「あのね、ハーレイ…」
ちょっと確認したいんだけど、と小さなブルーが傾げた首。
二人きりで過ごす休日の午後に、向かい合わせで。
間にはティーセットが置かれたテーブル、お茶の真っ最中。
「確認だって?」
ハーレイはポカンと鳶色の瞳を見開いた。
こういう時間に、ブルーがわざわざ言ってくるのは…。
(質問ばかりで、ついでにだな…)
ロクな中身じゃないものなんだが、と食らった不意打ち。
質問ではなくて確認ならば、その内容は…。
(いつもよりマシなものなのか?)
サッパリ謎だ、と思うけれども、無視は出来ない。
ブルーは答えを待っているのだし、まずは返事をしなくては。
だから…。
「確認と来たか…。そいつは大事なことなのか?」
「そう。…ハーレイは、ぼくのことが好き?」
正直に言って、というブルーの言葉に、噛み潰した苦虫。
(質問よりもタチが悪いぞ!)
間をすっ飛ばして来やがった、と眉間に思い切り皺を寄せた。
「……そういう台詞は、チビのお前には、早すぎだ!」
「違うよ、そうじゃないってば!」
話は最後まで聞いてよね、とブルーがプウッと膨らませた頬。
「ハーレイはすぐに怒るんだから」と、「子供扱いだ」と。
「そうさせてるのは、お前だろうが!」
「最後まで聞いて、って言ったよ、ぼくは!」
聞きもしないで怒らないで、とブルーの方も負けてはいない。
そういうことなら…。
「いいとも、聞いてやろうじゃないか」
何を確認したいんだって、とハーレイは徐に腕組みをした。
ブルーの話が真っ当だったら、真面目に答えてやってもいい。
違っていたなら、腕組みを解いて…。
(いつも通りに、コツンと一発…)
頭にお見舞いするまでだ、とブルーの瞳を真っ直ぐ見詰めた。
「早く言えよ」と促すように。
「んーとね…。前のぼくと今のぼくだと、どっちが好き?」
「はあ?」
「確認だってば、どっちが好きなの?」
答えは分かっているんだけどね、とブルーは顔を曇らせた。
「知っているもの」と、「前のぼくの方が好きだ、って」と。
(…バレてたのか!?)
前のあいつの写真集を持っていること、とハーレイは焦った。
書斎の机の引き出しの中に、大切に入れてある写真集。
毎晩、出しては、前のブルーにあれこれと語り掛けている。
チビのブルーと前のブルーは、まだ重ならないものだから。
(……マズイぞ……)
サイオンが不器用だと思って油断していた、と背を伝う冷汗。
なんと言ったら、この状況を打開できるだろう。
チビのブルーに謝るべきか、しらばっくれる方がいいのか。
(このハーレイ、人生最大のピンチ…!)
どうすればいい、と前の生での記憶を懸命に探っても…。
(前の俺は、こんな窮地には……)
陥ったことはなかったんだ、と何の参考にもならない有様。
前の生では、ブルーは一人きりだったから。
(……どうすりゃいいんだ!?)
降参するか、と腹を括った所で、小さなブルーが微笑んだ。
「許してあげてもいいんだけどね」と。
「本当か?」
「やっぱり、前のぼくの方が好きだったわけ?」
ちょっと試しただけなんだけど、と赤い瞳が煌めいている。
「当たりだったら、許してあげるから、ぼくにキスして」
それで許すよ、というブルーの言葉で気が付いた。
「引っ掛けられた」と、「こいつは何も知らないんだ」と。
ならば、自分がするべきことは…。
「馬鹿野郎! 俺は、どっちのお前も好きだ!」
比べられんのを知ってるだろう、と銀色の頭に落とした拳。
「知ってて、俺を試すんじゃない」と。
「お前の狙いは分かってるんだ」と、「騙されんぞ」と…。
どっちが好き?・了
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