挑戦するのは
「ねえ、ハーレイ。挑戦するのは…」
大切だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、突然に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「挑戦だって? いったい何だ?」
何に挑戦したいんだ、とハーレイはブルーに問い返した。
あまりに急な質問な上に、ブルーには似合わない言葉。
今のブルーも身体が弱くて、守りの姿勢が似合っている。
そんなブルーが挑戦するなら、頭脳系の何かに違いない。
「えっとね…。例えば、パズルとか…」
数学の問題とかもそうかな、とブルーは答えた。
「出来そうにない、って諦めるよりは、挑戦でしょ?」
「なんだ、やっぱり、そういうヤツか」
案の定だな、とハーレイは笑んで、大きく頷く。
「お前のことだし、頭脳系だと思ったが…」
「うん。スポーツとかだと、挑戦は、ちょっと…」
大切なのは分かってるけど、とブルーは肩を竦めた。
弱い身体で挑むのは無理で、利口とも思えないから、と。
「まあなあ…。お前の身体じゃ、スポーツ系の挑戦は…」
やらない方が賢明だよな、とハーレイも肯定するしかない。
今も虚弱なブルーの身体は、その方面には不向きと言える。
無理をしてまで挑戦したなら、倒れてしまうことだろう。
元気な子供だった場合は、無理をする価値もあるけれど。
「普通だったら、其処も挑戦すべきだが…」
お前だと、ろくなことにはならん、とハーレイにも分かる。
寝込んでしまって学校も欠席、勉強にだって差し支える。
「でしょ? だから、ぼくならパズルとかだよ」
でも、挑戦するのは大切だよね、とブルーは繰り返した。
最初から無理だと投げ出すよりかは、挑戦の方、と。
「そりゃそうだ。でなきゃ力がつかんしな」
スポーツの方が分かりやすいが、とハーレイも再び頷く。
さっき頷いたのとは違うポイントでも、此処は頷くべきだ。
「パズルとかだと、実力がついたと分かるまでには…」
けっこう時間がかかるからな、と苦笑する。
答えが出るまで挑むしかなくて、途中の力は見えにくい。
けれど、スポーツの場合は違う。
日に日に腕が上がるものだし、客観的にも掴みやすいから。
昨日よりは今日、今日よりは明日、と何でも上達する。
挑んだ成果は上がるけれども、頭脳系だと分かるのは遅い。
その点、スポーツは結果が出るのが早いものだから…。
「頭脳系で頑張る生徒よりかは、スポーツ系の方がだな…」
挑戦する生徒は多くなるな、とハーレイは溜息をついた。
勉強だったら投げ出す生徒も、部活だと頑張ったりもする。
朝早くから登校して来て練習、放課後も遅くまで残ったり。
「教師としては、勉強にも挑んで欲しいんだがなあ…」
「ハーレイ、自分で言ったじゃないの」
結果が見えにくいんだから、仕方ないよ、とブルーも笑う。
「そんなの、誰でも投げ出すよね」と、可笑しそうに。
「分かってるんだが、やっぱりなあ…」
「投げずに挑んで欲しい、って?」
「当然だろう? お前も自分で言ったじゃないか」
挑戦するのは大切だ、とな、とハーレイはブルーに返した。
「俺だって挑戦して欲しいんだ」と、教師の立場で。
実際、投げ出す生徒は多くて、教師にとっては困りもの。
スポーツを頑張る力があるなら、勉強も努力して欲しい。
投げ出さないで挑戦あるのみ、日々、実力を磨いてこそだ。
聞いたブルーも、「そうだよねえ…」と相槌を打つ。
「だったら、ぼくも挑戦するのが大切だよね?」
「その通りだ。パズルに勉強、どれも挑戦が大切だよな」
頑張れよ、とハーレイは、ブルーにエールを送った。
スポーツ系の挑戦でなければ、ブルーの努力は喜ばしい。
実力もつくし、やる気だって湧いてくるだろう。
挑戦したいことがあるなら、是非、頑張って欲しいと思う。
「ありがとう! それじゃ早速、挑戦するね!」
キスを頂戴、とブルーはニコッと笑みを浮かべた。
「唇にキスして欲しいんだけど」と、勝ち誇った顔で。
「なんだって!?」
何故、そうなるんだ、とハーレイの目が真ん丸になる。
挑戦には違いないのだけれども、挑む対象が違うだろう。
「そんな挑戦、俺は絶対、認めんぞ!」
挑まなくていい、とハーレイはブルーを叱り付けた。
唇へのキスを贈ってやるには、今のブルーは幼すぎる。
前のブルーと同じ背丈に育つ時まで、キスはお預け。
「だけど、ハーレイ、言ったよね!」
挑戦するのは大切だ、って…、とブルーは引かない。
「諦めないよ」と、「ぼくの挑戦、これなんだから!」と。
「中身によるとも言ったぞ、俺は!」
スポーツ系だと控えた方がいいってな、とハーレイは返す。
弱い身体で無理をするのは良くない、と確かに言ったから。
「キスはスポーツじゃないってば!」
「スポーツは例えだ、中身によるんだ!」
認められない挑戦もある、とハーレイは軽く拳を握った。
「分からないなら、お見舞いするぞ」とブルーを睨んで。
「頭をコツンとやって欲しいか」と、苦い顔をして。
妙な挑戦など、要らないから。
挑戦するのは大切だけれど、挑む中身によるのだから…。
挑戦するのは・了
大切だよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、突然に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「挑戦だって? いったい何だ?」
何に挑戦したいんだ、とハーレイはブルーに問い返した。
あまりに急な質問な上に、ブルーには似合わない言葉。
今のブルーも身体が弱くて、守りの姿勢が似合っている。
そんなブルーが挑戦するなら、頭脳系の何かに違いない。
「えっとね…。例えば、パズルとか…」
数学の問題とかもそうかな、とブルーは答えた。
「出来そうにない、って諦めるよりは、挑戦でしょ?」
「なんだ、やっぱり、そういうヤツか」
案の定だな、とハーレイは笑んで、大きく頷く。
「お前のことだし、頭脳系だと思ったが…」
「うん。スポーツとかだと、挑戦は、ちょっと…」
大切なのは分かってるけど、とブルーは肩を竦めた。
弱い身体で挑むのは無理で、利口とも思えないから、と。
「まあなあ…。お前の身体じゃ、スポーツ系の挑戦は…」
やらない方が賢明だよな、とハーレイも肯定するしかない。
今も虚弱なブルーの身体は、その方面には不向きと言える。
無理をしてまで挑戦したなら、倒れてしまうことだろう。
元気な子供だった場合は、無理をする価値もあるけれど。
「普通だったら、其処も挑戦すべきだが…」
お前だと、ろくなことにはならん、とハーレイにも分かる。
寝込んでしまって学校も欠席、勉強にだって差し支える。
「でしょ? だから、ぼくならパズルとかだよ」
でも、挑戦するのは大切だよね、とブルーは繰り返した。
最初から無理だと投げ出すよりかは、挑戦の方、と。
「そりゃそうだ。でなきゃ力がつかんしな」
スポーツの方が分かりやすいが、とハーレイも再び頷く。
さっき頷いたのとは違うポイントでも、此処は頷くべきだ。
「パズルとかだと、実力がついたと分かるまでには…」
けっこう時間がかかるからな、と苦笑する。
答えが出るまで挑むしかなくて、途中の力は見えにくい。
けれど、スポーツの場合は違う。
日に日に腕が上がるものだし、客観的にも掴みやすいから。
昨日よりは今日、今日よりは明日、と何でも上達する。
挑んだ成果は上がるけれども、頭脳系だと分かるのは遅い。
その点、スポーツは結果が出るのが早いものだから…。
「頭脳系で頑張る生徒よりかは、スポーツ系の方がだな…」
挑戦する生徒は多くなるな、とハーレイは溜息をついた。
勉強だったら投げ出す生徒も、部活だと頑張ったりもする。
朝早くから登校して来て練習、放課後も遅くまで残ったり。
「教師としては、勉強にも挑んで欲しいんだがなあ…」
「ハーレイ、自分で言ったじゃないの」
結果が見えにくいんだから、仕方ないよ、とブルーも笑う。
「そんなの、誰でも投げ出すよね」と、可笑しそうに。
「分かってるんだが、やっぱりなあ…」
「投げずに挑んで欲しい、って?」
「当然だろう? お前も自分で言ったじゃないか」
挑戦するのは大切だ、とな、とハーレイはブルーに返した。
「俺だって挑戦して欲しいんだ」と、教師の立場で。
実際、投げ出す生徒は多くて、教師にとっては困りもの。
スポーツを頑張る力があるなら、勉強も努力して欲しい。
投げ出さないで挑戦あるのみ、日々、実力を磨いてこそだ。
聞いたブルーも、「そうだよねえ…」と相槌を打つ。
「だったら、ぼくも挑戦するのが大切だよね?」
「その通りだ。パズルに勉強、どれも挑戦が大切だよな」
頑張れよ、とハーレイは、ブルーにエールを送った。
スポーツ系の挑戦でなければ、ブルーの努力は喜ばしい。
実力もつくし、やる気だって湧いてくるだろう。
挑戦したいことがあるなら、是非、頑張って欲しいと思う。
「ありがとう! それじゃ早速、挑戦するね!」
キスを頂戴、とブルーはニコッと笑みを浮かべた。
「唇にキスして欲しいんだけど」と、勝ち誇った顔で。
「なんだって!?」
何故、そうなるんだ、とハーレイの目が真ん丸になる。
挑戦には違いないのだけれども、挑む対象が違うだろう。
「そんな挑戦、俺は絶対、認めんぞ!」
挑まなくていい、とハーレイはブルーを叱り付けた。
唇へのキスを贈ってやるには、今のブルーは幼すぎる。
前のブルーと同じ背丈に育つ時まで、キスはお預け。
「だけど、ハーレイ、言ったよね!」
挑戦するのは大切だ、って…、とブルーは引かない。
「諦めないよ」と、「ぼくの挑戦、これなんだから!」と。
「中身によるとも言ったぞ、俺は!」
スポーツ系だと控えた方がいいってな、とハーレイは返す。
弱い身体で無理をするのは良くない、と確かに言ったから。
「キスはスポーツじゃないってば!」
「スポーツは例えだ、中身によるんだ!」
認められない挑戦もある、とハーレイは軽く拳を握った。
「分からないなら、お見舞いするぞ」とブルーを睨んで。
「頭をコツンとやって欲しいか」と、苦い顔をして。
妙な挑戦など、要らないから。
挑戦するのは大切だけれど、挑む中身によるのだから…。
挑戦するのは・了
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