「…ねえ、ハーレイ。訊きたいんだけど…」
まじまじと恋人の顔を見詰めた、小さなブルー。
いつもの部屋で、テーブルを挟んで向かい合わせで。
二人きりで会うなら、ブルーの部屋に置かれたテーブル。
そうでなければ、庭で一番大きな木の下。
其処にもテーブルと椅子があるから、そのどちらか。
今はブルーの部屋の方。
「…質問か?」
なんだ、と穏やかな笑みを浮かべたハーレイ。
「俺で分かることなら、なんでも質問してくれていいぞ」と。
そうしたら…。
小さなブルーは首を傾げてこう言った。
「ハーレイ、ぼくのこと、愛してる?」
「はあ?」
何を今更、と呆れたハーレイ。
いくらブルーがチビだと言っても、前の生から愛した恋人。
愛していない筈などはないし、誰よりも愛してやまないわけで。
呆れながらも「もちろんだが?」と返してやった。
「愛しているに決まっているだろう」と。
俺にはお前一人だけだと、お前だけしか欲しくはないと。
「…ホントにそう?」
そうなのかな、と疑わしげな赤い色の瞳。
小さなブルーの顔に輝く二つの宝石。
じいっと見上げて、瞬きをして。
ブルーは疑っているようだから、なんとも心外。
前の生から愛し続けて、今も変わらず愛しているのに。
今度こそ二人で生きてゆこうと、共に暮らせる日を夢見ているのに。
だからブルーを見詰め返して、真摯な瞳で。
「…愛していると言っただろうが」
それとも、お前には、愛していないように見えるのか?
俺がこんなに愛しているのに、お前の目は節穴同然らしいな。
「…ううん、節穴なんかじゃないけど…」
ちゃんとハーレイの姿が見えているけど、見えないんだよ。
ハーレイの愛が、ぼくには少しも。
「なんだって?」
それこそ酷い言われようだから、これは身の証を立てなければ。
ブルーを愛しているという証。
誰よりもブルーが大切なのだと、愛していると。
だから訊いてみた、「俺はそんなに薄情そうか?」と。
「お前を愛していそうにないか」と。
「どうすればお前を愛していると分かってくれる?」と尋ねたら…。
小さなブルーは「簡単だよ?」と微笑んだ。
「愛してるのなら、とっても簡単」と。
そしてニコリと笑ったブルー。
「ぼくにキスして」と、「愛しているならキスだってば」と。
その瞬間にやっと気付いた、これはブルーの作戦だと。
愛にかこつけてキスを強請る気だと。
禁じた唇へのキスを。…恋人同士が交わすキスを。
その手に乗ってやる気はないから、「そうか、キスか」と頬っぺたに。
「俺はお前を愛しているぞ」と、頬っぺたにキス。
ブルーはプウッと膨れたけれども、チビにはこれで充分だから。
愛しているならキスをするだけ、愛しさをこめて、柔らかな頬に…。
愛してる? ・了