忍者ブログ

チビに見える目

(前と同じだと思うんだけど…)
 変わらない筈だと思うんだけど、と小さなブルーが見詰めたもの。
 自分の部屋で、椅子にチョコンと腰掛けて。
 テーブルを挟んだ向こう側を見る、其処に座った恋人の姿。
(何処から見たって、前のままだよ?)
 服が違っているくらい、と赤い瞳でまじまじと。
 ハーレイは何処も変わっていないけれど、と。


 前の生で自分が愛した恋人、愛してくれたキャプテン・ハーレイ。
 今では自分の学校の教師、それに聖痕を持った自分の守り役。
 肩書きこそ変わってしまったけれども、姿形は同じだと思う。
 がっしりとした身体も、褐色の肌も、金色の髪も。
(全部、おんなじ…)
 今も向けられている優しい視線。
 それをくれる鳶色の瞳も、前の自分の記憶そのまま。
 何処も変わっていないというのに、変わってしまったハーレイの中身。
 こうして二人きりで向かい合っていても、ハーレイの目は…。


(恋人じゃなくって、チビを見てるんだよ)
 口では「俺のブルーだ」と言ってくれるけれど、それは言葉だけ。
 言葉に見合ったものをくれない、行動が何も伴わない。
 愛を交わすのは無理だとしたって、キスくらいはしてくれなければ。
 本当に恋人だと思っているなら、「俺のブルーだ」と言うのなら。
 顎を捉えてキスの一つもしてくれなくては駄目だと思う。
(…ハーレイの目には、チビが見えているから…)
 そのせいなのだと分かってはいる、ハーレイがキスをくれない理由。
 自分があまりに幼いから。
 十四歳にしかならない子供だから。


 けれど、中身は前の自分と変わらない。
 ソルジャー・ブルーだった頃の記憶も持っているのに、チビ扱い。
 それが解せない、どうしてそういうことになるのか。
 ハーレイは何処も変わっていないと思うのに…。
「なんだ、俺の顔がどうかしたのか?」
 その恋人に尋ねられたから。
「…顔じゃなくって、ハーレイの目かな…」
「俺の目だと?」
 何処か変か、と瞬く鳶色の瞳。
「うん、ちょっと…」
 変だと思う、と切り出した。
 その目は何処かおかしくないか、と。


「赤くなってるか?」
 擦ったつもりはないんだが、と首を捻っている恋人。
「ううん、見た目は変わらないけど…。見え方が変」
「はあ?」
「ぼくがチビにしか見えないだなんて、絶対に変だと思うけど…」
 だってハーレイの恋人なんだよ、と大真面目な顔で言ったのに。
 前と同じに見えないなんて、と指摘したのに。
「ふうむ…。ならば、眼科に行くとするかな」
 今日は帰って、と立ち上がろうとするから、慌てて止めた。
「待ってよ、なんで眼科になるの!?」
「俺にはチビしか見えないわけだし、そいつを治療しに行かんとな」
 目が治ったらまた来るから、とハーレイは帰るふりをするから。
 諦めるしかない、チビに見える目。
 帰られてしまって会えないよりかは、一緒の方がいいのだから…。



         チビに見える目・了




拍手[0回]

PR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
 管理人のみ閲覧
 
Copyright ©  -- つれづれシャングリラ --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by 妙の宴 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]