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どうも、管理人の「みゆ」でございます。画像は「そるじゃぁ・ぶるぅ」君ですが。



ハレブル別館に置いてる、拍手御礼ショートショート。
月に一回入れ替えてますが、諸事情あってハレブル別館には置けませんでした。
流れ去ったショートの再録場所が要るんだよね、と前から一応、思っていたです。

この際、置き場所作ってみるかな、と作ってみました。
書き下ろしショートも置いてますから、のんびり遊んで下さいね~。
 
※お知らせ。emoji
 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、お気に入りがあればポチッとどうぞ。
 
      
過去の拍手御礼ショートショートと書き下ろしショートの目次は、こちら。
タイトルをクリックで御覧になれます。

※書き下ろしショートの時間軸には「順番」は全くありません。emoji
 何処から読んでも無問題ですv

  
拍手その1・それぞれの場所:いつも座る席を取り替えたら…。
 
拍手その2・毎日が幸せ:毎日が幸せなブルー君。
 
拍手その3・考え事:ハーレイの声を聞いていたら…。
 
拍手その4・帰っちゃ嫌:ハーレイが家に帰るのは嫌。

拍手その5・熱々の季節:暑い夏でもくっつきたい!

書き下ろし1・ハーレイのスープ:ブルーのために作る野菜のスープ。

書き下ろし2・恋人が出来た:思いがけずも出来た恋人。

書き下ろし3・痛かったけれど:痛かったけれど、聖痕は宝物。

書き下ろし4・洗車 :ハーレイ、愛車を洗うの巻。

書き下ろし5・断られたキス:再会のキスも出来なかったなんて…。
 
書き下ろし6・軽すぎるペン:羽根ペンが軽すぎる、慣れないハーレイ。

書き下ろし7・眠っていたから:ハーレイのベッドに瞬間移動が出来たのに…。

拍手その6・足音:ハーレイの足音は分かるのです。
 
書き下ろし8・再会:ブルーが起こした聖痕現象、ハーレイ視点。
 
書き下ろし9・魔法のスープ:ハーレイが作ってくれる野菜スープの魔法。

書き下ろし10・腕で作る輪:腕で作る輪、それに収まるブルーの身体。
         
書き下ろし11・夢みたいだけど:今の身体に生まれ変わったブルー。
    
書き下ろし12・大好きの言葉:ハーレイに何度も言いたい「大好き」。

書き下ろし13・船と車と:シャングリラよりも車が似合いのハーレイ。
     
書き下ろし14・小さな手だけど:小さな手でも、ブルーの右手は幸せ者。
 
書き下ろし15・チビでも愛しい:どんなにチビでも、愛しいブルー。
        
書き下ろし16・恋人は先生:恋人が先生だなんて、絶対に内緒。
        
書き下ろし17・いじらしい敬語:学校ではハーレイに敬語なブルー。
          
書き下ろし18・学校とブリッジ:学校とブリッジは似ているような…。
          
書き下ろし19・柔道部は無理:ブルーが柔道部に入れたら…。
           
書き下ろし20・学校に行きたい:熱を出して学校はお休みなブルー。
             
拍手その7・小さな躊躇い:床に落としたベリー、食べてもいい?
                        
書き下ろし21・おふくろのケーキ:ハーレイの好物、パウンドケーキ。
            
書き下ろし22・ママのケーキ :ハーレイのために焼きたいパウンドケーキ。
 
書き下ろし23・贅沢な朝食 :ハーレイの朝食、前世と比べたらとても贅沢。

書き下ろし24・朝食の風景:食の細いブルー君の朝の食卓。
   
書き下ろし25・変わっちゃいない:前世も今も、ハーレイはハーレイ。
    
書き下ろし26・変わってないけど:前世も今も、ブルーはブルー。
     
書き下ろし27・長袖のワイシャツ:夏でも長袖のハーレイ、前世のせいかも?
       
書き下ろし28・みんなと同じ服:今のブルーの制服は、他のみんなと全く同じ。
        
書き下ろし29・気に入りの書斎:ハーレイの書斎、実はキャプテン・ハーレイ好み?
 
書き下ろし30・帰りたい部屋 :青の間にホームシックなブルー。その理由は?
  
書き下ろし31・忘れた買い物:買い忘れても大丈夫。そういう世界にいるハーレイ。
   
書き下ろし32・忘れられた買い物:買い忘れられても、今は大丈夫。ブルーの世界。

書き下ろし33・ぼくがチビでも:「ぼくがチビでも悲しくない?」と訊いたのに…。
     
書き下ろし34・キャンプ用の椅子:キャンプ用の椅子でブルーとデート。

書き下ろし35・白いテーブル:キャンプ用のテーブルでハーレイとデート。
   
拍手その8・温もりが欲しい:夏でもハーレイの温もりが欲しい、ブルーの右手。
    
書き下ろし36・ブルーが足りない:会えなくてブルー不足なハーレイ。
  
書き下ろし37・ハーレイが足りない:会えなくてハーレイ不足なブルー。
          
書き下ろし38・久しぶりに会えた:ブルー不足とハーレイ不足な日々に終止符。
          
書き下ろし39・天の川を泳ごう:ブルーに会うためなら、天の川でも泳ぎ渡れる。

書き下ろし40・天の川の幅:広い天の川でも、ハーレイは泳いで渡ってくれる。
 
書き下ろし41・天の川を渡って:天の川に隔てられても、会える筈の二人。
              
書き下ろし42・叶えてやれない:ブルーの願いは叶えてやりたいけれど…。
               
書き下ろし43・叶えてくれない:願いを叶えてくれないハーレイなんて…。

書き下ろし44・もう一人いれば:一人の夕食。もしもブルーがいてくれれば…。
                               
書き下ろし45・いて欲しい人:一人でおやつ。ハーレイがいてくれたなら…。
                                 
書き下ろし46・見られない蛍:去年までなら蛍見物。今のハーレイは…。

書き下ろし47・見てみたい蛍:ハーレイと蛍を見に行けたなら…。
                           
書き下ろし48・飛べないあいつ:空を飛べないブルーが愛しい。
                           
書き下ろし49・飛べないぼく:ハーレイに見せてあげたい、空を飛ぶ姿。
 
書き下ろし50・あいつの背丈:背丈が伸びなくても、愛おしいブルー。
  
書き下ろし51・ぼくの背丈:どうして背丈が伸びないのか。ブルーの悩み。
   
書き下ろし52・ブルー日和:今日のような日はブルー日和、と思うハーレイ。
    
書き下ろし53・ハーレイ日和:こんな日はきっとハーレイ日和、と思うブルー。
     
拍手その9・可哀相な動物:可哀相な動物がいるんだけれど、とブルーの主張。

書き下ろし54・歩いてゆける地面:ブルーの所へ歩いてゆける地面。地球の上を。
      
書き下ろし55・歩きたい地面 :ハーレイが歩いただろう地面を歩きたいブルー。
        
書き下ろし56・降りそうな天気:雨が降るかも。キャプテンは勘に頼れないけれど…。
          
書き下ろし57・降りそうだけど:地球に降る雨の最初の一粒。見てみたいブルー。
          
書き下ろし58・恋人がいるだけで:恋人がいるというだけで浮き立つハーレイの心。

書き下ろし59・恋人がいるから:恋人がいるから、寝込んでも心は幸せなブルー。
 
書き下ろし60・走ってゆける:思い立ったら、ひとっ走りしに行ける今のハーレイ。

書き下ろし61・走ってゆきたい:ハーレイの家まで走って行けたら、と思うブルー。
  
書き下ろし62・キスは駄目だ:キスは駄目だと何度叱っても、諦めないブルー。
              
書き下ろし63・キスが欲しいのに:キスが欲しいのに、くれないハーレイ。

書き下ろし64・今度は掴める:今度は掴めるブルーの手。行ってしまう前に。
                 
書き下ろし65・今度は失くさない:何度でも貰えるハーレイの温もり。
                 
書き下ろし66・ずっと愛してる:生まれ変わっても、愛するのはブルー。

書き下ろし67・ずっと大好き:生まれ変わっても、大好きなハーレイ。
 
拍手その10・お腹が空かない?:長いことぼくを食べてないでしょ、と訊くブルー。
                    
書き下ろし68・扉を開けたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。
                                                    
書き下ろし69・扉が開いたら:家に帰って扉を開けたら、ブルーがいたなら…。

書き下ろし70・暑苦しくない:暑い夏でも、暑苦しくない熱の塊。それがブルー。

書き下ろし71・暑くないから:ハーレイにくっついていても、暑くない夏。
                                                
書き下ろし72・行くには早いが:ブルーの家に行くには早いけれども、待てない時間。
                                       
書き下ろし73・まだ来ないけど:まだハーレイは来ないけれども、早起きしたら…。
                                        
書き下ろし74・よく伸びるんだが:ブルーの背丈とは違って、よく伸びる夏草。
                                         
書き下ろし75・よく伸びるんだけど:よく伸びるミントが羨ましくても、自分の背は…。
                                            
書き下ろし76・脱いでいい靴:一日中、靴を履いていなくてもいい今のハーレイ。

書き下ろし77・脱いでもいい靴:一日中、靴を履かなくてもいい今のブルー。

書き下ろし78・ブルーの笑顔:前のブルーよりも多い、今のブルーの笑顔の数。
                                      
書き下ろし79・ハーレイの笑顔:前の自分だった頃から好きな、ハーレイの笑顔。

書き下ろし80・夢だった地球:今のハーレイには当たり前の地球。夢ではなくて。
 
書き下ろし81・夢に見た地球:前のブルーが夢に見た地球。今のブルーが暮らす星。
                                          
書き下ろし82・暑くなっても:暑さは地球の太陽のせい。ハーレイが気付いた今の幸せ。
                              
書き下ろし83・暑いけれども:暑さは苦手でも、地球の太陽。今のブルーは幸せです。
                          
拍手その11・下手くそになった?:キスが下手くそになったんでしょ、と尋ねるブルー。

書き下ろし84・窓の向こうは:ハーレイが窓の向こうに見た朝日。今の地球の夜明け。
                              
書き下ろし85・窓の向こうに:窓の向こうにいつもある地球。今のブルーなら。
                            
書き下ろし86・あの空を旅した:ハーレイが仰いだ夜空。前世で旅をしていた宇宙。
                                               
書き下ろし87・あの空を旅して:ブルーが見上げる夜空。前世で地球を探した宇宙。

書き下ろし88・三日月の夜に:今のハーレイが眺める月。前の自分とは違った視点。

書き下ろし89・チビの三日月:月の方が早く育つなんて、とブルーは膨れっ面で…。
                       
書き下ろし90・川を下る船:川下りの船。いつかブルーを乗せてやろうと思う船。
 
書き下ろし91・川をゆく船:ハーレイと乗りたい川下りの船。大きくなったら。

書き下ろし92・海が似合う夏:いつかブルーと行きたい海。前世で夢見た地球の海へ。

書き下ろし93・夏が似合う海:いつかハーレイと行きたい海。本物の地球の青い海へ。
 
書き下ろし94・欲しかった羽根ペン:今のハーレイ。羽根ペンが欲しいと思ったら…。
                       
書き下ろし95・あげたい羽根ペン:ハーレイの誕生日にあげたい羽根ペン。どうする?
                                  
書き下ろし96・何でも美味い:何でも美味い、と思うハーレイ。多分、前世のせいで。
                        
書き下ろし97・何でも美味しい:好き嫌いが全く無いブルー。きっと、前世のせいで。
                           
書き下ろし98・作ってやりたい:ブルーに作ってやりたい料理。スープの他にも。

書き下ろし99・作ってあげたい:ハーレイに作ってあげたい、好物のパウンドケーキ。
                       
拍手その12・今が食べ頃:ブルー君曰く、今が自分の旬だとか。

書き下ろし100・同じ顔だが:今のハーレイには別の顔。思いもよらなかった顔。

書き下ろし101・同じ顔だけど:前のぼくの顔じゃない、と溜息をつくチビのブルー。

目次・その2: ←102話以降の目次は、こちらvemoji
こちらからも行けます→ http://bluestone.kyotolog.net/Entry/115/

目次・その3:←302話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→http://bluestone.kyotolog.net/Entry/320/

目次・その4:←518話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/600/

目次・その5:←602話以降の目次は、こちらv
こちらからも行けます→https://bluestone.kyotolog.net/Entry/727/
        
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 書き下ろしショート、果たしてニーズがあるのかどうか。
 拍手システム入れてみました、励ましにぽちっと…貰えると感謝。

※拍手下さった方、ありがとうございます~!emoji
     
                     
                       
           


       

拍手[2回]

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(いきなり食いたくなるんだよなあ…)
 不思議なことに、とハーレイが浮かべた苦笑い。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
(…俺にしては、珍しい晩飯だったが…)
 美味かったしな、と今日の夕食を振り返る。
 炊いた御飯はあったけれども、他には何も作っていない。
(あの店に行ったら、誘惑に負けてしまうってモンで…)
 サラダなどのサイドディッシュも、セットで購入してしまった。
 ついでに「スープもお願いします」と、テイクアウトの出来る器で頼んだ。
(家に帰れば、そのままレンジで温め直して…)
 湯気の立つスープが出来上がるわけで、メインの料理もサイドディッシュも…。
(レンジに入れたら、説明通りに…)
 温める時間をセットするだけ、それで美味しく仕上がる仕組み。
 店で食べるのと、ほぼ変わらない味になるのが嬉しい。
(…店で食っても良かったんだが…)
 ブルーの顔が頭に浮かんで、気が咎めた。
(あいつの家には寄れてないのに、俺だけが…)
 外食を楽しむのは申し訳ない、とテイクアウトの方にした。
 持って帰って「家で食べる」のなら、少しは後ろめたさが減る。
 「何もしないで、食べるだけ」よりは、レンジで、ひと手間掛けた方がいい。


 今日の夕食は、フライドチキンというものだった。
 学生時代に、友人たちと何度も食べに出掛けた、何処にでもあるチェーン店。
(フライドチキンは、特に珍しくもないんだが…)
 専門店とは違う店でも、置いていたりもする。
 「普段は買わない」ものなのだけど、今日は突然「食べたくなった」。
 ブルーの家には寄れない時間に、学校を出て、家に帰ろうと車で走っていた時の思い付き。
(…今夜は何にするかな、と…)
 夕食の献立を考えながらの運転中に、「フライドチキン」と不意に思った。
 「長いこと食べていなかったよな」と、店まで目の前に見えるよう。
(…せっかくなんだし…)
 幸いなことに、調理を急ぐ食材は「家には無い」。
 冷蔵庫の中身を頭の中で確認してから、「よし!」とハンドルを切った。
 いつもの食料品店とは違う方へと、真っ直ぐ車を走らせてゆく。
 目指す先は「フライドチキンの専門店」で、駐車場だって充分にある。
(滅多に、行きやしないんだがなあ…)
 それでも食いたくなるモンだ、と着いたら急いで車を停めて、店の中へと。
「いらっしゃいませ!」
 店員が明るく声を掛けて来たから、メニューを見ながら注文した。
「フライドチキンを、このセットで。スープもテイクアウト、これを一つ」
「かしこまりました!」
 元気一杯の返事が返って、じきに頼んだ品が出来て来たから、持って帰った。
 家に着いたら、着替えを済ませて、炊いた御飯を盛り付けて…。
(後はレンジのお世話になって…)
 「食べたかった料理」を、心ゆくまで楽しんだ。
 「そういや、こういう味だったっけな」と、店ならではの味を噛み締めながら。
(…あの味だけは、家で作ったんでは…)
 どうにも再現出来ないんだ、と自分自身に言い訳をする。
 店の秘伝のスパイス配合、それは明らかにされていないし、再現するのは難しい。
 挑んだ人は数多いのに、未だに出来ない「再現レシピ」。
 だからいいんだ、と「外食もどき」には満足している。
 店で食べるのが一番だけれど、其処の所は「踏み止まった」自分の自制心も充分だろう。


(…手抜きの飯には違いなくても、美味かったしな…)
 たまにはいいさ、とコーヒーのカップを傾ける。
 「こんな日だってあるもんだ」と、書斎で一人で頷きもする。
(…あいつが帰って来る前の頃は…)
 小さなブルーと再会するよりも前は、こんな夕食が何度もあった。
 フライドチキンもあったけれども、他にも色々なパターンが存在していた。
(…あいつに遠慮しなくていい分、店で食うのもありがちで…)
 仕事の帰りに思い付いたら、そっちへ車を走らせていた。
 ハンバーガーの店やら、ラーメン店やら、「食べたくなった」気持ちが導くままに。
(それなのに、とんと御無沙汰で…)
 久しぶりだった「フライドチキンの夕食」。
 家で温め直した味でも、フライドチキンは美味しかったし、サイドディッシュも美味。
(サラダまで買って来たわけで…)
 本当に俺には珍しいよな、と振り返るけれど、誰にだってあることだろう。
 思い付いた「何か」が食べたくなるのは、誰でも共通だと思う。
(それを狙って、広告で…)
 様々な食べ物を売り込むのだから、釣られる人が「多い」証拠でもある。
(広告でなくても、店の前を通り掛かったら…)
 写真までついた看板があったり、美味しそうな匂いが漂って来たりもする。
(そうやって誘って来るんだし…)
 釣られちまうのが「人間」っていうヤツだよな、と自分自身に照らしてみれば良く分かる。
(俺には、好き嫌いが無いと言っても…)
 今夜のフライドチキンのように、ついつい「食べたくなる」のは、否定はしない。
 「好き嫌い」とは、恐らく別の次元になるのだろう。
 仕方ないよな、と手抜きの夕食を思い出していて、ハタと気付いた。
 「好き嫌いが無い」のは何故なのか、という自分の事情という代物に。


(…俺に、好き嫌いが無いっていうのは…)
 子供の頃からの性質だったし、生まれつきだと考えていた。
 選り好みしない遺伝子を持っているのに違いない、と頭から信じ込んでもいた。
(…しかしだな…)
 どうやら「間違っていた」らしい。
 「好き嫌いが無い」のは、遠く遥かな時の彼方で生きた「自分」のせいだった。
 食べ物の好みなど言ってはいられない、生きていくのが精一杯だった環境。
(…あの船でも、好き嫌いを言ってたヤツらは、ちゃんといたんだが…)
 前のハーレイの場合は「言わない」タイプで、長い歳月を生きていた。
 自分でも全く気付かない魂の奥に、「好き嫌いを言わない」前の自分が存在している。
 そのせいで「好き嫌いが無い」のが、今のハーレイ。
 もちろん、今のブルーも同じで、好き嫌いが無いわけだけれども…。
(…将来、あいつと暮らし始めて…)
 一緒に食事をするようになったら、今日のような場面はどうなるのだろう。
(あいつが、家で待ってるんだし…)
 「飯のことなら任せておけ」と、何度もブルーに話している。
 当然、ブルーは、夕食の支度はしていない。
(飯くらいは炊いていそうなんだが…)
 炊飯器に任せておけばいいから、「御飯」はブルーの担当になるとは思う。
 とはいえ、ブルーがやるのは「其処でおしまい」、料理は「ハーレイが帰宅してから」。
(今日の晩御飯は、何になるのかな、と…)
 楽しみに待っている「ブルー」が家にいるのに、フライドチキンを持って帰るのはどうか。
 いくら「好き嫌いが無い」と言っても、「今夜はコレだぞ」と、差し出されたのが…。
(…フライドチキンの店の袋じゃ…)
 ブルーは赤い瞳を真ん丸にして、「晩御飯、これ…?」と玄関先で立ち尽くしそう。
 レンジで温め直せば「美味しくなる」のを分かってはいても、ガッカリするのは間違いない。
 何処から見たって「手抜きの夕食」、ブルーが炊いた「御飯」以外は、出来合いだから。


 そいつはマズイ、と冷汗が流れそうなハーレイだけれど、いつか、そういう日が来そう。
 「これが食べたい」と思い付いた品が、その日の食事に「そぐわない」時。
(…家で食う時もそうだが、出掛けた先でも…)
 ハーレイの気分は「ラーメン」なのに、ブルーの瞳が向いている先は和食の店だとか。
(…今日みたいに、いきなり食べたくなったら…)
 どうするんだ、と自分自身に問い掛ける。
 「我慢するのか」、ブルーを「付き合わせる」のか、どちらの道を選ぶんだ、と真剣に。
(……うーむ……)
 思い付いたのが俺でなければ、と悩むくらいに「難問」だという気がしてくる。
 もしも、ブルーが「今日の夕食、これがいいな」と唐突に言ったら、快く…。
(メニュー変更で、家にある食材、チェックしてから…)
 手早く作り上げる自信ならあるし、食材が無ければ買いに走りもするだろう。
 けれども、逆に「ハーレイが、食べたくなった」方なら、どっちにするかはハーレイ次第。
 ブルーに呆れられてもいいから、付き合わせるか、我慢して次の機会を待つか。
(…はてさて…)
 こいつは困っちまうぞ、と悩ましいけども、その時が来たら、きっと楽しい。
(あいつのためなら、と我慢する俺も、強引に付き合わせちまう俺も、だ…)
 どちらも「ブルーを中心」に回る世界だからこそ、起きる出来事。
 回る軸の中心を「自分に寄せる」のも、「ブルーにしておく」のも、自由に選べる。
 青い地球の上に二人で生まれて来たから、楽しく悩める。
 「食べたくなったら、どうするんだ?」と。
 付き合わせるのか、グッと我慢して「食べたい」気分を抑え込むのか。
 「俺は、フライドチキンが食いたいんだがなあ…」などと、愛おしいブルーを思いながら…。



            食べたくなったら・了


※夕食が出来合いだったハーレイ先生。食べたくなったら、買いに行きたくなるのが人間。
 将来、ブルー君と暮らし始めたら、どうするのか。付き合わせるか、我慢か、悩ましいかもv







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「ねえ、ハーレイ。復習するのは…」
 大事だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
 二人きりで過ごす休日の午後に、唐突に。
 お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「復讐だと!?」
 また物騒な話だな、とハーレイは面食らった。
 前のブルーも、そうだったけれど、今のブルーも大人しい。
(…こいつが、復讐するだって…?)
 いったい何が起こったんだ、と鳶色の瞳を見開くしかない。
 友人と喧嘩をしたにしたって、復讐というのは極端すぎる。
「おいおいおい…。そりゃ、大事かもしれないが…」
 黙っていたんじゃダメなんだが…、とハーレイは説いた。
「しかし、仕返しするのは勧めないぞ」
 他の手段を考えてみろ、とブルーの赤い瞳を覗き込む。
「仕返しされたら、相手も腹が立つからな」
 やり返されてヒートアップだ、と諭してやる。
 火に油を注ぐような真似はするな、とブルーを見詰めて。


「えっと…? ハーレイ、勘違いしていない?」
 ぼくが言うのは復習だよ、とブルーは同じ言葉を口にした。
「確かに、響きはソックリだけど、予習の反対」
「…はあ?」
 そっちなのか、とハーレイの目が真ん丸になる。
 予習なら、今のブルーに似合いで、予習するから優等生。
(…しかしだな…)
 復習も当然している筈なのに、思い付きさえしなかった。
(…だから、復讐だとばかり…)
 すっかり勘違いしちまったんだ、とハーレイは苦笑する。
 「復習の方で良かったよな」と、心の底からホッとして。
「悪かった、俺の勘違いだ」
 お前だって復習するだろうに、とブルーに頭を下げる。
「俺が来る前に、宿題とセットで、熱心にな」
「うん。積み残したら、後で困っちゃうしね」
 習って初めて、分かることもあるから、とブルーは笑んだ。
 「予習してても、間違えちゃってる時もあるし」と。
 今のブルーは優秀だけれど、失敗することもあるらしい。
 「古典とかね」と、ペロリと舌を出した。
 「前のぼくだと知らない言葉で、難しいから」と、正直に。


 今のハーレイは、古典の教師。
 ブルーが「予習していても、間違える」のが少し嬉しい。
 前のブルーに教えたものは、生活の知識が多かった。
 いわゆる「勉強」は、教える機会などは無かった。
(…ヒルマンとエラがいたからなあ…)
 俺の知識じゃ敵わなかった、と認めざるを得ない昔のこと。
 それが今度は、「教えてやれる」ものがドッサリ。
 だからブルーに微笑み掛けた。
「なるほど、そっちの復習か…。大事なことだぞ」
 古典は厄介な分野だしな、と脅してもみる。
「今は普通の文字で読めるわけだが、上の学校だと違うぞ」
「えっ?」
 何があるの、と驚くブルーに教えてやった。
「うんと昔の頃は、書いてある文字が今と違うんだ」
 文字は同じでも筆で流れるように書くとか…、と説明する。
「まだ平仮名が無くて、漢字ばかりとかな」
「ええ……」
 そんなの、ぼくじゃ歯が立たないよ、とブルーは嘆いた。
 「予習どころか、復習ばかりになっちゃいそう」と。
「そうなるな。俺も苦労をしたもんだ」
 復習だけで精一杯で、とハーレイは肩を竦めてみせる。
 「柔道と水泳がメインだったし、予習までは無理だ」とも。


「そうなんだ…。だけど、今では先生だよね」
 復習はホントに大事みたい、とブルーは感心している様子。
 「ハーレイ、古典の先生だもの」と尊敬に溢れた眼差しで。
「俺が実例というわけだ」
 復習も大いに頑張れよ、とハーレイはブルーを激励した。
 「予習するのも大事なんだが、復習もだ」と。
「分かった! それじゃ、復習しておかないと…」
 困る前に、とブルーは立ち上がるから、勉強かもしれない。
 帰宅してから時間が足りずに「積み残した」分の復習。
(よしよし、勉強するんだったら…)
 休みの日でも頑張るべきだ、と思ったのだけれど…。
(…何なんだ、俺に質問か?)
 積み残したヤツは古典なのか、と近付くブルーを眺める。
 「教科書を持って来ればいいのに」と考えながら。
 そうしたら…。


「キスの復習、しなくっちゃね!」
 前のぼくしかしてないから、とブルーが顔を近付けて来た。
「いざという時、下手になってたら、困っちゃうでしょ?」
「馬鹿野郎!」
 それが普通だ、とハーレイはブルーの顔を躱して睨んだ。
「いいか、世の中、普通は初心者ばかりなんだぞ!」
 予習しているヤツもいなけりゃ、復習もだ、と叱り付ける。
「 そんな復習、しなくてもいい!」と、拳を軽く握った。
 銀色の頭に一発お見舞いするために。
 どうせブルーは懲りないけれど、けじめだから、と…。



       復習するのは・了





拍手[0回]

(今日は、失敗しちゃったよね…)
 ママが教えてくれてたのに、と小さなブルーが零した溜息。
 ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
 お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(…ママが作った、スイートポテト…)
 今日のおやつは、それだった。
 学校から帰る時間に出来上がるように、母が調整してくれていた。
(だけど、ちょっぴり…)
 帰宅した後、出遅れた。
 着替えたまでは良かったけれど、其処で机の上に気を取られた。
 昨日の夜に、途中まで読んだ本を置いてあったせいで。
(続き、とっても気になってて…)
 昨夜は寝るのが惜しかったほどで、夜更かししてでも読みたかった。
 けれど、身体は丈夫ではない。
 夜更かししたなら、風邪を引くとか、ろくなことにはなりそうもない。
(だから諦めて、大人しく…)
 ベッドに入って眠ったわけで、今朝も読んでいる時間は無かった。
 学校に持って行って読むという手もあったけれども、それはなんだか…。
(…せっかくの山場に、もったいなくて…)
 家に帰って、ゆっくり読もう、と思い直して、机の上に置いたままで出掛けた。
 その本が目に入ったことが、出遅れた理由。
(…おやつの後には、すぐに読めるしね…)
 ほんの一行、読んで行くだけ、と手に取ったのが敗因だった。
 そのまま本に吸い付けられてしまって、気付いた時には、母の呼び声がしていた。
(ブルー、まだなの、って…)
 呼んでいるから、急いで階段を下りて行ったら、母は庭仕事に出掛ける所。
(おやつの用意は出来てるから、って教えてくれて…)
 母は花壇の手入れに行ってしまって、ブルーは一人で残された。
 テーブルには、お茶のポットとカップが置かれて、お菓子の皿もあって、申し訳ない気分。
 いつも通りに直ぐに来たなら、お菓子は「出来立て」を食べられる筈だったから。


 母が作ったスイートポテト。
 サツマイモを潰して、滑らかに漉して、綺麗に形を整えたもの。
 オーブンから出したばかりだったら、熱々だったに違いない。
(温め直すと、美味しいわよ、って言ってたし…)
 熱い方が美味しいことも知っているから、温め直すことにした。
(…レンジでもいいけど、ママのオススメ、トースターに入れて…)
 ほんの数分、焼いて食べるという方法、その方がレンジでやるより美味しいだろう。
 母はオーブンで焼き上げたのだし、それの再現といった具合で。
(…ママが教えてくれた通りの時間と、温度にしておいて…)
 スイートポテトをトースターに入れて、後は待つだけ。
 数分なのだし、新聞でも読んで待てばいい。
 面白そうな記事もあったし、楽しく読んでいたのだけれど…。
(…トースターの方から、美味しそうな匂いがしてたのが…)
 焦げる匂いに変わっていたのに、気付くのが少し遅かった。
(あっ、大変、って…)
 慌てて飛んで行ったけれども、スイートポテトは、真っ黒に焦げてしまっていた。
 母に言われた通りに、ちゃんと温めていたというのに。
(…時間の設定、間違えたかな、ってトースターを睨んでいたら…)
 母の教えを「守らなかった」ことに気付かされた。
 おやつに遅刻したせいで、頭の中が整理されてはいなかったらしい。
(…トースターなら、ホイルで丸ごと包んでから…)
 入れなさいね、と母は確かに言って出掛けた。
「でないと、焦げてしまうわよ」とも。
 (…そんなの、覚えていなかったし…)
 スイートポテトを、お皿の上から、トースターの中へ移動させただけ。
 後は温度と時間を決めて、スタートさせたのだから、たまらない。
 スイートポテトは焦げて当然、こんがりどころか、炭みたいな見た目になってしまった。


(…中身までは、まだ焦げてはいないかな、って…)
 しょげながら皿の上に戻して、紅茶を淹れていたら、母が戻った。
 焦げたスイートポテトを見るなり、「あらまあ…」と目を丸くしていたけれど…。
(他にもあるから、待っていてね、って温め直して…)
 美味しいものを渡してくれて、焦げた方のは、母の分になった。
 「大丈夫、中はホクホクだから」と、レンジで温めて、焦げた部分を全部、剥がして。
(…ホントに、中までは焦げていなくって…)
 母は笑顔で食べていたのが、今日の「失敗」、母に迷惑を掛けてしまった。
 もしも焦がしてしまわなかったら、庭仕事から戻った後には、満足の休憩時間だったろう。
 夕食の支度に取りかかる前に、紅茶でも淹れて、スイートポテト。
 焦げてしまったものではなくて、ちゃんと綺麗に温め直して、ホクホクのものを。
(……大失敗……)
 おやつに遅れて、おまけに焦がしちゃうなんて、と情けない。
 母は「こういう日だって、たまにあるわよ」と可笑しそうだった。
 「ブルーは滅多に失敗しないし、面白い顔を見ちゃったわ」とクスクス笑いで。
(…ションボリした上、半分、パニックだったしね…)
 面白い顔になっていたのは、本当だろう。
 普段のブルーでは、とても見られない「珍しい」見世物。
 とはいえ、それで失敗したのが、帳消しに出来るわけもない。
 焦げたスイートポテトは、暫くの間、母の記憶に残りそう。
 次に「温め直す」ようなことがあったら、茶目っ気たっぷりに言われるのだろう。
 「温め直す時には、気を付けてね」と、今日の失敗を引き合いに出して。
 「きちんとホイルで包むのよ」と念を押したり、他にも注意をしたりもして。


(…ホントに、失敗…)
 いつまで言われちゃうんだろう、と肩を落として、ハタと思い当たった。
(……今日の失敗、ママの前だったから……)
 まだしもマシな方だったろう。
 あの時、近くに父もいたなら、もっと笑われて、父にも当分、注意されそう。
 「お前は焦がすから、気を付けるんだぞ」と、くどいくらいに。
(…だけどパパなら、まだマシな方で…)
 未来のぼくが心配だよ、と首を竦めた。
 今は「母におやつを作って貰う」立場だけれども、将来は違う。
 ハーレイと一緒に暮らし始めたら、おやつを作る係は、多分、ハーレイ。
(…ハーレイが好きな、ママのパウンドケーキだけは…)
 自分で焼きたいし、焼けるようにもなるだろう。
 けれど、ハーレイは、今も昔も、料理の腕は抜群なだけに…。
(…ぼくが作るの、パウンドケーキだけで…)
 他のお菓子は、料理とセットで、ハーレイが作る毎日。
 仕事がある日も、作っておいて出掛けるくらいに、ハーレイは腕を奮うと思う。
 「今日の昼飯、コレだからな。おやつも、作っておいたから」と、毎朝、満足そうに。
(…そうやって作っておいてくれたの、焦がしちゃったら…)
 今日のスイートポテト以上に、申し訳なくて、情けない気分になってしまいそう。
 「焦がしちゃったよ…」と、半ば泣き顔になっている日もありそうな気がする。
 真っ黒焦げになった「何か」を、涙が滲んだ瞳で見詰めて。
(…せっかく作ってくれたのに、って…)
 平謝りに謝りたくても、ハーレイは「いない」。
 仕事に出掛けて留守にしていて、仕事の真っ最中なのかもしれない。
 ブルーの方は「おやつの時間」で、のんびりとお茶を淹れていたって。


(……最低だよ……)
 ハーレイの心尽くしを真っ黒に焦がしてしまった上に、謝るチャンスも夜まで来ない。
 「焦げてしまった、おやつ」の代わりも、余分に作ってあった時しか無い。
(…あればいいけど…)
 無かった時には、真っ黒焦げのを食べるしかなくて、本当の美味しさは分からない。
 帰って来たハーレイに、二重の意味で謝る羽目に陥るのだろう。
 「ごめんなさい、おやつ、焦がしちゃった」と、「本当の味も、分からなかったよ」と。
(…そんなの、悲惨すぎるから…!)
 だけど、やりそう、と文字通り震え上がりそう。
 ハーレイと一緒に暮らし始めたなら、きっと、いつかは、そういう失敗。
(……ごめんなさい……!)
 今の間に先に謝っておくからね、とハーレイの家の方向を向いて謝った。
 「今日は失敗しちゃったんだけど、未来のぼくも、やりそうだから」と、頭を下げて。
(…ホントのホントに、ごめんなさい…!)
 気を付けるけど、きっと、やっちゃう、と未来のハーレイに向かって謝るしかない。
 まだまだ先の話だけれども、その時になって謝りたくても、ハーレイは、仕事中だろうから。
(作って行ってくれたの、焦がしちゃったら、ホントに、ごめん…!)
 お菓子どころか、お料理の方も焦がしそうだし、と情けないけれど、それが現実。
 「パウンドケーキしか、作れないブルー」に、お似合いの未来。
(…やっぱり、お料理、出来るようにしておいた方がいいのかも…)
 などと思ってはみても、ハーレイのことだし、「俺が作る」になってしまいそう。
 それに甘えて、いつの間にやら、油断した挙句…。
(…ハーレイが作ってくれたのを…)
 焦がしちゃうんだ、という気しかしないから、謝り続ける。
 先の未来にいる「ハーレイ」に向けて。
 「焦がしちゃったら、ごめんなさい」と、今の内から、精一杯の謝罪をこめて…。



            焦がしちゃったら・了


※お母さんが作ったスイートポテトを、焦がしてしまったブルー君。うっかりミスで。
 ハーレイ先生と暮らし始めても、やりそうな失敗。今の内から謝っておく方がいいかもv






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(…俺としたことが…)
 今日は失敗しちまったな、とハーレイが浮かべた苦笑い。
 ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
 愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それはお馴染み。
 今夜は、他にも「お仲間」がいる。
 皿に載せて来た夜食と言うか、おやつと言うか。
(…時間的には、ちと遅いんだが…)
 食うのは俺の自由だしな、とハーレイが眺めるものは、みたらし団子。
 今日は帰りが遅かったけれど、中途半端な時間だった。
 ブルーの家に寄るには遅かっただけで、家に帰るには、さほど遅くなかった。
(…そうなるとだ…)
 少し余裕が出来てくるから、食料品店へ寄った所で、いいものを見付けた。
 出張販売に来ていた店で、みたらし団子が焼かれている。
(美味そうな匂いだったし、買って帰るか、と側に行ったら…)
 焼き上がった団子たちの隣に、半製品のが置かれていた。
 店の秘伝のタレが添えられ、団子も串に刺してある。
(…買って帰って、家で炙れば…)
 出来立ての味を再現出来るのが、売りだという。
(焼けているのを買って帰ったんでは、冷めちまうしな…)
 コレにしよう、と半製品のを買うことにした。
 家に帰れば夕食の支度などもあるし、ゆっくり味わうのならば、断然、半製品がいい。
 「一つ下さい」と注文したら、店員は親切に教えてくれた。
 焼くなら時間はこのくらい、タレも温めておくと美味しいから、と。


 そういうわけで、今夜は「みたらし団子」が皿の上にいる。
 コーヒーの友には、丁度いい。
(…美味いんだがなあ…)
 団子もタレも絶品なんだ、と頬張るけれども、悔やまれる点があるのが惜しかった。
 夕食の後に片付けをしてから、焼くことにした「みたらし団子」。
(どうせ一度に食っちまうんだし、と…)
 網に並べて焼き始めたまでは良かった。
 「このくらいかな」と火加減だって調整したし、上手く焼き上がる筈だった。
(…其処で失敗…)
 みたらし団子は、あくまで「団子」。
 魚や肉を焼くのとは違う。
 半製品でも「炙るだけ」の所まで出来ているわけで、表面が熱くなって来たなら…。
(火が通るのは、早いってな…)
 其処の所を忘れてたぞ、と我ながら情けなくなる。
 自分自身に言い訳するなら、こうだろう。
(…正月はとうに過ぎた後だし、餅を焼くようなことも無いから…)
 炙り方が、料理の方になっちまうんだ、としか言いようがない。
 「みたらし団子」は、店に並べられていた品に比べて、色黒の団子になってしまった。
 つまり「表面が焦げた」状態、真っ黒までは行っていないのが不幸中の幸い。
(…いい感じだな、と思った所で、火から離せば…)
 こんな姿にはならなかった、と焦げた団子が悲しいけれど、仕方ない。
(まあ、パリッとした皮も味わえる、とでも…)
 思っとくか、と夜食を味わう。
 固くなるほど焦げてはいないし、タレもあるから、充分、美味しい。
(…焼き上がったのを買って返って、温め直すよりは…)
 美味いんだしな、と負け惜しみをマグカップに向かって言ってみた。
 「お前さんには分けてやらんぞ」と、ニッと笑って。


 マグカップは、何も言わなかった。
 みたらし団子を寄越さない「ハーレイ」に、文句を言いはしなかったけれど…。
(…文句と言えばだな…)
 あいつなんだ、と頭に浮かんで来た、小さなブルー。
 「ハーレイ、今日は来てくれなかったよ…」と、不満だったに違いない。
 もしもブルーが、此処にいたなら…。
(焦げた団子に、文句たらたら…)
 プンスカ怒っちまっていそうだよな、とハーレイは軽く肩を竦めた。
 此処にいるのが「ブルー」だった時は、「分けてやらんぞ」と言える相手ではない。
 むしろ、みたらし団子は「ブルー」優先、ブルー用に買って来ることになっていたろう。
(…今だからこそ、俺が一人で暮らしてて…)
 好きに夜食を食べているけれど、いずれは、一人暮らしに「さよなら」を告げる。
 ブルーと一緒に暮らし始めて、食事も夜食も、ブルーと食べるわけだから…。
(今日みたいに、焦がしちまったら…)
 あいつの分も焦げるわけだ、と冷汗が出そう。
 きっとブルーは、笑って許してくれると思いはしても、自分が悲しい。
 「焦がすなんて」と、失敗したことを悔やんで、ブルーの分まで焦がしたことが悔しくて…。
(焦げた中から、マシなヤツをだ…)
 コレとコレだな、と選び出してから、ブルーに渡すのだろう。
 「すまんな、少し焦がしちまった。この辺は、少しマシだからな」と。
(…情けない上に、申し訳ない…)
 ブルーに、焦げた団子なんて、と「後悔先に立たず」を痛感させられる。
 今夜のような「少し失敗」をやらかした時は、そうなるしかない。
(…お前さんなら、何も問題無いんだがなあ…)
 お前さんも、古い馴染みなのに、と愛用のマグカップに愚痴だけれども、一方で少し嬉しい。
 ブルーが此処にいる時が来たなら、普段は、幸せ一杯だから。


 一人きりの「気ままな時間」もいい。
 みたらし団子を買って、一人で炙って、焦げたのを頬張る時間も、楽しくはある。
(とはいえ、あいつと一緒だったら…)
 毎日が、もっと充実していて、張り合いだってあることだろう。
 仕事に行くのも、家事をするのも、今よりも、ずっと。
(…そんな中でも、今夜みたいな失敗を…)
 やらかす時が来るんだよな、と「やらかす」方の自信ならある。
 ブルーと話しながら炙っている間に、焦げていたとか。
(…ありそうだぞ…)
 でもって、きっと、やっちまうんだ、と「ブルーの文句」が怖いけれども、それも今だけ。
 「ハーレイと一緒に暮らせない」から、ブルーは不満をぶつけて来る。
 何かといえば頬をプウッと膨らませては、フグみたいな顔になったりもする。
(あの頬っぺたを、両手でペシャンと…)
 潰してやって「フグが、ハコフグになっちまった」と笑い飛ばせるのも、今の間だけ。
 一緒に暮らせる時が来たなら、ブルーは、今のブルーのようにはならない。
(あいつの分まで、焦がしちまっても…)
 文句どころか、逆に謝ってくれるのだろう。
 「ごめんね、ハーレイ…。話し掛けてた、ぼくが悪いんだよ」などと、申し訳なさそうに。
(…ついでに、あいつのことだから…)
 酷く焦げた方を「ぼくが貰う」と、選び出していそう。
 「いや、大丈夫だ、俺が食うから!」と、慌てて止めに入る「自分」の姿が目に見えるよう。
 でないとブルーは、本当に「持ってゆく」だろう。
 自分用の皿に「焦げたものばかり」載せて、自分の席へと。
(…今のあいつは、まだチビだから…)
 きっと文句を言う方なんだ、と確信はしても、育ったブルーは違っていそう。
 前のブルーと「そっくり同じ」に、ハーレイのことを気遣うようになって。


(……うーむ……)
 それは喜ばしいことなんだが…、と思うけれども、文句を言って欲しくもある。
 「なんで、ハーレイ、失敗したの!?」と、焦げてしまった「みたらし団子」を見て。
 「もっと綺麗に焼けていたなら、もっと美味しく出来た筈だよ」と、未練がましく。
(…そういうブルーが、出来ちまっても…)
 俺としては、ちっともかまいやしないんだ、という気もする。
 前のブルーのように「気遣い過ぎて」、仲間たちのためにメギドまで飛んでしまうよりかは。
(…もしも、団子を焦がしちまったら…)
 文句たらたら、「ハーレイ、ウッカリしてたんじゃない?」と顔を顰めるブルーでもいい。
 酷く焦げた分を選ぶどころか、「マシなの、コレとコレだよね?」と逆の選び方。
 「ぼくはマシなの、食べておくから」と、焦げた分は全部、ハーレイに押し付けて来る。
 話し掛けて来た「ブルー」のせいで、焦げてしまった団子だろうが、遠慮しないで。
(…そうだな、下手に気遣うブルーよりかは…)
 文句なブルーの方がいいかもしれん、と大きく頷き、焦げた団子を頬張って笑む。
 「そうだ、理想は、こういうブルーかもな」と、思い付いた「ブルー」を頭に描いて。
 みたらし団子でも、他の料理でも…。
(俺がウッカリ、焦がしちまったら…)
 酷く焦げた分を選ぶわけでも、その逆でもなくて、「半分ずつがいいね」と笑顔のブルー。
 「分けて食べれば、焦げているのも、半分になるよ」と。
 「美味しい所も、焦げた所も、半分こで」と、笑ってくれる「ブルー」だといい。
 気遣いは「そのくらい」が、きっといいんだ、と心から思う。
 前のブルーのようになるより、「半分こして食べようよ」と微笑むブルーの方が、きっと…。



            焦がしちまったら・了


※みたらし団子を焦がしてしまった、ハーレイ先生。結婚した後も、やりそうなミス。
 そういう時に、ブルー君なら、どうするか。半分こを提案するブルー君だと、いいですよねv








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