断られたら
(今はまだ、あいつの家でしか…)
デートは出来ないわけなんだが、とハーレイは恋人の顔を思い浮かべた。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
今日はブルーに会えずに終わった。
学校でも姿を見掛けていないし、仕事帰りにブルーの家にも行けてはいない。
残念な気持ちで一杯だけれど、土曜日が来たらデートが出来る。
ブルーの家の庭で一番大きな木の下、其処で二人でお茶を楽しむ。
(すっかり定番になっちまったなあ…)
庭でのデート、と白いテーブルと椅子で過ごすティータイムを思い出す。
天気がいい日の午後の定番、外が駄目ならブルーの部屋で、二人きり。
今の所は、それが精一杯の恋人同士だけれども、いずれはデートが出来る日が来る。
ブルーの家の庭の垣根の外の世界へと、繰り出してゆける。
(俺が迎えに行ってだな…)
出て来たブルーを愛車に乗せて、色々な場所へ出掛けてゆく。
お茶を飲むのも、喫茶店とか、雄大な景色を眺めながらのテラス席とか。
(遠出するなら、道もあれこれ考えて…)
ブルーが喜びそうなルートで、目的地まで走ってゆくのがいいだろう。
休憩場所が豊富にあって、様々なものに出会えるルート。
店はもちろん、野生の動物や鳥が見られるとか、そういった道を選ばなくては。
(せっかく、俺たちのためだけのシャングリラで…)
走るんだしな、と愛車でのドライブに思いを馳せる。
今の自分が乗っている車は、ブルーと二人で乗れる日が来たら、シャングリラになる。
白い車に買い替えるまでは、濃い緑色の車体だけれども、気分は白いシャングリラ。
(前のあいつを、シャングリラで…)
青い地球まで連れてゆくのが夢だったのに、それは叶わずに終わってしまった。
だから今度は、今のブルーを、今ならではのシャングリラに乗せて、地球の上を走ってゆく。
青く蘇った水の星には、車のための道路が敷かれているのだから。
待ち遠しいな、と楽しみでたまらない、ブルーとのデート。
まだ何年も待たされてしまう、ブルーとデートに出掛けられる日。
なにしろブルーは、十四歳の子供でしかない。
背丈もまだまだ子供のそれで、デートもキスも、今のブルーとは出来ないけれど…。
(あいつの背丈が、前のあいつと同じになったら…)
晴れてデートもキスも解禁、そうなれば早速、デートに誘うべきだろう。
まずは二人で、ブルーの家の垣根の外の世界へ出てゆき、お茶や食事をする所から。
(外の世界を、うんと堪能した後で…)
ブルーを家まで送り届けて、「おやすみなさい」のキスをする。
車を降りる前のブルーに、「忘れ物だ」と、唇に。
(…初めてのキスは、そんなトコだな)
それが一番自然だろうさ、とマグカップの縁を指でカチンと弾く。
ブルーが欲しがっている唇へのキスは、恋人同士のそれだけれども、初デートでは…。
(贈るのは、ちと早すぎだろう)
もっと、時間をかけたいよな、と思ってしまう。
キスを贈る場所も、それに時間も、選び抜いてのキスがいいんだ、と。
(そうは言っても、こればっかりは…)
その時々で変わりそうだし、最初のデートで贈ってしまう可能性もゼロではない。
「こんな筈ではなかったんだが…」と思う展開、それが来ないとは限らないから。
選び抜いたデートのコースなのだし、そういうことも起こり得る。
あるいは途中でコースが変わって、恋人同士のキスに相応しい場面が来てしまうとか。
(なんたって、俺が一人でドライブするんじゃないんだし…)
一緒に出掛けるブルー次第で、コースも行先も変化する。
ブルーが窓から見付けた何かが、コース変更のための標識代わり。
「あのお店に入ってみたいんだけど」と指差されたなら、その店へ。
「あっちの道だと、何処に行けるの?」と質問されて、答えた結果がコース変更だとか。
そうやってルートやコースが変われば、シチュエーションだって変わって来る。
恋人同士のキスが相応しい雰囲気になったら、それを無視して帰るのは…。
(俺も惜しいし、ブルーも黙っちゃいないだろうしな?)
予定変更になっちまうんだ、と苦笑する。
「計画通りにいくかどうかは、分からないよな」と。
初めてのキスは「おやすみなさい」か、恋人同士のキスなのか。
今のブルーと過ごす未来は、その辺りからして全く読めない。
きっと「その時」がやって来たなら、色々なことが起きるのだろう。
まるで予想もしていなかった、「こんな筈では」と困ってしまうようなことだって。
(はてさて、困るようなヤツとなったら…)
何があるやら、と首を捻って、その瞬間にハタと気付いた。
実にとんでもない、困るより他にどうしようもない、未来のデートで起きそうなこと。
(…あいつにデートを申し込んだら…)
断られちまうこともあるんだよな、と「その可能性」に愕然とする。
ブルーにも予定などがあるから、どんな時でもデート出来るとは限らない。
(店を予約して、コースの方も練りに練って、だ…)
自信満々で申し込んだら、「ごめん」と返事が返って来ることもあるだろう。
「その日は、友達と出掛ける予定になっているから」と、先約の方を優先されて。
(…今現在のあいつだったら、そういう時には、友達の方を断って…)
恋人を選ぶと思うけれども、未来のブルーとなったら違う。
「ハーレイとデート」は普通なのだし、断っても、また別の日に行ける未来のブルー。
ゆえに、定番の「ハーレイとの休日」を過ごすよりかは、友達と何処かに出掛ける方を…。
(選んじまって、俺と一緒に出掛けるデートは、またの機会に…)
なっちまいそうだ、と容易に想像がつく。
「ごめんね」と小さく肩を竦めて、「また誘ってよ」と微笑むブルー。
「その日はダメだから、また今度ね」と。
(…うーむ…)
本当に有り得る話なんだが、と気付かされたら、その後の自分が気になって来る。
ブルーにデートを申し込んだのに、断られてしまった未来の自分。
「断られたら、どうするんだ?」と。
店を予約し、あれこれ考え抜いたコースも、「また今度ね」と言われた時の自分のこと。
(考え直してくれ、なんて言えるわけが無いし…)
そこは大人ならではの余裕を見せて、「そうだな、友達と楽しんで来い」と言うべきだろう。
「その日は、俺も好きにするから」と、「気ままにドライブしてくるかな」とでも。
(……しかしだな……)
ブルーの前では笑顔で大人の余裕たっぷり、それで済ませて家に帰っても、その後の自分。
さぞやガッカリしているのだろう、と考えなくても分かってしまう。
ブルーの喜ぶ顔が見たくて、わざわざ店を予約したのに、それはキャンセルするしかない。
考え抜いたデートのコースも、一人で回るには、向いてはいない。
(何もかもが、パアというヤツで…)
肩を落とす自分が、目に見えるよう。
「ブルーとデートだ」と思っていたのに、デートどころか、一人で過ごす休日になる。
その上、予約を入れた店には、キャンセルの連絡をしないと駄目で…。
(すみませんが、都合が悪くなりまして、と…)
係に通信を入れる時にも、声が沈んでいることだろう。
キャンセル料などはかからなくても、「ブルーと行けなくなってしまった」結果だから。
ブルーと二人で食事のつもりが、その店に「その日は」縁が無かった。
「また今度ね」と言われたのだし、次の機会はあるのだけれども、その日は行けない。
(…なんでその日にしちまったんだ、と…)
予約を入れた自分を詰って、「先にブルーに聞くべきだった」と嘆くことしか出来ない結末。
その店が「いい店」であればあるほど、ショックは大きくなることだろう。
なかなか予約が取れない店とか、次の機会では食べられない料理が目当てだったとか。
(先にブルーに聞いておいたら…)
断られる心配は無いわけなのだし、未来にデートをするとなったら、それが一番とも言える。
「その日は空けておいてくれよ」と、ブルーに予約を取り付けておけば安心だけれど…。
(…デートの度に、ブルーに予約をするというのも…)
なんだか大人げない気がする。
それではブルーを「縛る」わけだし、ブルーも自由が減ることだろう。
友達同士で出掛けるなどは、ブルーの年なら「思いつき」だけで決まりがち。
デートに行こうと誘う頃には、ブルーの年は十八歳になっている。
ブルーは「ハーレイのお嫁さん」が夢だし、上の学校には行かないけれども、友達は違う。
恐らく全員、上の学校に進学するから、休日ともなれば、本当に「思いつき」だけで…。
(ドライブしようとか、旅行しようとか、当日に思い付いたって…)
実行しそうな連中だから、ブルーを「予約」で縛れはしない。
「空けておいてくれ」と言ったばかりに、友達と出掛けるチャンスを逃しそうだから。
(ブルーに予約を入れるとなったら、せいぜい、数日前ってトコで…)
もう、その日には、友達との予定が入ってしまっているかもしれない。
前の週から「空けておいてくれ」と頼んでおいたら、入らなかった「何か」が入って。
友達と何処かに旅行するとか、ドライブに出掛けてゆくだとか。
(…俺がデートを申し込んだら…)
「ごめんね」と済まなそうな顔のブルーに、デートを断られてしまう。
そんな未来も有り得るのだ、と気が付いてみても、ブルーを「縛る」わけにはゆかない。
たとえ自分が打ちのめされても、ションボリする羽目になったとしても。
「断られちまった…」と溜息しか出なくて、休日を一人で過ごすより他はなくても。
(…ブルーを縛れやしないしなあ…)
断られたら、大人の余裕で「また今度な」と言うしかない、と溜息が一つ、零れ落ちた。
「なんてこった」と、「断られることも覚悟しておけってか?」と。
ブルーと過ごす未来のデートは、全て薔薇色ではないらしい。
時には赤信号が点って、デート自体がお流れになる。
どんなに頑張って準備したって、店を予約し、コースを練っておいたって。
(…仕方ないとは、分かっちゃいるが…)
頼むから、プロポーズの時だけは勘弁してくれ、と祈るような気持ちになって来た。
「プロポーズの予定で練り上げたプランがパアになったら、どん底だぞ?」と。
そうならないよう、ブルーに予約を取り付けておけば、安心安全になるのだけれど…。
(…プロポーズってヤツは、サプライズが基本なんだよなあ…?)
それでこそ感動も大きくなるってモンなんだ、と分かっているから、そうしたい。
ブルーに予約なんかはしないで、「デートしないか?」と持ち掛けて。
(店を予約して、コースを練って…)
プロポーズのデートを断られたら、どうしよう、と本当に溜息しか出ない。
絶対に無いとは言えないから。
それが嫌なら、ブルーに予約をするしか無くて、サプライズの感動がグンと減るから。
(…そうした結果、断られたら…)
泣いてしまうかもしれないな、と思うものだから、祈るしかない。
「その時だけは、上手くいくように」と。
未来の自分の運がいいことを、それに神様が意地悪な気分にならないことを…。
断られたら・了
※ブルー君が前と同じに成長したら、ハーレイ先生とデートが出来るわけですけれど。
そのブルー君の都合によっては、デートを断られてしまう可能性。ハーレイ先生、大丈夫?
デートは出来ないわけなんだが、とハーレイは恋人の顔を思い浮かべた。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それをお供に。
今日はブルーに会えずに終わった。
学校でも姿を見掛けていないし、仕事帰りにブルーの家にも行けてはいない。
残念な気持ちで一杯だけれど、土曜日が来たらデートが出来る。
ブルーの家の庭で一番大きな木の下、其処で二人でお茶を楽しむ。
(すっかり定番になっちまったなあ…)
庭でのデート、と白いテーブルと椅子で過ごすティータイムを思い出す。
天気がいい日の午後の定番、外が駄目ならブルーの部屋で、二人きり。
今の所は、それが精一杯の恋人同士だけれども、いずれはデートが出来る日が来る。
ブルーの家の庭の垣根の外の世界へと、繰り出してゆける。
(俺が迎えに行ってだな…)
出て来たブルーを愛車に乗せて、色々な場所へ出掛けてゆく。
お茶を飲むのも、喫茶店とか、雄大な景色を眺めながらのテラス席とか。
(遠出するなら、道もあれこれ考えて…)
ブルーが喜びそうなルートで、目的地まで走ってゆくのがいいだろう。
休憩場所が豊富にあって、様々なものに出会えるルート。
店はもちろん、野生の動物や鳥が見られるとか、そういった道を選ばなくては。
(せっかく、俺たちのためだけのシャングリラで…)
走るんだしな、と愛車でのドライブに思いを馳せる。
今の自分が乗っている車は、ブルーと二人で乗れる日が来たら、シャングリラになる。
白い車に買い替えるまでは、濃い緑色の車体だけれども、気分は白いシャングリラ。
(前のあいつを、シャングリラで…)
青い地球まで連れてゆくのが夢だったのに、それは叶わずに終わってしまった。
だから今度は、今のブルーを、今ならではのシャングリラに乗せて、地球の上を走ってゆく。
青く蘇った水の星には、車のための道路が敷かれているのだから。
待ち遠しいな、と楽しみでたまらない、ブルーとのデート。
まだ何年も待たされてしまう、ブルーとデートに出掛けられる日。
なにしろブルーは、十四歳の子供でしかない。
背丈もまだまだ子供のそれで、デートもキスも、今のブルーとは出来ないけれど…。
(あいつの背丈が、前のあいつと同じになったら…)
晴れてデートもキスも解禁、そうなれば早速、デートに誘うべきだろう。
まずは二人で、ブルーの家の垣根の外の世界へ出てゆき、お茶や食事をする所から。
(外の世界を、うんと堪能した後で…)
ブルーを家まで送り届けて、「おやすみなさい」のキスをする。
車を降りる前のブルーに、「忘れ物だ」と、唇に。
(…初めてのキスは、そんなトコだな)
それが一番自然だろうさ、とマグカップの縁を指でカチンと弾く。
ブルーが欲しがっている唇へのキスは、恋人同士のそれだけれども、初デートでは…。
(贈るのは、ちと早すぎだろう)
もっと、時間をかけたいよな、と思ってしまう。
キスを贈る場所も、それに時間も、選び抜いてのキスがいいんだ、と。
(そうは言っても、こればっかりは…)
その時々で変わりそうだし、最初のデートで贈ってしまう可能性もゼロではない。
「こんな筈ではなかったんだが…」と思う展開、それが来ないとは限らないから。
選び抜いたデートのコースなのだし、そういうことも起こり得る。
あるいは途中でコースが変わって、恋人同士のキスに相応しい場面が来てしまうとか。
(なんたって、俺が一人でドライブするんじゃないんだし…)
一緒に出掛けるブルー次第で、コースも行先も変化する。
ブルーが窓から見付けた何かが、コース変更のための標識代わり。
「あのお店に入ってみたいんだけど」と指差されたなら、その店へ。
「あっちの道だと、何処に行けるの?」と質問されて、答えた結果がコース変更だとか。
そうやってルートやコースが変われば、シチュエーションだって変わって来る。
恋人同士のキスが相応しい雰囲気になったら、それを無視して帰るのは…。
(俺も惜しいし、ブルーも黙っちゃいないだろうしな?)
予定変更になっちまうんだ、と苦笑する。
「計画通りにいくかどうかは、分からないよな」と。
初めてのキスは「おやすみなさい」か、恋人同士のキスなのか。
今のブルーと過ごす未来は、その辺りからして全く読めない。
きっと「その時」がやって来たなら、色々なことが起きるのだろう。
まるで予想もしていなかった、「こんな筈では」と困ってしまうようなことだって。
(はてさて、困るようなヤツとなったら…)
何があるやら、と首を捻って、その瞬間にハタと気付いた。
実にとんでもない、困るより他にどうしようもない、未来のデートで起きそうなこと。
(…あいつにデートを申し込んだら…)
断られちまうこともあるんだよな、と「その可能性」に愕然とする。
ブルーにも予定などがあるから、どんな時でもデート出来るとは限らない。
(店を予約して、コースの方も練りに練って、だ…)
自信満々で申し込んだら、「ごめん」と返事が返って来ることもあるだろう。
「その日は、友達と出掛ける予定になっているから」と、先約の方を優先されて。
(…今現在のあいつだったら、そういう時には、友達の方を断って…)
恋人を選ぶと思うけれども、未来のブルーとなったら違う。
「ハーレイとデート」は普通なのだし、断っても、また別の日に行ける未来のブルー。
ゆえに、定番の「ハーレイとの休日」を過ごすよりかは、友達と何処かに出掛ける方を…。
(選んじまって、俺と一緒に出掛けるデートは、またの機会に…)
なっちまいそうだ、と容易に想像がつく。
「ごめんね」と小さく肩を竦めて、「また誘ってよ」と微笑むブルー。
「その日はダメだから、また今度ね」と。
(…うーむ…)
本当に有り得る話なんだが、と気付かされたら、その後の自分が気になって来る。
ブルーにデートを申し込んだのに、断られてしまった未来の自分。
「断られたら、どうするんだ?」と。
店を予約し、あれこれ考え抜いたコースも、「また今度ね」と言われた時の自分のこと。
(考え直してくれ、なんて言えるわけが無いし…)
そこは大人ならではの余裕を見せて、「そうだな、友達と楽しんで来い」と言うべきだろう。
「その日は、俺も好きにするから」と、「気ままにドライブしてくるかな」とでも。
(……しかしだな……)
ブルーの前では笑顔で大人の余裕たっぷり、それで済ませて家に帰っても、その後の自分。
さぞやガッカリしているのだろう、と考えなくても分かってしまう。
ブルーの喜ぶ顔が見たくて、わざわざ店を予約したのに、それはキャンセルするしかない。
考え抜いたデートのコースも、一人で回るには、向いてはいない。
(何もかもが、パアというヤツで…)
肩を落とす自分が、目に見えるよう。
「ブルーとデートだ」と思っていたのに、デートどころか、一人で過ごす休日になる。
その上、予約を入れた店には、キャンセルの連絡をしないと駄目で…。
(すみませんが、都合が悪くなりまして、と…)
係に通信を入れる時にも、声が沈んでいることだろう。
キャンセル料などはかからなくても、「ブルーと行けなくなってしまった」結果だから。
ブルーと二人で食事のつもりが、その店に「その日は」縁が無かった。
「また今度ね」と言われたのだし、次の機会はあるのだけれども、その日は行けない。
(…なんでその日にしちまったんだ、と…)
予約を入れた自分を詰って、「先にブルーに聞くべきだった」と嘆くことしか出来ない結末。
その店が「いい店」であればあるほど、ショックは大きくなることだろう。
なかなか予約が取れない店とか、次の機会では食べられない料理が目当てだったとか。
(先にブルーに聞いておいたら…)
断られる心配は無いわけなのだし、未来にデートをするとなったら、それが一番とも言える。
「その日は空けておいてくれよ」と、ブルーに予約を取り付けておけば安心だけれど…。
(…デートの度に、ブルーに予約をするというのも…)
なんだか大人げない気がする。
それではブルーを「縛る」わけだし、ブルーも自由が減ることだろう。
友達同士で出掛けるなどは、ブルーの年なら「思いつき」だけで決まりがち。
デートに行こうと誘う頃には、ブルーの年は十八歳になっている。
ブルーは「ハーレイのお嫁さん」が夢だし、上の学校には行かないけれども、友達は違う。
恐らく全員、上の学校に進学するから、休日ともなれば、本当に「思いつき」だけで…。
(ドライブしようとか、旅行しようとか、当日に思い付いたって…)
実行しそうな連中だから、ブルーを「予約」で縛れはしない。
「空けておいてくれ」と言ったばかりに、友達と出掛けるチャンスを逃しそうだから。
(ブルーに予約を入れるとなったら、せいぜい、数日前ってトコで…)
もう、その日には、友達との予定が入ってしまっているかもしれない。
前の週から「空けておいてくれ」と頼んでおいたら、入らなかった「何か」が入って。
友達と何処かに旅行するとか、ドライブに出掛けてゆくだとか。
(…俺がデートを申し込んだら…)
「ごめんね」と済まなそうな顔のブルーに、デートを断られてしまう。
そんな未来も有り得るのだ、と気が付いてみても、ブルーを「縛る」わけにはゆかない。
たとえ自分が打ちのめされても、ションボリする羽目になったとしても。
「断られちまった…」と溜息しか出なくて、休日を一人で過ごすより他はなくても。
(…ブルーを縛れやしないしなあ…)
断られたら、大人の余裕で「また今度な」と言うしかない、と溜息が一つ、零れ落ちた。
「なんてこった」と、「断られることも覚悟しておけってか?」と。
ブルーと過ごす未来のデートは、全て薔薇色ではないらしい。
時には赤信号が点って、デート自体がお流れになる。
どんなに頑張って準備したって、店を予約し、コースを練っておいたって。
(…仕方ないとは、分かっちゃいるが…)
頼むから、プロポーズの時だけは勘弁してくれ、と祈るような気持ちになって来た。
「プロポーズの予定で練り上げたプランがパアになったら、どん底だぞ?」と。
そうならないよう、ブルーに予約を取り付けておけば、安心安全になるのだけれど…。
(…プロポーズってヤツは、サプライズが基本なんだよなあ…?)
それでこそ感動も大きくなるってモンなんだ、と分かっているから、そうしたい。
ブルーに予約なんかはしないで、「デートしないか?」と持ち掛けて。
(店を予約して、コースを練って…)
プロポーズのデートを断られたら、どうしよう、と本当に溜息しか出ない。
絶対に無いとは言えないから。
それが嫌なら、ブルーに予約をするしか無くて、サプライズの感動がグンと減るから。
(…そうした結果、断られたら…)
泣いてしまうかもしれないな、と思うものだから、祈るしかない。
「その時だけは、上手くいくように」と。
未来の自分の運がいいことを、それに神様が意地悪な気分にならないことを…。
断られたら・了
※ブルー君が前と同じに成長したら、ハーレイ先生とデートが出来るわけですけれど。
そのブルー君の都合によっては、デートを断られてしまう可能性。ハーレイ先生、大丈夫?
PR
COMMENT
- <<断られちゃったら
- | HOME |
- 体調管理は>>