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不幸なのかも

「ねえ、ハーレイ…。ちょっと心配なんだけど」
 気になって仕方ないんだけれど、と小さなブルーが傾げた首。
 今日は休日、ブルーの部屋でのティータイム。
 もう昼食は食べ終えたから、のんびり、ゆっくり。
 けれどブルーは浮かない顔で、そういえば…。
(…午前中から、なんだか元気が無かったような…)
 具合が悪いのとは違っていたから、さほど気にしていなかった。
 何か気になることがあるのか、そんな程度、と。
(親父さんに、朝から山ほど食べさせられたとか…)
 小さなブルーには、ありがちなこと。
 「ほら、これも食べろ」と、父から分けて貰う朝食。
 早く大きくなりたいブルーは、頑張って詰め込むのだけれど…。
(腹が膨れるだけだってな)
 背は一ミリも伸びやしないんだ、と可笑しくなる。
 それはブルーにも分かっているから、元気も失せてしまうだろう。
(うんうん、きっと、そんなトコだな)
 原因は今日の朝飯なんだ、とハーレイは答えを出したけれども…。


「もしかしたら、ぼくって、不幸なのかも…」
 そうなのかもね、とブルーが項垂れたから、驚いた。
 いったい何があったというのか、急には思い付かないだけに。
「不幸だって?」
 お前、幸せ一杯だろうが、と訊き返す。
 今の小さなブルーの周りに、不幸な影など見当たらないから。
「ぼくもそうだと思っていたけど、間違ってるかも…」
 本当は不幸なのかもしれない、と赤い瞳が不安に揺れる。
 前の自分と同じくらいに、今度も不幸な生まれなのかも、と。
「おいおいおい…。穏やかじゃないな」
 どうしたんだ、と胸に湧き上がる前の自分の「悲しい想い」。
 前のブルーを喪った後に、どれほど嘆いて、悔やんだことか。
 あれが「ブルーの運命」だったなら、なんと不幸な人だったかと。
 ミュウの仲間のためにだけ生きて、夢は一つも叶わないままで。


(今のブルーも、不幸だってか?)
 小さなブルーがそう思うのなら、幸せにしてやらねばならない。
 不安があるなら、取り除いて。
 自分の力が及ぶ限りの、ありとあらゆる手を尽くして。
「お前が幸せ一杯じゃないと、俺も悲しい。何故、不幸なんだ?」
 俺では、お前の力になれんか、と問い掛けた。
 出来る限りのことをしたいから、打ち明けてみろ、と。
「…ホント? ハーレイ、ぼくを助けてくれるの?」
 縋るように見上げる赤い瞳に、「うむ」と大きく頷いた。
 「俺が力になれるんだったら、お前の不幸を消し去ってやる」と。
「ありがとう、ハーレイ!」
 ハーレイに相談して良かったよ、と赤い瞳が煌めく。
 「やっぱりハーレイは頼りになるね」と、「だから大好き」と。


「えっとね…。ぼくが、とっても不幸なのは…」
 ハーレイとキスが出来ないこと、ブルーは瞳を瞬かせた。
 「せっかくハーレイと再会したのに、不幸だよね」と。
「なんだって!?」
 それは知らん、とブルーの頭にコツンと落とした拳。
 いくらブルーが不幸だろうと、子供にキスは贈れないから。
 あの手この手で言ってこようが、その注文だけは聞けないから…。




         不幸なのかも・了









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