デート出来るんなら
(ハーレイとデートは出来ないんだよね…)
残念だけど、と小さなブルーが零した溜息。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
今日は会えずに終わったハーレイ、前の生から愛した人。
青く蘇った地球に生まれて、再び巡り会えたのだけれど…。
(…ぼくがちょっぴり、チビすぎちゃって…)
デートは当分、お預けなんだよ、と悔しい気持ち。
十四歳にしかならない子供でなければ、直ぐにでもデート出来たのに。
再会を遂げたその日の間に、デートの約束を取り付けるようなことだって。
(…ぼくが学校の生徒じゃなくても、ハーレイは、きっと…)
聖痕で血塗れになった「ブルー」を案じて、病院に来てくれるだろう。
でなければ、後で家まで訪ねて来るとか、必ず、「ブルー」に会いに来てくれる。
「大丈夫か?」と、「傷は痛まないか」と、大怪我をしたと思い込んで。
(だけどホントは、怪我してないから…)
ハーレイに向かって微笑み返して、「大丈夫だよ」と怪我はしていないことを伝えねば。
それから自分の周りを見回し、両親や医者がいるようだったら、出て行って貰う。
「ハーレイと二人きりにして」と、ごくごく自然に、二人きりで再会を祝うふりをして。
(絶対、怪しまれないもんね?)
遠く遥かな時の彼方で、ソルジャー・ブルーとキャプテン・ハーレイだった二人の再会。
二人きりで話したいことも多い筈だし、両親たちも気を利かせるだろう。
現に、ハーレイと再会した時だって…。
(ママを部屋から追い出しちゃって…)
その後、ハーレイに告げた「ただいま」の言葉。
「ただいま」と、それに「帰って来たよ」と。
とても劇的な瞬間だけれど、チビの自分の場合は、其処まで。
ハーレイとデートの約束なんかは、しなかった。
そもそも思い付かなかったし、ハーレイの方も、申し込んではくれなかったから。
あれは絶対、今の自分がチビなせいだ、と改めて思う。
ちゃんと育った姿だったら、自分の方から言い出さなくても、ハーレイから…。
(次の休みに、何処かへ行かないか、って…)
デートに誘って貰えただろう。
「俺の休みは、この日なんだが」と、ハーレイが手帳を取り出して。
空いている日は何処か確かめ、「ブルー」の都合を尋ねてくれて。
(そしたら、もちろん…)
二つ返事で、デートの約束。
何か予定があったとしたって、「空いているよ」と答えるだろう。
育った姿になっていたって、まだまだ学校の生徒の筈だし、大丈夫。
(上の学校の生徒かもだけど…)
学校の生徒の予定なんかは、中身もたかが知れたもの。
友達と何処かへ遊びに行くとか、その程度。
(だから、そっちを断っちゃって…)
ハーレイとのデートを選ぶけれども、生憎と、それは出来ない相談。
何故なら、自分はチビだから。
どう頑張ってもチビの子供で、今だってチビのままなのだから。
(…前のぼくだった頃と、同じ背丈になるまでは…)
ハーレイは唇にキスをくれないし、デートのお許しも決して出ない。
そういう決まりになってしまって、決まりが緩むことさえも…。
(ハーレイなんだし、有り得ないよね…)
昔から頑固だったんだもの、と溜息がポロリと零れ出る。
「そんなトコまで、前とそっくりにならなくても」と、「頑固すぎだよ」と。
そうは思っても、それが「ハーレイ」の「ハーレイ」たる所以。
前のハーレイとは違う中身だったら、ガッカリするのは分かっている。
姿形は前と同じでも、性格が違っていたならば。
「キャプテン・ハーレイ」だった頃と違って、うんと軽薄だったりしたら。
(ぼくがチビでも、再会した日に、デートに誘って…)
口説き文句を囁きながら、熱烈なキスをするような男。
その場はウットリ酔いしれていても、後で絶対、頭を抱えるに違いない。
「あれは誰なの」と、「ハーレイとは、思えないんだけれど」と。
勘弁願いたい、別人のようになった「ハーレイ」。
そうなるよりかは、今の頑固なハーレイでいい。
デート出来る日はいつになるのか、まるで見当がつかなくても。
「連れて行ってよ」と強請ってみたって、鼻で笑われることばかりでも。
(公園にだって、行けないんだから…)
ホントにケチで頑固なんだよ、とハーレイの頭の固さを呪う。
それでこそ「ハーレイ」なのだけれども、「もう少し、柔らかくったって」と。
(キャプテンなんだし、臨機応変に…)
対応すればいいじゃない、と頭の中でこねた屁理屈。
「ぼくが子供になっちゃったんなら、それらしく」と。
「子供向けのデートでいいと思うけど」と、「ハーレイは、大人なんだから」と。
(大人なんだし、余裕たっぷりに…)
エスコートだって出来ると思う、と考えてみる。
「ハーレイ」は知らんぷりだけれども、「本当は、ちゃんと出来るんじゃないの?」と。
それをやったら、「ブルー」は必ず調子に乗るから、「駄目だ」と言い続けるだけで。
「頑固なハーレイ」を貫くつもりで、決して譲りはしないだけで。
(…それに、学校の先生なんだよ?)
子供の相手には慣れている筈、いくらでも応用出来るだろう。
「ブルー」が喜ぶ「子供向けのデート」を、素敵にアレンジすることだって。
(ハーレイさえ、その気になってくれたら…)
チビの子供の自分のままでも、「ハーレイとデート」は可能だと思う。
ハーレイが「よし」と頷かないだけ、お許しを出してくれないだけで。
(…お許しなんか、ハーレイは出してくれないけれど…)
出さないからこそ「ハーレイ」だけれど、夢を見るのはいいだろう。
「もしも、ハーレイとデートが出来るなら」と。
「デート出来るんなら、どんな感じ?」と、あれこれ想像するだけならば。
(…そんなの、ホントに有り得ないけど…)
ほんのちょっぴり、と夢の世界に羽ばたいてみることにした。
ハーレイとデートに出掛ける自分。
チビの子供のままだけれども、ハーレイのエスコートで、子供向けのデートコースに。
(今のぼくと、デートするんなら…)
ハーレイは何処を選ぶだろうか、二人でデートに出掛ける場所。
大人向けでも、「ブルー」は少しも構わないのだけれど…。
(ハーレイが選ぶわけがないしね?)
そんな場所は、と最初から答えは決まっている。
いくらデートのお許しをくれる「ハーレイ」といえども、「ハーレイ」には違いないのだから。
真面目で頑固な「キャプテン・ハーレイ」、その性分は変わりはしない。
だから「大人がデートに行く場所」、それは初めから除外だろう。
立派な大人のハーレイにとっては、馴れた馴染みの場所であっても。
(だけど、大人向けの場所っていうのも…)
そう沢山は無いと思う、と「大人限定の場所」を挙げてみた。
お洒落なバーとか、夜しか開いていない店。
(チビのぼくには、そのくらいしか…)
思い付かないから、ハーレイが「避けて」選んでいたって、きっと気付かないことだろう。
「大人向けのデート」で誘う場所には、誘われていないという事実には。
(気が付かないなら、子供向けのデートコースでも…)
充分、満足出来ると思うし、ハーレイに文句を言ったりもしない。
「違う所に行きたかったよ」と、膨れっ面にもならない筈。
(…何処を選んでくれたって…)
大喜びで、ハーレイについてゆく。
デートに出掛ける前の晩から、ワクワクと胸を弾ませて。
「明日は、ハーレイとデートなんだよ」と、眠れないくらいにウキウキとして。
(…女の子じゃないから、何を着ていくかで…)
真剣に悩みはしないけれども、少しくらいは悩みそう。
「こんな服だと、子供っぽいかな?」と、鏡の前で服を身体に当ててみて。
もしかしたら、何着か袖を通して、ズボンもそれに合わせてみて。
(…普段、ハーレイが、お休みの日に…)
此処へ着て来る、ラフな服たち。
学校でのスーツ姿とは違う、ハーレイの「休日の、お気に入り」。
その服たちを思い浮かべながら、隣にいるのがお似合いの服を選びたい。
せっかくデートに出掛けるのだから、「お父さんと息子」にならないように。
ハーレイと二人でデートするなら、心配なのが二人の年の差。
なにしろ二十四歳違いで、チビの自分は「息子」に見えてもおかしくない年。
ただでも「そういう年の差」なのに、今の時代は、更に厄介。
人間は全てミュウになったから、何歳だろうと、自分の好みで年を取るのを止められる。
ハーレイよりも「若い」姿で、もっと年寄りな人だって多い。
(…今のハーレイ、キャプテン・ハーレイそっくりだけど…)
その外見まで老けるよりも前に、若い姿を保ち始めるケースは、けして珍しくない。
だから、ハーレイと「チビの自分」が、並んで歩いていたならば…。
(似ていなくても、親子連れとか…)
場合によっては、「おじいちゃんと孫」でも通る世の中。
デートを楽しんでいるというのに、周りの人の目には、そんな光景に映ってしまう。
「お父さんと一緒に、仲良くお出掛け」、あるいは「おじいちゃんと遊びに来ました」。
(…とっても、ありそう…)
頑張って服を選ばないと、と俄然、気合いが入り始める。
「服を選ぶのは、やっぱり大事」と、「お父さんどころか、おじいちゃんなんて」と。
ハーレイとのデートは、まずは其処から。
誰が見たって「他人同士」に見える服装、けれどハーレイとも「お似合い」の服。
(…簡単そうでも、難しいってば…!)
着こなしなんかも大切かもね、と思いはしても、チビの子供では足りない経験。
どんな具合に着こなせばいいか、分かるほど「お洒落」の知識も無い。
(ついでに言うなら、前のぼくだって…)
ずっとソルジャーの衣装だったし、お洒落なんかはしていない。
つまり「全く役に立たない」、前の自分の膨大な記憶。
端から引き出し、吟味してみても、デートに着ていく服を選ぶには「ただのガラクタ」。
(……酷いってば……!)
着ていく服が選べないよ、と出掛ける前から躓いた。
ハーレイがデートに誘ってくれた日、その日に袖を通したい服。
シャツやズボンや、季節によっては上着まで並べて、ウンウンと唸る自分が見える。
「どれがいいの?」と、「どの服だったら、ハーレイの隣が似合うのかな?」と。
翌日はデートに行くというのに、いつまで経っても決まらない服。
「早く寝ないと」と焦っていたって、着てゆく服が選べないから、眠れないままで。
(……デートの日、寝不足になっちゃって、起きられないかも……)
具合まで悪くなっちゃうかも、と情けない気もするけれど。
そうなったならば、デートはお預け、ベッドの住人になってしまうのだけれど…。
(でもでも、せっかく、ハーレイとデート…)
素敵な服を選びたいよ、と前の日の夜で躓いたままで進めない。
何処へ行くのか、何をするのか、それよりも前に「お似合いの服」を決めたくて。
ちゃんと「デート」に見えてくれる服、その一着を選びたくて。
(…いっそ、デートを申し込まれたら…)
ハーレイに頼んでみることにしようか、「その前に、服を選んでくれる?」と。
クローゼットの扉を開けて、シャツやズボンを引っ張り出して。
「この中から、決めて欲しいんだけど」と、「デートに行く日に、着ていく服」と。
そしてハーレイにも、「お願い」をする。
「デートの日は、この服に似合う服を着て来てね」と。
「そしたら恋人同士に見えるし、ちゃんとデートに見て貰えるよ」と。
(…悩んじゃうなら、それもいいかも!)
ハーレイとデート出来るんなら、と幸せな夢が広がってゆく。
「服を選んで貰うんだよ」と、「デートする前から、うんと楽しみだよね」と…。
デート出来るんなら・了
※チビのままでも、ハーレイ先生とデート出来るんなら、と考え始めたブルー君。
けれど年の差が問題なのです、何を着てゆくかが、とても大切。服を選ぶのが大仕事かもv
残念だけど、と小さなブルーが零した溜息。
ハーレイが寄ってはくれなかった日の夜、自分の部屋で。
お風呂上がりにパジャマ姿で、ベッドにチョコンと腰を下ろして。
今日は会えずに終わったハーレイ、前の生から愛した人。
青く蘇った地球に生まれて、再び巡り会えたのだけれど…。
(…ぼくがちょっぴり、チビすぎちゃって…)
デートは当分、お預けなんだよ、と悔しい気持ち。
十四歳にしかならない子供でなければ、直ぐにでもデート出来たのに。
再会を遂げたその日の間に、デートの約束を取り付けるようなことだって。
(…ぼくが学校の生徒じゃなくても、ハーレイは、きっと…)
聖痕で血塗れになった「ブルー」を案じて、病院に来てくれるだろう。
でなければ、後で家まで訪ねて来るとか、必ず、「ブルー」に会いに来てくれる。
「大丈夫か?」と、「傷は痛まないか」と、大怪我をしたと思い込んで。
(だけどホントは、怪我してないから…)
ハーレイに向かって微笑み返して、「大丈夫だよ」と怪我はしていないことを伝えねば。
それから自分の周りを見回し、両親や医者がいるようだったら、出て行って貰う。
「ハーレイと二人きりにして」と、ごくごく自然に、二人きりで再会を祝うふりをして。
(絶対、怪しまれないもんね?)
遠く遥かな時の彼方で、ソルジャー・ブルーとキャプテン・ハーレイだった二人の再会。
二人きりで話したいことも多い筈だし、両親たちも気を利かせるだろう。
現に、ハーレイと再会した時だって…。
(ママを部屋から追い出しちゃって…)
その後、ハーレイに告げた「ただいま」の言葉。
「ただいま」と、それに「帰って来たよ」と。
とても劇的な瞬間だけれど、チビの自分の場合は、其処まで。
ハーレイとデートの約束なんかは、しなかった。
そもそも思い付かなかったし、ハーレイの方も、申し込んではくれなかったから。
あれは絶対、今の自分がチビなせいだ、と改めて思う。
ちゃんと育った姿だったら、自分の方から言い出さなくても、ハーレイから…。
(次の休みに、何処かへ行かないか、って…)
デートに誘って貰えただろう。
「俺の休みは、この日なんだが」と、ハーレイが手帳を取り出して。
空いている日は何処か確かめ、「ブルー」の都合を尋ねてくれて。
(そしたら、もちろん…)
二つ返事で、デートの約束。
何か予定があったとしたって、「空いているよ」と答えるだろう。
育った姿になっていたって、まだまだ学校の生徒の筈だし、大丈夫。
(上の学校の生徒かもだけど…)
学校の生徒の予定なんかは、中身もたかが知れたもの。
友達と何処かへ遊びに行くとか、その程度。
(だから、そっちを断っちゃって…)
ハーレイとのデートを選ぶけれども、生憎と、それは出来ない相談。
何故なら、自分はチビだから。
どう頑張ってもチビの子供で、今だってチビのままなのだから。
(…前のぼくだった頃と、同じ背丈になるまでは…)
ハーレイは唇にキスをくれないし、デートのお許しも決して出ない。
そういう決まりになってしまって、決まりが緩むことさえも…。
(ハーレイなんだし、有り得ないよね…)
昔から頑固だったんだもの、と溜息がポロリと零れ出る。
「そんなトコまで、前とそっくりにならなくても」と、「頑固すぎだよ」と。
そうは思っても、それが「ハーレイ」の「ハーレイ」たる所以。
前のハーレイとは違う中身だったら、ガッカリするのは分かっている。
姿形は前と同じでも、性格が違っていたならば。
「キャプテン・ハーレイ」だった頃と違って、うんと軽薄だったりしたら。
(ぼくがチビでも、再会した日に、デートに誘って…)
口説き文句を囁きながら、熱烈なキスをするような男。
その場はウットリ酔いしれていても、後で絶対、頭を抱えるに違いない。
「あれは誰なの」と、「ハーレイとは、思えないんだけれど」と。
勘弁願いたい、別人のようになった「ハーレイ」。
そうなるよりかは、今の頑固なハーレイでいい。
デート出来る日はいつになるのか、まるで見当がつかなくても。
「連れて行ってよ」と強請ってみたって、鼻で笑われることばかりでも。
(公園にだって、行けないんだから…)
ホントにケチで頑固なんだよ、とハーレイの頭の固さを呪う。
それでこそ「ハーレイ」なのだけれども、「もう少し、柔らかくったって」と。
(キャプテンなんだし、臨機応変に…)
対応すればいいじゃない、と頭の中でこねた屁理屈。
「ぼくが子供になっちゃったんなら、それらしく」と。
「子供向けのデートでいいと思うけど」と、「ハーレイは、大人なんだから」と。
(大人なんだし、余裕たっぷりに…)
エスコートだって出来ると思う、と考えてみる。
「ハーレイ」は知らんぷりだけれども、「本当は、ちゃんと出来るんじゃないの?」と。
それをやったら、「ブルー」は必ず調子に乗るから、「駄目だ」と言い続けるだけで。
「頑固なハーレイ」を貫くつもりで、決して譲りはしないだけで。
(…それに、学校の先生なんだよ?)
子供の相手には慣れている筈、いくらでも応用出来るだろう。
「ブルー」が喜ぶ「子供向けのデート」を、素敵にアレンジすることだって。
(ハーレイさえ、その気になってくれたら…)
チビの子供の自分のままでも、「ハーレイとデート」は可能だと思う。
ハーレイが「よし」と頷かないだけ、お許しを出してくれないだけで。
(…お許しなんか、ハーレイは出してくれないけれど…)
出さないからこそ「ハーレイ」だけれど、夢を見るのはいいだろう。
「もしも、ハーレイとデートが出来るなら」と。
「デート出来るんなら、どんな感じ?」と、あれこれ想像するだけならば。
(…そんなの、ホントに有り得ないけど…)
ほんのちょっぴり、と夢の世界に羽ばたいてみることにした。
ハーレイとデートに出掛ける自分。
チビの子供のままだけれども、ハーレイのエスコートで、子供向けのデートコースに。
(今のぼくと、デートするんなら…)
ハーレイは何処を選ぶだろうか、二人でデートに出掛ける場所。
大人向けでも、「ブルー」は少しも構わないのだけれど…。
(ハーレイが選ぶわけがないしね?)
そんな場所は、と最初から答えは決まっている。
いくらデートのお許しをくれる「ハーレイ」といえども、「ハーレイ」には違いないのだから。
真面目で頑固な「キャプテン・ハーレイ」、その性分は変わりはしない。
だから「大人がデートに行く場所」、それは初めから除外だろう。
立派な大人のハーレイにとっては、馴れた馴染みの場所であっても。
(だけど、大人向けの場所っていうのも…)
そう沢山は無いと思う、と「大人限定の場所」を挙げてみた。
お洒落なバーとか、夜しか開いていない店。
(チビのぼくには、そのくらいしか…)
思い付かないから、ハーレイが「避けて」選んでいたって、きっと気付かないことだろう。
「大人向けのデート」で誘う場所には、誘われていないという事実には。
(気が付かないなら、子供向けのデートコースでも…)
充分、満足出来ると思うし、ハーレイに文句を言ったりもしない。
「違う所に行きたかったよ」と、膨れっ面にもならない筈。
(…何処を選んでくれたって…)
大喜びで、ハーレイについてゆく。
デートに出掛ける前の晩から、ワクワクと胸を弾ませて。
「明日は、ハーレイとデートなんだよ」と、眠れないくらいにウキウキとして。
(…女の子じゃないから、何を着ていくかで…)
真剣に悩みはしないけれども、少しくらいは悩みそう。
「こんな服だと、子供っぽいかな?」と、鏡の前で服を身体に当ててみて。
もしかしたら、何着か袖を通して、ズボンもそれに合わせてみて。
(…普段、ハーレイが、お休みの日に…)
此処へ着て来る、ラフな服たち。
学校でのスーツ姿とは違う、ハーレイの「休日の、お気に入り」。
その服たちを思い浮かべながら、隣にいるのがお似合いの服を選びたい。
せっかくデートに出掛けるのだから、「お父さんと息子」にならないように。
ハーレイと二人でデートするなら、心配なのが二人の年の差。
なにしろ二十四歳違いで、チビの自分は「息子」に見えてもおかしくない年。
ただでも「そういう年の差」なのに、今の時代は、更に厄介。
人間は全てミュウになったから、何歳だろうと、自分の好みで年を取るのを止められる。
ハーレイよりも「若い」姿で、もっと年寄りな人だって多い。
(…今のハーレイ、キャプテン・ハーレイそっくりだけど…)
その外見まで老けるよりも前に、若い姿を保ち始めるケースは、けして珍しくない。
だから、ハーレイと「チビの自分」が、並んで歩いていたならば…。
(似ていなくても、親子連れとか…)
場合によっては、「おじいちゃんと孫」でも通る世の中。
デートを楽しんでいるというのに、周りの人の目には、そんな光景に映ってしまう。
「お父さんと一緒に、仲良くお出掛け」、あるいは「おじいちゃんと遊びに来ました」。
(…とっても、ありそう…)
頑張って服を選ばないと、と俄然、気合いが入り始める。
「服を選ぶのは、やっぱり大事」と、「お父さんどころか、おじいちゃんなんて」と。
ハーレイとのデートは、まずは其処から。
誰が見たって「他人同士」に見える服装、けれどハーレイとも「お似合い」の服。
(…簡単そうでも、難しいってば…!)
着こなしなんかも大切かもね、と思いはしても、チビの子供では足りない経験。
どんな具合に着こなせばいいか、分かるほど「お洒落」の知識も無い。
(ついでに言うなら、前のぼくだって…)
ずっとソルジャーの衣装だったし、お洒落なんかはしていない。
つまり「全く役に立たない」、前の自分の膨大な記憶。
端から引き出し、吟味してみても、デートに着ていく服を選ぶには「ただのガラクタ」。
(……酷いってば……!)
着ていく服が選べないよ、と出掛ける前から躓いた。
ハーレイがデートに誘ってくれた日、その日に袖を通したい服。
シャツやズボンや、季節によっては上着まで並べて、ウンウンと唸る自分が見える。
「どれがいいの?」と、「どの服だったら、ハーレイの隣が似合うのかな?」と。
翌日はデートに行くというのに、いつまで経っても決まらない服。
「早く寝ないと」と焦っていたって、着てゆく服が選べないから、眠れないままで。
(……デートの日、寝不足になっちゃって、起きられないかも……)
具合まで悪くなっちゃうかも、と情けない気もするけれど。
そうなったならば、デートはお預け、ベッドの住人になってしまうのだけれど…。
(でもでも、せっかく、ハーレイとデート…)
素敵な服を選びたいよ、と前の日の夜で躓いたままで進めない。
何処へ行くのか、何をするのか、それよりも前に「お似合いの服」を決めたくて。
ちゃんと「デート」に見えてくれる服、その一着を選びたくて。
(…いっそ、デートを申し込まれたら…)
ハーレイに頼んでみることにしようか、「その前に、服を選んでくれる?」と。
クローゼットの扉を開けて、シャツやズボンを引っ張り出して。
「この中から、決めて欲しいんだけど」と、「デートに行く日に、着ていく服」と。
そしてハーレイにも、「お願い」をする。
「デートの日は、この服に似合う服を着て来てね」と。
「そしたら恋人同士に見えるし、ちゃんとデートに見て貰えるよ」と。
(…悩んじゃうなら、それもいいかも!)
ハーレイとデート出来るんなら、と幸せな夢が広がってゆく。
「服を選んで貰うんだよ」と、「デートする前から、うんと楽しみだよね」と…。
デート出来るんなら・了
※チビのままでも、ハーレイ先生とデート出来るんなら、と考え始めたブルー君。
けれど年の差が問題なのです、何を着てゆくかが、とても大切。服を選ぶのが大仕事かもv
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