札は年中ぶら下がったままで、柿の季節は玄関先に張り紙。
 頑固爺の家は、以来、子供に人気だったらしい。
 柿を貰いに行った子供を、頑固爺は忘れなかった。
 他の季節に通り掛かったら、菓子をくれたり、親切だった。
 つまり、ハーレイは、「頑固爺の家」を新規開拓。
 暑い盛りにはジュースも貰える、子供の人気スポットを。


「いいか? あの時、俺が盗みに行かなかったら…」
 頑固爺の家は怖いままだぞ、とハーレイは得意げに語る。
 「菓子やジュースを貰うことなど、誰も思わん」と。
「…ホントだね…。悪ガキでないと、出来ないよね…」
 いい子だったら盗まないし、とブルーは瞳を丸くしている。
 「悪ガキの方が得をするのも、ちゃんとあるんだ」とも。
「分かったか? お前の場合は、いい子の方だから…」
 得をする日は来そうにもないな、とハーレイは笑う。
 「それとも、悪さに挑戦してみるか?」と、ニヤニヤと。
「悪さって、ぼくが?」
「木に登れとは言わないがな」
 悪ガキの世界もいいもんだぞ、と「お得な話」を披露する。
 叱られる代わりに、美味しい結果が待っていた例を。
 そうしたら…。
「分かった、ハーレイ、悪ガキがオススメなんだね?」
 やってみる、とブルーは椅子から立ち上がった。
 「悪ガキだったら、コレもアリでしょ」と、近付いて来る。


「ハーレイがキスをくれないんなら、ぼくが強奪!」
 貰っちゃうね、とブルーの顔が迫って、ハーレイは唸った。
「馬鹿野郎!」
 その悪ガキは叱られる方だ、とブルーを一喝、払いのける。
「雷、落ちて当然だからな!」
 嫌というほど説教だ、と椅子に座らせ、銀色の頭をコツン。
 拳で軽く一発お見舞い、それから長い説教の時間。
 ブルーが必死に言い訳しても、聞きもしないで。
 「ごめんなさい!」と詫びを入れても、放っておいて説教。
 悪ガキには似合いの時間なのだし、今日の所はそれでいい。
 ブルーが自分で選んだ以上は、悪ガキ仕様で…。



          悪ガキよりも・了






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(ちっとも覚えていなかったなんてね…)
 ハーレイのこと、と小さなブルーが浮かべた苦笑。
 そのハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…ハーレイ、今日は来てくれなかった、って…)
 考えただけでもガッカリするのに、其処まで大事なハーレイのことを、忘れていた。
 今のブルーの話ではなくて、今年の五月三日が訪れるまでの人生の中で。
(…聖痕が出たら、一瞬で思い出したけど…)
 実の所は、聖痕の前兆が現れた時には、怖い思いをしていた。
(もし、本当に、ソルジャー・ブルーの生まれ変わりだったら…)
 当時の記憶を取り戻した途端に、「今のブルー」は消えてしまうかもしれない。
 十四年間も生きて来た「ブルー」は「仮の姿」で、元の「ブルー」になってしまって。
(…そんなの怖い、って泣き出しそうで…)
 絶対に嫌だと恐れていたのに、現実は違った。
(…前の記憶が戻って来たら、目の前にハーレイがいて…)
 前の生での恋の続きが始まったわけで、二人分の幸せを噛み締めている。
 うんとお得で、素敵なことが溢れているのが「今の人生」。
(でも、前のハーレイのこと、聖痕が出るまでは…)
 綺麗サッパリ忘れて生きていたのが、情けないような気分にもなる。
 時の彼方で命尽きる時、深い絶望の淵にいたのが信じられない。
(…もうハーレイには、二度と会えない、って…)
 泣きじゃくりながら死んでいったくらいに、ハーレイを想い続けていた。
 二度と会えないままになっても、忘れたいと願いはしなかった。
 なのに、こうして「生まれ変わった」今の自分は、ハーレイを覚えているどころか…。
(…歴史の教科書とかで見たって、昔の偉い人なんだ、としか…)
 思わないまま、「今のハーレイ」に出会うまでの日々を過ごした。
 薄情にも程があるだろう。
 あれほど愛した「ハーレイ」のことを、まるで覚えていなかったなんて。


 そうなった理由に、心当たりは「ある」。
 聖痕をくれた神様のせいで、そうなるように仕組まれていた、と。
(…今のぼくが、ハーレイのことを覚えていたなら…)
 人生、きっと変わってたよね、と容易に想像が出来る。
 いくら本物の両親がいても、愛されていても、のびのびと生きられはしなかったろう。
(…だって、覚えているんだものね…)
 自分が誰か、というのはともかく、「ハーレイ」がいない人生は辛い。
 ハーレイとの絆が切れたのかどうか、それも確認出来そうにない。
(今のぼくまで育って来たって、難しいよね…)
 同じ地球の上に「ハーレイ」がいても、どうやって見付け出せばいいのか。
 十四歳にしかならない子供の身では、新聞に広告も出せないだろう。
 もちろん「探しに出掛ける」ことも出来ない。
(今のぼくでも、そうなんだから…)
 生まれた直後の「赤ん坊」なら、尚更のこと。
(…病院で生まれて、目を開けてみたら…)
 前の生の最後に「撃たれた右目」が、「見えている」事実に気付くと思う。
 「何故、見えるんだ?」と驚いて、周りを探ろうとしても…。
(…ぼくのサイオン、うんと不器用になっちゃったから…)
 いきなり盲目になったかのように、「何も見えない」。
 両目の視力はあるというのに、サイオンの瞳で「見る」ことが出来ない。
(…耳も同じで…)
 補聴器は無しで聞こえている、と驚きはしても、サイオンで思念を拾えない。
(…自分の目と耳だけで、探るしかなくて…)
 焦りながらも懸命に事態を把握しようと努力し続けて、どの辺りで「現実」を見付けるやら。
 「今の自分」は、「ソルジャー・ブルー」ではなく、生まれたばかりの「赤ん坊」。
 ベッドの「ブルー」を覗き込むのは、生んでくれた母と、血の繋がった父。
(……衝撃の事実……)
 どれほどショックを受けるんだろう、と「今のブルー」は肩を竦めた。
 おまけに「ハーレイ」が「何処にもいない」。
 前の生では、恋人としても、右腕としても、「ハーレイ」を頼りにしていたのに。


(…そのハーレイが、いなくなってて…)
 赤ん坊の姿で、今の人生を歩んでゆくしかない。
 今の世界の中の何処かに「ハーレイ」もいるのか、それさえも分からないままで。
(…毎日、溜息ばっかりかも…)
 可愛くない赤ちゃんになってしまいそう、と思っただけでも、神様の意図が読み取れる。
 「今の人生を楽しみなさい」と、「前の生の記憶」を封じたのだ、と。
(…ハーレイを忘れていないままだったら…)
 溜息だらけの「赤ん坊時代」が過ぎた後には、幼稚園に行く。
 幼稚園児になれば、少し世界が広くなるけれど…。
(…行き帰りの幼稚園バスの窓を、じっと見詰めて…)
 窓の外を行く人を眺めて、「ハーレイ」を探し続けていそう。
 対向車の窓まで、気を配るかもしれない。
(すれ違う車に、乗ってないとは限らないしね…)
 目を皿のようにしての「ハーレイ探し」に、幼稚園バスでの往復は費やされる。
 「ハーレイを忘れ去っていた」今の「ブルー」は、往復の時間を満喫していたというのに。
(…毎日、好奇心で一杯で…)
 窓の向こうの景色や、店や、犬の散歩にも興味津々。
 雨降りで視界が悪い日でさえも、水溜まりなどに注意を向けていた。
 「あの車が来たら、水溜まりの水が飛び散るかな?」といった具合に。
(…幼稚園でも、休み時間はウサギ小屋とか…)
 覗きに行くのが好きだったけれど、「ハーレイを探し続けるブルー」だったら違ったろう。
(…休み時間は、門の側にいたか…)
 外を見られる場所に陣取って、「ハーレイ探し」で終わってしまう。
 幼稚園の外を「通るかもしれない」と、懐かしい人影を探し続けて、追い求めて。


 それだけ必死に探し続けても、ハーレイは「いない」。
 同じ町の中に「住んでいる」のに、会える機会は訪れないまま。
(…聖痕が出るまで、時期は来ないんだし…)
 無駄に費やす時間ばかりで、学校に入った後にも、似たような人生になる。
 幼稚園児の頃よりも「世界が広がった」分だけ、探せる場所が増えるのだから。
(…友達と出掛けて行くにしたって…)
 いつもキョロキョロ、落ち着きの無い「ブルー」が出来上がりそう。
 遠足にしても、はしゃぐよりも先に「ハーレイ探し」。
(行きのバスでも、帰りのバスでも、行った先でも…)
 いつもと違う場所に来たから、と普段以上に注意しながら「ハーレイ」を探す。
 何処かにチラリと見えはしないか、うんと遠くに見える人まで注目して。
(…これじゃ駄目すぎ…)
 ぼくの人生、台無しだよね、と溜息しか出ない。
 成績は悪くないだろうけれど、それ以外の部分は「駄目な人生」。
 せっかく「青い地球」に来たというのに、嬉しいとさえ思わないのだろう。
 「ハーレイは何処にいるんだろう?」と探すばかりで、景色にも、本物の両親にも…。
(目を向けないで、ハーレイばかりを探し続けて…)
 子供らしくなくて、新しい命を貰ったことへの感謝も、多分、無さそう。
(…そんなの、神様だって…)
 嫌だろうから、忘れさせたんだよ、と分かっているのは本当だけれど…。


(…覚えていたなら、ホントに最悪…)
 駄目すぎだよ、と思ってはいても、忘れていたことは、やっぱり悲しい。
 「ハーレイ」を忘れて「十四年間も」、自由気ままに生きていただなんて。
(…可愛くなくても、溜息ばかりの赤ん坊でも…)
 ハーレイを覚えていたかったよ、と思った所で、ハタと気付いた。
(…ぼくは覚えたままでいたって、ハーレイの方は…?)
 ぼくを覚えていてくれるわけ、と自分自身に問い掛けるまでもなく、答えは明らか。
 「今のハーレイ」の記憶が戻って来るのは、「今のブルーに出会えた時」。
 つまり、ブルーが「懸命に探し続けた間」も、ハーレイの方は「普通の人生」。
 充実した子供時代を過ごした後は、柔道や水泳に打ち込む学生時代で、それから教師に。
(…先生をやってるハーレイ、楽しそうだしね…)
 仕事が忙しい時だって、と知っているから、今のハーレイの人生は幸せで溢れている。
 そうやって「新しい人生」を歩んで来た「ハーレイ」と、「忘れなかったブルー」が出会う。
 ハーレイは喜んでくれるけれども、ブルーが「探し続けていた」ことを知ったら…。
(…ハーレイ、うんとショックだよね…)
 どうして「ブルーを忘れていられたのか」と、ハーレイは悔やむに違いない。
 「覚えていたせいで」台無しになった、今のブルーの人生の方にも、思いを馳せて。
(……ハーレイ、きっと傷付いちゃうよ……)
 とても真面目な「ハーレイ」だけに、一生、謝り続けていそうでもある。
 「すまん、忘れてしまっていて」と、何度も何度も、繰り返して。
(…そんなハーレイ、見てるだけでも辛くなるから…)
 ぼくがハーレイを覚えていたなら、そうなっちゃうし…、と改めて神に感謝する。
 「覚えていなかったことは、悲しいんだけれど、これでいいから」と。
 「もしも、ハーレイを覚えていたなら、ぼくもハーレイも、辛くなってた筈だものね」と…。



             覚えていたなら・了


※生まれ変わってから、ハーレイのことを忘れ去っていたブルー。正確にはブルー君。
 もしもハーレイを覚えていたら、人生が台無しになりそう。ハーレイ先生も、後悔は確実。







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