留守番するなら
(いつか、こういう夜も無くなるんだな…)
あと何年か経ったならな、とハーレイが、ふと思ったこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(今の俺は、一人暮らしなんだが…)
ブルーが結婚出来る年になったら、一人暮らしではなくなるだろう。
待ちかねていた恋人が、この家に早々に引っ越して来て。
(あいつのことだし、何年も待ってるわけがないしな?)
上の学校にも進学しないで、ブルーは、来るに違いない。
十八歳になった途端に、結婚式を挙げて、この家の住人になるブルー。
そうなったならば、今夜のような「一人の夜」は、消えて無くなる。
コーヒー片手に書斎に来たって、ブルーは、ついて来るだろう。
「何を読むの?」と興味津々、書棚から本を選ぶ間も、きっと隣に立っている。
(邪魔するなよ、と言ってみたって…)
ブルーは「うん」と返事はしても、書斎から出てはいかないと思う。
自分は自分で何か選んで、そのままストンと床に座って、勝手に読書。
「これなら邪魔にならないでしょ?」と言わんばかりに、黙って本を読むブルー。
(…書斎で、テストとかを採点していても…)
同じ理屈で、ブルーはいるに違いない。
「ハーレイの邪魔にならない範囲」で、ブルー自身のスタイルで。
本を読んだり、新聞や雑誌を持ち込んだりと、暇つぶしになる何かを見付け出して。
(確かに、邪魔にはなっていないし…)
そういう時間も、とても幸せに思えることだろう。
少々、ブルーに気を取られようと、それは「ブルーがいるからこそ」。
今夜のように一人きりでは、気を取られたりすることさえ無い。
だから待ち遠しく思うけれども、「ブルーがいる」のが、当たり前になってしまった後。
「ちょっと邪魔だぞ」と、ふざけて言ったりもしたくなる頃、一人きりの夜が来たならば…。
(…どうなるだろうな?)
今とは逆の状況なんだが…、と首を捻った。
「そんな夜には、どうするんだ?」と。
ブルーと結婚式を挙げたら、二人で暮らすに決まっている。
この家にブルーの荷物が運び込まれて、ブルーのための部屋も出来上がる。
毎日、朝には一緒に朝食、それから仕事に出掛けて行って…。
(あいつが留守番してるってわけで…)
仕事が終わって帰って来たなら、ちゃんとブルーが待っている。
夕食の支度は、多分、ブルーがするのではなくて、自分の担当だろうけれども。
(なんたって、俺は料理が得意で、経験も豊富なんだしな?)
帰宅してからササッと作って、ブルーと二人で食べるのがいい。
「今日は、こいつがあったからな」と、買って来た食材を披露して。
「こうやって食うのが美味いんだぞ」などと、料理する姿も、ブルーに見せて。
(…仕事の無い日は、もちろん、朝から夜まで一緒で…)
何処に行くのも、ブルーと一緒。
買物も、散歩に出掛けてゆくのも、何をするのもブルーと二人で当たり前の休日。
そういった暮らしが、判で押したように続いてゆきそうだけれど…。
(…あいつと違って、俺が留守番する時だって…)
無いとは言い切れないだろう。
ブルーにも、ブルーの人生があって、ブルーの世界があるのだから。
学校の友人たちと出掛けて、留守にする日も来そうではある。
(明日の昼間は、出掛けて来るね、って…)
留守にすることも、まるで無いとは言えないと思う。
ついでに言うなら、昼間どころか、夜になっても…。
(帰って来ないってこともあるよなあ?)
次の日もな、と顎に当てる手。
「なんたって、あいつは若いんだから」と。
ブルーは結婚する気だけれども、ブルーの友人たちの場合は、そうではない。
彼らは十八歳になれば進学、上の学校へと進むだろう。
中には、今、住んでいる町を離れて…。
(ちょっと遠い所の学校に行こうってヤツも…)
いるだろうから、そういう友人に招かれたならば、ブルーは家を留守にする。
「友達の家まで行って来るね」と、泊りがけで遊びに出掛けて行って。
(…大いに有り得る話だよなあ…)
あいつが出掛けちまって留守番、とカップを片手に頷いた。
ブルーが泊まりで出掛けて行ったら、今夜と同じで、一人きりの夜が訪れる。
それより前の昼間の時点で、既に一人の時間だけれど。
家に帰ってもブルーはいなくて、この家の中に、ポツンと一人。
(…いやいや、そこは上手にだな…)
やってみせるさ、と想像してみることにした。
「ブルーがいなくて、留守番するなら」と、その間の自分の状況を。
どんな具合に時間を潰して、どういう夜を過ごすのかと。
(…仕事のある日じゃ、想像し甲斐が無いってモンだし…)
休み中ってことで考えるかな、と場面を長期休暇に設定した。
如何にもブルーが留守にしそうで、友達も招待しそうな時期が夏休みなど。
(朝に、あいつを送り出して、だ…)
車で何処かまで送ってやったら、その後は、自分一人の時間。
まずはそのまま、ドライブもいい。
いつもはブルーと出掛ける所を、一人、気ままに。
「その辺で、休憩した方がいいよな」などと、気遣う相手がいないドライブ。
(何処まで行こうが、休憩無しで突っ走ろうが…)
自由なのだし、とても新鮮に感じることだろう。
今の自分には普通だけれども、結婚した後は、もう出来なくなるドライブだから。
気ままに走ってゆくことなんかは、ブルーと一緒では難しいから。
(うん、なかなかに…)
悪くないぞ、と出だしは上々。
ブルーがいない留守番の暮らしは、ドライブで始めるのが良さそうだ。
思いのままにハンドルを切って、気の向くままに愛車で走る。
休憩場所など考えないで、「此処にしよう」と思ったら、停めて入ってゆく。
喫茶店でも、農産物の直売所でも、「これだ」とピンと来た場所に。
(入ったら、ぐるっと見回して…)
此処だ、と決めた席に座るとか、あるいは立ったまま、飲むとか、齧るとか。
ブルーと一緒では出来ない冒険、行儀なんかも気にしない。
気ままな男の一人旅だし、誰にも気兼ねは要らないから。
(今だと、まさにそうなんだがなあ…)
ブルーの家には寄れなかった日に、夜にドライブするような時。
思い立ったら車を走らせ、目についた店で食事したりもするけれど…。
(あいつと一緒に暮らし始めたら、そいつは無理だ)
遅くなったら、ブルーは疲れて眠ってしまうし、身体にも悪い。
そうでなくても虚弱な恋人、そうそう引っ張り回せはしない。
(…ドライブもそうだし、街に出掛けて行ったって…)
ブルーのためには、こまめに休憩、飲食する店も気を遣わねば。
騒がしい店など選べはしないし、席もゆったりしている店しか入れないだろう。
(そりゃあ、たまには…)
カウンター席もいいだろうけれど、あくまで「たまに」。
ブルーの身体の調子が良くて、「ちょっと冒険したって、いい日」。
だから自然と生まれる制約、二人だからこそ失う「自由」。
(あいつが出掛けて、留守番するなら…)
失くしてしまった自由を満喫、思い切り羽を伸ばして暮らす。
ドライブの後は、街へと走って、あちこち一人で歩くのもいい。
ブルーと二人だった時には、入れなかった店を回って、一日、のんびり。
「あいつは退屈するだろうから」と御無沙汰だった、いろんなスポットを楽しんで。
(…あいつが一緒でも、少しくらいは…)
そうした場所にも寄るだろうけれど、早めに出るのは間違いない。
「お前には、ちょっと退屈だろう」と、ブルーの気持ちを気遣って。
いくらブルーが「ううん」と首を横に振っても、瞳を見れば本音が分かる。
「ハーレイの好きな場所なんだから」と、好奇心一杯だろうけれども、疲れている、と。
(…あいつは、そういうヤツなんだ…)
自分の身体が辛くなっても、相手の気持ちが最優先。
それに「ハーレイが大好きなもの」は、体験したくなるのがブルー。
今の所は、コーヒーに挑戦程度だけれども、結婚したなら、挑戦は増える。
「ハーレイのお気に入り」に片っ端から挑んで、それで疲れて寝込んでも…。
(ちっとも懲りやしないんだ、きっと)
その分、俺が気を付けないと…、と分かっているから、出来ないことが増えてゆく。
気ままなドライブや、足の向くまま歩くことやら、今は「普通」にある自由を失くして。
(留守番するなら、そういったことを…)
思う存分、謳歌した後、買い物をして家路につく。
「今夜は、俺しかいないんだしな?」と、一人分の食材を買い込んで。
普段は買わない総菜などを買うのもいいし、インスタントも悪くないだろう。
ブルーと一緒の暮らしだったら、そんな手抜きはしないから。
(弁当を買って、食うのもいいよな)
酒とつまみも買うとするかな、と「独身の夜」を計画してゆく。
今の自分なら「気が向いた時に出来ること」が、ブルーと一緒では出来ないから。
ブルーが留守にしている時しか、手抜きの夕食などは不可能。
(もっとも、普段の俺にしたって…)
手抜きなんぞはしないんだがな、と思うからこそ、手抜きがいい。
せっかくの「独身に戻った夜」だし、それっぽいのが楽しそうだから。
料理などとは無縁の男子学生だったら、こうなるだろう、といった夕食。
(インスタントか、はたまた弁当…)
それでも酒があったら上々、と学生時代の友人たちを思い浮かべてニヤリとする。
「気ままな一人暮らしってヤツだ」と、「ブルーが留守の間だけだが」と。
手抜きの夕食を食べるからには、後片付けの方も手抜きが一番。
「明日の朝、纏めて洗えばいいさ」と、キッチンのシンクに突っ込んで終わり。
(流石に、水で軽く流して…)
汚れは軽く取っておくが、と考える辺りが、少々、所帯じみているけれど、仕方ない。
一人暮らしが長すぎるのと、料理好きなのと、マメなのが「悪い」。
(手抜きした後は、酒をゆっくり楽しんで…)
眠くなったら、ベッドに潜り込んでおしまい。
「ブルーがいない」寂しさなんかは、何処かへ消し飛んでいそうな夜。
あまりにも、「一人」が楽しくて。
独身時代に戻った一日、それですっかり満足して。
(…おいおいおい…)
それじゃ、あいつに悪くないか、と思うけれども、どうやら自分は…。
(…ブルーが留守でも、ちっとも寂しくないようだぞ?)
留守番するなら、楽しんじまうタイプなんだな、と浮かべた苦笑。
「きっと、前の俺のせいなんだろう」と。
前のブルーがいなくなった後、一人きりで長く生きていたのが悪い、と言い訳する。
「ブルーが何処にもいない」人生は辛いけれども、留守ならば、別。
気を遣わないでも大丈夫な分、「羽を伸ばしたくなったりするさ」と。
「留守番するなら、ちょいと御褒美を貰うくらいは、許されるってモンなんだから」と…。
留守番するなら・了
※結婚した後、ブルー君が留守で、留守番するなら…、と想像してみたハーレイ先生。
泊りがけで出掛けて行ったら、独身生活を満喫するようです。人生を楽しめるタイプですねv
あと何年か経ったならな、とハーレイが、ふと思ったこと。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(今の俺は、一人暮らしなんだが…)
ブルーが結婚出来る年になったら、一人暮らしではなくなるだろう。
待ちかねていた恋人が、この家に早々に引っ越して来て。
(あいつのことだし、何年も待ってるわけがないしな?)
上の学校にも進学しないで、ブルーは、来るに違いない。
十八歳になった途端に、結婚式を挙げて、この家の住人になるブルー。
そうなったならば、今夜のような「一人の夜」は、消えて無くなる。
コーヒー片手に書斎に来たって、ブルーは、ついて来るだろう。
「何を読むの?」と興味津々、書棚から本を選ぶ間も、きっと隣に立っている。
(邪魔するなよ、と言ってみたって…)
ブルーは「うん」と返事はしても、書斎から出てはいかないと思う。
自分は自分で何か選んで、そのままストンと床に座って、勝手に読書。
「これなら邪魔にならないでしょ?」と言わんばかりに、黙って本を読むブルー。
(…書斎で、テストとかを採点していても…)
同じ理屈で、ブルーはいるに違いない。
「ハーレイの邪魔にならない範囲」で、ブルー自身のスタイルで。
本を読んだり、新聞や雑誌を持ち込んだりと、暇つぶしになる何かを見付け出して。
(確かに、邪魔にはなっていないし…)
そういう時間も、とても幸せに思えることだろう。
少々、ブルーに気を取られようと、それは「ブルーがいるからこそ」。
今夜のように一人きりでは、気を取られたりすることさえ無い。
だから待ち遠しく思うけれども、「ブルーがいる」のが、当たり前になってしまった後。
「ちょっと邪魔だぞ」と、ふざけて言ったりもしたくなる頃、一人きりの夜が来たならば…。
(…どうなるだろうな?)
今とは逆の状況なんだが…、と首を捻った。
「そんな夜には、どうするんだ?」と。
ブルーと結婚式を挙げたら、二人で暮らすに決まっている。
この家にブルーの荷物が運び込まれて、ブルーのための部屋も出来上がる。
毎日、朝には一緒に朝食、それから仕事に出掛けて行って…。
(あいつが留守番してるってわけで…)
仕事が終わって帰って来たなら、ちゃんとブルーが待っている。
夕食の支度は、多分、ブルーがするのではなくて、自分の担当だろうけれども。
(なんたって、俺は料理が得意で、経験も豊富なんだしな?)
帰宅してからササッと作って、ブルーと二人で食べるのがいい。
「今日は、こいつがあったからな」と、買って来た食材を披露して。
「こうやって食うのが美味いんだぞ」などと、料理する姿も、ブルーに見せて。
(…仕事の無い日は、もちろん、朝から夜まで一緒で…)
何処に行くのも、ブルーと一緒。
買物も、散歩に出掛けてゆくのも、何をするのもブルーと二人で当たり前の休日。
そういった暮らしが、判で押したように続いてゆきそうだけれど…。
(…あいつと違って、俺が留守番する時だって…)
無いとは言い切れないだろう。
ブルーにも、ブルーの人生があって、ブルーの世界があるのだから。
学校の友人たちと出掛けて、留守にする日も来そうではある。
(明日の昼間は、出掛けて来るね、って…)
留守にすることも、まるで無いとは言えないと思う。
ついでに言うなら、昼間どころか、夜になっても…。
(帰って来ないってこともあるよなあ?)
次の日もな、と顎に当てる手。
「なんたって、あいつは若いんだから」と。
ブルーは結婚する気だけれども、ブルーの友人たちの場合は、そうではない。
彼らは十八歳になれば進学、上の学校へと進むだろう。
中には、今、住んでいる町を離れて…。
(ちょっと遠い所の学校に行こうってヤツも…)
いるだろうから、そういう友人に招かれたならば、ブルーは家を留守にする。
「友達の家まで行って来るね」と、泊りがけで遊びに出掛けて行って。
(…大いに有り得る話だよなあ…)
あいつが出掛けちまって留守番、とカップを片手に頷いた。
ブルーが泊まりで出掛けて行ったら、今夜と同じで、一人きりの夜が訪れる。
それより前の昼間の時点で、既に一人の時間だけれど。
家に帰ってもブルーはいなくて、この家の中に、ポツンと一人。
(…いやいや、そこは上手にだな…)
やってみせるさ、と想像してみることにした。
「ブルーがいなくて、留守番するなら」と、その間の自分の状況を。
どんな具合に時間を潰して、どういう夜を過ごすのかと。
(…仕事のある日じゃ、想像し甲斐が無いってモンだし…)
休み中ってことで考えるかな、と場面を長期休暇に設定した。
如何にもブルーが留守にしそうで、友達も招待しそうな時期が夏休みなど。
(朝に、あいつを送り出して、だ…)
車で何処かまで送ってやったら、その後は、自分一人の時間。
まずはそのまま、ドライブもいい。
いつもはブルーと出掛ける所を、一人、気ままに。
「その辺で、休憩した方がいいよな」などと、気遣う相手がいないドライブ。
(何処まで行こうが、休憩無しで突っ走ろうが…)
自由なのだし、とても新鮮に感じることだろう。
今の自分には普通だけれども、結婚した後は、もう出来なくなるドライブだから。
気ままに走ってゆくことなんかは、ブルーと一緒では難しいから。
(うん、なかなかに…)
悪くないぞ、と出だしは上々。
ブルーがいない留守番の暮らしは、ドライブで始めるのが良さそうだ。
思いのままにハンドルを切って、気の向くままに愛車で走る。
休憩場所など考えないで、「此処にしよう」と思ったら、停めて入ってゆく。
喫茶店でも、農産物の直売所でも、「これだ」とピンと来た場所に。
(入ったら、ぐるっと見回して…)
此処だ、と決めた席に座るとか、あるいは立ったまま、飲むとか、齧るとか。
ブルーと一緒では出来ない冒険、行儀なんかも気にしない。
気ままな男の一人旅だし、誰にも気兼ねは要らないから。
(今だと、まさにそうなんだがなあ…)
ブルーの家には寄れなかった日に、夜にドライブするような時。
思い立ったら車を走らせ、目についた店で食事したりもするけれど…。
(あいつと一緒に暮らし始めたら、そいつは無理だ)
遅くなったら、ブルーは疲れて眠ってしまうし、身体にも悪い。
そうでなくても虚弱な恋人、そうそう引っ張り回せはしない。
(…ドライブもそうだし、街に出掛けて行ったって…)
ブルーのためには、こまめに休憩、飲食する店も気を遣わねば。
騒がしい店など選べはしないし、席もゆったりしている店しか入れないだろう。
(そりゃあ、たまには…)
カウンター席もいいだろうけれど、あくまで「たまに」。
ブルーの身体の調子が良くて、「ちょっと冒険したって、いい日」。
だから自然と生まれる制約、二人だからこそ失う「自由」。
(あいつが出掛けて、留守番するなら…)
失くしてしまった自由を満喫、思い切り羽を伸ばして暮らす。
ドライブの後は、街へと走って、あちこち一人で歩くのもいい。
ブルーと二人だった時には、入れなかった店を回って、一日、のんびり。
「あいつは退屈するだろうから」と御無沙汰だった、いろんなスポットを楽しんで。
(…あいつが一緒でも、少しくらいは…)
そうした場所にも寄るだろうけれど、早めに出るのは間違いない。
「お前には、ちょっと退屈だろう」と、ブルーの気持ちを気遣って。
いくらブルーが「ううん」と首を横に振っても、瞳を見れば本音が分かる。
「ハーレイの好きな場所なんだから」と、好奇心一杯だろうけれども、疲れている、と。
(…あいつは、そういうヤツなんだ…)
自分の身体が辛くなっても、相手の気持ちが最優先。
それに「ハーレイが大好きなもの」は、体験したくなるのがブルー。
今の所は、コーヒーに挑戦程度だけれども、結婚したなら、挑戦は増える。
「ハーレイのお気に入り」に片っ端から挑んで、それで疲れて寝込んでも…。
(ちっとも懲りやしないんだ、きっと)
その分、俺が気を付けないと…、と分かっているから、出来ないことが増えてゆく。
気ままなドライブや、足の向くまま歩くことやら、今は「普通」にある自由を失くして。
(留守番するなら、そういったことを…)
思う存分、謳歌した後、買い物をして家路につく。
「今夜は、俺しかいないんだしな?」と、一人分の食材を買い込んで。
普段は買わない総菜などを買うのもいいし、インスタントも悪くないだろう。
ブルーと一緒の暮らしだったら、そんな手抜きはしないから。
(弁当を買って、食うのもいいよな)
酒とつまみも買うとするかな、と「独身の夜」を計画してゆく。
今の自分なら「気が向いた時に出来ること」が、ブルーと一緒では出来ないから。
ブルーが留守にしている時しか、手抜きの夕食などは不可能。
(もっとも、普段の俺にしたって…)
手抜きなんぞはしないんだがな、と思うからこそ、手抜きがいい。
せっかくの「独身に戻った夜」だし、それっぽいのが楽しそうだから。
料理などとは無縁の男子学生だったら、こうなるだろう、といった夕食。
(インスタントか、はたまた弁当…)
それでも酒があったら上々、と学生時代の友人たちを思い浮かべてニヤリとする。
「気ままな一人暮らしってヤツだ」と、「ブルーが留守の間だけだが」と。
手抜きの夕食を食べるからには、後片付けの方も手抜きが一番。
「明日の朝、纏めて洗えばいいさ」と、キッチンのシンクに突っ込んで終わり。
(流石に、水で軽く流して…)
汚れは軽く取っておくが、と考える辺りが、少々、所帯じみているけれど、仕方ない。
一人暮らしが長すぎるのと、料理好きなのと、マメなのが「悪い」。
(手抜きした後は、酒をゆっくり楽しんで…)
眠くなったら、ベッドに潜り込んでおしまい。
「ブルーがいない」寂しさなんかは、何処かへ消し飛んでいそうな夜。
あまりにも、「一人」が楽しくて。
独身時代に戻った一日、それですっかり満足して。
(…おいおいおい…)
それじゃ、あいつに悪くないか、と思うけれども、どうやら自分は…。
(…ブルーが留守でも、ちっとも寂しくないようだぞ?)
留守番するなら、楽しんじまうタイプなんだな、と浮かべた苦笑。
「きっと、前の俺のせいなんだろう」と。
前のブルーがいなくなった後、一人きりで長く生きていたのが悪い、と言い訳する。
「ブルーが何処にもいない」人生は辛いけれども、留守ならば、別。
気を遣わないでも大丈夫な分、「羽を伸ばしたくなったりするさ」と。
「留守番するなら、ちょいと御褒美を貰うくらいは、許されるってモンなんだから」と…。
留守番するなら・了
※結婚した後、ブルー君が留守で、留守番するなら…、と想像してみたハーレイ先生。
泊りがけで出掛けて行ったら、独身生活を満喫するようです。人生を楽しめるタイプですねv
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