魂だけだったら
(今日は会い損なっちまったが…)
ちゃんと再会出来たんだよな、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(…まさに運命の恋人ってヤツだ)
すっかりチビになっちまったが、と少し可笑しくなる。
前の生で愛した愛おしい人は、生まれ変わって戻って来てくれた。
遠く遥かな時の彼方で別れた時には、絶望だけしか残らなかったのに。
(……俺が死んだら、会えるだろうとは思ったが……)
その日は、見えはしなかった。
他ならぬブルーが遺した言葉が、「ハーレイ」の命を縛ったから。
白いシャングリラが地球に着くまで、ジョミーを支えてやってくれ、と。
(お蔭で、俺は生ける屍でしかなくなって…)
ただ地球だけを目指したけれども、旅路の果てで、地球の地の底で命尽きた後。
(あいつに会えたか、とんと記憶が無いんだよなあ…)
知ってるのは今のあいつだけだ、と苦笑する。
忘れもしない五月の三日に、小さなブルーと再会した。
今の学校に赴任して来て、初めて入ったブルーのクラスの教室で。
(其処で記憶が戻ったわけだが、それまで、どうしていたんだろうな?)
俺もあいつも、と全く分からない、地球に生まれて来るまでの時間。
ブルーの方が二十四歳も年下なのだし、二十四年間、ブルーは何処かで…。
(…生まれ変わるのを待っていたってことになるのか?)
独りぼっちで、と思う一方、「違うだろうな」という気もする。
聖痕という奇跡を起こした神なら、二十四年も一瞬の内に飛び越えさせる筈だ、と。
(そうでなければ、あいつが寂しすぎるってな)
生まれ変わる前なら、記憶も前の通りだろうし、と大きく頷く。
先に生まれて行った「ハーレイ」、その魂を見送った後が、寂しいだろう、と。
運命の恋人同士なのだし、それまで一緒にいただろうから。
何処にいたかは分からなくても、片時も離れたりはしないで。
(…二十四年も、独りぼっちで待つのはなあ…)
いくらなんでも辛いじゃないか、と白いシャングリラの頃を思い出す。
前のブルーを失くした後に、孤独の中で生きた歳月。
途轍もなく長く感じたけれども、二十四年も生きてはいない。
その前に船は地球に辿り着き、自分の命も終わったから。
(生まれ変われば、俺に会えると分かってたって…)
二十四年だぞ、と指を折ってみる。
両手の指では足りやしないと、足の指を足しても、まだ足りない、と。
(もしも、あいつが待ってたんなら…)
寂しすぎるぞ、と思ったはずみに、考えたこと。
「あいつが、魂だけだったら?」と。
この地球で再会出来たブルーが、魂だけの姿だったなら、と。
(……今の年の差だと、魂だけのあいつと俺が出会うのは……)
ずいぶんと前になっちまうから、と「今」とは切り離すことにした。
今のブルーは十四歳だし、母の胎内に宿ったのは十五年前になる。
それまで「ハーレイ」を見ていたとしても、その頃の「ハーレイ」はと言えば…。
(十五年前なら、辛うじて新米教師なんだが…)
もっと前だと学生時代で、更に前だと悪ガキだった時代まである。
そんな時代に「ブルー」と会っても、なんだかきまりが悪い気がするし、それは駄目だ、と。
(…今、ってことで考えるかな)
魂だけのあいつに会うのは、と決めた設定。
こうして書斎にいる時にでも、「ブルー」がヒョイと現れるんだ、と。
魂だけの姿なのだし、今のようなチビのブルーではない。
メギドに向かって飛び去った時と、何処も変わっていない「ブルー」。
あの日のままの、気高く美しい姿だろう、と。
(…キースに撃たれた傷とか、血とかも…)
すっかりと消えて、生きていた時の姿そのまま。
そういう「ブルー」が来るのだろうと、「きっと微笑んでいるんだろうな」と。
生まれ変わって来たチビのブルーは、心に傷を抱えている。
メギドで味わった深い絶望、その時の記憶が癒えないままで。
(…右手が冷たくなった時には…)
それを思い出して苦しむけれども、魂だけの「ブルー」の方は、深い傷など…。
(俺の前にヒョイと出て来る前に、心の底に埋めてしまって…)
まるで何事も無かったかのように、「ハーレイ!」と微笑み掛けるのだろう。
「やっと会えた」と、「ずっと君に会いたかったんだ」と。
「君は青い地球に生まれたんだね」と、「地球の暮らしは気に入ってるかい?」と。
(…きっと、そうだな…)
右手のことなど、言いやしないな、と確信に満ちた思いがある。
前のブルーの魂だったら、そうなるだろう、と。
「あれから何があったんだ?」と問い掛けてみても、「知ってるだろう?」と笑みが返るだけ。
「ぼくがメギドを沈めたんだよ」と、「ちょっと大変だったけれどね」と。
(…そう聞かされたら、俺も安心しちまって…)
前のブルーを見舞った悲劇に、気付くことさえ無いだろう。
「ブルー」はメギドを道連れに逝って、其処から「此処」へ飛んで来たのだ、と考えて。
魂だけでも「やっと会えた」と、心が喜びに満たされて。
(俺の記憶もすっかり戻って、もう幸せで…)
愛おしい人を眺め回して、何度も瞬きすることだろう。
「夢じゃないよな」と、「ブルーだよな?」と。
こうして目の前に現れたからには、これからは、ずっと…。
(…ブルーと一緒で、うんと幸せな毎日が…)
訪れるのだ、と嬉しくて堪らない気持ちで一杯。
たとえ魂だけであろうと、「ブルー」だから。
手を伸ばしても触れられなくても、まるで全く構いはしない。
「ブルー」が其処にいてくれるなら。
呼べばきちんと声が返って、ちゃんと話が出来るなら。
「ブルー」の声が思念だろうと、ほんの些細なことでしかない。
また巡り会えて、ブルーと過ごしてゆけるなら。
愛おしい人の姿を見ながら、この地球で生きてゆけるのならば。
(……そうだよなあ……)
魂でも構いやしないんだ、と改めて思う。
前の生から愛した「ブルー」に、生まれ変わって再び出会えるのなら。
「ブルー」の方は魂だけでも、間違いなく「ブルー」なのだから。
(…俺が気を付けないといけない点は、だ…)
他の人には見えないだろう、ブルーの姿。
どんなにブルーが愛おしかろうと、人の目がある所では…。
(話し掛けるなら、きちんと思念の方にして…)
肉声は使わないで話して、視線を向けるのも、不審がられないよう注意が必要。
でないと、心配されるから。
「気は確かか?」とまでは言われなくても、何処か変だと感づかれて。
(他のヤツらにも見えるんだったら、安心なんだが…)
それはそれで厄介なことになるんだ、と分かっている。
前のブルーは知られ過ぎていて、誰が見たって一目で「ソルジャー・ブルー」だと気付く。
どうして「ソルジャー・ブルー」が「ハーレイ」の側にいるのか、誰でも気になる。
(…そうなっちまうと、前の俺たちの二の舞で…)
恋人同士だと知られないよう、あれこれと気を配らねば。
今の自分は「キャプテン・ハーレイ」に瓜二つだから、そっちの方も問題だろう。
「やっぱり生まれ変わりなんだな」と、誰もが自然に考えるから。
そうなってくると、気ままな今の暮らしは出来ない。
取材に追われて、ついでに「ブルー」も追い掛け回されることになる。
伝説にも等しい大英雄が、この世に現れたのだから。
魂だけの姿とはいえ、出来るものなら取材をしようと、大勢の記者が追い掛ける。
二人きりでの平穏な日々は、得られはしない。
何処へ行っても、記者やカメラに追い回されて。
(…シャングリラの時代以上に、大変な苦労になっちまうぞ…)
恋人同士だと隠すのはな、と竦めた肩。
きっと、そうなってしまわないよう、「ブルー」の魂は、「ハーレイ」にしか見えないだろう。
「ハーレイ」の目にだけ映る恋人、声も「ハーレイ」にしか聞こえない。
「そういう姿で現れるんだ」と、「そうに違いない」と。
自分にしか見えない、声も聞こえはしない「ブルー」。
けれど、最高に幸せだろう。
愛おしい人が帰って来たのだから。
二度と離れず、二人で生きてゆけるのだから。
(…あいつの方は、生きちゃいないんだがな)
だが、そんなのは細かいことだ、と心から思う。
「ブルー」が側にいてくれる日々は、幸せに満ちているだろうから。
触れることさえ出来はしなくても、「ブルー」」は確かに「居る」のだから。
(毎日、いろんなことを話して、いろんな所に連れてってやって…)
前のブルーが焦がれ続けた、青い水の星を案内せねば。
最初は海へのドライブだろうか、魂だけのブルーを助手席に乗せて。
海への道でも、様々な場所に立ち寄って…。
(こんな食べ物があるんだぞ、と…)
今ならではの名物料理や菓子を教えて、「食うか?」と訊く。
魂だけの姿であっても、食べられるだろうと思うから。
(供え物とかがあるんだからな?)
そして美味そうに食うんだろうな、と想像しながら傾けるコーヒーのカップ。
「あいつはコーヒーは苦手だったが、地球のコーヒーなら、飲みたがるだろう」と。
(…苦い所は変わらないね、と顔を顰めるだろうがな)
うん、充分に幸せだよな、と笑みが零れる「ブルー」との暮らし。
「魂だけでも、俺は構わん」と、「うんと幸せな暮らしじゃないか」と。
(…そういう暮らしに慣れちまったら…)
ある日、ブルーが「もうじき、生まれ変わるんだ」と言おうものなら、どうなることか。
「急いで育って戻って来るから、十四年ほど待っていてくれる?」と。
(…おいおいおい…)
今更、置いて行かないでくれ、と慌てる自分が目に見えるよう。
そして「ブルー」が行ってしまったら、「十四年だ」と分かっていたって…。
(泣きの涙で、毎日、ブルーに会いたくて…)
寂しいなんてもんじゃないぞ、と思うものだから、「ブルー」が魂だけだったら…。
(そのまま、ずっと俺の側にいてくれた方が…)
いいのかもな、という気がする。
きっと、自分は「待てない」から。
生まれ変わったブルーと再び出会える時まで、泣かずに待てるわけがないから…。
魂だけだったら・了
※地球に生まれた自分の前に、魂だけのブルーが現れたなら、と想像してみたハーレイ先生。
幸せな日々を送れそうですけど、「生まれ変わって来るから、待っていて」は困りますよねv
ちゃんと再会出来たんだよな、とハーレイが思い浮かべたブルーの顔。
ブルーの家には寄れなかった日の夜、いつもの書斎で。
愛用のマグカップに淹れた熱いコーヒー、それを片手に。
(…まさに運命の恋人ってヤツだ)
すっかりチビになっちまったが、と少し可笑しくなる。
前の生で愛した愛おしい人は、生まれ変わって戻って来てくれた。
遠く遥かな時の彼方で別れた時には、絶望だけしか残らなかったのに。
(……俺が死んだら、会えるだろうとは思ったが……)
その日は、見えはしなかった。
他ならぬブルーが遺した言葉が、「ハーレイ」の命を縛ったから。
白いシャングリラが地球に着くまで、ジョミーを支えてやってくれ、と。
(お蔭で、俺は生ける屍でしかなくなって…)
ただ地球だけを目指したけれども、旅路の果てで、地球の地の底で命尽きた後。
(あいつに会えたか、とんと記憶が無いんだよなあ…)
知ってるのは今のあいつだけだ、と苦笑する。
忘れもしない五月の三日に、小さなブルーと再会した。
今の学校に赴任して来て、初めて入ったブルーのクラスの教室で。
(其処で記憶が戻ったわけだが、それまで、どうしていたんだろうな?)
俺もあいつも、と全く分からない、地球に生まれて来るまでの時間。
ブルーの方が二十四歳も年下なのだし、二十四年間、ブルーは何処かで…。
(…生まれ変わるのを待っていたってことになるのか?)
独りぼっちで、と思う一方、「違うだろうな」という気もする。
聖痕という奇跡を起こした神なら、二十四年も一瞬の内に飛び越えさせる筈だ、と。
(そうでなければ、あいつが寂しすぎるってな)
生まれ変わる前なら、記憶も前の通りだろうし、と大きく頷く。
先に生まれて行った「ハーレイ」、その魂を見送った後が、寂しいだろう、と。
運命の恋人同士なのだし、それまで一緒にいただろうから。
何処にいたかは分からなくても、片時も離れたりはしないで。
(…二十四年も、独りぼっちで待つのはなあ…)
いくらなんでも辛いじゃないか、と白いシャングリラの頃を思い出す。
前のブルーを失くした後に、孤独の中で生きた歳月。
途轍もなく長く感じたけれども、二十四年も生きてはいない。
その前に船は地球に辿り着き、自分の命も終わったから。
(生まれ変われば、俺に会えると分かってたって…)
二十四年だぞ、と指を折ってみる。
両手の指では足りやしないと、足の指を足しても、まだ足りない、と。
(もしも、あいつが待ってたんなら…)
寂しすぎるぞ、と思ったはずみに、考えたこと。
「あいつが、魂だけだったら?」と。
この地球で再会出来たブルーが、魂だけの姿だったなら、と。
(……今の年の差だと、魂だけのあいつと俺が出会うのは……)
ずいぶんと前になっちまうから、と「今」とは切り離すことにした。
今のブルーは十四歳だし、母の胎内に宿ったのは十五年前になる。
それまで「ハーレイ」を見ていたとしても、その頃の「ハーレイ」はと言えば…。
(十五年前なら、辛うじて新米教師なんだが…)
もっと前だと学生時代で、更に前だと悪ガキだった時代まである。
そんな時代に「ブルー」と会っても、なんだかきまりが悪い気がするし、それは駄目だ、と。
(…今、ってことで考えるかな)
魂だけのあいつに会うのは、と決めた設定。
こうして書斎にいる時にでも、「ブルー」がヒョイと現れるんだ、と。
魂だけの姿なのだし、今のようなチビのブルーではない。
メギドに向かって飛び去った時と、何処も変わっていない「ブルー」。
あの日のままの、気高く美しい姿だろう、と。
(…キースに撃たれた傷とか、血とかも…)
すっかりと消えて、生きていた時の姿そのまま。
そういう「ブルー」が来るのだろうと、「きっと微笑んでいるんだろうな」と。
生まれ変わって来たチビのブルーは、心に傷を抱えている。
メギドで味わった深い絶望、その時の記憶が癒えないままで。
(…右手が冷たくなった時には…)
それを思い出して苦しむけれども、魂だけの「ブルー」の方は、深い傷など…。
(俺の前にヒョイと出て来る前に、心の底に埋めてしまって…)
まるで何事も無かったかのように、「ハーレイ!」と微笑み掛けるのだろう。
「やっと会えた」と、「ずっと君に会いたかったんだ」と。
「君は青い地球に生まれたんだね」と、「地球の暮らしは気に入ってるかい?」と。
(…きっと、そうだな…)
右手のことなど、言いやしないな、と確信に満ちた思いがある。
前のブルーの魂だったら、そうなるだろう、と。
「あれから何があったんだ?」と問い掛けてみても、「知ってるだろう?」と笑みが返るだけ。
「ぼくがメギドを沈めたんだよ」と、「ちょっと大変だったけれどね」と。
(…そう聞かされたら、俺も安心しちまって…)
前のブルーを見舞った悲劇に、気付くことさえ無いだろう。
「ブルー」はメギドを道連れに逝って、其処から「此処」へ飛んで来たのだ、と考えて。
魂だけでも「やっと会えた」と、心が喜びに満たされて。
(俺の記憶もすっかり戻って、もう幸せで…)
愛おしい人を眺め回して、何度も瞬きすることだろう。
「夢じゃないよな」と、「ブルーだよな?」と。
こうして目の前に現れたからには、これからは、ずっと…。
(…ブルーと一緒で、うんと幸せな毎日が…)
訪れるのだ、と嬉しくて堪らない気持ちで一杯。
たとえ魂だけであろうと、「ブルー」だから。
手を伸ばしても触れられなくても、まるで全く構いはしない。
「ブルー」が其処にいてくれるなら。
呼べばきちんと声が返って、ちゃんと話が出来るなら。
「ブルー」の声が思念だろうと、ほんの些細なことでしかない。
また巡り会えて、ブルーと過ごしてゆけるなら。
愛おしい人の姿を見ながら、この地球で生きてゆけるのならば。
(……そうだよなあ……)
魂でも構いやしないんだ、と改めて思う。
前の生から愛した「ブルー」に、生まれ変わって再び出会えるのなら。
「ブルー」の方は魂だけでも、間違いなく「ブルー」なのだから。
(…俺が気を付けないといけない点は、だ…)
他の人には見えないだろう、ブルーの姿。
どんなにブルーが愛おしかろうと、人の目がある所では…。
(話し掛けるなら、きちんと思念の方にして…)
肉声は使わないで話して、視線を向けるのも、不審がられないよう注意が必要。
でないと、心配されるから。
「気は確かか?」とまでは言われなくても、何処か変だと感づかれて。
(他のヤツらにも見えるんだったら、安心なんだが…)
それはそれで厄介なことになるんだ、と分かっている。
前のブルーは知られ過ぎていて、誰が見たって一目で「ソルジャー・ブルー」だと気付く。
どうして「ソルジャー・ブルー」が「ハーレイ」の側にいるのか、誰でも気になる。
(…そうなっちまうと、前の俺たちの二の舞で…)
恋人同士だと知られないよう、あれこれと気を配らねば。
今の自分は「キャプテン・ハーレイ」に瓜二つだから、そっちの方も問題だろう。
「やっぱり生まれ変わりなんだな」と、誰もが自然に考えるから。
そうなってくると、気ままな今の暮らしは出来ない。
取材に追われて、ついでに「ブルー」も追い掛け回されることになる。
伝説にも等しい大英雄が、この世に現れたのだから。
魂だけの姿とはいえ、出来るものなら取材をしようと、大勢の記者が追い掛ける。
二人きりでの平穏な日々は、得られはしない。
何処へ行っても、記者やカメラに追い回されて。
(…シャングリラの時代以上に、大変な苦労になっちまうぞ…)
恋人同士だと隠すのはな、と竦めた肩。
きっと、そうなってしまわないよう、「ブルー」の魂は、「ハーレイ」にしか見えないだろう。
「ハーレイ」の目にだけ映る恋人、声も「ハーレイ」にしか聞こえない。
「そういう姿で現れるんだ」と、「そうに違いない」と。
自分にしか見えない、声も聞こえはしない「ブルー」。
けれど、最高に幸せだろう。
愛おしい人が帰って来たのだから。
二度と離れず、二人で生きてゆけるのだから。
(…あいつの方は、生きちゃいないんだがな)
だが、そんなのは細かいことだ、と心から思う。
「ブルー」が側にいてくれる日々は、幸せに満ちているだろうから。
触れることさえ出来はしなくても、「ブルー」」は確かに「居る」のだから。
(毎日、いろんなことを話して、いろんな所に連れてってやって…)
前のブルーが焦がれ続けた、青い水の星を案内せねば。
最初は海へのドライブだろうか、魂だけのブルーを助手席に乗せて。
海への道でも、様々な場所に立ち寄って…。
(こんな食べ物があるんだぞ、と…)
今ならではの名物料理や菓子を教えて、「食うか?」と訊く。
魂だけの姿であっても、食べられるだろうと思うから。
(供え物とかがあるんだからな?)
そして美味そうに食うんだろうな、と想像しながら傾けるコーヒーのカップ。
「あいつはコーヒーは苦手だったが、地球のコーヒーなら、飲みたがるだろう」と。
(…苦い所は変わらないね、と顔を顰めるだろうがな)
うん、充分に幸せだよな、と笑みが零れる「ブルー」との暮らし。
「魂だけでも、俺は構わん」と、「うんと幸せな暮らしじゃないか」と。
(…そういう暮らしに慣れちまったら…)
ある日、ブルーが「もうじき、生まれ変わるんだ」と言おうものなら、どうなることか。
「急いで育って戻って来るから、十四年ほど待っていてくれる?」と。
(…おいおいおい…)
今更、置いて行かないでくれ、と慌てる自分が目に見えるよう。
そして「ブルー」が行ってしまったら、「十四年だ」と分かっていたって…。
(泣きの涙で、毎日、ブルーに会いたくて…)
寂しいなんてもんじゃないぞ、と思うものだから、「ブルー」が魂だけだったら…。
(そのまま、ずっと俺の側にいてくれた方が…)
いいのかもな、という気がする。
きっと、自分は「待てない」から。
生まれ変わったブルーと再び出会える時まで、泣かずに待てるわけがないから…。
魂だけだったら・了
※地球に生まれた自分の前に、魂だけのブルーが現れたなら、と想像してみたハーレイ先生。
幸せな日々を送れそうですけど、「生まれ変わって来るから、待っていて」は困りますよねv
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