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いい子にしてたら

「えーっと、ハーレイ…?」
 ちょっと質問があるんだけれど、と小さなブルーが傾げた首。
 二人きりで過ごす休日の午後の、お茶の時間の真っ最中。
 テーブルを挟んで向かい合わせで、赤い瞳でじっと見詰めて。
「質問だって…?」
 嫌な予感しかしないんだがな、とハーレイは顔を顰めた。
 こういった時のブルーの質問、それは大抵、とんでもない。
 何か企んでいるのが普通で、真面目に聞いたら、馬鹿を見る。
 すっかり馴染んでしまっただけに、今日もそれだと考えた。
(どうせ、ろくでもないことなんだ)
 およそ聞くだけ無駄ってモンだ、と思ったのだけれど…。
「そう言わないで、ちょっとだけ…」
 ね? とブルーは愛らしく笑んだ。
 ハーレイに「否」を言わせないよう、それは無邪気に。


(……こう言われると、弱いんだよなあ……)
 ついでに、この顔、と呆気なく崩れるハーレイの防壁。
 前の生から愛したブルーに、冷たい態度が取れるわけがない。
 ろくでもない結果が待っていようと、頼み込まれたら。
 おまけに可愛らしい笑みまでセットで、お願いされたら。
「仕方ないな…。質問するなら、簡潔に言え」
「ありがとう! いい子と悪い子、どっちが好き?」
 ハーレイの好きな子供はどっち、とブルーは膝を乗り出した。
 「どっちがハーレイの好みなのかな」と。
「はあ?」
「だから、いい子と悪い子だってば!」
 ハーレイは悪ガキだったんだよね、というブルーの指摘。
 「すると悪ガキの方がいいの?」と、興味津々で。


(なんだ、マトモな質問じゃないか)
 こういうヤツなら大歓迎だ、とハーレイは大きく頷いた。
 ついでに子供は大好きなのだし、こんな質問も悪くない。
「そうだな、俺は悪ガキだったわけだが…」
「それじゃやっぱり、悪い子がいい?」
「場合によるかな、たとえば、俺がサンタクロースなら…」
 うんと悩むぞ、クリスマス前に、子供の評価で。
 悪ガキにもプレゼントを持ってってやるか、どうするかで。
 あんまり悪戯ばかりのガキじゃあ、おしおきってのも…。
 必要だしな、とウインクした。
 「いい子と悪い子は程度によるな」と、「要はバランス」と。
 うんと悪ガキでも、根っこは悪くないんだから、と。
 そうしたら…。


「だったら、うんといい子にしてたら…」
 クリスマスにキスをしてくれる? と言い出したブルー。
 「プレゼントを持って来てくれるのなら、それがいいな」と。
「馬鹿野郎!」
 今のは例え話ってヤツだ、とブルーの頭に落とした拳。
 「お前にキスは、まだ早い」と。
 「第一、俺はサンタクロースじゃないだろうが!」と。
 そして心で悪態をつく。
 こいつは立派な悪ガキだ、と。
 いい子にするなど聞いて呆れると、また騙された、と…。




        いい子にしてたら・了










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