体調管理は
「ねえ、ハーレイ。体調管理は…」
大切なんだよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「うん? 急にどうした?」
体力づくりでもするつもりか、とハーレイは笑った。
今のブルーも身体が弱くて、寝込むことが多い。
すぐに体調を崩すものだから、ハーレイの方も気を遣う。
無理をして起きていたりはしないか、尋ねたりもして。
それだけに、ブルーの口から、体調管理と出て来ると…。
(これはなかなか、いい傾向だぞ)
三日坊主に終わるにしてもな…、と笑みが零れてしまう。
ブルーが自分で努力するなら、それが一番なのだから。
(はてさて…)
何を始めるつもりやら、とブルーの瞳を見詰めて尋ねた。
「そいつは大いに大切なんだが、何をするんだ?」と。
「言い出すからには、心づもりがあるんだろ?」とも。
問われたブルーは、意外にも「うーん…」と首を捻った。
どうやら、具体的なプランを立てたわけではないらしい。
「えっとね…。それをハーレイに訊こうと思って…」
大切なのは分かっているんだけれど…、と赤い瞳が瞬く。
「どうしたらいいのか、分からなくて」と困ったように。
(なるほど、なるほど…)
初心者と言えば初心者だよな、とハーレイは納得した。
前のブルーもそうだったけれど、今のブルーも…。
(気力だけで生きている、って部分があるからなあ…)
身体には無頓着なんだ、と心の中で頷く。
前のブルーにうるさく言っても、無駄骨だった。
「無茶をするな」と止めても聞かずに、無茶ばかり。
(今のこいつも、そういう所は全く同じで…)
ついでに頑固と来たもんだ、と嫌と言うほど知っている。
熱があろうが、歩けないほどフラフラだろうが…。
(学校に来ようと頑張った挙句に、倒れちまって…)
何度、病院のお世話になったか分からない。
それでは、体調管理なるものをしようとしても…。
(分からないのも当然だ、ってな)
初心者なんだし、と理解したからには、指導しないと。
どうすればいいのか、初歩の初歩から。
「よし。俺の生徒になったつもりで、よく聞けよ?」
そう言ってから、ハーレイはプッと吹き出した。
つもりも何も、今のブルーは本当に教え子なのだから。
「なあに、ぼくの訊き方、変だった?」
ブルーの問いに、ハーレイは「いや…」と苦笑する。
「すまん、すまん。お前は俺の生徒だっけな、初めから」
「そうだよ、ハーレイの学校の生徒!」
ハーレイは担任じゃないけれど、とブルーは残念そう。
「クラス担任なら良かったのに」と、肩を落として。
「おいおい、俺は途中から転任して来たんだし…」
担任は持っちゃいないだろうが、とハーレイは返した。
「俺の担当は、今の所は柔道部だけだ」と。
「うん、分かってる。…って、柔道部の生徒のつもり?」
それは流石に無理なんだけど、とブルーは途惑う。
「あんな頑丈な部員並みのヤツ、ぼくには無理!」と。
「いや、そこまでは…。俺が言うのは基本だ、基本」
まずはしっかり寝ることだ、とハーレイは言った。
それから食事で、きちんと栄養を摂らないと…、と。
食事と睡眠、これが体力づくりの基本。
本当は運動も大切だけれど、ブルーには、まだ…。
(ちと早すぎて、下手に言ったら逆効果…)
無理に運動しちまうからな、とハーレイは先を考慮した。
ブルーの場合は、食事からして問題がある。
(今のこいつも、小食すぎて…)
バランスよく食うのも難しいぞ、と分かっている。
ブルーが真面目に取り組むのならば、メニューの方も…。
(指導した方がいいかもなあ…?)
理想の朝食はこれ、といった具合に…、と腕組みをする。
出来ればそのようにしたいけれども、問題は…。
(飯を作るのは、俺じゃなくって…)
ブルーの母の役目なのだし、口を出してもいいのか否か。
(これが柔道部の生徒だったら、親の方も、だ…)
心得たもので、言われた通りにするのだけれど…。
(うーむ…)
考え込んでいると、ブルーが「心は?」と尋ねて来た。
「心の方も大切だよね」と、ニコニコして。
(…そういうことか…!)
体力づくりにかこつけて、とハーレイは眉を吊り上げた。
ブルーが本当に言いたいことは…。
(…俺にキスしろとか、デートしたいとか…)
その手の注文だったんだな、とピンと来たから突き放す。
「いやいや、まずは睡眠からだ」と。
「それから飯をきちんと食うこと、其処からだな」と…。
体調管理は・了
大切なんだよね、と小さなブルーが投げ掛けた問い。
二人きりで過ごす休日の午後に、思い付いたように。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「うん? 急にどうした?」
体力づくりでもするつもりか、とハーレイは笑った。
今のブルーも身体が弱くて、寝込むことが多い。
すぐに体調を崩すものだから、ハーレイの方も気を遣う。
無理をして起きていたりはしないか、尋ねたりもして。
それだけに、ブルーの口から、体調管理と出て来ると…。
(これはなかなか、いい傾向だぞ)
三日坊主に終わるにしてもな…、と笑みが零れてしまう。
ブルーが自分で努力するなら、それが一番なのだから。
(はてさて…)
何を始めるつもりやら、とブルーの瞳を見詰めて尋ねた。
「そいつは大いに大切なんだが、何をするんだ?」と。
「言い出すからには、心づもりがあるんだろ?」とも。
問われたブルーは、意外にも「うーん…」と首を捻った。
どうやら、具体的なプランを立てたわけではないらしい。
「えっとね…。それをハーレイに訊こうと思って…」
大切なのは分かっているんだけれど…、と赤い瞳が瞬く。
「どうしたらいいのか、分からなくて」と困ったように。
(なるほど、なるほど…)
初心者と言えば初心者だよな、とハーレイは納得した。
前のブルーもそうだったけれど、今のブルーも…。
(気力だけで生きている、って部分があるからなあ…)
身体には無頓着なんだ、と心の中で頷く。
前のブルーにうるさく言っても、無駄骨だった。
「無茶をするな」と止めても聞かずに、無茶ばかり。
(今のこいつも、そういう所は全く同じで…)
ついでに頑固と来たもんだ、と嫌と言うほど知っている。
熱があろうが、歩けないほどフラフラだろうが…。
(学校に来ようと頑張った挙句に、倒れちまって…)
何度、病院のお世話になったか分からない。
それでは、体調管理なるものをしようとしても…。
(分からないのも当然だ、ってな)
初心者なんだし、と理解したからには、指導しないと。
どうすればいいのか、初歩の初歩から。
「よし。俺の生徒になったつもりで、よく聞けよ?」
そう言ってから、ハーレイはプッと吹き出した。
つもりも何も、今のブルーは本当に教え子なのだから。
「なあに、ぼくの訊き方、変だった?」
ブルーの問いに、ハーレイは「いや…」と苦笑する。
「すまん、すまん。お前は俺の生徒だっけな、初めから」
「そうだよ、ハーレイの学校の生徒!」
ハーレイは担任じゃないけれど、とブルーは残念そう。
「クラス担任なら良かったのに」と、肩を落として。
「おいおい、俺は途中から転任して来たんだし…」
担任は持っちゃいないだろうが、とハーレイは返した。
「俺の担当は、今の所は柔道部だけだ」と。
「うん、分かってる。…って、柔道部の生徒のつもり?」
それは流石に無理なんだけど、とブルーは途惑う。
「あんな頑丈な部員並みのヤツ、ぼくには無理!」と。
「いや、そこまでは…。俺が言うのは基本だ、基本」
まずはしっかり寝ることだ、とハーレイは言った。
それから食事で、きちんと栄養を摂らないと…、と。
食事と睡眠、これが体力づくりの基本。
本当は運動も大切だけれど、ブルーには、まだ…。
(ちと早すぎて、下手に言ったら逆効果…)
無理に運動しちまうからな、とハーレイは先を考慮した。
ブルーの場合は、食事からして問題がある。
(今のこいつも、小食すぎて…)
バランスよく食うのも難しいぞ、と分かっている。
ブルーが真面目に取り組むのならば、メニューの方も…。
(指導した方がいいかもなあ…?)
理想の朝食はこれ、といった具合に…、と腕組みをする。
出来ればそのようにしたいけれども、問題は…。
(飯を作るのは、俺じゃなくって…)
ブルーの母の役目なのだし、口を出してもいいのか否か。
(これが柔道部の生徒だったら、親の方も、だ…)
心得たもので、言われた通りにするのだけれど…。
(うーむ…)
考え込んでいると、ブルーが「心は?」と尋ねて来た。
「心の方も大切だよね」と、ニコニコして。
(…そういうことか…!)
体力づくりにかこつけて、とハーレイは眉を吊り上げた。
ブルーが本当に言いたいことは…。
(…俺にキスしろとか、デートしたいとか…)
その手の注文だったんだな、とピンと来たから突き放す。
「いやいや、まずは睡眠からだ」と。
「それから飯をきちんと食うこと、其処からだな」と…。
体調管理は・了
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