「クシャン!」
小さなブルーが漏らしたクシャミ。
ハーレイと過ごす休日の午後に、部屋で向かい合って座っていたら。
会話が急に途切れてしまって、「クッシャン!」と。
「おいおい…。風邪じゃないだろうな?」
大丈夫か、とハーレイが顔を覗き込んだ途端に…。
「クッシャン!」
またもクシャミで、ブルーは「平気」と言うのだけれど…。
「いかんな、二回も出ちまってるし…」
三回目が出たら危ないかもな、とハーレイが眉間に寄せた皺。
ブルーの身体は今も虚弱で、風邪を引いたらひとたまりもない。
それが分かるだけに、大事を取った方がいいから。
三度目のクシャミが出るようだったら、大人しくベッドに入ること。
ハーレイはブルーに言い聞かせた。
「この約束は守って貰うぞ」と、赤い瞳を見詰めながら。
「お前、丈夫じゃないからな…。風邪を引いてからじゃ遅いんだ」
「でも…! せっかくのお休みなのに…」
ベッドになんか入りたくない、とブルーはゴネる。
そうなるよりかは、起きてハーレイと話していたい、と膨れっ面で。
「三つ目のクシャミなんかしないよ」と、桜色の唇を尖らせて。
「どうだかな? クシャミばかりは、どうにもならんぞ」
止めようとしたって、出ちまうもんだ、と言い終えない内に…。
「クシャン!」
ブルーの口から飛び出したクシャミ。
それこそ止める暇さえも無くて、アッという間に「クッシャン」と。
三度目のクシャミが出たら、ベッドへ。
そういう約束になっているのだし、ハーレイはベッドを指差した。
「今で三度目だぞ。サッサと着替えてベッドで寝ろ」
「嫌だよ、風邪じゃないんだから!」
鼻がムズムズしただけだから、とのブルーの反論。
けれど、説得力が無い。
三度目のクシャミをやった後には、鼻を啜っているだけに。
「お前なあ…。だったら、熱でも測ってみるか?」
「熱?」
「熱が無ければ、まあいいだろう。四度目までは見逃してやる」
だが、その前に体温計だ、とハーレイは腕組みをしてブルーを睨む。
「早く測れよ」と、「体温計が部屋に無いなら、取って来い」と。
「えーっ!?」
そんな、とブルーは叫んだけれど。
更に頬っぺたが膨れたけれども、ハーレイも譲るつもりは無い。
「いいから、早く体温計だ。そいつが俺の条件だってな」
「うー…。じゃあ、おでこ」
「おでこ?」
「うん。ハーレイ、コツンとしてくれない?」
おでこで熱が測れるでしょ、と微笑んだブルー。
額と額をくっつけた時は、それで体温が測れる筈だ、と。
「なんだって?」
「お願い、それで測ってよ! ハーレイのおでこ!」
ついでに唇にキスもお願い、というのがブルーの魂胆だった。
額で熱を測ったついでに、唇にキスもして欲しい、と。
「馬鹿野郎! もう四度目まで待ってやらん!」
チビはベッドで大人しく寝ろ、とハーレイはブルーを叱り付ける。
我儘を聞いてやっていたなら、キリが無いから。
おでこで熱を測るついでに、キスなどはしてやれないから…。
熱を測って・了