贈り物って
「ねえ、ハーレイ。贈り物って…」
受け取らないと失礼になるんだよね、と首を傾げたブルー。
二人きりで過ごす休日の午後に、突然に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ?」
贈り物だって、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
いったい何を言い出すのかと、小さな恋人を観察する。
(…贈り物ってだけでも、充分、唐突過ぎるのに…)
失礼かどうかと訊かれても、と湧き上がる疑問は尽きない。
こういった時のブルーの質問、それは大抵、良くないもの。
何かとんでもない魂胆があって、探るように尋ねて来る。
額面通りに受け取ったならば、馬鹿を見ることが大多数。
(どうせ今日のも、そういうヤツだぞ)
その手に乗るか、と思いながらも、問い返してみる。
「何か贈り物を貰ったのか?」
それとも貰う予定なのか、と赤い瞳を覗き込んだ。
「誕生日には、まだ早すぎるが」と、「何かの礼か?」と。
ブルーが気にする、贈り物のこと。
受け取る話が出て来るからには、心当たりがあるのだろう。
いくら唐突でも、それを言わせた何かがある筈。
そう考えて、質問の意図を探り出そうとしたのだけれど…。
「贈り物なんか貰っていないし、予定も無いよ」
次に貰えるのはクリスマスかな、とブルーは答えた。
クリスマスには、きっと貰える筈、とニッコリと笑む。
「パパとママもくれるし、ハーレイもでしょ?」と。
「俺は、やるとは言っていないが?」
気が早いにも程があるぞ、とハーレイは顔を顰めてみせた。
ブルーに何か贈るにしたって、せいぜい、お菓子。
日持ちするクッキーや焼き菓子の類、そういう程度。
(こいつが、大事に取っておくようなものは…)
誕生日までは贈らないんだ、と決めている。
そうでなくても恋人気取りで、何かと困らされるから。
「えっ、ハーレイは何もくれないの?」
「お前が期待するようなものは、贈らんだろうな」
子供には菓子で充分だ、とハーレイは返してやった。
「靴下を用意しておくんだぞ」と、「入れてやるから」と。
「靴下って…。それに、お菓子って…」
酷い、とブルーが頬を膨らませるから、チャンスと捉えた。
ブルーの質問の意図はともかく、答えは返せる。
ハーレイはブルーを真っ直ぐ見詰めて、こう言った。
「おい、それは失礼っていうモンだろう」
「えっと…?」
何処が、とキョトンとしているブルーに、畳み掛ける。
「お前、自分で言っただろうが。さっき、俺にな」
贈り物を受け取らないと失礼なんだろ、と意地悪く尋ねた。
「そう思ったから訊いたんだろう」と、「違うのか?」と。
ブルーは瞳をパチパチとさせて、渋々といった体で頷いた。
「そうだけど…」と、それは不満そうな顔をして。
「じゃあ、ハーレイがお菓子をくれたら…」
「受け取らないと失礼だよなあ、「ありがとう」って」
喜んで靴下に入れて貰うこった、とハーレイは笑った。
「それがマナーというものなんだぞ、贈り物を貰った時の」
ちゃんと質問にも答えたからな、と腕組みをする。
「どうだ?」と、「これで満足したか?」と。
「…うう…。分かったよ、お菓子でも我慢する…」
失礼になっちゃいけないものね、とブルーは唸った。
「仕方ないや」と、「それが贈り物のマナーなんだし」と。
(…よしよし、これでクリスマスの贈り物も決まったぞ)
美味い菓子でも買ってやるか、とハーレイは心の中で頷く。
何を贈っても、ブルーは受け取るしかない運命。
ブルー自身が蒔いた種だし、自業自得というものだ。
(菓子なら、悩まなくても済むしな)
ついでに文句も言われないし、と喜んでいたら…。
「あのね、ハーレイ。もう一度、確認なんだけど…」
受け取らないと失礼なんだよね、と恋人が念を押して来た。
「でないとマナー違反なんでしょ」と、真剣な顔で。
「そうだとも。お前も言ったし、俺も肯定したからな」
つまらない菓子でも受け取るんだぞ、と重々しく告げる。
「こんなの嫌だ」は通らないぞ、と「分かったな?」と。
そうしたら…。
「なら、ぼくのキスも受け取って!」
ぼくからの贈り物だから、と立ち上がったブルー。
「唇にキスをしてあげるから」と、「動かないでね」と。
「馬鹿野郎!」
礼儀知らずでも俺は構わん、とハーレイが握り締めた拳。
「そういう贈り物は断る」と、「俺は要らん」と。
「くれると言っても、断固拒否する」と、怖い顔で。
「貰うより前に、頭に一発、プレゼントする」と…。
贈り物って・了
受け取らないと失礼になるんだよね、と首を傾げたブルー。
二人きりで過ごす休日の午後に、突然に。
お茶とお菓子が置かれたテーブル、それを挟んで。
「はあ?」
贈り物だって、とハーレイは鳶色の瞳を丸くした。
いったい何を言い出すのかと、小さな恋人を観察する。
(…贈り物ってだけでも、充分、唐突過ぎるのに…)
失礼かどうかと訊かれても、と湧き上がる疑問は尽きない。
こういった時のブルーの質問、それは大抵、良くないもの。
何かとんでもない魂胆があって、探るように尋ねて来る。
額面通りに受け取ったならば、馬鹿を見ることが大多数。
(どうせ今日のも、そういうヤツだぞ)
その手に乗るか、と思いながらも、問い返してみる。
「何か贈り物を貰ったのか?」
それとも貰う予定なのか、と赤い瞳を覗き込んだ。
「誕生日には、まだ早すぎるが」と、「何かの礼か?」と。
ブルーが気にする、贈り物のこと。
受け取る話が出て来るからには、心当たりがあるのだろう。
いくら唐突でも、それを言わせた何かがある筈。
そう考えて、質問の意図を探り出そうとしたのだけれど…。
「贈り物なんか貰っていないし、予定も無いよ」
次に貰えるのはクリスマスかな、とブルーは答えた。
クリスマスには、きっと貰える筈、とニッコリと笑む。
「パパとママもくれるし、ハーレイもでしょ?」と。
「俺は、やるとは言っていないが?」
気が早いにも程があるぞ、とハーレイは顔を顰めてみせた。
ブルーに何か贈るにしたって、せいぜい、お菓子。
日持ちするクッキーや焼き菓子の類、そういう程度。
(こいつが、大事に取っておくようなものは…)
誕生日までは贈らないんだ、と決めている。
そうでなくても恋人気取りで、何かと困らされるから。
「えっ、ハーレイは何もくれないの?」
「お前が期待するようなものは、贈らんだろうな」
子供には菓子で充分だ、とハーレイは返してやった。
「靴下を用意しておくんだぞ」と、「入れてやるから」と。
「靴下って…。それに、お菓子って…」
酷い、とブルーが頬を膨らませるから、チャンスと捉えた。
ブルーの質問の意図はともかく、答えは返せる。
ハーレイはブルーを真っ直ぐ見詰めて、こう言った。
「おい、それは失礼っていうモンだろう」
「えっと…?」
何処が、とキョトンとしているブルーに、畳み掛ける。
「お前、自分で言っただろうが。さっき、俺にな」
贈り物を受け取らないと失礼なんだろ、と意地悪く尋ねた。
「そう思ったから訊いたんだろう」と、「違うのか?」と。
ブルーは瞳をパチパチとさせて、渋々といった体で頷いた。
「そうだけど…」と、それは不満そうな顔をして。
「じゃあ、ハーレイがお菓子をくれたら…」
「受け取らないと失礼だよなあ、「ありがとう」って」
喜んで靴下に入れて貰うこった、とハーレイは笑った。
「それがマナーというものなんだぞ、贈り物を貰った時の」
ちゃんと質問にも答えたからな、と腕組みをする。
「どうだ?」と、「これで満足したか?」と。
「…うう…。分かったよ、お菓子でも我慢する…」
失礼になっちゃいけないものね、とブルーは唸った。
「仕方ないや」と、「それが贈り物のマナーなんだし」と。
(…よしよし、これでクリスマスの贈り物も決まったぞ)
美味い菓子でも買ってやるか、とハーレイは心の中で頷く。
何を贈っても、ブルーは受け取るしかない運命。
ブルー自身が蒔いた種だし、自業自得というものだ。
(菓子なら、悩まなくても済むしな)
ついでに文句も言われないし、と喜んでいたら…。
「あのね、ハーレイ。もう一度、確認なんだけど…」
受け取らないと失礼なんだよね、と恋人が念を押して来た。
「でないとマナー違反なんでしょ」と、真剣な顔で。
「そうだとも。お前も言ったし、俺も肯定したからな」
つまらない菓子でも受け取るんだぞ、と重々しく告げる。
「こんなの嫌だ」は通らないぞ、と「分かったな?」と。
そうしたら…。
「なら、ぼくのキスも受け取って!」
ぼくからの贈り物だから、と立ち上がったブルー。
「唇にキスをしてあげるから」と、「動かないでね」と。
「馬鹿野郎!」
礼儀知らずでも俺は構わん、とハーレイが握り締めた拳。
「そういう贈り物は断る」と、「俺は要らん」と。
「くれると言っても、断固拒否する」と、怖い顔で。
「貰うより前に、頭に一発、プレゼントする」と…。
贈り物って・了
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