そっくりだったなら
(…今のぼくの顔は、前のぼくにそっくり…)
チビだけれど、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(神様って、ホントに凄いよね…)
ぼくも、ハーレイも、前とそっくり、と鏡の方を眺めて感心する。
遠く遥かな時の彼方でも、自分の顔は「これ」だったから。
それに恋人のハーレイの顔も、今と全く変わらなかった。
(ホントに、奇跡…)
聖痕だって凄いんだけど、と赤い瞳を瞬かせる。
「だけど、これには敵わないよね」と。
前とそっくり同じ顔だから、直ぐにハーレイだと気が付いた。
ハーレイの方も、「ブルーなんだ」と気付いてくれた。
これが前とは違う顔なら、そうすんなりと運んだかどうか。
(…違う顔でも、人間じゃない生き物になってても…)
きっと気付くと思うけれども、一瞬、悩むかもしれない。
記憶が戻って見詰めながらも、「ハーレイなの?」と首を傾げて。
「違う顔だけど、ハーレイだよね」と、探るような視線を向けたりもして。
(ハーレイだって、前とは違う顔になっちゃった、ぼくを見て…)
同じような反応をするだろうから、それで確信出来るとは思う。
「やっぱり、この人がハーレイなんだ」と、「ハーレイも、思い出したんだ」と。
とはいえ、違う顔だったならば…。
(…ちょっぴり、ガッカリしちゃいそう…)
せっかく巡り会えたのに、と溜息を零すかもしれない。
「どうして、前と同じじゃないの?」と、「ぼくの顔も違うし、仕方ないけど」とは思っても。
(いっそ、人間じゃなかった方が…)
まだ、しっくりと来そうな感じ。
「今度のハーレイは、ウサギなんだ」と、「ぼくたち、ウサギになったんだね」と。
違う生き物に生まれたのなら、別の姿になっていたって当然だから。
そう考えてみると、今の姿は本当に奇跡。
ハーレイも、自分も、前の姿とそっくり同じ。
(ぼくは小さくなっちゃったけど…)
もっと育てば、前の自分と変わらない姿になれる筈。
「ソルジャー・ブルー」と呼ばれていた頃と、何処も変わらない容姿になって。
そうなったならば、前の自分には叶えられなかった夢が実現する。
ハーレイと一緒に生きてゆく夢、二人で歩んでゆく人生が。
(二人一緒に、青い地球に生まれて来たんだから…)
前とおんなじ姿がいいよね、と神様の計らいに感謝する。
こういう身体が準備出来るまで、長く待たされたのかもしれないけれど、と。
(似ていない顔でも構わないなら、もっと早くに…)
生まれ変わって、再会出来ていたかもしれない。
それも悪くはないのだけれども、そっくり同じ姿の方が…。
(断然、いいよね?)
そうでなくっちゃ、と思ったはずみに、掠めた考え。
「同じ顔でも、逆さだったら?」と。
自分がハーレイの顔に生まれて、ハーレイが「ブルー」の顔だったなら、と。
(…えーっと…?)
神様の悪戯か、あるいは気まぐれ、そういう結果で入れ替わった顔。
記憶が戻って見詰めた先には、前の自分の顔がある。
(……ハーレイなんだ、って分かるだろうけど……)
ぼくの顔でも、愛せるのかな、と少し悩んで、「うん」と頷く。
「大丈夫だよ」と、「だって、ハーレイは、ハーレイだもの」と。
前とは全く違う顔でも、違う生き物でも、ちゃんと愛せる。
またハーレイに恋をするから、「自分の顔」でも大丈夫。
聖痕で倒れて、意識が戻った時に目に入ったのが「前の自分」でも。
その顔が「今のハーレイ」だったら、ちゃんと愛してゆけるけれども…。
(…ハーレイの方が、気の毒かも…)
逆さだったら、とハタと気付いた。
「だって、ぼくの顔が、ハーレイなんだよ?」と。
白いシャングリラで暮らしていた頃、前のハーレイはモテていなかった。
薔薇の花びらで作られたジャムを、クジ引きで配っていた時も…。
(ハーレイには似合わないから、って…)
クジが入った箱を抱えた女性は、いつもハーレイの前を素通りして行った。
箱が持ち込まれたブリッジの中では、ゼルまでがクジを引いていたのに。
「運試しじゃ」と手を突っ込んでいたのに、誰も笑わなかったのに…。
(…ハーレイの前だけは、いつも素通り…)
それが前のハーレイの顔への評価で、前の自分は不満でもあった。
「酷いよ」と、「みんな、見る目が無いんだから」と。
そうは思っても、逆に言うなら、自分に見る目が無いのだということになる。
誰もが「モテない」と評価を下した、ハーレイが「素敵に見える」のだから。
(…今のハーレイなら、モテるんだけどな…)
柔道や水泳の選手をしていた学生の頃は、女性のファンも少なくなかったと聞いた。
今の学校でも生徒に人気で、女子生徒だって「ハーレイ先生!」と呼び止めたりする。
そうは言っても、顔立ちは前と同じなのだし…。
(…いろんな要素が絡んだ結果で、顔への評価じゃないのかも…)
顔だけだったら駄目なのかもね、という気もする。
「今のハーレイ」の生き方や中身、そういったものが揃ってこそだ、と。
(それなら、やっぱり…)
生まれ変わった「ブルー」の顔が「ハーレイ」だったら、ハーレイはガッカリするだろう。
いくら「前の自分と同じ顔」でも、その顔でも愛してゆけるとしても…。
(…モテない顔っていうのは、ちょっと…)
残念だろうし、ガッカリだよね、と思ってしまう。
ハーレイが「俺は気にしていないから」と言ってくれても、「自分」が辛い。
鏡に映った姿を見る度、申し訳ない気分になってしまいそう。
「どうして、こんな顔になっちゃったの?」と。
「入れ替わっちゃったのは仕方ないけど、前のハーレイの顔なんだけど…」と溜息で。
何故なら、それは「モテない顔」。
前の「ブルー」の顔だったならば、船の誰もが見惚れたのに。
女性ばかりか、男性陣まで、高く評価をしたものなのに。
称賛の的だった「ブルー」の顔が、モテなかった「ハーレイ」の顔になる悲劇。
なんとも悲惨で、あまりにもハーレイが気の毒すぎる。
(…ハーレイの顔を、けなしてるわけじゃないけれど…)
そうなるよりかは、今のハーレイの顔が「前のブルー」にそっくりで…。
(……今のぼくの顔は、そのまんまで……)
同じ顔が二つの方がマシかも、と考えた。
「その方が、きっといいと思う」と、「同じ顔でもいいじゃない」と。
記憶が戻ったハーレイの前には、ちゃんと「ブルー」がいるのだから。
ハーレイの顔も「ブルー」だけれども、モテなかった「ハーレイ」の顔の恋人よりは…。
(…自分とそっくり同じ顔でも、前のぼくの顔になる「ぼく」を見付けた方が…)
きっと嬉しい筈なんだよ、と大きく頷く。
「絶対、そう」と、「そうに決まっているんだから」と。
モテない顔の恋人よりかは、その方がいいに違いない。
今のハーレイの顔も「ブルーの顔」で、とうの昔に見飽きていても。
「チビのブルー」に再会するなり、「子供の頃の俺じゃないか」と、愕然としても。
(…だって、モテない顔なんか…)
連れて歩いても、誰も振り返って見てはくれない。
しかも「ブルーの顔になったハーレイ」は、その姿だけで人目を引くだろうから…。
(似合わないのを連れてるな、って…)
違う意味で誰もが振り返って見るか、そうでなければ「ハーレイ」の顔で注目するか。
(ソルジャー・ブルーとキャプテン・ハーレイが、並んで歩いてる、って…)
目を丸くしてポカンと見るとか、撮影なのかとキョロキョロするとか。
前の自分たちの制服を着ずに歩いていたって、撮影ということはあるだろう。
(タイムスリップものだとか…)
そんな感じで、と思うけれども、その程度にしかならないカップル。
「前のブルー」を連れて歩いていたなら、「今のハーレイ」でも注目されそうなのに。
誇らしい気分で歩けそうなのに、ハーレイの方が「前のブルー」の顔では…。
(ホントのホントに、似合わないのを連れて歩いていることに…)
なってしまうから、同じ顔が二つになったとしたって、「ブルーの顔」で揃えたい。
その方がハーレイも嬉しい気分で、「ブルー」を連れて歩けるから。
(もしも、ぼくもハーレイも、前のぼくの顔で、そっくりだったなら…)
どんな感じになるのかな、と想像の翼を羽ばたかせる。
今の自分がチビの間は、兄弟みたいに見えるだろうか、と。
(それとも、親子…?)
見た目がそっくりなんだものね、とクスッと笑う。
今のハーレイは、今の自分よりも二十四歳も年上なのだし、「お父さん」でも通る年齢。
ハーレイが外見の年を止めていたって、そういう人は少なくないのが今の世の中。
(…前のぼくだって、三百年以上も生きていたんだし…)
今のハーレイが「ブルー」の顔を持っていたなら、何歳にだって見えるだろう。
青年にだって、今のハーレイの年の三十八歳にだって、もっと年上にだって。
(十四歳の子供がいたって、ちっともおかしくないんだから…!)
親子かもね、と考えてみて、「それなら、デート出来るかも?」と顎に当てた手。
チビの自分を連れて出掛けても、誰も変には思わないから。
「お父さんが子供を連れて来ている」と微笑ましく見て、ついでに注目。
(だって、ソルジャー・ブルーと、チビのソルジャー・ブルーな親子…)
凄い、と誰もが見詰めるだろう。
「こんな親子がいるだなんて」と、「いいものを見た」と。
(ふざけて「パパ!」って呼ぶのもいいかも…!)
そこでハーレイが「こらっ!」と頭をコツンとやっても、周りの人は笑うだけ。
「若いお父さんだから、パパとは呼ばせていないんだな」と、クスクスと。
「きっと家でも、名前で呼ばせているんだろう」と、「友達みたいな感じにして」と。
そういう決まりになっているのに、それを破って「パパ!」と呼んだ子。
「こらっ!」と叱られ、頭をコツンと叩かれたって、仕方ないだろう。
(…誰も、親子じゃないなんて…)
思いはしなくて、ハーレイは「パパ」だと勘違いされる。
なんて愉快な光景だろうか、ハーレイの子供になれるだなんて。
(…ハーレイが、ハーレイの顔のまんまで…)
チビの自分を連れて歩いても、同じ悪戯は出来ると思う。
けれど、二人で出歩くことは出来はしないし、夢のまた夢。
代わりに、夢の世界で遊ぶ。
「ブルーそっくりの顔のハーレイ」と、親子みたいに出掛けたいよね、と。
(でもって、ぼくが大きくなったら…)
もう本当に、双子にしか見えないことだろう。
何処へ行っても、何をしていても、きっと仲のいい双子の兄弟。
(ハーレイが、前のぼくの顔になっていたなら…)
前の生での記憶が無くても、確実に年を止めている筈。
「俺のブルーは、このくらいだった」と、意識の底の声に従って。
「今よりも年を取っては駄目だ」と、「この姿なら、この年なんだ」と。
(だから絶対、前のぼくにそっくりな顔で…)
チビのブルーが育つのを待って、ちゃんとプロポーズしてくれる。
そっくり同じ顔をしていても、誰が見たって双子みたいなカップルになってしまっても。
「俺のブルーだ」と抱き締めてくれて、「一緒に暮らそう」と。
(ホントは、恋人同士なんだ、って…)
誰も思ってくれないとしても、ハーレイと二人で出掛けてゆく。
デートも、旅行も、ハーレイの車でドライブだって。
(ぼくとハーレイの顔が、ホントにそっくりだったなら…)
楽しそうだよ、と夢は果てしなく広がってゆく。
「おんなじ顔でも、ぼくはハーレイを愛せるものね」と。
ハーレイも、きっと愛してくれるし、同じ顔で恋をしてゆける、と。
(そういうのも、ホントに楽しそうだよ)
きっとハーレイも、そう思うよね、と夢を見る。
「おんなじ顔になるのも、いいと思わない?」と。
「前のぼくの顔になるのも素敵」と、「そしたら、ハーレイも、もっとモテるよ」と…。
そっくりだったなら・了
※生まれ変わったハーレイと自分の顔がそっくりだったなら、と想像してみるブルー君。
モテなかったキャプテン・ハーレイの顔より、前のブルーの顔になるのが素敵ですよねv
チビだけれど、と小さなブルーが、ふと思ったこと。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
(神様って、ホントに凄いよね…)
ぼくも、ハーレイも、前とそっくり、と鏡の方を眺めて感心する。
遠く遥かな時の彼方でも、自分の顔は「これ」だったから。
それに恋人のハーレイの顔も、今と全く変わらなかった。
(ホントに、奇跡…)
聖痕だって凄いんだけど、と赤い瞳を瞬かせる。
「だけど、これには敵わないよね」と。
前とそっくり同じ顔だから、直ぐにハーレイだと気が付いた。
ハーレイの方も、「ブルーなんだ」と気付いてくれた。
これが前とは違う顔なら、そうすんなりと運んだかどうか。
(…違う顔でも、人間じゃない生き物になってても…)
きっと気付くと思うけれども、一瞬、悩むかもしれない。
記憶が戻って見詰めながらも、「ハーレイなの?」と首を傾げて。
「違う顔だけど、ハーレイだよね」と、探るような視線を向けたりもして。
(ハーレイだって、前とは違う顔になっちゃった、ぼくを見て…)
同じような反応をするだろうから、それで確信出来るとは思う。
「やっぱり、この人がハーレイなんだ」と、「ハーレイも、思い出したんだ」と。
とはいえ、違う顔だったならば…。
(…ちょっぴり、ガッカリしちゃいそう…)
せっかく巡り会えたのに、と溜息を零すかもしれない。
「どうして、前と同じじゃないの?」と、「ぼくの顔も違うし、仕方ないけど」とは思っても。
(いっそ、人間じゃなかった方が…)
まだ、しっくりと来そうな感じ。
「今度のハーレイは、ウサギなんだ」と、「ぼくたち、ウサギになったんだね」と。
違う生き物に生まれたのなら、別の姿になっていたって当然だから。
そう考えてみると、今の姿は本当に奇跡。
ハーレイも、自分も、前の姿とそっくり同じ。
(ぼくは小さくなっちゃったけど…)
もっと育てば、前の自分と変わらない姿になれる筈。
「ソルジャー・ブルー」と呼ばれていた頃と、何処も変わらない容姿になって。
そうなったならば、前の自分には叶えられなかった夢が実現する。
ハーレイと一緒に生きてゆく夢、二人で歩んでゆく人生が。
(二人一緒に、青い地球に生まれて来たんだから…)
前とおんなじ姿がいいよね、と神様の計らいに感謝する。
こういう身体が準備出来るまで、長く待たされたのかもしれないけれど、と。
(似ていない顔でも構わないなら、もっと早くに…)
生まれ変わって、再会出来ていたかもしれない。
それも悪くはないのだけれども、そっくり同じ姿の方が…。
(断然、いいよね?)
そうでなくっちゃ、と思ったはずみに、掠めた考え。
「同じ顔でも、逆さだったら?」と。
自分がハーレイの顔に生まれて、ハーレイが「ブルー」の顔だったなら、と。
(…えーっと…?)
神様の悪戯か、あるいは気まぐれ、そういう結果で入れ替わった顔。
記憶が戻って見詰めた先には、前の自分の顔がある。
(……ハーレイなんだ、って分かるだろうけど……)
ぼくの顔でも、愛せるのかな、と少し悩んで、「うん」と頷く。
「大丈夫だよ」と、「だって、ハーレイは、ハーレイだもの」と。
前とは全く違う顔でも、違う生き物でも、ちゃんと愛せる。
またハーレイに恋をするから、「自分の顔」でも大丈夫。
聖痕で倒れて、意識が戻った時に目に入ったのが「前の自分」でも。
その顔が「今のハーレイ」だったら、ちゃんと愛してゆけるけれども…。
(…ハーレイの方が、気の毒かも…)
逆さだったら、とハタと気付いた。
「だって、ぼくの顔が、ハーレイなんだよ?」と。
白いシャングリラで暮らしていた頃、前のハーレイはモテていなかった。
薔薇の花びらで作られたジャムを、クジ引きで配っていた時も…。
(ハーレイには似合わないから、って…)
クジが入った箱を抱えた女性は、いつもハーレイの前を素通りして行った。
箱が持ち込まれたブリッジの中では、ゼルまでがクジを引いていたのに。
「運試しじゃ」と手を突っ込んでいたのに、誰も笑わなかったのに…。
(…ハーレイの前だけは、いつも素通り…)
それが前のハーレイの顔への評価で、前の自分は不満でもあった。
「酷いよ」と、「みんな、見る目が無いんだから」と。
そうは思っても、逆に言うなら、自分に見る目が無いのだということになる。
誰もが「モテない」と評価を下した、ハーレイが「素敵に見える」のだから。
(…今のハーレイなら、モテるんだけどな…)
柔道や水泳の選手をしていた学生の頃は、女性のファンも少なくなかったと聞いた。
今の学校でも生徒に人気で、女子生徒だって「ハーレイ先生!」と呼び止めたりする。
そうは言っても、顔立ちは前と同じなのだし…。
(…いろんな要素が絡んだ結果で、顔への評価じゃないのかも…)
顔だけだったら駄目なのかもね、という気もする。
「今のハーレイ」の生き方や中身、そういったものが揃ってこそだ、と。
(それなら、やっぱり…)
生まれ変わった「ブルー」の顔が「ハーレイ」だったら、ハーレイはガッカリするだろう。
いくら「前の自分と同じ顔」でも、その顔でも愛してゆけるとしても…。
(…モテない顔っていうのは、ちょっと…)
残念だろうし、ガッカリだよね、と思ってしまう。
ハーレイが「俺は気にしていないから」と言ってくれても、「自分」が辛い。
鏡に映った姿を見る度、申し訳ない気分になってしまいそう。
「どうして、こんな顔になっちゃったの?」と。
「入れ替わっちゃったのは仕方ないけど、前のハーレイの顔なんだけど…」と溜息で。
何故なら、それは「モテない顔」。
前の「ブルー」の顔だったならば、船の誰もが見惚れたのに。
女性ばかりか、男性陣まで、高く評価をしたものなのに。
称賛の的だった「ブルー」の顔が、モテなかった「ハーレイ」の顔になる悲劇。
なんとも悲惨で、あまりにもハーレイが気の毒すぎる。
(…ハーレイの顔を、けなしてるわけじゃないけれど…)
そうなるよりかは、今のハーレイの顔が「前のブルー」にそっくりで…。
(……今のぼくの顔は、そのまんまで……)
同じ顔が二つの方がマシかも、と考えた。
「その方が、きっといいと思う」と、「同じ顔でもいいじゃない」と。
記憶が戻ったハーレイの前には、ちゃんと「ブルー」がいるのだから。
ハーレイの顔も「ブルー」だけれども、モテなかった「ハーレイ」の顔の恋人よりは…。
(…自分とそっくり同じ顔でも、前のぼくの顔になる「ぼく」を見付けた方が…)
きっと嬉しい筈なんだよ、と大きく頷く。
「絶対、そう」と、「そうに決まっているんだから」と。
モテない顔の恋人よりかは、その方がいいに違いない。
今のハーレイの顔も「ブルーの顔」で、とうの昔に見飽きていても。
「チビのブルー」に再会するなり、「子供の頃の俺じゃないか」と、愕然としても。
(…だって、モテない顔なんか…)
連れて歩いても、誰も振り返って見てはくれない。
しかも「ブルーの顔になったハーレイ」は、その姿だけで人目を引くだろうから…。
(似合わないのを連れてるな、って…)
違う意味で誰もが振り返って見るか、そうでなければ「ハーレイ」の顔で注目するか。
(ソルジャー・ブルーとキャプテン・ハーレイが、並んで歩いてる、って…)
目を丸くしてポカンと見るとか、撮影なのかとキョロキョロするとか。
前の自分たちの制服を着ずに歩いていたって、撮影ということはあるだろう。
(タイムスリップものだとか…)
そんな感じで、と思うけれども、その程度にしかならないカップル。
「前のブルー」を連れて歩いていたなら、「今のハーレイ」でも注目されそうなのに。
誇らしい気分で歩けそうなのに、ハーレイの方が「前のブルー」の顔では…。
(ホントのホントに、似合わないのを連れて歩いていることに…)
なってしまうから、同じ顔が二つになったとしたって、「ブルーの顔」で揃えたい。
その方がハーレイも嬉しい気分で、「ブルー」を連れて歩けるから。
(もしも、ぼくもハーレイも、前のぼくの顔で、そっくりだったなら…)
どんな感じになるのかな、と想像の翼を羽ばたかせる。
今の自分がチビの間は、兄弟みたいに見えるだろうか、と。
(それとも、親子…?)
見た目がそっくりなんだものね、とクスッと笑う。
今のハーレイは、今の自分よりも二十四歳も年上なのだし、「お父さん」でも通る年齢。
ハーレイが外見の年を止めていたって、そういう人は少なくないのが今の世の中。
(…前のぼくだって、三百年以上も生きていたんだし…)
今のハーレイが「ブルー」の顔を持っていたなら、何歳にだって見えるだろう。
青年にだって、今のハーレイの年の三十八歳にだって、もっと年上にだって。
(十四歳の子供がいたって、ちっともおかしくないんだから…!)
親子かもね、と考えてみて、「それなら、デート出来るかも?」と顎に当てた手。
チビの自分を連れて出掛けても、誰も変には思わないから。
「お父さんが子供を連れて来ている」と微笑ましく見て、ついでに注目。
(だって、ソルジャー・ブルーと、チビのソルジャー・ブルーな親子…)
凄い、と誰もが見詰めるだろう。
「こんな親子がいるだなんて」と、「いいものを見た」と。
(ふざけて「パパ!」って呼ぶのもいいかも…!)
そこでハーレイが「こらっ!」と頭をコツンとやっても、周りの人は笑うだけ。
「若いお父さんだから、パパとは呼ばせていないんだな」と、クスクスと。
「きっと家でも、名前で呼ばせているんだろう」と、「友達みたいな感じにして」と。
そういう決まりになっているのに、それを破って「パパ!」と呼んだ子。
「こらっ!」と叱られ、頭をコツンと叩かれたって、仕方ないだろう。
(…誰も、親子じゃないなんて…)
思いはしなくて、ハーレイは「パパ」だと勘違いされる。
なんて愉快な光景だろうか、ハーレイの子供になれるだなんて。
(…ハーレイが、ハーレイの顔のまんまで…)
チビの自分を連れて歩いても、同じ悪戯は出来ると思う。
けれど、二人で出歩くことは出来はしないし、夢のまた夢。
代わりに、夢の世界で遊ぶ。
「ブルーそっくりの顔のハーレイ」と、親子みたいに出掛けたいよね、と。
(でもって、ぼくが大きくなったら…)
もう本当に、双子にしか見えないことだろう。
何処へ行っても、何をしていても、きっと仲のいい双子の兄弟。
(ハーレイが、前のぼくの顔になっていたなら…)
前の生での記憶が無くても、確実に年を止めている筈。
「俺のブルーは、このくらいだった」と、意識の底の声に従って。
「今よりも年を取っては駄目だ」と、「この姿なら、この年なんだ」と。
(だから絶対、前のぼくにそっくりな顔で…)
チビのブルーが育つのを待って、ちゃんとプロポーズしてくれる。
そっくり同じ顔をしていても、誰が見たって双子みたいなカップルになってしまっても。
「俺のブルーだ」と抱き締めてくれて、「一緒に暮らそう」と。
(ホントは、恋人同士なんだ、って…)
誰も思ってくれないとしても、ハーレイと二人で出掛けてゆく。
デートも、旅行も、ハーレイの車でドライブだって。
(ぼくとハーレイの顔が、ホントにそっくりだったなら…)
楽しそうだよ、と夢は果てしなく広がってゆく。
「おんなじ顔でも、ぼくはハーレイを愛せるものね」と。
ハーレイも、きっと愛してくれるし、同じ顔で恋をしてゆける、と。
(そういうのも、ホントに楽しそうだよ)
きっとハーレイも、そう思うよね、と夢を見る。
「おんなじ顔になるのも、いいと思わない?」と。
「前のぼくの顔になるのも素敵」と、「そしたら、ハーレイも、もっとモテるよ」と…。
そっくりだったなら・了
※生まれ変わったハーレイと自分の顔がそっくりだったなら、と想像してみるブルー君。
モテなかったキャプテン・ハーレイの顔より、前のブルーの顔になるのが素敵ですよねv
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